ウィトラのつぶやき

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COP15の感想

2009-12-21 13:04:15 | 社会

COP15は失敗に終わった。これは誰の眼にも明らかである。

残念だったのは鳩山総理と小沢環境大臣がインタビューで「COP15で一定の前進があった」と答えたことである。

おそらく彼らは「COP15で大きく前進した」と言う原稿を用意していて、大きく前進とは言えないので一定の成果にしたのだと想像している。つまり、彼らはCOP「15でこういう合意を取り付けたい」というような意思は持っておらず、ただあの場で「日本は良くやっている」と言ってもらいたかっただけなんだな、と思う。

鳩山総理の25%削減でも、本気で削減したいわけではなく、ほめてもらいたいから言った、民主党のマニフェストと同質なんだろう、と思う。

COP15では「このままでは何も決まらない」と危機感を覚えた各国首脳が徹夜に近い状態で合意文書を作成しようとした。私はおそらく鳩山総理はその議論の中ではほとんど何も発言できなかっただろうと想像している。日経新聞にもそのようなことが書いてあった。

私がそう思ったのは何も鳩山が無能だとか、真剣じゃないとかいう観点から来ているのではない。国内の議論を見ても、「日本はどうするか」ということに関しては真剣に議論するが、「他の国はこうすべきだ」という議論がほとんどないからである。これはある意味で日本の特徴ではないかと思っている。

しかし、他の国の立場に立って、彼らはどうしたいのか、どういう困ることがあるのかを普段から考えていないと、「日本はこうしてくれ」と言われたのに対してyes,Noの返事をするくらいしか発言ができず、混乱した状態で議論を収束させるような発言はできないものである。

私は一時期、国際会議の議長を務めていたので、このように議論が対立した時に落とし所をどうしようか、と考える習慣ができている。これは自分にとっては大きな財産だと思っている。全般的には日本勢はこのような話には弱いと感じている。

話を地球温暖化に戻そう。今回中国は「GDP比で40%削減」という案を出してきた。しかしこれは中国の現在の経済成長が続けばGDPの伸びは40%では済まないので、結果としては世界最大の排出国である中国の排出量が減るどころか増えてしまう、という指摘があった。日本国内では中国案に対する指摘はこればかりだったと思う。

しかし、私はGDP比で排出量を考えるというのはなかなか合理的だと思っている。中国にはまだ電気も来ていないところに住んでいるような人もたくさんいて、暖房も不十分、移動も徒歩でしかしない、というような生活をしている。これらの人たちが我々のような生活を始めたら、エネルギー消費量は増えて当然である。

中国の人口は日本の10倍くらいある。しかしCO2排出量は日本の5倍程度である。人口比で言えば中国のほうが日本の半分の排出量ということができる。 一方、GDPは日本と中国では同じくらいだから中国のほうがGDP比で言えば日本の5倍くらい悪いわけである。アメリカは日本の2倍くらい悪いと言えるだろう。

生活が豊かになればある程度排出量が増えるのは仕方のないことである。アフリカのジャングルで暮らしているような人だって文明的生活をするようになれば排出量はある程度は増えるだろう。しかし、使えるエネルギーを手当たり次第に使ってしまえば排出量は大幅に増えてしまう。それをどう抑えるかが課題だろう。

日本としては中国のGDP比での排出量と言う考え方に乗る手はあったと思う。日本は中国に比べて現在では1/5だがそれでも努力を続ける。だから中国もいっそう努力をしてほしい、といえばもう少し落とし所が見えてきたのではないかという気がする。

結局、現在のところは日本がこの種の議論で主導権を取るなどとても無理で、アメリカと、ヨーロッパ、中国で話をつけてくれたのに対して「日本はこうやって対応する」くらいしか言えないのだろう。

さびしい話であるが・・


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