真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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善悪を逆さに見せるアメリカをとらえる

2024年03月16日 | 国際・政治
 2020年10月、当時の菅義偉首相は、日本学術会議の新会員候補六人の任命を拒否しました。その具体的理由を語らず、「総合的、俯瞰的な活動を確保する観点から判断した」とくり返しました。でも、総合的、俯瞰的観点で判断すれば、その任命拒否は誤りである、と私は思いました。
 そして、現在、日本の政府や自民党、主要メディアに一番欠けているのが、総合的、俯瞰的な視点で、世界情勢をとらえることだと思います。


 先日、朝日新聞に「ロシアの戦争観」と題する記事が掲載されました。ウクライナ戦争に関して、現代史家の大木毅氏とエストニア高裁防衛保障センター研究員の保坂三四郎氏に、話を聞いた記事でした(聞き手・中島鉄郎)。
 私は、その内容のみならず、見出しが、すでに総合的、俯瞰的視点を欠いていると思いました。「服従せぬ相手消し去る世界観」と「権力中枢に諜報機関 軍も監視」という見出しです。
 また、囲みで
目前に迫ったロシア大統領選での勝利も確実視され、「プーチンの戦争」は止まる気配がない。一般市民の虐殺や民間施設への空爆、兵士の生命を顧みないような前線投入など、冷酷さと異様さが際立つロシアの戦争スタイル。歴史観や権力構造から考えた
 とありました。
 ウクライナ戦争の経緯や、アメリカをはじめとしたNATO諸国の、ヤヌコビッチ政権転覆をはじめとしたウクライナの内政に対する関与は、無かったものとして論じられているからです。
 文中には、”プーチン政権は、この2年、第二次世界大戦で攻め込んだきたナチスドイツを撃退して勝利した「独ソ戦」(1941~45)に、よく言及しています”という聞き手の問いに、大木毅氏は、”今回の戦争はどう見てもウクライナ戦争への侵略戦争ですから、それを祖国防衛戦争に等値するという議論は荒唐無稽です”と答えています。また、今回も「世界観戦争」の要素はありますか。という問いには、”独ソ戦とは全く違います。ただ、ロシア軍によるブチャでの虐殺で組織的な準備が推測された時点で、その可能性を感じました。軍隊の突発的な残虐行為ではなく、ウクライナ『国民』を消滅させ、ロシア化に服さぬ『まつろわぬ民』は消し去るという、プーチン大統領の世界観が原点にあるのではないか、世界をどう認識し、どう在るべきかと考えているかと言えば、その重心は『ロシア化』『ロシア人』でしょう。”などと答えているのです。
 私は、客観的事実に立脚しない「妄想」のように思いました。
 選挙で選ばれたプーチン大統領を、あたかも、世襲の独裁的天皇や皇帝として見るかのような、「まつろわぬ民」などという古い言葉を使っているところにも、それがあらわれているように思いました。それは、ロシアの国民や軍に支えられた「特別軍事作戦」の考え方や実態を、隠そうとする意図があるからだろうと思いました。


 以前、取り上げましたが、報道(https://parstoday.ir/ja/news/iran) によると、イラン政府報道官・バハードリー・ジャフロミー氏が、「アメリカ は善悪を逆さに見せることにおいて先端を走っている」と語り、「アメリカが見せるやり口のうち、最も得意とする強力なもののひとつに、虚言がある。この国は、嘘を真実に、真実を嘘に見せかけるのである」というようなことを言っています。そして、「言動・行動の両方において善悪を逆さに見せることはアメリカのお家芸である」とし、「アメリカは、様々な時代において真実を実際とは間逆に見せて、直接・間接的に戦争の中心的存在となってきた」と述べたということです
 ふり返れば、捏造文書に基づく大量破壊兵器を根拠としたイラクに対する猛烈な爆撃をはじめとして、思い当たることがいろいろあるのです。
 また、「ブチャの虐殺」には、さまざまな疑惑が語られているにもかかわかず、そうした情報には見向きもせず、客観的事実として取り上げ、プーチン大統領の世界観と結びつけています。でも、「ブチャの虐殺」は、プーチン大統領を「悪魔のような独裁者」に仕立て上げ、ロシアを孤立化させ、弱体化させるために、アメリカとウクライナによって仕組まれた可能性がきわめて大きいのです。その根拠を、kla.tv(https://www.kla.tv)などが、いろいろ指摘していることを見逃してはならないと思います。

 さらに、現在、パレスチナのガザで、爆撃や攻撃を続けるイスラエルを支援するアメリカは再び、善悪を逆様に見せる取り組みを展開していると私は思います。
 安保理のガザ停戦決議に拒否権を発動しておきながら、アメリカは、援助物資を空中投下したり、海路を通じて搬入をしたりして、あたかも人道国家のような姿勢を見せています。でも、ICJの判断を尊重し、残虐犯罪の拡大を防ぎ、犯罪的な爆撃や攻撃を終わらせることが何より大事であり、また、国際組織による人道援助の安全な輸送を妨げるイスラエルの搬入制限を解除することが求められているのだと思います。
 ガザ地区の支援を担っているUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関に対する資金援助の停止を続けながら、援助物資を空中投下したり、海路を通じて搬入をしたりしていることも、善悪を逆様に見せるためなのではないかと思います。
 本気で人道危機を回避しようとしているとは思えないのです。


 アメリカが「善悪を逆様に見せる国」であることは、日本人なら、日米安保条約日米地位協定の内容、そして、米軍の実態を検証すればわかると思います。アメリカは日本の主権を侵害し、基地周辺の住民の人権を無視し続けているのです。
 相次ぐ事故の深刻な疑念が残されているにもかかわらず、オスプレイの飛行再開が強行されるようです。

 だから、そうしたことも含めて、総合的、俯瞰的に世界情勢をとらえることが大事だと思うのです。
 下記は、「日米地位協定逐条批判」地位協定研究会著(新日本出版社)から、日本の航空管制が、米軍優先であることに関する部分を抜萃しました。

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             4 米軍の優先使用、協力を義務化
                 ──第六~八条 十条、二十一~二十三条


           一 安保の目的達成に従属する航空管制業務
 空の大量交通手段となっている飛行機の安全な運行は、ひとたび事故が発生すれば、一度に何百人の命が失われかねないだけに、きわめて重要な問題となっている。航空交通を管理する管制機関は、その安全を確保するうえで決定的な位置をしめている。
 最近、沖縄・普天間基地の米ヘリコプター部隊の嘉手納基地移転が問題になったが、米軍は、ヘリコプターと戦闘機という二つの異なった種類の航空管制を同時におこなうは複雑でむずしいとのべ、難色を示したことがあった。航空機の安全な運行にとって、航空管制がいかに重要な位置をしめているかを示す事実である。
 航空管制は、国内の民間機に対してのみおこなわれるのではない。自衛隊機の場合も、米軍機の場合も、この航空管制のもとに統一的に管理されなければならない。そうでなければ空の交通は大混乱におちいらざるをえない。
 軍用と民間の航空交通管理をおこなう場合、民間機優先れなければならないことはいうまでもない。現に戦闘行為がおきているような場合ならともかく、通常はどの国でも民間優先であり、もちろん管制権は自国が掌握している。領土主権とともに空の主権は、一国の安全にとって欠くことができないからである。
 しかし、日本では、この管制権の重要な一部が米軍に握られている。日本の航空機が、自国の飛行場への離着陸のさい、外国の管制に従わなければならない、ということほど異常なことはない。日本の航空交通管制は、普通の主権国家にはない、世界でもまれな従属的な状態におかれているのである。それを取り決めているのが地位協定の第六条である。
 地位協定第六条一項は、航空交通管制および通信体系を、安保条約の目的達成に「整合」させることを、次のように確認している。
 「すべての非軍用および軍用の航空交通管理及び通信の体系は、緊密に協調して発達を図るものとし、かつ、集団安全保障の利益を達成するため必要な程度に整合するものとする。この協調及び整合を図るための必要な手続き及びそれに対するその後の変更は、両政府の当局間の取極めによって定める」


  1  航空管制の最優先権を米軍に与える
 飛行機の航空管制は、離陸する飛行機を管制する飛行場管制をへて、空港と空港を結ぶターミナル区域での進入管制を通って空路に出て空路管制を受け、目的空港の進入管制をへて。着陸地の飛行場管制にしたうことになっている。我が国における航空交通管制は、地位協定の規定にもとづいて、本土では、1959年まで、沖縄では復帰二年後まで、米軍が一元的に実施してきた。現在でも、米軍基地がある東京、沖縄などの飛行場とその周辺における飛行場管制と進入管制は、米軍が支配している。
  新安保条約・地位協定が締結される以前の59年までの航空管制は、日米合同委員会の合意によれば、「日本側による実施が可能となるまでの間、米軍が軍の施設で行う管制業務を利用して民間航空機の安全を確保する」とされ、復帰後二年間の沖縄については、「二年間は暫定的に米国政府が。ICAO (国際民間航空機関)基準に準拠した方式により、航空交通管制業務を実施する」となっていた。日米地位協定の締結によって、こうした米軍の全土に及ぶ一元的管理がなくなったが。米軍基地及びその周辺の飛行場管制と進入管制がひきつづき米軍によっておこわれているのも、同趣旨の合意があるからである。
 しかも、防空任務に従事する米軍軍用機にたいしては、航空管制上、最優先券をあえる旨も日米政府間で合意されている。(61年3月、日米合同委員会合意要旨第二項)。また、防空上、緊急の必要があるときは、日米の防空担当機関が「安保管制」をおなこう旨の合意がされている(同四項)。「安保管制」とは、軍事的必要時には民間機の航行を制限する管制といわれている。防空担当機関とは、アメリカ側は第五空軍、日本側は防衛庁長官をさすとされている(外務省秘密文書「日米地位協定の考え方」外務省条約局・アメリカ局編)。
 さらに米軍の要求にもとづき、民間・軍を問わず、すべての航空機の航行に米軍機の軍事行動を優先させる区域制限を、アメリカの管制本部におこなわせる、という合意が存在している(59年6月4日、第三付属書第三部J)。これによって米軍は、いわゆる「アルトラブ」という、特定の飛行区域を米軍機以外の他の航空機が飛行しないよう隔離する管制上の措置、空域の「一時的留保」の措置をとることができる。そのうえ、日米両国政府の合意によって、米軍が日本の国土の側図飛行を自由におこなうことができるものとされ、また、第三国の航空機の日本領空への飛来を許可するときは、日本政府は当該航空機の経路、空港、時期を含めて在日米軍と相互に意見の一致をはかることなども取り決められている。日本の主権を自ら制限するような内容の合意を行っているのである。
 72年5月の沖縄復帰にともない、日米合同委員会は「航空交通管制に関する合意」をおこなったが、従来の米軍管制空域を追認する内容でしかなかった。
 航空管制業務を米軍に求める根拠は国内法令ではない。地位協定第六条の規定による両国政府の合意によってのみ航空管制はおこなわれているのである。
 以下、具体的事実の紹介によって、航空管制および民間航空の安全に、どのような問題が生じているかみてみたい。


  2 関東空域を複雑にする米軍横田空域の存在
 横田エリアは、横田米空軍基地の進入管制空域で、横田基地を基点とする東京、神奈川、静岡、山梨、長野、新潟などの各県をまたがった高度2万3000フィートに達する米軍管制空域である。同エリアを航行する民間機は、北陸、中国、九州方面行のもので、羽田空港から出発する241機のうち106機(44%)にのぼる。これらの機は、米軍横田管制の許可がなければ「横田エリア」を飛行することはできない。許可されないときは、羽田上空での空中待機や地上待機を余儀なくされる。
・・・
 関東地域の区域がこのように複雑で危険なものになっている最大の原因は、横田空域のためである。横田空域は、戦後50年を経過した今日でも、安保条約・地位協定によって米軍に管理されたままとなっている。羽田空港や成田空域は相も変わらず、横田空域の高くて厚い「西の壁」にはばまれ、ぎゅうぎゅう詰めの状態で放置されているというのに、西側は米軍区域として優先的に米軍用に保護され、米軍は広い空気をゆったりと使っている。しかも、この空域を通過する全交通量のうち民間機は7割を締めるのに、区域内にある横田基地などへの離着陸機はたった3割にすぎない。
・・・
 こうした状態のため、関東上空の幹線航空路は、北海道方面と中国・北九州方面については、ニqミスや空中衝突の危険性を軽減するため、航空機の対面交通を避け、一方交通方式を採用している。しかし、四国・南九州方面、沖縄方面に向かう航空機は一方交通方式が取れず。やむなく高度差による対面交通方式を採用している。横田空域が返還され、羽田空域が広がれば、四国・南九州・沖縄方面に向かう航空路も、一方交通方式とすることが可能となる。 航空交通の安全性の確保に多大な寄与となる。
・・・
  3 米軍が管制業務を掌握している岩国と嘉手納
 同様に、米軍が進入管制業務を行っている岩国、嘉手納についても深刻な問題が生じている。岩国では、米軍海兵航空隊の管制空域が四国南部から山陰の日本海沿岸まで広がっており、この広大な岩国空域に広島、高松、松山の各空域が圧迫されている。松山空港から五マイルまでは運省省が管制するが、その外側は米海兵隊が管制している。広島空港も離着陸許可を米軍から得ている状態である。
 嘉手納では、嘉手納進入管制(カデナ・ラプコン=Radio aprorch contorpll)空域との関係で多くの問題を抱えている。カデナ・ラプコンとは、嘉手納基地を中心に半径50マイル高度2万フィートの米軍管制区空域である。那覇空港への進入管制は米軍に独占されている為、航空法で空港の飛行管制のおよぶ範囲は、半径9kmの円内の高度900m以下と決められているにもかかわらず、平面で半径1km、高度で300mも狭められている。
 那覇空港の北向き着陸コースは、嘉手納、普天間の両米軍基地への侵入コースと斜めに交差するため、進入・出発とも約27kmという長いああいだ、ジャンボ機も含め、わずか高度300mという、文字どうり海面すれすれをはうような低空飛行を強いられている。これについて飛行パイロットは、ジェット機の飛び方の原理に反する低空飛行であると指摘している。
・・・
 沖縄周辺には、そのほかにも、「W(ウォーニHグ)エリア」と呼ばれる米軍専用制限空域が16カ所設定されている。総面積は9万2000㎢で、沖縄本島の76倍にもなる広大さである。これは本土復帰前に、設定されたものがそのまま残ったものである。この空域では、空対空、空対地などの実弾射撃訓練や各種戦闘訓練が実施され、一般民間機は、この空域を避けて航行することを余儀なくされている。総工費10億円をかけて1500mの滑走路を整備した伊江島空港は75年に完成したが、完成直後から制限空域「W1ー178」があるため、事実上廃校に追い込まれている。
 また、沖縄では、Wエリアと別に、米軍の要請で空域を「一時保留」する。「アルトラブ」が設定されている。このアラトラブは、航空路地図にも出てこない。米軍の一方的な要請で任意に設定される空域は年間1000件にものぼっている。
 全運輸沖縄航空支部の座間味優委員長は、「Wエリアやアルトラブで空域せばめられているため、民間機を針の目をかいくぐるかのように飛行させている。一日も早くWエリアやアルトラブをなくし、軍事優先をあらためさせなければ、空の安全を守れない」と訴えている。


  4 外国軍隊が民間機を管制している例はあるか
 このように、外国軍隊によって、自国の空が支配されている状態について、運輸省OBや著名な航空評論家は、われわれの質問にたいして、「発展途上国についてはすべて情報があるというわけではないが、他国の軍隊が民間航空機の航空管制をしている話は、欧米では聞いたことがない。その国の軍隊が民間航空機の航空管制をしているところはたとえば韓国などがある。ヨーロッパでも、2万5千フィート以上の上空についてはユーロコントロールとよばれており、一部に軍も入った組織が航空管制をしている可能性はある。しかし、外国軍隊が航空管制しているとは聞いたことはない」と述べている。
 ・・・
 地位協定からも逸脱して展開されている日本各地での米軍機による超低空飛行訓練に見られるように、空の安全のために制定されたはずの航空法は、安保条約と日米地位協定に基づく航空法特例法によって、この肝心の部分が米軍に適用されていない。しかも、日米合同委員会の合意に基づいて、日本の空の管制が米軍に一部委ねられていることによって、日本の航空の安全が脅かされている。
 まず、地位協定の規定をも逸脱している米軍機による超低空飛行訓練は、ただちにその中止を求めるべきである。さらに、少なくとも航空法特例法によって、日本の航空法を米軍に幅広く適用除外している規定を廃止し、米軍による進入管制の廃止、沖縄周辺の空については占領時代をそのまま継続するような取り扱いの是正、この三点の是正が最小限必要である。



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