前期最後の業務として、教職を取っている学生に課せられる「介護体験」の巡回に出た(今年度は教職課程の委員を担当したので、この仕事が回ってきた)。
従来、教職(教員免許)課程の実習は、学校現場での教育実習のみであったが、それに加えて、学校教育とは無縁の高齢者や障害者に対する介護体験の実習も必須となった。
そうなると、学生を派遣する側の大学において、実習先の巡回(指導)も学校だけでなく介護施設も加わる。
教育実習は、教員を目指す学生にとって本業につながる実習なので、その意義は実感するが、介護実習は、本業につながらない、いわば単位を取るためだけの実習となり、そのため実習生を受け入れる施設側にとっても受け入れる意義が見出されず、やる気のない素人を数日間だけ仕事に就かせなければならない、余分な作業となる可能性がある。
そんな心配の中、自分が巡回を担当した施設に、事前に訪問の予約を入れ(それが今日になった)、大学が用意した手土産を持って、暑い中上着を羽織って訪問した。
そこでの実習はデイサービスに来るお年寄りの世話で、尤も福祉免許ではなく教員免許の一貫なので、本格的な介護の補助ではなく、お年寄りとコミュニケーションをとるレベル。
その様子を見ていると、実習生は、退屈そうにしている車椅子のお年寄りのテーブルに率先して近づいて、身を屈めて膝をついて、お年寄りと目線を合わせて、笑顔で会話をしている。
相手と目線の高さを合わせることは、施設側が初日に指導したという。
後は自発的に実習生が話しかけて廻っている。
ここに通い慣れたお年寄りにとっても、若い実習生との会話が新鮮なようだ。
その姿を見て、これからの教師に必要な実習であることを痛感した。
今までの学校教師は、生徒に対して、上から目線で、管理者・権力者になっていた。
個々に様々な問題を抱えている生徒に対して、それを無視して、強圧的に指導してきた。
それによってどれほどの生徒が、教師に傷つけられてきたことだろう。
これからの教師は、生徒をケアする三人目の親となるべきなのだ。
しかも自発的な愛情に頼るのではなく、プロとしての職業意識・技術に基づいて。
そのための貴重な体験ができるこの実習の意義を痛感し、笑顔で率先してお年寄りに接している実習生を見て喜ばしくなり、この実習の機会を与えてくれた施設に改めて感謝の念を持った。
初めての介護施設の巡回なので、かように私にとっても新鮮だった。