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山根一郎の極私的近況・雑感です。職場と実家以外はたいていソロ活です。

『現代オカルトの根源』が私の必読書である理由

2019年06月22日 | 作品・作家評

自分の心理学探究において、スピリチュアルの方向を解禁し、トランスパーソナル心理学に接近している(≠入り込む)今、
その方角で口を開けている暗黒面に落ちないために、読んでおこうと思ったのが、
大田俊寛著 『現代オカルトの根源—霊的進化論の光と闇』 2013年 筑摩書房 

著者は宗教学者で、グノーシス主義(キリスト教の”異端”とされた)が専門なので、オカルトが専門ではないというが、
現代オカルトが共通する問題点を客観的視点で論じている。

まずオカルトとは「この世は不可視の存在によって支配されている」という発想をさす。
そもそも人間を動かしている”心”は不可視だし、霊魂も神も不可視だ。

そして著者のいう「現代オカルト」とは、霊的進化論(人間の霊のステージが上る)をベース理論とする空想的言説で、
有名どころではルドルフ・シュタイナーやエドガー・ケイシー、それにUFOで有名なジョージ・アダムスキーなどが名を連ねる
(そして「オウム真理教」や「幸福の科学」に至る)。
実際、私が読もうとする本をアマゾンで検索すると、これらの人の著作が一緒に紹介される。
私が積極的に読んでいる本山博氏も現代オカルトの系譜に連ねられていた(私は氏の科学的態度に一目おいているのだが)。

彼らの言説が、古代宗教(古代に創作された物語)と異なるのは、宇宙人(金星人!)などが登場し、人類史を数億年単位に拡張するSF(空想科学)的要素が入っていること。
また発祥はヨーロッパ、そしてアメリカながら、インドのヨーガやチベットのラマ教が共通ベースになっている点も特徴的か。 

著者は、霊的進化論が単純な二元論思考(精神と物質、善と悪)に基づいていることを指摘する。
そしてこの二元論が、悪が暗躍する「陰謀論」と善と悪の最終戦争という「終末論」へと導くことを、同工異曲のあちこちのオカルト言説から示す。
これを私の「心の多重過程モデル」〔既存の二重過程モデルを包含)で表現すれば、心のサブシステムの1つであるシステム2(運用論理)のバイアス(=二元論的思考)にもとずく、自己正当化のための脱現実的空想化である。
素材は多彩でも、構造はシンプルなおとぎ話。
だからこそ、多くの人が受容してしまうわけだが。
そういえば、映画「スター・ウォーズ」の物語世界(これも二元論的)をあえて”宗教”として信じようとする人たちがいるらしい。
言い換えれば、多くの人が信じている宗教的神話も、実は作者不明のSF的創作話に等しいことを意味している。  

言語論理に拘束されるシステム2は、空想的理論(空論)でもかまわず現実を解釈しようとし、辻褄さえ合えば、証拠も再現性も無視して信じてしまう。
このシステム2の限界(欠点)を乗り越えようとする方向、すなわちシステム3以降を志向することが本来進むべき方向といえるのだが(私がスピリチュアルを志向するのもそのため)、
その方向での解釈図式(論理)がシステム2の空想で成り立ってしまうというパラドックスこそ、”教祖様”や導師(グル)を含む多くの人が陥っている暗黒面なのである(このあたりの心理学的説明は別の機会で)。

この本はその暗黒面(闇)を詳しく紹介しているので、私と同じくスピリチュアル方向に関心がある人は、オカルト面に陥らないために読んでおくとよい。
代わりに、(すでに数冊持っている)シュタイナーやアダムスキーはまじめに読む必要はないことがわかった。

また、暗黒目に陥った事例研究として、著者の『オウム真理教の精神史』 も読んでみたい。→んだ



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