このブログにおける私は、主として”温泉好きな計測オタク”というスタンスだが、研究者としての本業は第一が心理学で、第二が「作法学」である。
心理学者としては、対人関係における心理的距離という心理現象を追求し続けていて、心理学の底を破って現象学的・存在論的な視点になっている。これがライフワーク。
作法学とは、作法を従来の歴史民俗学的視点ではなく(その視点だと作法は「故実儀礼」という扱い)、作法という構造体を学問的に分析する私が作った分野で、方法論もほとんど確立している。
作法の教育実践だけでなく、学問的分析もやっているのだ(たぶん唯一人)。
今年度は、久しぶりにこの2本柱の論文が出そろった。
心理的距離の方は「心理的距離尺度の両端」というタイトル。
心理的距離を測定するには尺度が必要なのだが、その尺度化する場合の両端になりうる「自分自身」と「アカの他人」の距離価を問題にしている(すなわち前者は0で後者は∞なのか)。
この論文は尺度化に向けた途上である。
作法学の方は、「小笠原流礼書による作法体分析」というタイトル。
これは小笠原流礼法の歴史的礼書である『三議一統』と私が中世文学専門の同僚と共同で翻刻したその改訂版といえる礼書から、小笠原流礼法が内蔵している価値観を抽出したもので、これは礼法に関心がある人にはぜひ読んでほしい。
ともに私のサイト「山根一郎の世界」の「研究の世界」内の「最近の学術論文」からpdfで全文ダウンロードできる。
片や心理学的問題の現象学的理論構成、片や自分独自に構成した研究法による分析で、ともに私以外の人にとっては馴染みにくいと思う。
ただ、心理的距離は誰でも体験していることだし、礼法もわれわれの日常動作の事だから、対象としている世界はなじみがあるので、特有の術語を我慢してもらえれば、理解してもらえると思う。