私は大学生の時分に、不眠解消のために寝酒を始めて以来、健康診断の前日以外すなわち1年のうち364日毎晩酒を飲み続けて今日に至っている。
飲酒を20年続けるとアルコール依存※になると聞いたことがある。
※アルコール中毒は毒素による身体症状(急性、慢性)であって、世間でいう「アル中」は正しくはアルコール依存を指す。
それが事実なら、私はとっくにそうなっていいわけだが、依存という不適応状態にはまったく陥っていない。
「依存」とはそれに過度に執着するため、日常生活(行動、身体)に支障をきたす不適応のこと。
不適応でなければ単なる「常用」で、依存ではない。
たとえば毎日摂取していても「みそ汁依存」とか「牛乳依存」にはならないのは、それらの常用が不適応をもたらさないから。
ではアルコールに関して常用と依存を分ける行動の境目は何か。
常用で済むのは、晩酌や寝酒のように決った状況で摂取し、それを外れて無節操に摂取しない場合。
そして一定のいい気分になれば満足し、酩酊に至らない。
すなわち頻度も量も制御できる。
これがポイントだ。
アルコール依存になる人は、この制御ができない。
だから過去に依存になった人は、再び酒を摂取することは危険このうえない。
アルコール依存から脱するには、断酒しかない。
私がアルコール依存にならない理由はここにある。
すなわち、アルコール依存になってしまうと、酒が飲めなくなる
酒好きにとってこれほどつらいことはない。
酒がまったく飲めなくなるくらいなら、喜んで日頃の酒量を制御する。
だから真の酒好きは、一生酒を飲んでいたいので、絶対に依存にならない。
酒を楽しむのではなく、ただ酩酊状態になりたい人、薬物依存と同じ状態になりたい人がアルコールに依存する。
一方、酒好きは決して酒量は増えないし酩酊もしない。
酩酊したら酒が味わえなくなるからだ。
酒を飲む時の至福感は純粋に味覚にある。
あの最初の一杯の至福に感動すれば満足する。
その旨さ(至福)を味わえなくなったらもう飲む気は失せ、自然に(強い意志も必要とせず)盃を置く。
酒好きが”酔う”のは味に酔うのであって、アルコールによる酩酊ではない。
アルコールを嗜む人が依存にならないためには
飲物としての酒を大好きになればいい。