今日こんなことが

山根一郎の極私的近況・雑感です。職場と実家以外はたいていソロ活です。

自治体を非難する前に:マスコミのできること

2015年09月14日 | 防災・安全

鬼怒川堤防決壊被害について、

決壊した近隣地域への避難指示が遅れたことに、マスコミ(テレビ局)から市長へ厳しい指弾が映される。

被災者はどう思っているか知らないが、第三者の一人としては、マスコミの正義感ヅラが鼻についた。

別に自治体の対応に問題がないと言うわけではない(むしろ、たいてい問題がある)。
ただ以下に述べるように、自治体の対応には限界がある。
自治体に期待しすぎてはいけない。 

災害は思わぬ時、思わぬ所で発生する。
その現場に一番近く居るのが住民で、一方役所の職員は、自治体地域全体の防災対策を本部で検討しなくてはならない。

職員を危険想定可能な数箇所に分担配置する人的余裕はない。
情報源は気象庁から役所に不定期に届くFAXや住民からの通報で、本部にいてそれらに対応しなければならない。
そもそも防災課の職員といえども、災害対応の専門家ではなく(経験豊富なベテランでもない)、普通の公務員である。

そういうことが分っているから、私を含む防災に携わっている者は、住民による主体的な防災力の向上を訴えているのだ。

被害を受ける前に、危険を一番先に発見しやすいのは、そこに住んでいる住民だから

いつ起きるか分らない災害に対する、自治体による住民への防災力に完璧を求めるなら、
人件費や設備投資のために住民税を大幅に上げないとかなわないのだが、それでいいのか。

自分の身は自分で守る(自助)力をつけよう。
その方が結果的に被害が軽く、しかも費用も安くすむ。 

そもそもマスコミは、事後に偉そうに自治体のミスを糾弾する以前に、報道機関としてもっとできることがあるはず。

台風の時、頼みもしないのに、風雨の強いところにわざわざ実況中継しに行く、
その行動力こそ、ほぼ確実に被害が発生する線状降水帯の時にも示してほしい。

自衛隊がヘリを使って命がけで救出している時、それを邪魔するように周囲を飛び回っている報道ヘリを出すくらいなら、
決壊のおそれがある河川域を上空から実況してほしかった(雨上がりの午前中なので可能※
)。
※ただし積乱雲直下はヘリでも危険。ダウンバーストが吹いたら地面にたたきつけられる。

しかもマスコミなら、防災専門家や気象予報士をいつでもスタジオにスタンバイできるので、
状況の専門的解説が可能(これが必要!)。 

気象災害に一番必要なのは、リアルタイムの実況情報である。
情報が人の命を救えるのだ。 

ただ、本当に必要な情報は現状ではネットでしか得られない→9/11の記事自主避難判断のために

お年寄りなどネットに不慣れな人はこれを使えないし、判断には熟練が必要だから、
もっと公的機関がこれらの情報を広報する必要がある。 

だが、限られた設備とマンパワーの役所では無理。
自治体が設置してある屋外の同報無線は、大雨時に何言っているのかわからない。
それなら、屋内のテレビでのアナウンスの方が聞きとりやすい(データ放送でも可)。
実況に慣れた報道機関こそ、積極的に情報配信に協力してほしい(地方局レベルでできるでしょ)。

災害大国日本では、住民も報道機関も全員が防災の当事者なのだ。