今日こんなことが

山根一郎の極私的近況・雑感です。職場と実家以外はたいていソロ活です。

竜巻の元・積乱雲に注意!

2012年05月06日 | 防災・安全
(自然災害の)防災というと”地震”災害だけが注目されがち。
被害の甚大さの点ではもっともな事だが、災害の頻度としてはどうだろう。
私としては、毎年死者が出ない年がない”気象”災害への注意をもっと促したい。
なにしろ、気象(大気現象)は地震と違って、実況も予測もともに可能だからだ。

日本を襲う気象災害、すなわち大雨(大雪)・強風・雷・降雹などは、ある1つの大気現象が原因である。
言い換えれば、干ばつ・霜害以外の気象災害は、たった一つの大気現象に注目していれば防御が可能だ。
その大気現象とは、タイトルで分かる通り、”積乱雲”。

積乱雲というと、雷がまず連想されるが、
台風も「ゲリラ豪雨」も竜巻もダウンバーストもみな積乱雲によるもの。
積乱雲とは”空の暴れん坊”なのだ。

積乱雲は、地上と上空(5000m以上)の温度差が大きいときに綿状の積雲からぐんぐん発達する。
しかも30分ほどで高さ10000mにも巨大化するので油断ならない。

といってもたった1つの積乱雲だけなら、夏の夕立程度でたいした被害にならない。
問題なのは、まずは積乱雲が群れの状態となった、マルチセル
「ゲリラ豪雨」は密集したマルチセルによるもので、それが更に大規模になったのが台風の雲。
寒冷前線のように積乱雲が一列に並んで押し寄せて来る場合もある。
中でも怖いのは、衛星画像で積乱雲の塊が先の尖った”ニンジン状”になって変化がない場合で、
これは積乱雲が同じ場所(ニンジンの先端部分)で次々に発生して、
強い雨がずっと止まないことを意味し、台風以外の豪雨災害はたいていこの雲の下で起きる。

あと、1つながらそれが巨大化したスーパーセルも怖い。
これはアメリカの大平原でトルネードを起こす巨大積乱雲で、
気象衛星から円形の白い雲として確認できる。
円形になるのは、全体が回転しているためと思われる。
今日、茨城のつくば周辺で暴れ回った竜巻も、VTRによると、竜巻の上が巨大な円形のスーパーセルになっていた
(6日13時の気象衛星画像で房総半島の北にある白い円がそれ)。

そしてそのスーパーセルを生んだのは、一昨日8人を遭難死させた上空の寒気
(これは高層天気図で確認できる)。

さて、積乱雲に対する防災の心得だが、
空を覆うような巨大な円形の積乱雲が接近してくるようであったら、
気象庁のサイトの気象衛星画像を確認しよう。
その画像で接近する積乱雲がスーパーセルらしきものだと思ったら、単なる夕立で収まらず、
落雷・降雹、そして竜巻やダウンバーストなどの激烈な突風に注意した方がいい。
また、強い雨にあって、衛星画像での積乱雲がニンジン状で動きがなければ、豪雨災害に対処した方がいい。

山の遭難と気象

2012年05月06日 | 山歩き

山の危険(それは死に直結)は、気象によって左右される。
だから気象予想の正確さと、万が一判断に失敗した場合の予備の装備が命にかかわる。
今年のGWは5日以降でないと登頂に適さないことがすでに予想されていた。

白馬で遭難したパーティは、偽りの青空にだまされたようだ。
温暖前線側ではなく、暖域を含めた寒冷前線側だと、
大気が不安定なため、つかぬまの青空がでることがある。
この青空は雲の切れ間にすぎず、その後猛烈に天気が悪化し、気温が低下する。
これは温帯低気圧が通過する時の通常のパターン。

どのくらい気温が低下するかは、日本アルプス級なら700hPaの高層天気図でわかる。
当時、0℃の寒気が日本に南下していた
(すなわち上空=山の上に寒気が入っていることが分かる)。

5月の晴天なら、日差しが強く、気温も高いので、高い山でも登山中は軽装になる。
一転して強風で気温が低下したら、急いで防風・防寒着を羽織ればいいのだが、
パーティだとリーダーの時宜を得た指示がないとその機会を失う
(個人的印象では、行動中の体温調整のための着替えをおっくうがるのは男性に多い)。
結果、寒気と強風の相乗作用で、体温が急激に低下し、
夏山(トムラウシ、富士)での低体温症による遭難と同じ状態になってしまった。
低体温症になると、行動力も判断力も喪失するので、山中ではいっそう死の危険が高まる。

今回の悪天は、地上天気図でも容易に予想できるもので、
実際に地上に対する天気予報でも悪天だったが、
山の天気は高層天気図の方が実際の風向・風速・気温の参考になる。
さらに地上天気図とは異なる気圧配置(寒冷渦など)も確認でき、
地上の気圧配置の先行現象として、地上の予想にも使われるほど利用価値が高い
(我がサイト「山根一郎の世界」内の「気象の世界」参照)。

山に行く人は、昔はラジオの気象通報を聞きながら自ら地上天気図を描く能力が要求されたが
(私が気象に興味をもったのはその経験から)、
情報通信と予報技術の発達で、今はそれはほとんど不要(週間天気図の範囲内なら)。
代りに必要なのは、高層天気図の読図力だ。
ただ、高層天気図の解説は気象予報士受験用ばかりで、登山者用のテキストがないのが残念。

「山を甘く見るな」、という言葉はいくら言い尽くしても足りない。
私自身も昨日、大平山を甘く見て、ウエアの選択を間違えたほど。
必要以上の装備をして無駄を感じた経験者は、
その後は最低限の装備を目指してしまうことにも注意したい。
もちろんどう考えても3000m級の山に防風・防寒着は必携だが。