今日こんなことが

山根一郎の極私的近況・雑感です。職場と実家以外はたいていソロ活です。

つくば市の竜巻跡

2012年05月07日 | 防災・安全
月曜、つくば市の竜巻被害の跡を見に行った。
今回の竜巻は、気象庁によるとフジタ・スケールのF2(風速50-69m)だという。
アメリカのトルネードに較べると、子供のようなもんだが(竜巻映画の傑作「ツイスター」参照)、
日本では竜巻の痕跡すら肉眼で見る機会が滅多にない。
気象予報士としては、竜巻が通った痕跡がどのようなものかをじかに見たいし、
防災士としては、竜巻による家屋等の被害状況を確認したい。
というわけで、私個人のGW最終日の今日、ツクバエクスプレスに乗り、
懐かしの筑波学園都市に向かった。

つくば駅を出て、被害地の北条方面を通る巡回バスを待つが、予定時刻になっても一向に来ない。
30分以上遅れて来た(被災地方面は通行制限があってダイヤがめちゃくちゃなのだと)。
バスは我が母校の大学脇を通り過ぎ、避難所になっている「つくば窓口センター」で降りる。

目の前の国道125号線に出ると、車が渋滞しており、道脇の電線には、
大きなビニールやトタンがぶら下がったまま。
道路脇には無残に壊れた民家(死者が出た)や店舗。
その奥に直撃を受けた北条の集落が続く。

まずは、竜巻の進路を探るべく、南西(風上)側の田んぼに向かう。
道脇の電柱の傾いた方向が竜巻の通った側。
さらに、稲穂や背の高かった草がいっせいに倒れている方向も同様。
それらの倒れた方向の交点が竜巻の通った跡だとわかる。

田んぼの脇道に入ると、電柱が軒並み同じ方向に根こそぎになって倒れている。
その倒れた先には、人が大勢住む雇用促進住宅がある。

道路を渡って雇用促進住宅に行く(ここには福島からの被災者が住んでいるという)。
そこには報道陣の車がずらりと停まって、報道関係者も集っている。
鉄筋5階建ての雇用促進住宅は、竜巻のほぼ進路上にあったようだ。
ベランダに面した大きなガラスはことごく割れ、室内もめちゃくちゃになっているのが外からよく見える。
また進路上の木造の家は、土台を残して壊滅(写真)。
車も宙を舞ったのだろう、窓ガラスは粉々で、ボディもひしゃげている。
まるで、東北の津波跡の風景。
津波と違って単なる空気にすぎないのに、この破壊力に唖然とする。

さらに進路に沿って進むと、桜の木が根こそぎ倒れた元・並木があり、
その奥に、一面泥をかぶったような色になっている木造の集落がある。
コンクリートの太い電柱が根本から折れ、民家を直撃している。
屋根が吹き飛んだ家、一階の出入り口のガラスがなくなり、看板も骨組みだけになった店舗がある。

私と同様、カメラをもった人(報道、防災研究、警察・消防、そしてやじ馬)でごった返す中、
当の被災した住民たちは、かいがいしくも室内の瓦礫と化した家具などを家族総出で片づけている。
昨日までまったく平常な暮しが、一瞬にして多くの物を失う被災者になってしまったのだ。
そう考えると、他人事ではない。
竜巻はどこに発生してどこを通るか、誰にも分からない。
進路を防ぎようがなく、向かってきたら早めに急いで着の身着のまま逃げるしかない。
家も車もアウトなのだ
(「家の奥に隠れろ」というのは、最後の手段。
日本の木造家屋は全面倒壊する恐れがあり、現に今回の死者は家の中での圧死)。
火災でも地震でもないから保険はおりない(追記:火災保険でおりる場合が多い)。
自力で復旧するしかないのか
(被災による全壊の場合、国から最高300万円のお金がおりるので、0からの自力ではない。
だが必要な資金の1/10程度でしかない)。

この惨状を見にいっただけで終わらせるわけにはいかないなぁ。
義援金の送付先をまた1つ増やそう。
※なお、現地で撮影した写真はFacebookに載せている。