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『ローマ人の物語 ローマ世界の終焉』

2011年09月05日 | 世界史書籍
塩野七生『ローマ人の物語41~43 ローマ世界の終焉』(新潮文庫、2011年9月)

長らく続いてきた『ローマ人の物語』シリーズもいよいよ最終刊。今回はローマ帝国の東西分裂が決定的となった西暦395年から476年の西ローマ帝国滅亡を経て、一度はイタリア半島をローマの勢力下に取り戻した東ローマ帝国のユスティニアヌス大帝と、実際にイタリア経略に当たった軍人ベリサリウスの死までを扱っています。

教科書的には395年をもってローマ帝国の滅亡とされることが多いのですが、その年をもって急にローマ的なものが消え失せたわけではないので、本書では敢えてそこからずーっと引き延ばして、ローマを象徴する元老院や水道施設のようなインフラが破壊されるまでを範囲としているわけですね。

しかし西ローマ帝国、あるいはその後のオドアケルのイタリア王国や東ゴート王国統治下のイタリアは、どう見てもモヒカンがいたいけな村人から種籾を収奪しまくる『北斗の拳』の世界ですね。もちろんアラリックやアッティラ大王やテオドリックが世紀末覇者とか南斗六聖拳にあたるわけです(^^;) 洋の東西を問わず中世とくると、こうやってすぐに『北斗の拳』を連想するのは私の悪い癖ですが、いっそのこと開き直って中世=核の炎に包まれた後の世紀末説を強弁すべきなんでしょうか……

そして本書で印象に残ったのは西ローマ帝国が滅亡するさま。西ローマ帝国では初代のホノリウス帝及びそれに続くヴァレンティニアヌス3世が長い在位期間を保った後は、短期間で皇帝の首をすげ替えまくるという事態が発生し、それを見かねた東ローマ皇帝が2回ほど西ローマ皇帝を自国から派遣したりしますが、それもうまくいかず、最後の皇帝とされるロムルス・アウグストゥスがオドアケルによって退位させれられた後は皇帝のなり手がおらず、西ローマ帝国は何となく滅亡。その後はオドアケルが東ローマ皇帝の代理者としてイタリアを統治することになります。

「一国の最高権力者がしばしば変わるのは、痛みに耐えかねるあまりに寝床で身体の向きを始終変える病人に似ている」という著者のコメントに何だか胸が痛くなります(´・ω・`) 同じく頻繁に国のトップの首がすげ替えられつつも、まだ首相のなり手がいる日本はマシな状況なのかもしれません……

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2 コメント

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Unknown (かはさかな)
2011-09-06 00:37:04
おお、そろそろと思てましたが、この季節ですね!
でも、これでもう一応はお仕舞いですか。
でもなんか十字軍とか書いてるみたいですけど(^^; 
 
476年の西ローマ滅亡て、そんな感じですか。
劇的な死より、もっと恐ろしげな死に様に見えます。
死ぬことすらできん、というか
「老兵は死なず、ただ消えるのみ」という。

日本国も、死なんと消えていくとしたら哀れを誘います。
それはそれとして、みんなで中国にでもキカしますか。
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Unknown (さとうしん)
2011-09-06 18:22:07
>川魚さま
今回はこのほかに『ローマ人の物語 スペシャル・ガイドブック』も文庫化されてますよ!私はまだ買ってませんが(^^;)

ハードカバーの方では、シリーズ完結後に『ローマ亡き後の地中海世界』を上下巻で刊行し、現在は『十字軍物語』を刊行中です。来年はたぶん『ローマ亡き後の~』が文庫化されるんじゃないかなあと思います。
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