博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『ナポレオンのエジプト』

2011年12月04日 | 世界史書籍
ニナ・バーリー著、竹内和世訳『ナポレオンのエジプト 東方遠征に同行した科学者たちが遺したもの』(白揚社、2011年7月)

ナポレオンのエジプト遠征に随行したサヴァン(学者)たちの動向をまとめた本です。しかし当時の学者や学生たちは行き先も知らないまま(そう、エジプト遠征の行き先は兵士も含めて従軍した人々にすら知らされていなかったのです)よくナポレオンに着いて行く気になったなあと思いました。まあ、私も当時のフランスに生まれて学者になってたら、「何だかよく分からないけど乗るしかない、このビッグウェーブに!」とばかりに、ホイホイ着いて行ったんでしょうけど(^^;)

そして船に詰め込まれた実験・調査用具などの器具類は早々にイギリス海軍の攻撃によって海の藻屑となり、現地では病気や将兵たちの無理解・嘲弄に苦しめられ、本国フランスとの連絡の術が断たれてヨーロッパでの学問の進歩から取り残され、帰国する直前には自分達の収拾した標本やノートがイギリスの手に渡りそうになりと、様々な苦難に遭遇していきます。そして帰国してからも、エジプトでの調査や体験の精算を迫られ、エジプトでの日々を懐かしみつつもがき苦しむサヴァンたち。

彼らサヴァンたちにとってエジプト遠征とはどういうものであったのかを絵で表現すると、こういう具合になるんだろうなあと思うわけですが……



長谷川哲也『ナポレオン 覇道進撃』第1巻(少年画報社、2011年7月)、33頁より。ただしこれはサヴァンではなく、エジプト遠征に従軍した元兵士の心象風景を描いたものですが。

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2 コメント

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オリエントいろいろ (川魚)
2011-12-07 00:31:17
サイードの『オリエンタリズム』、
どうにも退屈で、
8割方読んだ辺りで放棄したのですが、
エジプト遠征については詳しく乗ってました。
大部な調査報告書など、
オリエンタリズム=東洋学の基礎ですね。

いまやってる故宮の展示の四庫全書や永楽大典を思い出したりもしました。
それいうなら、鄭和のなんたらがもっと当たるんでしょうが。

明清と革命前後のフランス、
近世と近代のはざまの学知として、
お~ざっぱに見たら、対応するところもあるんやないでしょうか。
いま故宮でも、図書文献大楼で
「康煕大帝と太陽王路易十四特展」てやってます。

こどものころえわたし(ら)は、西洋に遅れてる、とのコンプレックスが強かったと思うのですが、

宮崎一定や梅棹忠夫などの碩学は、早うから、
「そんなことはないんやで」と言うていました。

いま、実感覚として、わたしは前近代日本や中国の立場に立って、さほど西洋に対して屈辱を感じません。
最近の中国や日本の若者はもっと進んでるんでしょうかね?

はなしがあっちゃ跳びしてすみません、
明後日8日は、故宮之友の会員だけでの、
「康煕=ルイ14」展についての講演と鑑賞会です。
ただですが、食事はでません(笑
ケーキと珈琲くらいついてたら嬉しいんですが。

しあさっては、うちの院の事務室が、わたしの故宮免費参観証の発行を忘れて、すったもんだしましたが、やっと手に入りそうです。
去年は通知を受けなかったので、あるともしらず、自腹千台湾元切って、故宮之友カード買いましたしね。

さらに、12月中に、故宮ボランティアガイドの面接があります。
アジアのどっかの骨董屋にでも就職したいのですが、
箔が付くか、と思いまして。

またこっちゃ跳びしましたw
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Unknown (さとうしん)
2011-12-07 19:29:10
>川魚さま
サイードの『オリエンタリズム』、読もう読もうと思いつつ、実は読んでません(^^;) 

>最近の中国や日本の若者はもっと進んでるんでしょうかね?

日本の若者については、屈辱がどうこうと言う前に、そもそも外国に興味がないというのが実情ではないかと。欧米への留学生も減っているようですしね。

>うちの院の事務室が、わたしの故宮免費参観証の発行を忘れて

大学の方でそんないいものを発行してくれるんですか。何とも羨ましい…… ボランティアの面接の方も頑張って下さい!
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