博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『かなづかい入門』

2008年08月06日 | 日本史書籍
白石良夫『かなづかい入門 歴史的仮名遣VS現代仮名遣』(平凡社新書、2008年6月)

『かなづかい入門』とありますが、内容的には今なお現代仮名遣より歴史的仮名遣の方が優れていると主張する文化人たちへの批判がかなりの部分を占めているので、タイトルはむしろ主題と副題とが逆の方がしっくりくるような気がします。

本書では全国民の表記の規範としての歴史的仮名遣は歴史が意外と浅く、もともとが明治政府によって政策的につくられたもので、終戦の時点までで100年の歴史すら持っていなかったこと、しかも歴史的仮名遣や、漢字の音読みを示す字音仮名遣は使う側にとって複雑すぎてかなり無理のあるもので、既に明治20年前後に表音式仮名遣いを要求する世論がおこっていたことなどを指摘し、現代仮名遣を毛嫌いし、歴史的仮名遣を称揚する向きに対して批判をしています。

その批判の舌鋒はかなり熱く、私自身ももっともだと思う所が多いのですが、そこまで批判をしなくちゃいけないほど口うるさい歴史的仮名遣愛好家が今の日本にどの位いるものなのかと疑問に思ったり……

更に著者は終盤で古文を現代仮名遣で表記してもいいじゃないかと主張していますが、これは確かにその通りで、中国史の分野でもチョコチョコと漢文の書き下し文を現代仮名遣で表記している論文を見掛けますね。私自身は何となく歴史的仮名遣で表記していますが(^^;)

以下、それ以外で気になった点について。

○南北朝期(ママ)の『徒然草』には係り結びの法則が崩れている箇所があるが、教科書に掲載される際にそれを間違いと見なして正しい用法に修正される。
……ええっ、そうなの!?つーか、そういうことをしちゃっていいの?というのが正直なところ……

○著者は国語の教科書検定に従事してきたが、自分では確信を持っていても、教科書の執筆者が納得しない考え方を無理には押しつけられない。それが教科書検定のシステムであるという。
……教科書検定については、今まで検定する側の意見を一方通行で教科書会社や執筆者に押しつけているようなイメージがあるので、意外でした。
コメント (3)
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