博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『リプレイ』

2006年08月13日 | 小説
ケン・グリムウッド著・杉山高之訳『リプレイ』(新潮文庫、1990年7月)

ジェフ・ウィンストンは1988年現在43歳で、しがないラジオ局のニュース・ディレクターです。ある日心臓発作で突然死したと思ったらどういうわけか、1963年、まだ彼が18歳で大学生だった頃に時間が逆戻りしてしまいます。彼は前世の知識を生かしてギャンブルや株で大儲けし、セレブの仲間入りを果たしますが、前世と同じく1988年にやはり心臓発作で死んでしまい、再び1963年の世界に逆戻りしてしまいます。この「リプレイ」を繰り返しているうちに、彼は自分と同じリプレイヤーである女性、パメラと出会いますが……

以前『コミックバンチ』でこの小説の翻案『リプレイJ』を連載しており、それで原作のこちらの方も買ってみたのですが、長らく積ん読状態になっていて最近ようやっと読了したという次第です(^^;) 漫画の方は二回目のリプレイを果たした時点で連載終了となったのですが、本当はここからがミソだったんですね。 

個人的に印象に残ったのは、何回目かのリプレイで、主人公とヒロインのパメラが心ならずも合衆国の情報機関に前世での情報を提供することになった場面です。主人公がリビアのカダフィが危険人物になると発言すれば、早速カダフィが暗殺され、イランで革命が起こると言えば、革命が起こる前に合衆国がイランに派兵してしまいます。それでいて世界情勢が良くなるかと言えば、リビアではカダフィの残党がテロリスト集団を組織して合衆国内でテロを起こしまくったり、イラン革命に連動したりと一層情勢が悪化し、合衆国は戒厳令下に置かれることになります。

このあたりの描写がまるで9・11以後の世界情勢を予言しているようで、作者の洞察力に驚かざるを得ません。この作品が書かれた頃はまだ湾岸戦争も起こっていなかったのですが……
コメント
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