・芥川賞作家:周回遅れだが最近露出が激しい羽田氏の作品を読んでみた。立ち読みの段階で、これはないなあと思う文体だったが、\1200という我慢できる価格だったので受賞作「スクラップアンドビルド」を購入して読む。飛ぶような勢いで読み進めて読了まで1時間かからなかった。近年でもっとも楽に読めたかもしれない。繰り返すが文体はプロ作家とは思えない稚拙なレベル・・いや最近の「プロ作家」はそんなものかもしれないが。いわゆる文豪作品を読む人には耐えられないレベルだろう。オタクな文学青年が豊富な知識や比喩を駆使して書いた作品とは正反対といえる。石原閣下がやめたから文芸春秋の速報を止めたのだが、近年の芥川賞ってこんなものかと正直思った。じゃあ内容はというと、介護と現代若者の行き詰まりみたいなものを絡めているように読めるが、実際のところ介護はどうでもよくて若者のほうが主軸の話だろう。死にたいを連発する祖父と過剰介護で安楽死を誘おうという主人公。主人公は筋トレが趣味で中途採用面接を繰り返す社会不適応の28歳。セックスフレンドのような彼女がいるが、捨てられそうになるとうろたえる。筋トレで自己をホルモン的に高めることに陶酔しているものの、実生活の足場は全く頼りないという典型的な現代的な若者。祖父の弱りは自作自演であるが、祖父は祖父なりにこの頼りない孫に自分の介護という仕事を与えて鼓舞していたというオチになるのだろうか(文章内では明確でないが)。読み始めたときから、「このじいさん絶対元気なんだろうな」と思っていたから予想通りすぎる種明かしは多少ずっこけた。あと不自然な会話言葉が説明くさすぎる。人の会話がト書きのようだ。主人公の名前「健斗」はスーパーマンのクラーク・ケントから来ているのか?筆者自身、筋トレが趣味なようだが(かなりのナルシストのようだ)、生化学的な用語は少々誤りがあるように思う。まあそのいい加減な知識を熱心に信じて筋トレに励む主人公の滑稽さを表しているのなら正解だが。作者は作品ごとにテーマを変えているようで前回はSMが主題だったらしい。若いから色々と方向性を試しているのか、もしくは即物的に売れる内容を模索しているのか。とりあえず今回の作品はわが狭小の家の本棚に並べておく価値はないと思ったので即日で売り払った。定価の四割減で売れた。図書館は200人待ちなので、500円くらいで読めたのなら十分だったろう。