無意識日記
宇多田光 word:i_
 



さてその『Automatic (2024 Mix)』のサウンドについて語ろうと思うのだが……これさ、もしかしてさ、一音も変えてなくないか? え? そんなことある?

うん、そりゃね、最初の出音から「随分変わったな!」と思ったよ。そりゃ間違いないよ。全然別のミックスになってる。まさに今の、2024年のミックスに。だけど、それは各音の「混ぜ方」(ミックスの仕方だね)の違いでしかなく、それぞれの音自体はオリジナルのものから一音も足しても引いてもいないのかも…あ、フェイドアウトの手前で閉じちゃうエンディングは別として、だけどもね。

さっきからさ、2024 Mixを聴いて「あ、ここのギターフレーズ、オリジナルには入ってないでしょ!そうでしょ?」と意気揚々とオリジナルのトラックを聴きに行っては「うわぁ、入ってたわ…気づいてなかったわこんな隅っこの小さい音…」ってなるのを繰り返してます。まだ途中だけど、いずれもちゃんと1998年のオリジナル・トラックにすでに存在していたフレーズでした。

『Automatic (2024 Mix)』は、一聴してまず、リズムセクションの感触が全然違うよね。別モノと言っていい。特にキック(バスドラ)の音色が、ごっそり低音を削って軽くなっている。オリジナルが「ドン!ドン!」なら2024Mixは「タン、タン」或いは「パタパタ」くらいか? その分空いた低音域に、オリジナルより遥かに豊かに響くベースラインが鎮座している。音像の印象の違いの主原因はひとえにそこらへんにあるのだけど…いざそれぞれのフレーズ毎にオリジナルと聴き比べてみても、あれ?やっぱどっちも同じか!?ってなるのよ。オリジナルはキックが強過ぎて、ベースとユニゾンした時に音程からまるごと覆い隠す勢いなもんでこの曲に関しては正確なベースラインが今でも把握できてないのだけど、取り敢えず途中まで聴いたとこまでは、同じかどうかもまた確信を持てないけれど、一方でまだ「確実にここは違う!」と言えるポイントも見出せていない。

更にヴォーカルに至っては、まさかの本当にそのまんまなんかこれ!? 『First Love (2022 Mix)』ではオリジナルにないアドリブをちらっと差し挟んだりしてたのに(ギターも足してたな)、この『Automatic (2024 Mix)』は………? いや、でも「聴いた印象」はやっぱり違うのよ。少し奥ゆかしくて、ふんわりと優しくなって聞こえる…。

もうね、ここまで来ると「不思議」だわ。何も考えずに鳴らすと「あぁ、全然違うねぇ、変わったねぇ」と思えるのに、ひとつひとつのパート・楽器・バックコーラスを追ってみると何も違わない。ふむなるほどこれがリミックスのマジックというやつか…と白旗を上げたくなっている。

スティーヴ・フィッツモーリスをはじめとして今回のリミックスに関わった方々、もしかしたら「出来るだけオリジナルのトラックをそのまま残して、しかし、リスナーにはちゃんとリミックスの新鮮さを感じて貰う。」っていうかなり高度な縛りプレイに挑んだんじゃないの今回!? 万が一総ての2024 Mixがそうだとしたらとんでもなく凄いよ…。

なので、こう言う事もできるな…当時のミックスに於いて「1998年当時の流行に基づいた」サウンドだった部分は捨象し、代わりに「2024年現時点でモダンに思える」サウンドに作り替えたというか。なので、リミックスの名称が、今までのPLANITbやら何やらみたいな個性的なネーミングではなく、シンプルに年号のみなのは、「何も変えてないよ?ただ、今の空気に馴染むようにしただけさ?」ということを言いたいのかもしれない。

これ、きっと、リミックスに携わった皆さん、2024 Mixを聴いた人たちが「ヴォーカルが新しく録音されてるね」とか「ギターが沢山加えられたね」とか感想を述べてるのをみてガッツポーズしてんじゃないですかね!? これだけ言わせておいて実は一音も足し引きしてなかったら、それは純粋なリミックスの成果ということだから。

あー悔しい、もっとちゃんと聴いて「オリジナルには本当にない音」を見つけ出してやりたいぜ。まだ全然途中なんで、きっとどこかに見つかるはず! …ってこういう風に力んでる時点で、やっぱり完全に向こうの思う壺なのかな!?

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