無意識日記
宇多田光 word:i_
 



『Electricity』の歌詞でまず聞こえてくるのは

『Electricity between us』

の一節だ。私の聞き取りが合っていたとして、だけど。

「私たちの間の電気」。冬場なら「静電気?」と訊きたくなるがもう春なので別の意味を問おう。前回も引用したヒカルのコメントをもう一度みてみよう。

『私が自分の中から、人から、宇宙と地球から感じる不可視なエネルギーや波動とその不思議で強力な結びつきを表現しました。』

これをGoogle先生に翻訳してもらうとこうなる。

─ I expressed the invisible energy and vibrations that I feel from within myself, from other people, from the universe and the earth, and the mysterious and powerful connections between them.

うむ、よく出来てるな〜。最近ますます翻訳の精度が上がってるね。最後の一節を取り出そう。

"the mysterious and powerful connections between them."

これがそのまま聞こえてくる歌詞

『Electricity between us』

と対応しているとすると、

Electricity = the mysterious and powerful connections
between = between
us = them

となる。ここでこれをもう一度日本語に戻すと、

Electricity = その不思議で強力な結びつき
us = 不可視なエネルギーや波動を放つ「自分」と「人」と「宇宙」と「地球」

という風になる。themがこうなるのは説明が要るが省略する。(大事なとこだけど冗長になるのでね)

つまり、usというのは「自分と人」の組み合わせだけではなく、「自分と宇宙」「自分と地球」「人と宇宙」「人と地球」「宇宙と地球」のように、人と人、人と人あらざるもの、人あらざるものと人あらざるもの、その総ての組み合わせを示唆するように思われる。(これは、歌詞を聴いてヒカルの言葉を読んだ私の現時点での予想だ。)

つまりヒカルは、人同士に限らずあらゆるもの同士の不思議な結びつきのことを指して『Electricity』と呼んでいるのだろう。ただ引き合うだけなら“magnet / magnetism"を採用してもよかったかと思うが、恐らくここでは、引き合う/引かれ合う力だけでなく、電信のような、「やりとりをする力」やもの同士を「結びつける力」も想定していて、故にそれは電気、Electricityだったのだろうな。

『結びつき』という言葉遣いに、前曲『何色でもない花』の解説で量子力学を持ち出してきた流れの続きを読み取る。量子と量子を結びつけ合うのはElectricity、電気の力だからね。僕らの日常での電気といえば、動かしたり温めたり光らしたりといった仕事を思い浮かべるが、この世界を成り立たせている物質同士の結びつき(これがないと家も身体も崩れちゃうね)もまた、電気の力を使っていて、それを理解することが量子力学の一分野の役割になっている。こういった、ほんのちょっとした言葉遣いにも、前後する曲同士の関係性、結びつきを示唆する内容を含んでいるのだから、きっとこれもまたヒカルの言う『Electricity 』の不可思議な力のひとつなのかも、しれないね。

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2024年度、年度はじめはヒカルさんの新しいCM出演から!

https://youtu.be/wvGI1KVwfJQ
https://x.com/hikki_staff/status/1774511985708695592?s=46

朝4時解禁パターンだったようで、日付変更線組はお疲れ様でした。早起き組は三文の徳でしたわね。

で、今回はナレーションのみならず、きっちり本人が顔出し出演してくれている。そしてもうひとつ目に入るあの見慣れた後ろ姿は! 公式からのステートメントはまだないけれど、また少し背が高くなった風なあの男の子はご子息様で間違いなかろうて。既にCMを見た人は、『BADモード』のアルバムジャケットを参照するまでもなく、あのヒカルママの優しい笑顔でそれを確信している模様。子育てしてる人は実感が強いのだろうなぁ。

バックの歌は勿論『Electricity』! きっちり『宇多田ヒカル/Electricity 」のクレジットも表示されている。前回より更にサウンドの見通しがよくなったのでそれについても語りたいところなのだが、その前に作詞者ご当人からのコメントが届いているので引用しておこう。


『Q)楽曲「Electricity」の歌詞に込められた思いを教えてください
私が自分の中から、人から、宇宙と地球から感じる不可視なエネルギーや波動とその不思議で強力な結びつきを表現しました。「SCIENCE FICTION」というアルバムタイトル通り、地球に移住してきたり観光に訪れた宇宙人二人が地球で出会うというSF物語のような設定の歌詞世界です。宇宙人の話を描いていたのに最終的に人類への気持ちとか、この世で人間として生きることの意味に辿りついて自分でもびっくりしたところで、完成しました。』
https://realsound.jp/2024/04/post-1617941.html/amp


歌詞の全貌が明らかになる前にここまで内容に踏み込んだのは初めてじゃない? そっか、宇宙人2人の歌なのねぇ。なるほど仰る通りのSFストーリー。今回『SCIENCE FICTION』という曲はないけれど、実質この『Electricity』がリーダートラックかつタイトルトラック扱いになりそうだ。アルバム『BADモード』の『BADモード』みたいなもんだね。

聞こえてくるワクワクサウンドについつい脳内ではコンサート会場で『e-e-e-e-』に合わせてステージライディングが明滅する様子が繰り広げられてしまって、自分自身気が早いにも程があると呆れ返ってしまっているのだが、30秒だけとはいえ、もうそれだけでベストアルバムとライブコンサートの両方への期待を煽ってしまう実に罪作りな曲だといえる。

歌詞に話を戻すと、UTADAデビュー時に「日本人にもアメリカ人にもなれない、どちらに対してもアウトサイダーな私」という話をインタビューで語っていた事があったけれど、宇宙人という設定は地球人からすれば究極のアウトサイダーだ。しかし、おそらくここで描かれるのはロストアイデンティティの話、根無草の不安感などとは少々趣の異なる、外から見た眼で中の地球の人たちをどうみるかというエピソードに落ち着いたのだろうかなと、ヒカルのメッセージからは読み取れそうだ。

何れにせよ、もう4月に入ったのだ、あと1週間余りでフルコーラスが聴けるのは間違いないので、ひとまず僕らはそこに無事に生きて辿り着けるように、毎日を1日1日一歩ずつ着実に生きていきましょう。そうすれば、あっという間に時間が過ぎてくれますよ。あんな時間を超越した不思議な望遠鏡を覗き込むまでもなく、ね!(もちろんちょっとは覗いてみたいけどね、あのテレスコープ型タイムマシン!)

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