『大空で抱きしめて』は青空が夕暮れを経て夜空に飲み込まれる様を歌っているようなサウンドだから、立て続けに『テイク5』を響かせて夜空に包み込まれてしまうと実に具合がいい。ライブでは必ずやこの2曲がメドレーで歌われるだろう。とんでもない威力を発揮する事請け合いだ。
『テイク5』を聴いていると、先入観もあって自分はすぐさまアニメーション映画『銀河鉄道の夜』の幻想的な風景を思い浮かべる。ますむらひろしの猫によるジョバンニとカムパネルラだ(両名ともちゃんと予測変換できるのな…ATOKの中の人の趣味なのか…)。夜空と死の旅。この風景に導く『大空で抱きしめて』はさしずめ『天空の城ラピュタ』だろうか。両映画は制作時期も近いし、どこか自分の中でリンクしているのかもしれない。
逆に、『大空で抱きしめて』の方を『銀河鉄道の夜』の世界に引き込む事も出来る。ジョバンニとカムパネルラは恋仲ではないので(二次創作では知らないが、少なくとも宮沢賢治の原作ではね)そうそうキスはしないだろうが、カムパネルラを喪ったジョバンニが「また彼に会いたい」という感情に覆われる様を描いていると捉えれば寧ろ『テイク5』本体よりも『銀河鉄道の夜』らしい歌詞になりはしないか。
余談ついでにもっと脱線しようか。『夜のラピュタ』はちょっと見てみたかった。地下は確かに暗いが、星空の下の天空の城はどんな姿だったのか。そこを冒険したらどんなアニメーションになっていたのか。天空と夜というテーマは、好奇心をそそられ想像力をかきたてる。『大空で抱きしめて』の『大空』も、青空なのか曇り空なのか雨空なのか夜空なのか。雨の夜の真っ暗な空って怖さが別格なのよね。闇から雨が降ってくる。最後に『天翔る星』が出てくる前に、リスナーのイメージが夜空になっていたら、お互いにとって"成功"だろうな。勿論、でなくたって素晴らしい歌である事に変わりはないのだが。
ヒカルが親子3人でやっていた(?)U3にどれだけ思い入れがあるか、あったかはよくわからないが、『星』というメタファーが『夜の太陽』の一種だとすれば、デビュー曲『time will tell』から連綿と続く空と雨と雲と太陽の物語は、夜と宇宙をも飲み込んで広がり続ける事になる。SCv2のジャケットの時点で既にそれは示唆されていた訳で、はてさてこれからヒカルがこの物語をどちらに進めるか、歌を聴きつつ待つ事に致しましょうか。
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