無意識日記
宇多田光 word:i_
 



「アルバム『BADモード』でいちばん好きな曲は?」と訊かれた時に何と答えればよいか迷う人は多いかと思う。全曲素晴らしいのにそこから選べと? そんなの難しい!…だわよね。

だけど私の場合、その答は一応決めてある。初聴時点で「今までの宇多田ヒカルの歌詞の中でいちばん好き」と書いてしまった以上、「『気分じゃないの(Not In The Mood)』がいちばん好きだ。」と言い切るしかないかなとな。

あと、「アルバム『BADモード』に於ける“最高の瞬間”はどこ?」という質問に対しても『気分じゃないの(Not In The Mood)』にあると答える。特に4:17~5:34のパートに関して私は勝手に「(宇多田ヒカル史上)至高の77秒間/The Greatest 77 seconds in UH history」と呼んで崇め奉っているのでありました。


で。こういうのって些細な「訊き方の違い」で答が変わってくるから注意が必要だ。上記の場合は「アルバムでいちばん好きな曲は?」という質問だったが、これが「アルバムでいちばんの名曲はどれ?」という訊かれ方だったら私は違った答を返す。『One Last Kiss』だと答えるだろう。名曲、と言われたらやっぱり内容と共に知名度も考慮に入れるもんねぇ。

他にも、「アルバムでいちばん美しい曲は?」と訊かれたら『誰にも言わない』だと答えるだろうし、「アルバムでいちばん歌詞に励まされた曲は?」だなんて訊かれたら『キレイな人(Find Love)』だと答えるだろう。「アルバムでいちばんホッとした曲は?」なら『Time』ですね。いちばん昔ながらの宇多田ヒカルのスタイルだったので。

他にも、『アルバムでいちばん宇多田ヒカルの才能が炸裂した曲は?』と訊かれたら『PINK BLOOD』だと答えるだろうし、『アルバムでいちばん気持ちいい曲は?』と訊かれたら『君に夢中』だと答える。『アルバムでいちばん劇的な(ドラマティックな)曲は?』なら『Face My Fears』だわな。A.G.Cook Remixは特にね。そして勿論、『アルバムでいちばんエキサイティングな曲』なやっぱり『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー』でしょうねぇ!


…というように、『アルバムでいちばん○○な曲は?』と訊かれた時に挙げれる曲は総てが違う。それぞれの曲がそれぞれの持ち味に関して“いちばん”なんだけれども、でももっとシンプルな質問の仕方があって。

「このアルバムから1曲選ぶとしたらどれ?」

こうですよ。こう訊かれたら私は即座にタイトル・トラック『BADモード』を選ぶだろう。好きとか名曲とか美しいとか歌詞に励まされたとかホッとしたとか気持ちいいとか劇的とかエキサイティングだとか、そういう“条件”無しにただ“選ぶ”のだとしたら、やっぱり“アルバムを代表する1曲”を選ぶ事になるのです。そしてそれは紛れもなくこのタイトル・トラックであって。アルバム・タイトルを冠するに相応しい、堂々とした、そして網羅的で且つ王道を行くサウンドに、私はやっぱり惹かれてしまうのでした。

このアルバムを初めて聴いた時の事を振り返ると、このタイトル・トラックでヒカルが『祈るしかないか』と歌った瞬間に総ての流れが決まっていたんだなと痛感させられる。ただ1曲をただ選ぶというときにタイトル・トラックに自然と手が伸びる。これを成し遂げるのは極めて難しいと思うが、アルバム『BADモード』が傑作たる所以はここにこそあるのだと改めて思うのでした。皆様もこのアルバムに自分の中の「いちばん○○な曲」を探してみては、如何でしょうか?





追伸:

せっかくなので私の分をまとめとこっかw

アルバム『BADモード』で……

・いちばん好きな曲は?─『気分じゃないの(Not In The Mood)』

・いちばんの名曲は?─『One Last Kiss』

・いちばん美しい曲は?─『誰にも言わない』

・いちばん歌詞に励まされた曲は?─『キレイな人(Find Love)』

・いちばんホッとした曲は?─『Time』

・いちばんヒカルの才能が炸裂した曲は?─『PINK BLOOD』

・いちばん気持ちいい曲は?─『君に夢中』

・いちばん劇的な曲は?─『Face My Fears』

・いちばんエキサイティングな楽曲は?─『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー』

・1曲だけ選ぶとしたら?─『BADモード』 

コメント ( 1 ) | Trackback ( 0 )




https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221012/k10013856061000.html

JAXAがロケットの打ち上げを“失敗"したそうな。19年振りのことらしいが、話を聞くとロケットの操作が出来なくなる前に爆破したのだと。私なんかはこのニュースを聞いて「自爆装置が実際に作動する事が分かってよかった」などと思ったけどね。確かに衛星は無駄にしたかもしれないが新たな被害を巻き起こした訳でも無く、事故時のデータも取れたのなら全体的には前進だろう。そんなに気にすることでもないのではないか。にしても、普段ロケットが無事打ち上がった時のニュースに較べて扱いの大きいこと! そんな風に非対称に報じるから誤解されるんだよねぇ。


宇多田ヒカルも今まで順風満帆に活動してきた訳ではなく、邦楽市場のアーティストとしてみれば売上面で“失敗”扱いされたことは多々あった。代表的なのが2005年9月に発売された『Be My Last』のシングルCDで、当時初週売上12万枚でありながらダブル・プラチナ・ディスクを獲得したのだ…

…と書くと、それのどこが失敗?と思わず訝る話になるのだが、当時CDシングルのダブル・プラチナ・ディスクの基準は出荷ベースで50万枚だったのだ。つまり、50万枚CDを作っておきながら最初の1週で12万枚しか売れなかった。CDシングルの売上累計は大体初週の2倍余りに収束するから、いやはや日本には『Be My Last』のシングルCDが物凄く余ってたんだねぇ。そういう意味では大失敗だった。まぁつまり、宇多田ヒカルという名前の神通力に頼って最初沢山生産したんだけどアテがハズレたって話だったのね。

でも話はこれで終わらなかった。2005年当時その『Be My Last』はiTunes Storeのダウンロード・チャートで年間第2位を記録したのだ。当時この記録は殆ど話題にならなかった。というのも、楽曲ダウンロードというメディア自体の認知度がまだまだ低かったからだ。iPhoneがリリースされるのがこの2年後の2007年だからね。YouTubeがアングラアウトロー感満載でやっとローンチしたその頃にもう既に宇多田ヒカルはフィジカルからの脱却を目指していたという訳だ。その甲斐あってその2年後の2007年には『Flavor Of Life』が、一時的にではあるものの、ダウンロード回数の世界記録を樹立する。それもこれも、CDシングルの売上を度外視して早めにダウンロード市場に仕掛けたのが奏功した為であった。

つまり、一見現時点では失敗にみえることでも長い目でみるとどうなるかはわからない。JAXAのロケット打ち上げ“失敗”だって、今後どのような評価になるかなんて見当もつかないのだ。今回の出来事を如何に未来に活かしていくか。成功しようが失敗しようが結局はそこの所がいちばん肝心なのでした。

コメント ( 1 ) | Trackback ( 0 )