ファンタジーである「鎌倉ものがたり」のエンディングを飾るだけあって、『あなた』の歌詞はどこか浮世離れした側面をもみせている。のだが冷静に考えるとなかなか一筋縄ではいかない。
『燃え盛る業火の谷間』とか『天上天下』といった言葉のチョイスからはここに天国と地獄のような世界観を持ち込んでいるように思える。映画の影響だろうか。一方で、『戦争の始まりを知らせる放送もアクティヴィストの足音も』といった一節は過酷な現実世界の話だろう。そのどちらからも距離を置きながら『あなたと歩む世界は息を飲むほど美しい』と言い切っているのが『あなた』のアイデンティティである。
この前リアリティの話をしたが、2番の歌詞に出てくる、幻想とも現実とも異なる『この部屋』とは一体何なのか。
ヒカルの歌で"部屋"といえば『In My Room』だ。そこで歌われていたのは
『夢も現実も目を閉じれば同じ』
『ウソもホントウも口を閉じれば同じ』
という2つの極のどちらからも等距離を保つアティテュードであった。そして『In My Room』は次の2つの節で楽曲を纏め上げる。
『ウソもホントウも君がいるなら同じ』
『ウソもホントウも君がいないなら同じ』
今や『君』は『あなた』となり『あなたのいない世界じゃどんな願いも叶わない』とまで歌うようになった。同じ部屋に居るのでも何やら随分と違うようだ。
…確実にこの話は長くなるな。次回続きを書ける気がしない…。
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