無意識日記
宇多田光 word:i_
 



根っからのメタラーなのでエレクトリック・ギターの栄枯盛衰にはそりゃあ興味はあるけれど、そもそも別にあんな楽器要らないからねぇ。


20世紀の音楽で最も影響の大きかったものといえばPAだ。パブリッシング・アドレス。要は、スタジアムの最後尾にも音が届く仕組みだ。お陰でコンサートの規模が桁違いになった。

アコースティック・ギターはピアノやバイオリンやラッパに較べて音が小さく、フルオーケストラで目立つような楽器ではなかった。室内楽で繊細な音色を響かせていてくれたら、という程度だった。

それが電気の力を借りればいきなり何十万人という人に自分の演奏が届けられる事になった。そりゃテンション上がったろうね。


21世紀。PAはますます発達し、生楽器をマイクで拾って増幅する技術もライン直結のシンセサイザー・サウンドも格段に発達した。大きな音を出して数十万人に聴いて貰うためには必ずしもエレクトリック・ギターでなくてもよくなったのだ。結果、今の商業音楽にエレクトリック・ギターの居場所はなくなりつつある。冷静に聴いてみれば、汚いもんね音色。バイオリンに敵うはずもない。スカイギターだって粗いもんだ。


という世情だから、ヒカルなら逆張りしてくるんじゃないかと思っている。次のアルバムではエレクトリック・ギター・サウンドが増えるのではないか。好きなのは相変わらずジミ・ヘンドリックスとかレニー・クラヴィッツみたいなブルージーかつソフィスティケイテッドなスタイルなんだろうが、その気になれば誰でも連れてこれるんだからね。宇多田ヒカルのネームバリューよ。またTAKUROさんでもいいしな。

しかしやっぱり、そろそろ、ねぇ? ヒカルさん、御自身でエレクトリック・ギターを弾いてみやしませんか。『Laughter in the Dark Tour 2018』では『SAKURAドロップス』の終局部でキーボード・ソロを見せてくれた。こういうプレイは往々にして次のアルバムに活かされる。ヒカルがキーボードソロタイムを設ける曲が出来上がる期待。そこから更に一歩踏み込んでエレクトリック・ギターソロもいいんじゃないか。『Be My Last』では曲作りにエレキを用いて新境地を開拓した。今度は曲作りのみならず演奏面でも新境地と洒落込もうじゃありませんか。どうでしょうか。

「手の指が短い」という弱点だけは、どうしようもないけどね~。“小4”の手足な。溜息。


ところでところてん、前回引用した後藤氏の話だけど。これって多分みんなギターが鳴り始めたら「あ、間奏だ」と思って曲変えちゃうってだけなんじゃないのかな。別にギターの音色が人気ないんじゃなくて、ギターが鳴り始めた時の「本格的な間奏が始まった感」が他の楽器に較べて甚だしいって事じゃないのかしらん。こういうのって、データからどんな解釈を導くかは慎重にならないとだよねぇ。さぁ真相や如何に? でもアメリカの(&インターナショナルの)チャート上位からギターサウンドが消え去っているのは事実ですよ。なくはないけど、昔みたいなギャンギャンな使い方は、されてませんわね。これからギターサウンドは、どう生き残っていくのだろうか…。

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アジカンの後藤正文氏があるトークイベントでこんなことを言っていたんだと。

「最近、音楽のストリーミング・サービスなんかで一番飛ばされる瞬間って、ギターが鳴った時らしいんです。どこでみんながそのアルバムを離脱したかが、データでわかるらしくて。ギターが鳴った時に、特に若い子たちが、次の曲にスキップすることが多いっていう話を聞いて、すげぇショックだなと思って。僕は、ギターだけ弾いてここまで来ちゃったから。」

へぇ、そんなことまでわかるの。演奏再生時間もカウントしてるとは聞いていたけど。どの国のデータなのかはわからないけど、まぁ納得。ここ10年くらい、ビルボードのロックチャートでも上位にくるのはギターが鳴ってないか鳴ってても添え物なものばかり。ストラクチャーやフィーリングはロックのそれなんだけどね。ギターリフがドギャーンみたいなのは滅多に聞かれなくなった。

まぁ、これは自然な現象でな。そもそも音の小さいギターという楽器の音量を無理矢理大きくしているのだから音が不快になるのは必定で。ただ、ずっとギターサウンドばかり聞いていたら「エレクトリック・ギター・サウンドはそもそも不快」という事実を忘れてしまう。慣れって怖い。

昔のヒカルの耳もそういう感じがあってな。エレクトリック・ギターのサウンドが好きと言って憚らなかった。それも高音部がキンキンのヤツ。で、自作曲でもギターをフィーチャーしようと日本を代表するロックバンドGLAYのリーダーにしてギタリストであらせられるTAKURO氏を捕まえて『ドラマ』を作ったのだがまぁギターのうるさいことうるさいこと。耳障りったらなかった。

昨年、いや今年にズレ込んだんだっけ、アルバム『DISTANCE』のリマスタリングがリリースされるということでちょっとはマシになってるかなと朧な期待を胸に聴いてみたのだが、既報の通りそのギターサウンドに然したる変化もなく。嘆息せざるを得なかった。

そもそも不穏さや禍々しさを演出したくてエレクトリック・ギター・サウンドを用いるのならドンピシャな訳で、果たして『ドラマ』にそれが必要だったかというと意見が分かれるというか…いや、ギターを用いるにしてももう少しハイを抑えられなかったのかというね。うらぶれた感情を表現するのにギターを使うのは正解だったとは思うんだけども。

『初恋』でもエレクトリック・ギターは使われているが基本上品でジャジーな使われ方だ。唯一、『Laughter in the Dark Tour 2018』の『Automatic』で“贔屓の弾き倒し”なギターソロがフィーチャーされたのがロック寄りなエレクトリック・ギターの使い方だったかな。今後もっとエレキなサウンドを使ってきてくれてもいいけれど、私としては自分の好みと上述のような現状を踏まえた上である程度ハイをマイルドにしたサウンドを所望しておきたい所存ですよっと。

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