無意識日記
宇多田光 word:i_
 



「唄われなかった歌たち」にも心を尽くす為には、選ばれたセットリストに曖昧な理由を残すことは得策ではない。ファンの方にあれが聴きたかったこれも聴きたかったという思いが湧き上がるのは避けられないのだから、選曲の必然性を高めて納得してもらうしかない。

Wild Lifeの23曲は、どうやって選ばれたか。推理するのは難しいがやってみよう。

まず、Automatic,First Love,Flavor Of Lifeの3曲は一瞬で決まった事だろう。これらを唄わないと客が帰らない。というか怒る。なので、選曲の軸はこの3曲で間違いない。結果的に三連続でプレイされる事になるが、それは最初の段階で決まっていたかどうか、ちょっとわからない。

次に、ぼくはくま。In The Fleshでは大フィーチャされる所まではいかなかったが、総監督たっての希望で嵌め込まれた。位置どりとしては14曲目で、まさに前半と後半をわかつ要。というか、流れの途切れる位置でないとこれを唄うのは難しい。どこまであのMCを予め考えていたかは謎だが。

くまを要にして、オープニングセッションの4曲~ストリングスセクション4曲~ロックセクション5曲が前半、名曲3連発~エンディングセッション3曲~アンコール3曲という構成。この全体の流れに当てはめて選曲したのか、それともまず曲を選んでからパズルのようにはめ込んでいったのか。

恐らく、やや前者寄りの経緯だったように思う。というのは、コンサート自体が急だった為ミュージシャンを速やかに押さえる必要があったからだ。ロックバンドと弦楽隊を起用する事を早い段階で決め、それに合わせた選曲をしたのではないか。

ナマの弦楽器を使えるとなれば、Unpluggedやウタユナのミドルセクションの発展形などが考えられる。ただ、FINAL DISTANCEに関してはUnpluggedのバージョンで既に完成度が高い。更に前回のツアーでも演奏した、という点で今回は見送られた公算が高い。しかし、ならばCOLORSも前回チェロ一本で素晴らしい歌唱を聴かせてくれたのだし、イケイケでは全世界の人々に弦楽隊バージョンを披露した。実績面で考えれば、FINAL DISTANCE同様今回は見送られてもよかったのではないか。次回はこの点について考察する…予定。(※ 実はオシシ仮面状態)

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Prisoner Of Loveの重要性については改めて語る事はない。SC2の曲順が逆時系列になったのはこの曲を1曲目にする為だった、というと言い過ぎなのだがそう言いたくなる位宇多田ヒカル最初の10年を締めくくるに相応しい曲だと認識している。

タイトルをFlavor Of Lifeと対応させたことからもわかる通り、この曲はあらゆる点で"狙った"曲である。リズムにしろメロディにしろヒカルの最も得意とする作風。しかし、ナマで唄うのはあまりにキツい。当時テレビの生放送で番組名を間違える位に眠い眼を擦りながら唄ったものもまだまだだったし、Wild Lifeのバージョンも、随分よくなったとはいえまだまだである。

今、物凄く高いレベルで不満を言っている事を強調しておかなくてはなるまい。日本語で唄われている事もあって、果たして"この曲をそのレベルで歌える人間は存在するのか?"と問わなければならない。勿論、しっかり系統的な訓練を積んだ歌手なら技巧的には可能(というか、訳もない)だろうが、この、作曲者ならではの勘所の押さえ具合をシミュレートできるかというとわからない。シミュレートといってる時点で後塵を拝しているし。

生ストリングスをフィーチャしているだけあって、サウンドプロダクションは見事なものだ。アクリル板ぐっちょぶ。ならばQuiet Versionの披露も可能だったのでは、と勿論思ったがあのバージョンとなるとその難易度の高い歌唱を超えて更に楽曲という生命体が押し寄せてくるのだからまだまだそこには到達できないと思う。

こう概観すると、まだまだこの曲にまつわる歴史は道半ばなのだなという感慨を強くもつ。FINAL DISTANCEがUnpluggedというそれなりの場を与えられたように、Prisoner Of Loveにもそれなりの場面が今後与えられるのではないか。それが通常のライブコンサートのフォーマットかどうかはわからないが。

逆に、今がこの段階だったからこの曲はちょうどココに収まった、ということが出来る。まだまだこの日のハイライトはFlavor Of Lifeの方だっからね。順番々々。

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