昨日、浜松市で開催された
「放射線の基礎とその利用 ~医療と放射線について学ぼう~」
という講演を拝聴させていただきました。
医療に関するお話に入る前に、
静岡大学大学院理学研究科 特任教授 奥野健二先生が
放射線の基礎について解説してくださいました。
その中で、一番興味を惹かれたのは、
農業分野にも放射線が利用されているということ。
特に、
「北海道の一部地域のみ、じゃがいもの発芽防止のため、
放射線を照射することが認められている。」
というお話を聞いた時は、
そこがどの地域なのか?
なぜそうなったのか?
そのいきさつが知りたくてたまらなくなりました。
で、昨夜、調べまくった結果を書かせていただきます。
まず、北海道の一部地域というのは、
河東郡の士幌農業組合管内でした。
●じゃがいもの貯蔵と抱える問題点
じゃがいもの収穫期は、本州で6月頃まで、
秋になると一大産地である北海道で収穫が始まります。
冬の間は、収穫できる地域はありませんので、
秋に収穫した北海道産のじゃがいもを貯蔵したものが
翌年の春まで出荷されます。
その貯蔵方法は、5℃で冷蔵。
その費用は大きく、さらに
・糖分が増加する
・出荷後に発芽してしまう
などの問題を抱えていました。
●食品への放射線照射研究の始まり
1967年、原子力委員会は食品照射に関する大規模な実験を開始。
この時、研究対象となったのは、
じゃがいも、玉ねぎ、米、小麦、ウインナーソーセージ、かまぼこ、みかんの7品目です。
じゃがいもは、男爵、島原、農林1号が選ばれました。
研究の結果、ガンマ線を70グレイ照射すると、
収穫後8ヶ月、室温貯蔵で発芽を防止できることが明らかとなりました。
さらに次のことも判明しています。
・食品としての機能(でんぷん、ビタミンの含有量など)も
照射前と同じように保持されている。
・照射したじゃがいもが、放射能を帯びることはない。
・照射じゃがいもを長期間食べた場合の安全性は
動物実験では検証されている。
このような研究を経て、
1972年、「じゃがいもの放射線照射が許可されました。
●なぜ、士幌町なの?
士幌町でのじゃがいも栽培面積は、2150ha、収穫量は69700t。
じゃがいもは町の基幹作物となっています。
1973年、農水省が農産物放射線利用実験事業として
「士幌アイソトープ照射センター」を建設。
1974年より、じゃがいもの放射線照射が始まりました。
【画像お借りしました じゃがいもの照射室】
この時以来、年間約10000tのじゃがいもに
放射線照射が行われています。
国内でのじゃがいもの生産量の約0.3%が
放射線照射されたじゃがいもということになります。
なお、放射線照射されたじゃがいもは
食品衛生法により、放射線を照射した旨を
包装の見やすい場所に記載することが義務付けられています。
そして、現在、じゃがいも以外に
食品衛生法により放射線照射が認められている食品はありません。
また、ひとつ学ばせていただきました。
今回の講演の主なテーマ、医療と放射線については、
患者に負担を減らす最先端の治療について
知ることができて、本当によかったです。
10数年前、
「治療法は、年単位ではなく、日単位で進歩しているのですよ。」
とお医者様に言われたことが納得できました。
講演を主催してくださった静岡エネルギー・環境懇談会様
ありがとうございました。