トシの読書日記

読書備忘録

めくるめく官能の香り

2014-10-10 15:43:31 | た行の作家
辻原登「約束よ」読了



ずっと以前に読んだものの再読です。七編の短編が収められた短編集であります。再読とはいうものの、ほとんど内容を忘れており、存分に楽しめました。


表題作の「約束よ」がよかった。夫は雅美という名前で、妻はまさる。この男女が逆になったようなネーミングがまず面白いですね。雅美の仕事の関係で少しだけ世話になった人が亡くなり、義理半分で葬儀に出かけるのだが、その未亡人のうなじの辺りから漂うえもいわれぬ香りに雅美は陶然となる。そして初七日、14日、21日とその未亡人の香りに魅せられて毎週のように線香をあげに行くのだが、その未亡人の姉から「もう来ないでほしい」と言われてしまう。


一方、妻のまさるはアロマセラピーに通っているのだが、そこの三枝(女性)というセラピストのやはりうなじがら漂う香りに魅せられる。この夫と妻がそれぞれの相手の香りに翻弄されていくんですが、なんと、びっくりするような結末が用意されていました。ほんと、うまいですねぇ。


ほかにも、テーマ、シチュエーションなど、多彩な作品が並んでいて、読む者を飽きさせません。遊動亭円木という目の不自由な落語家が出てくる短編が二編あるんですが、この間、姉がその落語家の名前がタイトルになっている本を読んだそうです。図書館から借りたとのことなので、是非とも買って読みたいものです。


辻原登は以前にも何冊か読んでいたんですが、まったく何を読んでいたんでしょうかね。こんなすごい作家だったなんてもっと早く気づけよって話です。




向後のために、辻原登の著作リストを記しておきます。



平成2年 「村の名前」
     「百合の心」
平成6年 「森林書」
     「マノンの肉体」●」
平成7年 「家族写真」●
     「だれのものでもない悲しみ」
平成8年 「黒髪」
平成10年「翔べ麒麟」
平成11年「遊動亭円木」
平成12年「熱い読書冷たい読書」
平成13年「発熱」
平成14年「約束よ」●
平成16年「ジャスミン」
平成17年「枯葉の中の青い炎」
平成18年「花はさくら木」
     「夢からの手紙」(「恋情からくり長屋」)
平成19年「円朝芝居噺 夫婦幽霊」
平成21年「許されざる者」●
     「抱擁」●
平成22年「闇の奥」●
平成23年「韃靼の馬」
     「熊野でプルーストを読む」
平成24年「父、断章」
平成25年「冬の旅」
平成26年「寂しい丘で狩りをする」

(●は既読)




そしてネットで以下の本を注文する。本を買うのは久しぶりです。

辻原登「村の名前」
辻原登「翔べ麒麟」
辻原登「遊動亭円木
辻原登「ジャスミン」
辻原登「枯葉の中の青い炎」
辻原登「寂しい丘で狩りをする」

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