イーヴリン・ウォー著 吉田健一訳「ピンフォールドの試練」読了
少し前に名古屋市内の「丸善」で買ったまま、うっかり忘れていて、今やっと読了しました。
1年前くらいだったか、姉がイーユン・リーの本を買うつもりが、イーヴリン・ウォーと間違えて「ご遺体」というのを買って、それを借りて読んだらこれがめっぽう面白くて、他に何かないかと探していたら本書が見つかったのでした。
いやぁこれもなかなか面白かったですね。何というか、ウォーの持ち味である諧謔とアイロニーたっぷりの文章は、読んでいてにやりとさせられます。
中年の作家、ピンフォールドは、膝の痛みやら寝不足に悩まされ、思い立って船旅に出ます。そこでは上流階級のお歴々が思い思いに過ごしているんですが、ピンフォールドが自分の船室にいると、どこからか音が聞こえてくる。それは最初は騒々しい音楽だったんですが、やがてそれが自分の悪口となり、果てはピンフォールドを襲撃する計画にまで話が発展していくわけです。
でもこれ、全てピンフォールドの幻聴なんですね。本人はもちろんそうは思ってないので、船長に部屋を代えてくれと申し出て、そこでの会話がなんだかかみ合ってなくて、そのあたりがほんと、面白かった。
まぁそんなに深いテーマを構築するわけでもなく、ひとつの読み物と考えればいいんでしょうが、訳者の吉田健一が解説も書いていて、これがまたいつもの吉田健一らしい、つかみどころのない文章で、これがまた笑えました。
イーヴリン・ウォー、吉田健一、ともに食えないおっさんです。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます