群像編集部編「群像短篇名作選 2000~2014」読了
本書は今年5月に講談社文芸文庫より発刊されたものです。以前読んだ「現代小説クロニクル」のような企画で、2000年から2014年に発表された短編のうち、これはと思われるものを集めたアンソロジーです。
名を連ねる作家は辻原登、村田喜代子、古井由吉、堀江敏幸、町田康、松浦寿輝、筒井康隆と、自分のリスペクトする人達ばかりで、それだけでうれしくなってしまいます。
内容は、予想に違わず、それぞれの作家らしい持ち味を発揮し、充分堪能させてもらいました。
中でも印象に残ったのは松浦寿輝の「川」ですかね。これは同作家の「不可能」の中のある部分を抜き出して掲載したものですが、「不可能」という作品自体、章ごとにある程度独立した構成になっているため、そのうちの一章を短編小説という一つの作品であると、いうようにとらえても決して遜色ないものと思われます。鋭い切れ味の、なかなかに読ませる作品でした。
また、堀江敏幸の「方向指示」もよかった。理髪店の女店主、修子さんと常連客の三郎助さん、三郎助さんの髪を切りながらの二人のやりとり。修子さんの細やかな心の動きが堀江敏幸の、その美しい筆致で語られていきます。秀作です。
やっぱり、「O嬢の物語」とか「ソドム百二十日」なんかより、こういった小説群の方が自分は好きですね。実は本書を読む前、澁澤龍彦の「少女コレクション序説」を読みかけていたんですが、内容もいまいちなのと、澁澤先生のちょっと高みから見下ろしたような物言いが我慢できなくて途中で止めたのでした。
諏訪哲史氏に勧められるままにあぶない系の著冊を何冊か読んでみたんですが、ちょっとなんだかなぁという感じでした。残念。
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