トシの読書日記

読書備忘録

彷徨する魂

2016-11-08 17:12:27 | か行の作家



アゴタ・クリストフ著 堀茂樹訳「ふたりの証拠」読了



本書は平成13年にハヤカワepi文庫より発刊されたものです。「悪童日記」のシリーズ第2弾であります。


「悪童日記」で双子の「ぼくら」は離れ離れになります。それはあまりに唐突で、そのわけも読む者に全く説明がありませんでした。ちなみに双子の名前が本書で明らかにされます。一人はリュカ、もう一人はクラウス。これをハンガリー語にすると「LUCAS」「CLAUS」と、アナグラムになってるんですね。まぁそれはさておき。


リュカが、おばあちゃんの家に残り、クラウスは父親を地雷の犠牲にして、その屍を乗り越えて西側の国へ去ります。本書は国に残ったリュカの物語です。しかしまぁ登場人物が多いですね。そしてそれぞれの人物が大きな問題をかかえていて、それだけで小説が一つづつできそうです。


とにかくいろいろなエピソード盛りだくさんなんですが、最後、ついにクラウスが登場します。この、リュカの残った地へ帰ってくるわけです。がしかし、それと入れ替わるようにリュカは誰にも何も告げずにどこかへ去ってしまいます。


リュカを取り巻く人々、それぞれの孤独、絶望、不毛な愛が、アゴタ・クリストフの独特の文体で精緻に描かれていきます。最後、再開がかなわなかった二人はこのあとどうなるのでしょうか。次、「第三の噓」いきます。

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