トシの読書日記

読書備忘録

狂気が讃えられるべき唯一の場所、文学

2017-08-15 16:04:30 | さ行の作家



諏訪哲史「偏愛蔵書室」読了



本書は平成26年に国書刊行会より発刊されたものです。


実は自分はこれが1冊の本になる前に読んでおりまして、というのは本書は中日新聞に隔週の火曜日(だったか?)に連載されていたものをまとめたもので、それはもうじっくり読ませていただいておりました。


先日、栄の丸善へ行った折に本書を見つけ、まぁ新聞で読んだからいいかなと思ったんですが、中身をパラパラ見るうち、もう一回読まねばという強い気持ちが働き、大枚2500円+税をはたいて買ってしまいました。


しかしまぁすごいですね。このマニアックなこと。普通誰も顧みないような本を選び、諏訪哲史独特の視点で解説するのを読むと、もう、うなるやら呆れるやら、彼はこういった系統の本がほんと、好きなんだなというのがひしひしと伝わってきます。


本書を読むと本作家の「アサッテの人」とか「ロンバルディア遠景」等を書いたその著者の観念の核心みたいなものがおぼろげに見えてきたりします。本書の中で是非読んでみたい本があるので、ここにリストアップしておきます。山ほどあります。


「チャンドス卿の手紙」ホフマンスタール著 檜山哲彦訳 岩波文庫
「檸檬」梶井基次郎 新潮文庫
「伝奇集」ホルヘ・ルイス・ボルヘス著 鼓直訳 岩波文庫
「子之吉の舌」島尾敏雄 国書刊行会
「トムは真夜中の庭で」フィリパ・ピアス著 高杉一郎訳 岩波少年文庫
「内田百閒集成3 冥途」内田百閒 ちくま文庫
「泥棒日記」ジャン・ジュネ著 朝吹三吉訳 新潮文庫
「少女コレクション序説」澁澤龍彦 中公文庫
「バカカイ」ヴィトルド・ゴンブローヴィチ著 工藤幸雄訳 河出書房新社
「闇の中の黒い馬」埴谷雄高 河出書房新社
「幻影都市のトポロジー」アラン・ロブ=グリエ著 江中直紀訳 新潮社
「薔薇日記」トニ・デュヴェール著 志村清訳 新潮社
「眼中星」大泉黒石 桃源社
「パルチザン伝説」桐山襲(かさね) 作品社
「眠る男」ジョルジュ・ぺレック著 海老坂武訳 晶文社 
「鶏の脚」池田得太郎 中央公論社
「プロタゴニスタ奇想譚」ルイージ・マルバ著 千種堅訳 出帆社
「夜ひらく・夜とざす」ポオル・モオラン著岩波文庫 堀口大學訳 新潮社
「五十万人の兵士の墓―反乱の雅歌篇」ピエール・ギュイヨタ著 榊原景三訳 二見書房
「妖花譚」荒木良一 毎日新聞社
「葬儀のあとの寝室」秋山正美 新世紀書房
「流刑地にて」フランツ・カフカ著 池内紀訳 岩波文庫 
「モナ・リーザ泥棒」ゲオルク・ハイム著 本郷義武訳 河出書房新社 
「O嬢の物語」ポーリーヌ・レアージュ著 澁澤龍彦訳 角川文庫
「ミッドナイト・ミートトレイン」クライヴ・パーカー訳 宮脇孝雄訳 集英社文庫
「ジュリエット物語あるいは悪徳の栄え」マルキ・ド・サド著 澁澤龍彦訳 富士見ロマン文庫
「普賢」石川淳 集英社文庫                          
「悪の華」シャルル・ボードレール著 安藤元雄訳 集英社文庫
「嘔吐」ジャン=ポール・サルトル著 白井浩司訳 人文書院
「数(ノンブル)」フィリップ・ソレルス著 岩崎力訳 新潮社
「ナージャとミエール」山口椿 トレヴィル
「失われた時を求めて」マルセル・プルースト著 鈴木道彦訳 筑摩書房
「春は馬車に乗って」横光利一 岩波文庫
「優雅な獲物」ポール・ボウルズ著 四方田犬彦訳 新潮社
「短かい金曜日」アイザック・バシェビス・シンガー著 邦高忠二訳 晶文社
「私生児」ヴィオレット・ルデュック著 榊原景三ほか訳 二見書房
「憂国」三島由紀夫 新潮文庫
「メルラーナ街の恐るべき混乱」カルロ・エミリオ・ガッダ著 千種堅訳 早川書房 
「納屋は燃える」ウィリアム・フォークナー著 瀧口直太郎訳
「ブライツヘッドふたたび」イーヴリン・ウォー著 吉田健一訳 ちくま文庫
「ファイター」アーネスト・ヘミングウェイ著 高見浩訳 新潮文庫
「みちのくの人形たち」深沢七郎 中公文庫
「マーフィー」サミュエル・ベケット著 川口喬一訳 白水社
「家畜人ヤプー」沼正三 都市出版社
「地獄編」寺山修司 思潮社
「ユーゲント」ヴォルガング・ケッペン著 田尻三千夫訳 同学社
「ユリシーズ」ジェイムス・ジョイス著 丸谷才一ほか訳 集英社
「ドグラ・マグラ」夢野久作 社会思想社
「夜の果ての旅」ルイ=フェルディナン・セリーヌ著 生田耕作訳 中公文庫
「生家へ」色川武大 中公文庫
「昆虫図」久生十蘭 現代教養文庫
「ロリータ」ウラジミール・ナボコフ著 若島正訳 新潮文庫



全100冊中、52冊を選んでみました。もう絶版になっているものも多数ありそうなので、先のカーヴァーの書評で書き出したもの同様、ネットでゆっくり探してみることにしてみます。久々に古本屋をめぐるのもいいかも知れません(ブックオフとかではなく)。


それにしても各作品を評する諏訪氏の表現のうまさには舌を巻きます。とにかく豊富な語彙で、読む者をその気にさせます。もちろん、拙ブログなどと比べるのはあまりにも不遜というものですが、やはり自分のレビューの拙さにはため息が出ます。


本編の中で諏訪哲史が口を酸っぱくして言う<小説とは「物語」と「詩」と「批評」から成る>という意味が、本書を読んで少しは理解できたような気がします。



というわけで早速以下の本をネットで購入


「トムは真夜中の庭で」フィリパ・ピアス著 高杉一郎訳 岩波少年文庫
「生家へ」色川武大 講談社文芸文庫
「カフカ短編集」フランツ・カフカ著 池内紀訳 岩波文庫
「悪の華」シャルル・ボードレール著 安藤元雄訳 集英社文庫








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