トシの読書日記

読書備忘録

海からの贈り物

2006-11-08 18:43:35 | あ行の作家
小川洋子「海」読了。

2001年から2006年の間に文芸誌に書かれたものを7編収めた短編集。
「博士の愛した数式」の前後に書かれたものということだが、小川洋子の作品は、「博士の愛した数式」を境として作風が大きく変わっている。

自分としては、断然「博士の・・・」以前の方が好きなのだが、この短編集もやはり「博士」以前と以後に分類することができる。

「バタフライ和文タイプ事務所」。これが一番よかった。「薬指の標本」、「ホテル・アイリス」を彷彿とさせる妖しい世界。医大の学院生の原稿をタイプするために打つ生殖器関係の文字群が、一種独特のグロテスクな雰囲気を作るのだが、これが小川洋子の手にかかると、えもいわれぬエロティックな世界になるのだ。

あと、「海」、「風薫るウィーンの旅六日間」、「ガイド」も秀逸であった。

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