トシの読書日記

読書備忘録

生者と死者の新たな関係

2020-10-21 13:56:00 | あ行の作家


いとうせいこう「想像ラジオ」読了



本書は2015年に河出文庫より発刊されたものです。

これはすごい本ですね。びっくりしました。生者と死者の関係をここまでつきつめた作品をほかに知りません。


最初は、このDJ アークという人物のおかれた状況というのがよく飲みこめずにいたのですが、読み進めていくうちにわかったのは、このDJアークはすでに亡くなっている人だということ、そしてこの想像ラジオという放送は死者同士でつながっているのであって、決して生者には聴くことができないということ(あとでそうでもないということもわかりましたが)。DJアークじしんも最初はそのあたりがよくわかっていなくて、自分の妻、子供に「これを聞いていたら連絡をくれ」と言うんですが、もし連絡があったならば、その時点で妻と子供は亡くなっているということに気がつくんですね。このあたり、なかなか読ませます。


また、第4章の作家Sとその恋人の1章まるまる会話というこのくだり、ここも非常に読み応えのあるところで、ここでは生きている作家Sと死者の恋人との会話なんですが、このえんえん続く会話は作家Sの想像なんですね。震災のボランティア活動をしていく中で亡くなったコー君の被災した住民に対する、ボランティアという自分じしんの立場の中でのジレンマ、葛藤というものが見事に描き出されていて、素直に感動してしまいました。


また、ここで語られる生者と死者の関係に瞠目させられましたね。以下引用します。

<(前略)「つまり生者と死者は持ちつ持たれつなんだよ。決して一方的な関係じゃない。どちらかだけがあるんじゃなくて、ふたつでひとつなんだ。」
「えっと、例えばあなたとわたしもってこと?」
「そうそう、ふたつでひとつ。だから生きていく僕は亡くなった君のことをしじゅう思いながら人生を送っていくし、亡くなっている君は生きている僕からの呼びかけをもとに存在して、僕を通して考える。そして一緒に未来を作る。死者を抱きしめるどころか、死者と生者が抱きしめあっていくんだ。(後略)」>


読み終えてまず、すごいの書いたなというのが素直な感想です。東日本大震災という未曾有の災害をモチーフにして生者と死者の関係を改めて問う本作品、自分としてはもっと話題になってもよかったのでは、というか、話題にならなきゃだめでしょと思ったのでした。



昨日、病院へ行って診察と抗がん剤の点滴をやってきました。前回の胃カメラで採取した検体にがん細胞は認められなかったとのこと。しかし、食道がふさがっているので、採れたのは食道の入り口の部分のところだけなので、その奥がどうなっているのか、わからないそうです。まぁ今の抗がん剤を続けて様子を見るよりほかはないようです。


最近体調が悪くて、微熱が続くし、のどが痛いし、たん、鼻水はしじゅう口から出るし、ほんと、早くどうにかしてほしいです。



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