トシの読書日記

読書備忘録

いつでも死ねる

2014-01-31 16:23:12 | た行の作家
種田山頭火「草木塔」読了



姉が100円ショップの「ダイソー」で売っていたと言って貸してくれたものです。なんと本書は「ダイソー文学シリーズ」と銘打ってその⑲ということで発刊されたものです。ダイソーは本の出版まで手がけてるんですね。びっくりです。それはさておき…


本書は自由律俳句の種田山頭火の句を網羅したもので、701句が掲載されています。有名なところで


うしろすがたのしぐれてゆくか

まっすぐな道でさみしい


この2句ではありますが、自分がこれは、と思ったものを以下に並べてみます。たくさんあってちょっと絞りきれませんでした。



歩きつづける彼岸花咲きつづける

食べるだけはいただいた雨となり

どうしようもないわたしが歩いてゐる

捨てきれない荷物のおもさまへうしろ

月が昇って何を待つでもなく

誰か来さうな空が曇ってゐる枇杷の花

やっぱり一人がよろしい雑草

明けてくる鎌をとぐ

こほろぎよあすの米だけはある

人を見送りひとりでかへるぬかるみ

ここにかうしてわたしをおゐている冬夜

いつでも死ねる草が咲いたり実ったり

ともかくも生かされてはゐる雑草の中

わかれてきた道がまつすぐ

旅はいつしか秋めく山に霧のかかるさへ

さて、どちらへ行かう風がふく

もう逢へますまい木の芽のくもり

乞ひあるく水音のどこまでも

誰も来ないとうがらし赤うなる

ひつそり暮らせばみそさざい

何を求める風の中ゆく

それもよからう草が咲いてゐる

死をまへに涼しい風

また一枚ぬぎすてる旅から旅

てふてふひらひらいらかをこえた

みんなかへる家はあるゆふべのゆきき

わたしひとりの音させてゐる

何おもふともなく柿の葉のおちることしきり

わかれて遠い人を、佃煮を、煮る

悔いるこころの曼珠沙華燃ゆる

産んだまま死んでゐるかよかまきりよ

けふは凩(こがらし)のはがき一枚

しみじみ生かされてゐることがほころび縫うとき

一つあれば事足る鍋の米をとぐ

ぢっと瞳が瞳に喰ひ入る瞳

風の中おのれを責めつつ歩く

誰を待つとてゆふべは萩のしきりにこぼれ

雨ふればふるほど石蕗(つわぶき)の花

ここに月を死のまへにおく

ごろりと草に、ふんどしかわいた

風のなか米もらひに行く

石に腰を、墓であったか





ちょっと並べすぎたきらいもありますが、このなんともいえない寂寥感が読む人の心をとらえます。行乞という、人に食べ物を分けてもらって旅をする山頭火にとっては、とにかく食べるものがないということが即、死につながることから、食べ物、特に米が出てくる句が多いです。これだけ自分を深く見つめる姿勢、ちょっと凡人には真似できません。





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