トシの読書日記

読書備忘録

4月のまとめ

2013-05-01 18:35:25 | Weblog
先月読んだ本は以下の通り


小池昌代「弦と響」
大江健三郎「宙返り」(上)(下)
関川夏央「知識的大衆諸君、これもマンガだ」
吉田知子「吉田知子選集Ⅰ 脳天壊了(のうてんふぁいら)」
堀江敏幸「雪沼とその周辺」
大江健三郎「二百年の子供」
アントニオ・タブッキ著 須賀敦子訳「インド夜想曲」
大江健三郎「取り替え子(チェンジリング)」
稲垣足穂「稲垣足穂コレクションⅠ  一千一秒物語」

以上、9作品10冊でした。仕事のキャンペーンがGW以降にずれ込み、思いのほか読めました。大江フェアも終盤にさしかかり、ますます充実した読書ができるよう、自分に期待します。



安藤書店へ行って以下の本を購入


中島義道「ニーチェ――ニヒリズムを生きる」
村上春樹「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」
ドナルド・バーセルミ著 柳瀬尚紀訳「雪白姫」


4月 買った本 7冊
   借りた本 7冊

ロートレックのオペラのビラ

2013-05-01 18:30:57 | あ行の作家
稲垣足穂「稲垣足穂コレクションⅠ―― 一千一秒物語」読了



家から車で15分くらい行ったところにある「安藤書店」。そっち方向にはあまり行くことがないのでその存在を知らなかったのですが、先日、ちょっと用事があってたまたまこの書店の前を通ったのでした。なんとなくひらめいて、数日後、その書店に行ってみると、自分のカンは見事に当たっておりました。こんな田舎にこんな本屋があるとは!

ちょっと見は普通の書店なんですが、この店には「奥の院」がありまして、そこには講談社の文芸文庫がほとんど揃っているわ、白水社のUブックも大量にあるわ、堀江敏幸の全著作があるわ、それからなんと多和田葉子の詩集まで何冊かあるのです。まさに宝の山で、気がついたら1時間半くらいそこに居ました。


ちょっと前置きが長くなりましたが、本書もその「安藤書店」で見つけたものです。ちくま文庫の「稲垣足穂コレクション」なんてそんじょそこらの書店ではお目にかかれません。


が、しかし、この作品集、ちょっとはずしましたねぇ。稲垣足穂を読むのは実は初めてなんですが、ちょっとオツに気取りすぎといった感が否めません。


足穂コレクションの収録作品を見てみると、「Ⅴ」に「少年愛の美学」とあり、これが多分足穂の一番有名な作品なんだろうと思います。例の「A感覚とV感覚」というアレです。このコレクションは、まだ今回読了した「Ⅰ」のみが既刊で、「Ⅱ」以降はこれから順次出版されるようです。まぁ気長に待ちますか…。

ゴブリンどもに子供を盗み取らせないために

2013-05-01 17:55:32 | あ行の作家
大江健三郎「取り替え子(チェンジリング)」読了


つい1年前に読んだものの再読です。これからの大江作品の数冊を再読するためにデビュー作からずっとたどって、やっとここにたどり着きました。


やっぱりもう一度読むと理解がさらに深まりますね。吾良(もちろんモデルは伊丹十三)が墜落死したことを長江古義人(もちろん大江自身)の妻、千樫が朝早く、眠っている古義人に伝えるところから物語は始まります。そして古義人と吾良との青年時代のエピソードが延々と続きます。その中で進駐軍の将校、ピーターとの出会い、そして大黄さんとその仲間がピーターを殺害したという事実。しかし、これは古義人はその現場を実際に見ていなくて、それが本当なのかどうなのか、あいまいなままになっている。その思いは吾良も持っていたと思うのだが、恐くてそれを質せないうちに吾良は死んでしまった…。


大江健三郎は「燃え上がる緑の木」三部作を執筆する前に、もう小説は書かないと宣言しています。しかし、親友の音楽家、武満徹の死によって、再度執筆活動にはいります。そして、この書き下ろし三部作で、自分が若かった頃、松山でのその出来事を作品に書く覚悟を決めたのではないかと思います。


それから、この小説は古義人の妻、千樫の存在も大きくクローズアップされています。千樫の兄である吾良が若い頃、松山でのピーターとの出来事以来、人が変わったようになってしまった。それをヨーロッパの古い伝説「チェンジリング」になぞらえて千樫の心情が綴ってあります。ここもなかなか読ませるところでした。


さて、次は第二部「憂い顔の童子」です。

自分を探す旅

2013-05-01 17:42:24 | た行の作家
アントニオ・タブッキ著 須賀敦子訳「インド夜想曲」読了



FM愛知、小川洋子の「メロディアス・ライブラリー」で紹介されていて、興味が湧いて買ってみました。

「イタリアのボルヘス」とも言われている著者だそうですが、どうなんですかね、この小説。ちょっと微妙でした。


失踪した友人を探しにインドに来た主人公が、ボンベイ、マドラス、ゴアと転々とし、様々な人に会い、不思議な会話を繰り広げるという物語なんですが、最後、偶然出会った女性とホテルで食事をしながらの会話。

女性に尋ねられて、自分は本を書いていると言う。その内容はというと、主人公は失踪した友人を探してインドへ行くと。本の中に本のことが出てくるという、まぁ時々見かける手法ですが、それが今ひとつ効果的でないんですね。

結局、ちょっとミステリー仕立てのにおいもするこの作品は、何をテーマにしているのか、何が言いたいのか、よくわかりませんでした。そんなものは度外視してとにかくこの小説の世界を味わえばいいと言われれば、まぁ納得はしますが…。


ちょっと不完全燃焼でした。残念です。