トシの読書日記

読書備忘録

自分を客観視する醒めた目

2011-12-21 17:19:21 | や行の作家
山崎ナオコーラ「手」読了



「ブ」で100円で出ていたのでなんとなく買ってみました。


なんだかなぁですね。軽い。あまりにも軽すぎ!


26才だか27才のOLが主人公なんですが、なんていうこともない子なんですね。10時半の出社なのに遅刻ばっかりしてるし、仕事もミスばかり、おまけに仕事が遅いので、自分の担当の仕事が終業時間に終わらなくて残業ばっかりやってるし、食事は、いつも一人、自分のデスクで昼はコンビニのサンドイッチ、夜はカップラーメン…。


そんな子なんですが、同じ会社の一つ上の男とつき合い始めるんですが、その男に彼女がいることも知っている。だから長続きはしないってことも承知してると。まぁそんな感じでだらだらと話が続いていくんですが、なんだか読んでてだんだん不快な気分になってくるんです。なんでかはよくわからないんですが。


今、自分のブログを見て、この作家の「浮世でランチ」ってのを読んで、この作家はつまらんみたいなこと自分で言ってました。懲りないっすねぇ…(苦笑)

あらゆる書物は孤独の象徴である

2011-12-21 16:45:26 | あ行の作家
ポール・オースター著 柴田元幸訳 「鍵のかかった部屋」読了



今まで、オースターの本は何冊か読んできたんですが、例えば「幻影の書」「最後の物たちの国で」等。しかし、本書はそれらの作品とは全く趣を異にしている内容で、これが同じ作家の作品かと、ちょっと驚かされました。


テーマが実に深い。ちょっとうまく感想が書けません。「孤独」ということなんでしょうが。


主人公の「僕」と幼なじみのファンショー。そのファンショーとは高校生くらいを境にしてずっと疎遠になってしまうのだが、何年も経ったある日、突然そのファンショーの妻と名のる女性から手紙が届く。夫であるファンショーが何ヶ月も前から失踪している。ついては一度お目にかかりたいと。


ここから物語は始まっていくんですが、息をもつかせぬ展開で、読む者をぐいぐい引っ張っていく筆力は相当なものです。しかし、内容はというと、なかなか手強いものがあります。


「僕」がファンショーの姿を思い描く場面、ちょっと引用します。

<だが僕の頭はいつも、ひとつの空間を浮かび上がらせるだけだった。せいぜい出てくるとしても、あるごく貧しい情景にすぎなかった――鍵のかかった部屋のドア、それだけだった。ファンショーは一人でその部屋の中にいて、神秘的な孤独に耐えている。(中略)いまや僕は理解した。この部屋が僕の頭蓋骨の内側にあるのだということを。>


作中に何度も出てくる「僕」の独白。非常に理解しづらいです。何度読んでもなかなか頭に入っていかなくて苦労しました。


<「読む」という行為は、他人(作者)の孤独の中に入り込んで、その孤独を自分のものにする。>  

であるとか、


<「読む」ことを通して、人はたえず自らの幽霊を産出し、自らを他者の幽霊に仕立て上げている。したがって、ある瞬間に、一人でいると同時に一人でいないということは可能なのだ。>

どうですか、これ。



素晴らしい作品であることは間違いないんですが、自分の頭のレベルが追い付いていないのが悔しいですね。


ストーリーじたいはすごく面白かっただけに、自分が歯がゆいです。残念。