トシの読書日記

読書備忘録

あらゆる書物は孤独の象徴である

2011-12-21 16:45:26 | あ行の作家
ポール・オースター著 柴田元幸訳 「鍵のかかった部屋」読了



今まで、オースターの本は何冊か読んできたんですが、例えば「幻影の書」「最後の物たちの国で」等。しかし、本書はそれらの作品とは全く趣を異にしている内容で、これが同じ作家の作品かと、ちょっと驚かされました。


テーマが実に深い。ちょっとうまく感想が書けません。「孤独」ということなんでしょうが。


主人公の「僕」と幼なじみのファンショー。そのファンショーとは高校生くらいを境にしてずっと疎遠になってしまうのだが、何年も経ったある日、突然そのファンショーの妻と名のる女性から手紙が届く。夫であるファンショーが何ヶ月も前から失踪している。ついては一度お目にかかりたいと。


ここから物語は始まっていくんですが、息をもつかせぬ展開で、読む者をぐいぐい引っ張っていく筆力は相当なものです。しかし、内容はというと、なかなか手強いものがあります。


「僕」がファンショーの姿を思い描く場面、ちょっと引用します。

<だが僕の頭はいつも、ひとつの空間を浮かび上がらせるだけだった。せいぜい出てくるとしても、あるごく貧しい情景にすぎなかった――鍵のかかった部屋のドア、それだけだった。ファンショーは一人でその部屋の中にいて、神秘的な孤独に耐えている。(中略)いまや僕は理解した。この部屋が僕の頭蓋骨の内側にあるのだということを。>


作中に何度も出てくる「僕」の独白。非常に理解しづらいです。何度読んでもなかなか頭に入っていかなくて苦労しました。


<「読む」という行為は、他人(作者)の孤独の中に入り込んで、その孤独を自分のものにする。>  

であるとか、


<「読む」ことを通して、人はたえず自らの幽霊を産出し、自らを他者の幽霊に仕立て上げている。したがって、ある瞬間に、一人でいると同時に一人でいないということは可能なのだ。>

どうですか、これ。



素晴らしい作品であることは間違いないんですが、自分の頭のレベルが追い付いていないのが悔しいですね。


ストーリーじたいはすごく面白かっただけに、自分が歯がゆいです。残念。

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