こまったぁ!まいったぁ!お手上げだぁ!
菜の花座の花形スター!になるはずの、役者文ちゃんが飛ばされちまった。春の嵐にかっさらわれて、海辺の町に転勤だよ、転勤。まさかね、移動になるなんて、ゴキブリの涙ほどにも思わなかった。何を根拠に?そりゃありますよ、ファイブ(5)ドア冷蔵庫みたいな動かし難い根拠が。でも、長くなるし、当事者以外には通じにくい話だからここでは触れない。こんな天災が、うん、天災なのか?いつか襲ってくるとは思っていた。しかし、今回か?よりによって、今年なのか?
菜の花座のユニークさの一つは、置賜農業高校教員が、やたらと団員にいるってことだ。僕を含め、現在4名。4月からさらに一人加わるので、5人になるはずだった。一つの高校から5人だよ。考えられない話しだ、日本の文化貧困状況からは。もう、文化庁やら、文科省から表彰されたっていいぐらいのもんだ。
教員が多いからには、転勤・移動による退団は折り込み済みではあった。けど、まさか、今回、けど、なんで、文ちゃんなんだよ。文ちゃんは、次回公演で一躍スターの座に躍り出るところだったんだ。彼の役者歴はを見れば、それはもう、誰もが納得いくってものなんだ。
初舞台は、ヤクザの若頭、セリフは、うっす!だけだった。なのに、客席は爆笑の渦。出てきただけで拍手が起きたのは、菜の花座で文ちゃんだけだ。次の舞台は、おかまバーのママさん役。髭の剃りあと青々と、柔道仕込みのがに股を無理矢理、内股に変えて(お陰で、股ずれができて、その後しばらく苦痛を訴えていた)、言うまでもないね、もう、人気沸騰だった。そして、前回は、こわ~い女将さんと、きかない女板前に挟まれて右往左往する、気の弱い旅館の主人って役所。ほとんど出ずぱりなのに、会話からはじき飛ばされてるって、つらい立場をよく演じきった。
と、こうくれば、次は主役でしょう。次回七月公演は、彼の特技と特異なキャラを最大限いただいて、チンドン屋でいこうと決めてたわけなんだ。詳しくはこのブログの『チンドン屋の本当』を読んでほしい。あの文ちゃんなんだよ。どうする!どうする!!どうする!!!もう書き始めてたのに。劇のクライマックスは彼の路上ライブって決めてたのに。人の心はおろか、身体だって揺さぶる、文ちゃんの熱唱シーンを思い描いていたのに。恋人役だって決めてたのに!えっ、ほんと!なら転勤やめるって戻ってこねえか?
もう、やけ酒しかないね。焼酎煽って、校長呪って、文ちゃん偲んで、あっ、そうか、死んだわけじゃない。でも、死んだも同じ。死ぬよりつらい生き別れ。それよりむごい、主役失踪!今夜一晩、悲しみと絶望を相手に酒を酌み交わすしかない。
ああ!どうすんのよ、公演台本!