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たかはしけいのにっき

理系研究者の日記。

公開実験を中心とした「顕微鏡観察学会」立ち上げの構想

2014-03-17 03:59:08 | 自然科学の研究
 夢は書いてしまったほうが叶いやすい。そして、夢を持っているなら、みんなに言いふらすことが大事だと思う。
 だから、今日は、俺の夢を話してみようと思う。具体的で頑張れば実現可能である夢を。なるべくなら3~7年くらいで達成したい。

 俺の具体的な夢は一言で言える。公開実験を中心とした「顕微鏡観察学会」を立ち上げたい
 これを達成することで、俺の手元にコスパーよく、透明性の高い本質的な実験結果が勝手に入ってくるシステムが出来上がる。

 俺は学会に行って「公開実験」というシステムが無いのが一番残念だった。
 顕微鏡観察くらいなら、研究者・大学院生・学部生に向けて、100~200人くらいが同時に、みんなでその場で重要な実験を見学することができるんじゃないかなっとずっと思っている。


 まず、自然科学における研究社会の今の現状の問題点を以下に述べ、その上で、公開実験を中心とした学会を立ち上げることで、解決される点を挙げる。

 問題点[1] 捏造し放題な研究成果

 最近のSTAP細胞についての報道で、捏造し放題な実験研究の現状と問題点は述べるまでもないと思う。今の実験研究は、実験者・研究者の性善説が前提となっており、そのチェックをすることは、これだけ多くの分野が存在している研究社会のなかで、原理的に誰もできないし、無法地帯と化している。STAP細胞の例は氷山の一角であり、もっと巧くばれないように薄暗闇に隠れて捏造しているクズ研究者は、特にシニアの先生方を中心に、実はとても多いと俺は思う。
 捏造とか改竄って、ほんのちょこっとだけエンハンスすることから大胆なケースまで様々で、それをいちいちチェックするなんて、今の研究のアウトプットの仕方では無理だ。

 しかし、みんなの前で実験する場を作れば、簡単に改善される。解析も全部みんなの前で行えるようにすれば、そもそも捏造自体が減ると思う。論文で大々的に発表しているのに、公開実験を断るようなら、それは捏造を疑われても仕方ない、というような空気感を創りたい。

 問題点[2] 本人達にとって都合のいいストーリー

 いま、同一研究室で出版した原著論文・学位論文、学会発表の多くのイントロダクションがほぼ同じであるような、無意味な作業が研究業界では横行している。こんな現状で、学生が主体的に研究に取り組めるわけが、そもそもない。大学院生を学生ではなくコスパーの良い作業員だと思っている大学の教員はとても多い。どこの研究室に入ったかが唯一大事で、そこでワーカーホリックになることが成功への近道、と推進しているような我が科学立国なのだ。
 多くの日本の大学の教員は、同じストーリーや同じ内容でしか英語で論文を書くことができないために、こういうことが起きているんじゃないか、と疑うレベル(笑)。

 実験の観点からすれば、自然現象にストーリーなどそもそも要らない。その現象や物理法則をいくつかの論理で簡単に示せないなら不必要な研究なのだ。
 ストーリーを造ることが大事で、そういう書き方を学ぶ場が大学院教育であると主張する、やる気の無い教員・研究者は、いますぐ大学・研究機関から去れ。カネを払ってるのは我々であって、大義名分のつけ方や誤魔化し方を学ぶために大学に来たわけじゃないし、それらを社会に提供させるために、てめーらに税金という名のカネを払ってるわけではないのだから。

 我々は、何らかの重要な自然現象を解明するために、新しいモノづくりをするために、研究を遂行している。それが最も大事であり、こういう当たり前さを忘れちゃダメよねん。
 本人たちにとって都合のいいストーリーを造り、自分にとって都合の悪いデータは無条件で捨て去り、無意味にデータ数だけを沢山稼ぎ、そういうことを推奨することで生き残るために、わざと無法地帯化させている今の研究の現状を少しでも変えたい

 そのためには、シンプルに、みんなで、自然現象を観ようじゃないか、っと俺は思うのだ。

 そうすれば、少なくとも今よりは、透明性が上がり、「あれ?意外と視野を探さないと見つからないのね。」とか「10回に3回くらいしか成功しないのね」とか、そういうことが共有でき、理論研の人達に対して正しい自然現象が提供され、自然現象の理解に大きく寄与すると思う。

 問題点[3] 共著者のコントリビュートのばらつきについて

 いま、論文でも学会発表でも、ファーストオーサーとラストオーサー以外大した業績にはならない。これに意義を唱えるキレイゴトを並べんじゃねーぞ、マジで(笑)。
 しかし、公開実験での著者は、公開実験に参加しないわけが無いので、必然的に業績や功績として評価されるようになる。しかもみんなで観る訳だから、どれくらいコントリビュートしているかは、その分野の人であれば、一目瞭然だ。

 現状、研究のアウトプットは主に、原著論文と学会でのポスター発表や口頭発表。これは発表の仕方が決まっていて、イントロ書いて、結果書いてー、ってよーするにストーリーが重要になる。これだけなので、実験技術がとても優れていて、その人しかできない技術みたいなものが一切評価されていない現状なのだ。
 みんなの前で実験するためには、めちゃくちゃ器用じゃなきゃいけない。その緊張感に耐えられるような実験者は評価されるべきだと思うし、そういうチームも評価されるべきだ。

 公開実験をすることで、共著者のコントリビュートが明らかになり、公平性が増すと思う。


 さて、次に、どういう感じで、学会の公開実験を実行していくかを述べよう。

 1.企業ブースとの併合

 今、ほとんどの学会の企業ブースは意味が無い。わざわざ顕微鏡や装置が揃っているのに、どうでもいいサンプルで、「あー観えますね」って言って、パンフレットもらって、ボールペンとかもらって、終わり。何も価値が無い。

 でも、「あのネーチャーに載った有名な実験が、今度学会で公開実験するんだって。装置は、オリンパスのを使うらしいよ」「あ、こっちの公開実験は、ニコンとキーエンスのを同時に使うみたい」ってなったら、企業側のCMにも一役買えるし、何よりも「どの顕微鏡がいいか?」というディスカッションになる。

 2.公開実験レフェリーの設置

 公開実験には、成功・不成功を判定するレフェリーを何人かつける。これによって業績化し、いずれは、実験研究者最大の業績を「公開実験の成功」としていきたい。
 審査の仕方をどうするか、これは大事なんだが、まだ思案中。とりあえずは、原著論文と同じデータをみんなが観ている公開実験の会場で出せたかどうか、で判定したらイイと思う。

 3.インカムと録画

 第一実験者は、インカムで、みんなに説明しながら実験をする。
 聴講者およびレフェリーは、実験中の質問時間に、第一実験者とラストオーサーに質疑応答ができるようにする。そうすれば、リアルタイムで、その実験の臨場感をみんなで感じることができる。
 録画して、その動画を公開して、必要で重要な実験は、いつでも誰でも観れるようにする。


 っというのが、俺の夢でした。大したことないな、くだらない、無謀すぎる、、って笑ってみて?

 この夢を叶えられるかどうかは、みんなの自然科学が好きという純粋な気持ちにかかっている。

 ほんのちょっとだけでも誤魔化して行きながら、自分が研究の世界で生き残るための大義名分をつけながら、今のシステムの中で、なぁなぁに、ただ単に研究者として生き残りたいという人が多ければ、絶対に達成されない

 明らかに透明性を上げるシステムを創ろうとしたときに、それが実現できないならば、それは、自然科学が好きじゃない、何かで成功したいだけの人間が、たくさん研究者として無意味に生き残っている証拠であり、そんなんなら、研究社会など凋落してしまえば良いと俺は思っている。
 いや、俺が生きている間に、日本の自然科学における研究は、必ず凋落する。そのときに、唯一立ち上がれるのは、透明性をあげてあった、必要な研究のシステムと研究内容に予算がかけられていた、という事実のみだ。

 さしあたり、規模を最小限にすれば、100~300万円くらいあれば、できてしまうと思う。
 科学立国、日本の未来のため。だから、誰か、ギブミーマネー。(笑)

科学における不正行為 -STAP細胞の報道について--

2014-03-15 05:00:29 | 自然科学の研究
 『あのー、はっきり言いますけど、そういうデータの見せ方ですと、、あくまで極端な話ですよ、データの捏造や改竄だと勘違いされても仕方ないと思います。』

 研究の世界に入って5年。捏造とか改竄などの科学における不正行為の言葉を、サイエンスの会合の場で俺が発言したのは、たったの1回だけだ。まぁ、こういうことを言えば、無難な他の聴講者がざわつくわけだけど(笑)、そういう空気がそもそもいけないのかもしれないね。
 もっともっと疑って、偽造をすることを前提に色んな事を考えなくちゃいけないんだろうか?

 昨日の理研のSTAP細胞の疑惑に関する中間報告の記者会見、他の作業をしながらではあるけど、ほぼ全部観ました。
 記者って、すごくちゃんとオフェンスするんやね、ってのが正直な感想で、だいたい俺が言いたいようなことはきちんと質問が出てたし、誰か一人の責任に落とし込んで済ますような流れではなかったと思うから、かなり希望を持てました。

 この件に関しては、自然科学における研究、まぁ少なくとも実験研究における重大な事件であって、これを機に、様々な科学の習慣を考え直さなくちゃいけない。

 俺が権威によるくだらない空気や慣習を突き破ってめちゃくちゃ本当の事を言うよりも、ぜんぜん、世間一般の大衆に任せるのが最もコスパーの良い透明性のある科学へと変わっていける方法なのかも。

 研究に関わる人は、決して、STAP細胞の疑惑を、他人事のように扱わないでね。
 同じ理系でも、他人の事は、どーせわかんねーし、そんな暇じゃねーし、って一般聴衆と同じ反応をしていても平然としていられる、その態度こそが、こういう問題を引き起こすのだから。

7、物理から観る生物-モノサトリ、バケマナビ、ナマモノ、チマナビのIntroduction

2014-03-11 03:48:27 | 自然科学の研究
 このシリーズを更新するのも1年と3ヶ月ぶりくらいですね。忘れてはいないんですが、どうしても。。
 ちなみにこのシリーズの名前は、高校時代、理科の科目の名称をふざけてこう呼び合っていたことに起因しています。特に意味は無いんですけどね。

 さて今回は、生物物理、みたいな話をしたいと思います。
 生物物理、っていうとアクチン骨格の話を想像する人が多いと思いますが、俺が話したいのはそうじゃなくて、むしろ、専門が物理の人が生物を扱うとき、って意味での生物物理。最近こういうほうが生物物理ってしっくり来る気がします。

 いま物理学科で、これから生物やりたい、って人は是非読んでみてね。

 まず、ぶっちゃけておくけど(それが売りなので)、物理の人が、生物物理の研究室を選ぶ大半の理由は、「大学で物理がわけわかんなくなったから」だと思う。笑
 この構造は日本である限り少なからずそうだと思うし、生物業界のなかで物理学科出身の人を見つけると嬉しくて物理の話をしてみるんだけど、どうも話が合わない。限定的もしくは現象論的な数式については得意だけど、決して物理が得意なわけではねーんだな、ってのが生物物理を専門とする人のイメージです(あくまで俺の意見ね)。

 とか言ってる俺も物理学科出身で生物をやってるわけですが、少なくとも卒研では物性理論(低温物理)の研究室にいたわけで、これから物性理論の研究室に移動して、なんらかの結果を出す自信は今でもあります(慣れてないので時間はかかると思いますけど)。なので、お前らとはちげーんだよ、ってわけじゃないですけど、卒研から生物物理じゃないだけ、少しは物理そのものができると思いたいです(笑)。

 物理そのものが苦手タイプの生物物理屋さんは、生命現象をムリヤリ物理で習った式や論理に落とし込むのが大好きです。
 調和振動子型ポテンシャルになります!とか、それが等速で伝わって全体で波になります!とか、カノニカルアンサンブルが使えます!とか、どうにかシンプルにして、すでにある、しかも超簡単な学部レベルの物理に落とし込んだり、キーワードだけ使ったりするのが、好きなのです。

 そうすると何が起こるかというとですね、、生物物理では、細胞や生物由来の物質を使った「無意味な積み木」をしている研究が多いのです(あーぁ、また思ってること言っちゃった、また何か言われる笑)。
 (俺も含めてですが)よーするに、生物物理屋さんは、単に「めんどうな生物系」であるケースがほとんどです。これならよっぽど、論理的思考力が弱くても、単なる生物系のがマシかもしれません。

 前からここでちょくちょく言ってることですが、「生物物理」の心というのは「生命とは何か?」ということを今までの物理とこれからの物理を見極めながら考えていく行為だと思いますので、めちゃくちゃ本質です。
 でも、やってる人が、その域まで行けるはずが無い努力の仕方をしてる部分が大きくて、なかなか認められないところがあるのかもしれません。

 今後、これから、物理から出発して生物を目指すならば、学部の物理学が苦手では絶対にダメです。

 力学も解析力学も電磁気学も量子力学も熱力学も統計力学も物性論も相対論も相対論的量子力学も、全部一通り、理解していなくては、「物理から観る生物」なんて扱えるわけがないんです。
 これら「精緻な論理」をしっかり学んだ者でないかぎり、「生命とは何か?」なんて超難解な問題に、太刀打ちできませんから。まぁ、「生命とは何か?」に立ち向かっているフリはいくらでもできるかもしれませんし、所詮ポピュリズムである「生命起源」についてはテキトーなことが言えるかもしれませんが。

 物理学の特殊性によって得られるはずの圧倒的な思考力を、ちょこっとしか得ていない程度の思考力で、生物学の研究をすることは確かに意味があることでしたが、そんな人は、もうすでに沢山いるわけで、今はあまり意味がありません。

 なので、これからはもっともっと、物理そのものをきちんと学んだ人が、生物を研究して欲しいものだなぁ、と未熟者ながら思います。そうすることで、無意味な積み木を、いかにして有意義な積み木にするか、考えるだけの頭を持った人が多くなりますし、本質的に必要な理論を考える人が増えます。

 まぁ、今いる場所は、まだ、物理が得意な生物物理系が多い環境ではありますが、俺は、(研究の世界で)生き残ることが目的ではありませんので、生物物理系の人の多くが抱えるウィークポイントをクリアするために、有機化学の研究室を選びました。
 生物をいきなり物理で語れるわけがなくて、有機化学で記述される分子の性質に一度落としたうえで、生物を物理で語る必要があると直感的に思ったからです(それが正しいかどうか今もわかりません)。何か苦手なことを克服したかったら、それらが当然行われている環境を選ぶのが最も手っ取り早いですから、みんなが化学が得意な環境を求めていましたし。

 そんな俺が、さらに次の一手を選びかけている。きっと、すごいことが起こせる。
 未来に挑戦しようという気持ちが胸中に湧き上がるのを感じる日々である今が一番輝いているのかもしれない、と感じると、少しずつ元気を取り戻していくことができる。

 失敗してもまだ大丈夫。27歳になって、自分の若さを確認するために、自分の皮膚は水を弾くほどの疎水性があるかどうか確認してみたが、まだなんとか大丈夫だったし。
 ね、生物物理だからこそ、化学や物性の知見が大事なのだよ。(笑)

「書ける」の科学 -STAP細胞の報道について-

2014-03-06 03:52:04 | 自然科学の研究
 何回かこの記事を書こうとして、断念したり、途中でお蔵入りにしてきましたが、今日は書き切ろうと決心をしています。
 STAP細胞に関連する報道と研究のあり方について。研究の内容については、そんなこともあるのかなぁ、pH5.7の温泉に入りながらごはん食べれば俺の上皮細胞もES細胞likeになるのかなぁ(ex. 岩手県松川温泉pH5.7)、なんて、正直少し懐疑的ですが、それよりもむしろ、研究そのものについてのほうが、考えさせられます。

 もしも、何かの拍子にマスコミに乗せられて、研究テーマが世に広く知れ渡ることになったとしたら、多くの研究(少なくとも生物を対象としているもの)が、STAP細胞に関連している今の状態のようになると、俺は思う。それほど、研究というのは、あやうい梯子の上でふらふらしているのだ。

 まず、一般の方、研究に携わってる方でも理論系の方に向けて、はっきりと主張しておくけど、「再現ができない」というのは、非常によくあることなのです(それでイイかどうかは別としてね)。
 その人しかできない、みたいなヒト依存性。夏にしかできない、みたいな季節限定系(湿度や温度が関係?)。高い建物だとできない、アメリカだとできない、などの空間依存性。この試薬メーカーのこの品番じゃないとできない、みたいな精製および合成過程依存性。

 実験研究は現実と向き合う行為なので、高校の実験の時間や学生実験のように、そんなに甘かーねーんです。
 「再現ができない」くらいで、その研究があやしい、なんて言ってたら、多くの研究は捏造であることになってしまう(それが真実なのかもしれないけど笑)。

 そして、それに追随する、もっともっと大きな問題があります。それは、自然科学の研究では、「書ける」の科学なんです。
 大学の超エライと言われている大先生や有能だと思われている大学院生は、よく、バカみたいに、「書ける」と言います。それは、論文が「書ける」、(科研費や学振の)申請書に「書ける」、学会の要旨に「書ける」、という意味です。
 「書ける」ということが、研究者として、研究者を目指す上で、最も大切であり、すべては「書ける」に結びついていなければ意味が有りません。つまり、例えば多くの先行研究とまったく異なっているがゆえに、なかなか「書けない」ような科学の事実を追究し続けることは、(研究者のレゾンデートルを守る上で)まったくもって意味が無いのです。

 「書ける」ためには確かに再現が必要なんですが、生物系の暗黙のルールで、だいたいのものは3回再現性がありゃーいいのです。生物学や化学をプロパーとする連中は、誤差論が(数式が?)得意ではないですから、とにかく3回、って、エライ先生でも覚えてしまっています。つまり、実際には、夏にしかできなくても、10回に1回しかできなくても、嘘を言わなきゃよくて、何かを言わないというのはルール違反では決してありませんから、とにかく3回、再現が取れれば発表してしまいます(これをやってるだけでも真面目だと思います)。
 おそらく、発表されている論文や学会発表したデータの再現をまったくの同レベルで1年以内に実行せよ、と言われたら、半分くらいのラボができません(俺がいくつかのラボに所属している経験があるのをお忘れなく)。だから、それを、高々1ヶ月程度で理研のこのチームに求めるのは、酷というものです。

 生物系のネタが多いNATURE誌ですが、誤差の議論の苦手さ、枚挙的な価値観の現れから、とにかくデータ数が多いのが特徴です(通称データ数だけネーチャー)。回数を誤魔化すために、母集団や要素を多くするのです。ワーカーホリックになってしまうんじゃないか、というくらい、この雑誌は、とにかくデータ数を稼がなくてはいけません。
 ですから、また、それを全部再現しろ、っというのは、もうすでに、無理があるんですよ。

 そうそ「書ける」ことが唯一無二に大事ですから、内容のどうでもイイ部分は、コピペで全然構いません。
 マテメソをコピペすることはよくやることだし、それでいちいち盗作だ、なんて、きちんとサイトされていれば誰も言いませんよ(ちなみにこの論文のなかのKaryotype解析で用いている多色蛍光in situハイブリダイゼーション法はきちんとサイトされています)。そんなことよりも、KC1、ってなってるのに、そのままパブリッシュしてしまうNATURE誌のエディターやレフリーのほうが問題です。

 今回、マスコミにとって、持ちあげやすいファーストオーサーだったのですね。

 若手、女性、AO入試で大学に合格、深夜まで論文を100報近く読み米国の研究室ゼミでその発表が絶賛される、データ数の多さを誇るNATURE誌に掲載、セレンディピティーによる発見。
 まさに、きちんとした理解をせずとも、ワーカーホリックとなっていれば、いずれ幸運が訪れる、というサクセスストーリーが「書ける」ことが好きな、やる気の無い多くの日本人にウケが良さそうな情報ばかり。
 おそらく、報道とは大きく異なり、実際のところ、この人自身はめちゃくちゃ有能な人なんだと思う。

 決められた枠組みのなかで、真面目に努力したことを発表しただけで、、とは思うけど、それほどの効果をもたらすためには、もう一歩上の階層を考えなくてはいけなくて、枠組みそのものを問い直す必要性を、たった一人の、しかも若手研究者にすべて求めなくてはいけない、、んだろうか?それは、少しオカシイことだと俺は思う。
 だいたい、このファーストオーサーを若くしてリーダーに仕立て上げて、オイシイ思いをしているおっさんがいるはずで、そういう人間が周辺を固めなくちゃいけないんだよ。

 でもまぁ、だからこそ、このケースを我々は真摯に受け止めなくてはいけない。
 実験研究のアウトプットの仕方および自然科学の研究そのものの行く末をきちんと考究しなくちゃね。

 尊敬する、ある理論系の先生が、「理論は図なんだよぉ!」っと仰っていた。まさにその通りで、数式は、自然を語る上での道具の一つに過ぎないのだから、むしろ、その大元をそのまま記述した図の方が的を射る可能性は高い。
 理論でも、実験でも、「書ける」よりも、まずは図が描ける、というほうが大事なんじゃないかと思うのだ。

 それにさ、そもそも、再現性があることがイイ、って決めつけが、常に正しいとは限らないでしょ?
 そりゃ「書ける」上では、大義名分的に大切なんだけどさ。

 松川温泉で自らの皮膚を万能細胞として培養しながら、そんなことを考えるくらいのバカさ加減が、研究には必要なのだ。

研究室ゼミの理想 - 研究室を準拠集団にするために -

2013-05-13 01:14:36 | 自然科学の研究
 昨年のクリスマスイヴに書いた「研究室の選び方 - 『このラボだっ!』と決めるその前に -」が、かなりアクセス数を伸ばしてくれていて、皆さま、ありがとうございます。
 googleで「研究室 選び方」で検索すると一番はじめにでてくるので、マジでちょっと怖いですが(笑)、何か参考になるところがもしあれば幸いです。

 っというわけで、今回も、このページの総アクセス数を増やすために(笑)、この記事を書きます。

 どこの研究室でも、たいてい週に一度、論文紹介をしたり、進捗状況を話したりします。それを「研究室ゼミ(ラボミーティング、研究室セミナー)」と言います。
 俺は昔から研究室ゼミに不満を感じることは多くて(笑)、もっとこうしたらいいんじゃね?、ってことを周囲の皆さんに言わせてもらっていると、「じゃー、どういうのが理想なんだよ!」と言われることが多いので、書いておこうと思います。

 心の底で、研究室のゼミは非常に無駄だ、っと思っていたり、くだらない、っと思っている方は、実はかなり多いんじゃないかと思います。
 この記事では、主にその方たちに向けて、これから何ができるか、を語りたいと思います。

 まぁ、僕はただの学生なので、まったくなにもわかってない学生が…ぅんたらかんたら、、って感じで、読んでみて下さい。


 研究室で生活するために、かなり重要な割合を占めてくる「研究室ゼミ」。
 研究室を準拠集団(各々のメンバーが心から所属していたいと思っている集団)にするためには、「研究室ゼミ」がその命運を握っている、と言っても過言ではないと思う。
 なので、より良いゼミを効率的に実施するために、何が大切で、何が必要で、何が不要で、何がカギなのかを、ポイント別に話したいと思います。

 [1]全員が喋る

 研究室のゼミで一番大事なことは、全員が喋ることです。
 全員ってのは、本当に、全員です。学部生も、入ったばかりの院生も、テクニシャンも、例外ではありません。全員が喋る、ってことが、めちゃくちゃ大事です。

 研究室のメンツって、多くても20人です。しかも、90分以上の時間を要することが多いです。全員が喋れるくらいの時間は余裕であるんですが、それでも、たいていのラボでは、喋る人が決まってしまっています。
 ディフェンス(発表者)側が喋るのは当然ですが、オフェンス(リスナー)側もきちんと喋らないと、良いゼミにはならないし、(ゼミを通して)信頼関係を築こうとするなら当然ですよね?

 実は、学部生やM1ってのは、質問しやすいはずなのです。だって、研究内容について、よく知らなくて当然ですから。
 にも拘らず、入ってきたばかりの学生の多くが質問しないなら、それは、スタッフと上級生が悪いです。質問しやすい雰囲気を創る、ってことが意識できていないのです。
 どんな集団でもそうですが、何でも発言しやすい雰囲気は、創ろうと想わなければ発生しません。前にも書きましたが「異常」になりやすい研究室内の空気ですから、研究室ゼミで、ディフェンスとPI(Principal Investigator)だけしか喋らなかった回が一回でもあるラボは、その根幹を疑うべきです。根深い問題が出てくるはずだろうと思います。

 では、全員が喋る為には、どうしたらいいか?
 簡単な解決策は、オフェンス側でよく発言する人が、(オフェンス側のとき、ディフェンス側のときに関わらず)それとなく喋らない人に対して意見を求めれば、みんなが強制的に参加せざるをえません。これは即物的な解決策ですが、まず、すぐできることとしては、どんなラボでもできることだし、簡単です。

 研究室で一回もオフェンスしたことが無い人、オフェンスできない人が、すぐにできるオフェンスのやり方があります。
 「○枚目のスライドの、その部分、よくわからなかったんで、もう一度説明してもらってもイイですか?」
 俺も、昔(っと言っても学部3年生以下のときね、ふっふっふ(笑))、よくこの質問ばかりをしていました。っというか、この質問は、学会でも、セミナーでも、出無さすぎです。こういう質問は、もっとあってしかるべきで、日本の研究者やその卵たちが、いかに不勉強で、わかったフリばかりをするのかを物語っています。

 拙くても、幼くても、くだらなくても、全員が喋ることが達成されるなら、まずは、それでかまわないのです。
 まずは、全員が喋る、っということで、スタートラインに立てます。全員が喋るゼミをすることは、ゼミとしての最低ラインです。
 これができていない研究室は、英語でゼミを行う、などの、わけのわからない自己満足をする前に(メンバーに外国人がいるならある程度は仕方ありませんが、英語を支持しまくる理由は、自然科学、自然現象とは解離していることをもっと思いだして下さい)、まずは全員が喋ることを目標にすべきです。(ちなみに、[1]と[2]ができている研究室のみ、英語でゼミを行う価値が本当にあります。)

 [2]アウトラインを質問しその答えを全員で考える。

 はっきり言いますが、(少なくとも日本の)ラボには、知識自慢をするオフェンスや細かすぎるディテール(詳細)を質問するバカが多すぎます。
 知識自慢や細かすぎるディテールの質問は何も生産しないどころか、入ってきたばかりの人に質問しにくい空気を形成させることにものすごく寄与しますし、自分勝手で迷惑で、何より時間の無駄です。

 ディテールを質問すれば真面目で有能だと思われる、っという幻想は、ラボに入ってから、なるべく早い段階で捨てましょう。
 細かいディテールの質問や知識自慢をしてイイのは、入ってきたばかりの人だけです。喋ることがないから、仕方なく頑張ってる感をアピールするために質問する、ってのが許されるのは、一番年下の特権です。
 M2やドクターの学生はもちろん、PIやスタッフがするなんて、以ての外。本当にディテールを質問したいのなら、発表終了後に、個人的に訊くべきです。なるべく、全員で共有する価値のある質問をすることができるように、努力しましょう。

 ディフェンスには、アウトライン(大きな流れ)があります。論文紹介でも進捗でも、研究背景から問題点を述べてフロンティアラインを示し、本研究の目的を述べ、それに至るためのメソッド(マテメソ)を主張し、結果を示し考察し、結論を述べます(+今後の展望)。
 その流れの中で、論理的な解釈をしようとしたときに、純粋にわからなかったところを明確に示せば、それが本質的な質問になりますし、周囲は勝手に優秀な人だっと思ってくれます。そのほーが手っ取り早いし、全体の理解を活性化するじゃないですか。

 それから、科学的主張や根拠となるデータに懐疑的な意見を述べたい場合もあるでしょうが、その場合にも、なるべくアウトラインに即し、質問者がその解決策まで考究すべきです。
 問題点の指摘は中高生でもできます。必ずしも解決策を見出す必要はありませんが、重要なのは解決策を見つけようとすることであり、そういう風なことを考えないで、ディフェンス側にすべてをまかせるようなオフェンス、つまり、投げっぱなしの質問は、なるべく避けた方がイイでしょう。

 一つの問題に対してみんなで解決策を探る、っというスタンスこそが、信頼関係を生むからです。

 [3]他のメンバーの発言を意味のあった行為に仕立てる。

 正直、[1]と[2]だけで、俺はかなり満足しますが、その上のランクを目指す時、一番に必要になるのが、これです(なので、ここからは、かなりアドバンスな内容になります(笑))。

 [1][2]ができている研究室ゼミでは、多角的にいろんな発言が出るでしょうから、その場合よく起こることなんですが、せっかく誰かがやっとの思いで発言したことなのに、無視されがちになってしまったり、アイツはやっぱダメだなーってなっちゃうことがあります。
 こういう時、率先して、さっきの発言を持ち出して、「先ほど○○君が言ってたことに似てるんですけど、これこれはー…」っと、あまり関係無いことでも、ちょっと偽でも、発言できたなら、それをされた人は、「さっきの発言は意味のあることだったんだー」ってなって、次に発言するときに臆病にならなくなります。

 簡単に言えば、「軽く褒める」のです。
 ディフェンスでもオフェンスでも、ちょっとでも誰かに認められる、っということが、どれほど救いになるか、それは、自分自身の胸に手を当てれば良く分かることだと思います。自分がされて嬉しいことは、他人に率先してやってあげてね。

 「嘘はいかん!」っと仰る思考力の乏しい方もいらっしゃると思いますので(笑)、述べておきますが、どんなに本研究のアウトラインを喋っていても、未来を創るために行う行為である研究ですから、それ自体に価値はありません。
 「未来」を見つめるのが大事であって、そのために、研究室内のほんのちょっとの偽で、やる気をだしてくれるなら、そのほーがいいじゃないですか。「あの時は、あー言ったけど、本当はさー、」っと言えるくらいの信頼関係をすぐに築くためにも、相手の意見を無理矢理受け止める、ってとっても大事なことです。

 これは、多数決で決まっている意見の反対の意見を粗末にしない、っということにも繋がります。「全員一致の決議は無効である」という社会科学の考え方もあります。
 先生を中心とする空気に飲まれすぎてはいけませんよ。

 [4]発表人数と時間について

 さきに結論を述べます。週一のゼミで、
 ・理論研(シミュレーションのみも含む)の場合、最大2人まで3時間以内。
 ・実験研の場合、1人のみ2時間以内。
 が理想です。

 [1]と[2]を前提にして考えた場合、これ以上やることに意味はありません。まず集中力が持たないし、みんなが発言して、本質的な質問ばかり出ていたら、時間はすぐに経ってしまうでしょう。 

 理論研は、ディスカッションが命です。なので少し長めにしてみましたが、やっぱりダラダラ喋って得られる智慧は少ないはずです。
 実験研は、ディスカッションも大事ですが、実験操作を共同でやることも大事です。なので、理論研よりも短くしました。

 こうすると、ディフェンスが回ってこなさすぎてダメだ、っとなりそうですが、それは、関連する人同士のミーティングや自主ゼミなどで補えばイイですし、そもそも、各々の院生やスタッフの発表の場が、研究室内のゼミだけしかないようなら、それこそが問題なのです。
 強くなるためには、どんどん、よそで発表しないといけません。これを見て下さっているPIの方で賛同してくださる方は、ぜひ、色々な発表の場を与えることを、検討なさってみてください。

 [5]みんなが楽しいと感じるゼミにする。

 本当は、実は、これが一番大事なんですよね。でも、みんなで楽しむためには、[1]~[4]が必須だと思います。

 いくつかメソッドがあります。

 まずは、日常用語を織り交ぜながら、発表したり質問したりしましょう。専門用語はカッコイイですが、入ってきたばかりの人にとっての耳慣れない言葉は恐怖でしかありません。ですから、専門用語と日常用語は、半々くらいに使い分けられたらイイと思います。
 逆に、日常生活で、ちょこっと専門用語を使ってウケを取ることも大事なことですね。

 あとは、発表内容に冗談を一つは入れるようにするとイイと思います。
 なかなか難しいですが、楽しませようという心は伝わります。それが滑っても、無反応でも、やったことに意味はありますから、チャレンジしてみたら面白いと思います。 

 内容が選べる場合は、なるべく引用数が多い論文や一般関心があるテーマを選ぶことが大事です。論文紹介なら、NatureやScience、PRLやJACSやCELLから、選ぶと良いでしょう。
 それだけ、その発表の価値を認めてくれるはずだからです。


 もし、[1]~[5]までをきちんとできるラボなら、間違いなくそのラボはみんなにとっての準拠集団です。
 そうならない限り、本当の意味で、楽しいモノづくり、価値のある研究は、できません。信頼関係こそが、良い研究を行う酵素なのですから。

 たかがゼミで、これだけのことができてしまうなら、とってもコスパーがイイし、楽しい。
 ね、もっと真剣に、研究室ゼミのことを考えてみましょうよぉ?

研究室ゼミの理想

研究室の選び方 - 『このラボだっ!』と決めるその前に -

2012-12-24 03:04:50 | 自然科学の研究
(2017.5.25 一部更新)
 今日はクリスマスイヴですね。なので今日は特別編として、「研究室の選び方」について書いてみようと思います。笑

 
 こちらの文章は私が学生時代(博士課程)に書いたものです。
 この文章もまだまだ参考になると思いますのでそのまま残しておきますが、最新版がありますので、そちらも合わせてご覧ください。
 →新・研究室の選び方 - 学生もポスドクも海外でも『このラボだっ!』と決めるその前に -


 僕は理系で、卒研、修士、博士と研究室を変えてきたので、理系の研究室の内部の性質について、同学年の人よりも広く深くよーく知ってます。他の研究室と共同研究もさせてもらってますので、3つの研究室+2つの研究室くらいは、なんとなくはわかっています(が、僕は理学部出身なので、工学部の方は参考にならないかもしれません)。
 さらに、物理系、化学系、生物系、とそれぞれを知ってる人も、そう多くはないと思いますので、これからラボを選ぶ、っと言う方へ、僕からのクリスマスプレゼントとさせていただきます。まぁ、学生がテキトーに書くだけなので、ご了承ください。

 ちなみに今の研究室に不満があって、やめようかどうしようか迷っている方は、研究室をやめたい理由-『このラボで我慢しよう!』と決めるその前に-もあわせてどうぞ。

 では、スタート。

 理系は、学部の3年生か4年生になると、ほぼ必ず研究室に所属します。ここで研究室を決める、っというのは、人生の1年以上を左右する大きなことですから、きちんと選んだほうが良いのは当たり前です。
 まず、大前提として大事なのは自分が「選べる立場」にあることです。よーするに賢いかどうか。これは修士や博士から研究室を変える場合でも同様で、自分の能力に絶対的な自信を持っているほど賢くなければ、研究室をこっちから選んでやるんだ!、っという気概を持つことはできません。なので、自分が納得できるまで思考力を高めておくことが大事です。その中で、やることはやってきているんだから大丈夫、っという気持ちを持つことで、ちゃんとした立場から研究室を選ぼうっと思えてくると思います。

 ポイントを重要順に書いていきます。

 1.研究室主催者PI(Principal Investigator)と相性が合うか?

 この研究室かな?っと思ったら、主催者の先生(その研究室のトップ)と1対1で話してみましょう。研究室の雰囲気が良さそうだから、とか、助教が親切そうだから、とかは案外アテになりません。なぜなら、来年にはいないかもしれないからです。確実に来年もいるのは、その研究室の主催者だけです
 最大のポイントは「優しいかどうか?」。気をつけなきゃいけないですが、あなたと喋る時、先生にとってはあなたはお客さんでしかないので、大抵の先生は取り繕います。学生や他のスタッフのことを作業員としか思っていないような最低な人間でも、優しいフリや教育熱心なフリをしますので、あまり、先生の言葉そのものはアテになりません。

 そこで、俺は、あえて先生にとってイヤな質問をすることを薦めます。『この研究室出身の先輩の就職はどうか?』『他大学から来る学生のことをどう思ってるのか?』『これまでで一番困った大学院生の話を訊かせて下さい。』
 あとは、感情で話すことです。自分が(自然科学の中で)好きなこと、得意なことについて、めーいっぱい長く喋ってみて、聞いていてくれるか?など、研究室主催者が優しいかどうかを判断する指標としては適切です。予想外のことを話してみてから、相手が取り繕うまでの2秒間が見抜くチャンスです。
 こんなことして失礼にならないのか?っと思うかもしれませんが、大学の先生なんてとても忙しいからそんなことすぐ忘れちゃうし、所属前はお客さんなんだから多少無礼でも大丈夫です。っていうか、これくらいで無礼って思うなら、先生なんてやってられないはず。一緒に研究をしていったら、もっともっとお互いの汚い部分を観たりするもんですから、本当の感情を出してみて嫌われたならそっちのが話が早いじゃないですか(恋愛も?笑)。

 主催者と話している時の、その研究室の大学院生を観るのもポイントです。その大学院生の目が、安心感で喋っているか、緊張して喋っているか。さらに、他の先生の輪にいるとき(学会やその専攻内の発表会のときなどにチェックできる)に、その先生はどう振る舞っているか?です。研究室内では偉そうだけど、年上の先生には極端に腰巾着ってこともよくあることで、こういう先生は往々にしてよくありません。
 みんなから好かれている主催者であれば、自分の学生や他の先生と喋ってるところを、お客さんであるあなたに見せたいはずです。それを必要以上に拒むようなら、少し懐疑的になってみるべきです。

 これは、これからのポイントでもそうですが、まずは疑うこと
 研究室は閉鎖的な空間ですから、一般の集団よりも「異常」になる割合が圧倒的に高いことを知りましょう。だからこそ、最終ラインである、あなたの指導教員になるかもしれない人が「優しい」かどうかは重要なのです。
 指導教員が本当の意味で優しければ、いじわるな先輩やスタッフがいても、研究室が仲悪くても、なんとかなるもんです。

 2.研究室のホームページは定期的に更新されているか?

 研究はフロンティアラインを広げる行為です。そのアピールを世に対して行うのは研究室として当然です(研究している人だけが分かればいいから、論文で十分だ!、っとオフェンスされる先生へ言っときますが、ぜひ教育基本法を読んでください。「世界の平和と人類の福祉の向上に貢献することを願うものである。」と条文に書いてあります。より具体的な内容が学校教育法に書かれており、大学院教育も含みます。人類の福祉の向上に貢献することに即していないといけないのです。だから、一般の人がわかりやすく読めるように公開することは必要です。)。HPがちゃんとしてるか、って、研究室選びで実はかなり重要です。
 有能な人材を確保し続けるためには(有能な人材は確保し続けなければならない。どんなに有能な研究者でも、ずっとその場所にいるわけではなく、いつかはPIになるのだから)、HPできちんと紹介してあって、更新されてないといけないですから。

 1年ってのがイイラインだと思うけど、1年以上更新した形跡がないホームページを持つ研究室は、やめたほうが無難です。特に業績項目が2年以上前で止まっていたり、メンバーが古いものだったりするような研究室は論外。
 人材確保、人材育成、に力を入れていない証拠です。よって、あなたもそんな研究室を選べば、雑に扱われるか、こき使われるか、のどちらかです。

 ちなみに、友達から話を聞いたりして、この研究室は絶対にありえない!、っとよく知ってる研究室のHPは、すべからく更新されていません

 3.研究室メンバーやその他HPからわかること

 まず、純血率。助教やPD(ポスドク)の人の情報は殆どの場合書いてありますから、その研究室出身なのか、どこの大学出身なのか、見てみましょう。あまりに純血率が高い研究室はやめたほうが無難です。研究は、新しいモノを創る、モノづくり的要素が強いですから他分野の人を受け入れていないなら、主催者のワンマンでやってることが多いです。
 そういう研究室はのびません。前にも書きましたが、理系の超基本として、「覚えてはいけない」ですから。先生の言うことは絶対!、ってなってる研究室に未来はありません。

 一概に言えないことではありますが、スタッフ(学生じゃない人すべて)の中で、その研究室に10年以上いる人がいるのも、あまりイイことではないです。
 主催者が何年も同じ人をずっと使う理由はそれぞれですが、まずそのスタッフは間違いなく優秀ではありませんし、偉そうな顔して世間知らずなケースが殆どです。ウザい人はどこにでもいますが、そういう人が研究室の上のほーにいるのはよくないことです。
 所属そのものが変わっている場合もあるので、ぜひ「google scholar」でスタッフの名前を検索してみましょう。そのスタッフが出してるほぼすべての文献のcorresponding author(論文の最後の著者)が同じ人であったら、純血であるっと定義できます。

 次に博士課程の学生に、「日本学術振興会特別研究員(DC1orDC2)」がいるかどうか?
 これは実直な学生がいるか?っという指標になります。もしDCがいれば、必ずHPに書きます。研究室の実績ですから。もっと言えば、その研究室主催者にどれほど支援力があるか?もわかります。
 ただし、毎年一人ずつDCがいるような研究室も、一概にイイとは言えません。学振はコネやツテが大きいと考えている人もいるからです(僕は実感としてそうとは思いません)。

 学生の出身大学などを書いてある研究室はかなり良いです。
 現実味を持ってその研究室を志望しやすくなりますし、相手もそう思って載せていることが殆どです。出身大学をHPに載せるってことは、学生にいちいち了解をとってるはずですから、コミュニケーションと信頼関係がその程度はある、という指標にもなります。
 一緒に、教育方針や「こんな学生に来てほしい」などと書いてある研究室も、良い場合が多いです。超厳しいことが書いてあっても、コアタイムがあっても、何も書かれていない研究室よりは100倍イイです。本当にバカみたいに厳しかったり、教育が曖昧だったりテキトウだったり、無駄なルールがある研究室の方針は、公開なんてできないんですよ。

 4.政治についての注意。

 色々述べてきましたが、先生の力がどれほどあるのか?も大事な条件ですよね。
 ここでも「google scholar」が役に立ちます。主催者の名前を検索して引用数の高い文献のほとんどが、corresponding authorもしくはfirst authorになっていないなら、実力も無いのに、政治の世界で上手く切り抜けているだけの人です。コツコツ、手を動かすだけの仕事をして、自分の研究室独自の仕事は簡単にまとめ、良い顔をしているケースだって多いですから、あなたもそういうことをやらされる可能性が高いです。

 分野にも注意しましょう。興味ある分野を選ぶのはもちろんなのですが、学閥や学派もあります
 あまりインターネットでも言われていないことなので書いておきますが、たとえば有機合成の分野には大きいのが2つあります。その中でイイ部分もあるのかもしれませんが、こういう性質をもろに受けている研究室で、残念ながら今のところ、イイ研究室だ!、っという話は僕は聞いたことがありません。
 誰かを神のように讃えて、その人のやり方をすべて受け入れる、っというのは、本当に信念を持っている理系学生にとっては迷惑な話ですし(何事も信じてはいけない。覚えるってことだから。)、そんなところにお金と時間をかけるなら、すぐにでも就職したほうがイイです。
 こういうのは曖昧な学問分野に多いです。解がばっちり決まっていない分野(生命系や有機化学など)に多いという意味です。だから誰かをまるっきり信用したくなる気持ちになるのはわかりますが、そこでの政治に勝っていったとして、良いポストやイイ会社に入ったところで、その人の能力に何も関係ないことです。本当の実力をつけるための研究室を選ぶなら、違うと思いませんか?

 5.研究室の部屋やその外壁などからわかること

 その研究室のトップである主催者が自分の研究室への帰属意識を持っていることは、あなたがこれから指導される身としてもっとも大事なことです。
 不思議かもしれませんが、自分の研究室なのにも拘らず、自分の研究室や自分の学生をあまり大切に思っておらず、自分の名誉や安全や科研費のことばかり考えている教員は意外と多いのです。名誉やお金はあったほうがいいですが、学生にとっては、そこまで重要なものでもありません。(むしろお金が潤沢にありすぎると、「この装置を買って結果が出てから論文をまとめよう」などとなってしまい、学生の業績や功績がいつまでも世に送り出されないケースが多い。)

 研究室主催者が帰属意識をきちんと持っていて、自分の学生を大切にしているかどうかは、研究室の中や外壁から一発でわかります。パッと見、汚れまくっていたり、研究室の外壁に貼ってあるポスターが剥がれかかっているのにそのままにしてある研究室は総じてダメです。逆に、今までの経験上、クリスマスや七夕の時などにドアの前に何か飾りをしているような研究室はとってもイイ研究室であるケースが多いです。
 また、その研究室の中の学生やスタッフと話す機会があったら、ぜひ「指導教員の先生は、研究室や実験部屋の掃除に、どの程度参加していますか?」と訊いてみて下さい。この質問で間誤付いたり、イイワケを言ってきたら、その研究室のトップは、帰属意識も無く、自分のことばかり考えている教員である可能性が高いです。
 いいですか、当たり前のことを言いますが、大学の教員は国から雇われて大学の建物内の部屋を借りているのです。彼らの職場であるんだから彼ら(もしくは清掃員)が掃除をすべきであり、学生やポスドクや他の技術スタッフが、掃除をする義務は本来ありません(大学院生以降は運営側も勉強した方がいいので掃除は率先して参加すべきですけどね)。なのに、その研究室の主催者が掃除にまったく参加しないのであれば、それはただの権威主義の教員ということです。

 また、23時とかに研究室を外から覗いてみて明りがついている率が高い研究室も避けた方が無難です(土日合わせて週に3回以上でアウト)。ワーカーホリック系の学生かスタッフがいるわけで、それを禁止していないわけですから、指導や指揮がゆき届いていない証拠です。
 新人を沢山入れようとして、「手を動かせば結果が出ます」なんて謳う研究室も多いですが、それは言い換えれば「言われた通りに実験しまくればイイ想いさせてやる」「学生をたくさん入れて作業員として使おう」と言っているのに等しく、最低な研究室です。あなたは理系にどっぷり浸かって誰かエライ人に使われるために、これまで理系として生きてきたわけではないでしょ?

 6.自分が「意味がある」と思える研究内容を扱っているラボを選ぶ

 これは必ずしも重要ではありませんが、もし可能であれば、こういうことも考えてみましょう。
 意味があると思える事は何か?と真剣に考えるチャンスは、オールフリー状態である研究室を選ぶときくらいかもしれません。

 例えば僕は、「全合成」や「ある生物種のあるマニアックなタンパク質の働きを調べる」というような研究は、分野として全部、意味が無いと感じています(異議があれば、俺に意味がある、と是非思わせてみて?)。これらについて、どうしてそう思うか?は(論理的にいくらでも説明はできますが)ここで意見することは避けますが、ある程度、そういう研究会に出てみて発表を聞いているのに、まだそう思うのであれば、それは向いていないということだと思います。
 そして、こういう研究分野は、総じてその研究をしている人たちも実は「意味無いんだよなー」って思っていて、それを勝手に一般化して「大学でやる研究なんて、そもそも意味無いもんでしょー」みたいになってるケースが多いです(こういう分野に科研費をあてるな!)。それでも分野として成り立ってしまっているので存在している、というラボも多いのが事実。研究分野があるからその分野の研究室が存在しているってのは、分野を創る行為である研究という定義からすると本末転倒なのですが。

 まぁとにかく、本人が心から「意味が無い」と思ってしまっているのに、「意味が無い」研究をしているような研究室に行っても、時間の無駄です。ただ、このページを今見てくださってる大学3年生の皆さんには、たぶん、右も左もわかりません状態だと思いますので、あまりこういうことはないのかもなっとも思います。

 ちなみに、「意味が無い」というのと、「意味はあるけど、自分は今はあまりやりたくない」というのはまったくの別です。(これは、僕が多くの理論研に思っていることですが。)

 「研究室の選び方」や、その他研究室での悩みについて、私に直接相談したいと思ってくださる場合は、相談内容を明記の上、こちらにメールしてください(_attoma-ku_を@に変えて送信してください)。基本的にどんな相談もお受け致します。匿名で構いませんが、所属や名前を仰ってくださったほうが、相談にはのりやすいです。相談内容は決して口外しませんのでご安心ください。
soudan.atamanonaka.2.718_attoma-ku_gmail.com


相談メールについて詳しく知りたい場合はこちらをご覧ください。相談を受ける上で俺が守るべきルールを書きました。

スカイプでの相談もはじめました!ネットでは絶対に書けない裏事情を含め、スカイプであれば、無料で真摯に迅速かつ最大限論理的に、あなたの相談にのります!!私がこれまで実際に接してきた研究分野(物理学、化学、生物学、情報など)や見聞きしている領域、内情を知っている研究室についても、できる限り詳しく回答します。ご希望してくださる方はお気軽に上のアドレスまで、あなたの本名をお書きの上、メールしてください。私から相談可能時間とスカイプIDを送ります。皆さんの相談をお待ちしております。


 イイ意味でも悪い意味でも、研究者はみんな子供です。
 いつだって、感情の方程式は、一番簡単なバージョンの式が、最適化されますので、その点も注意ですね。

 『すごい戦略家なんですね!』
 「誰がですか?」
 『いやぁ、先生が。』
 「違いますよ。僕自身がその頃に考えていたわけじゃなくて、今だったら、こうするなーってだけです。」

 って、僕もそういうわけなんで、現実の僕を知ってる皆さん、ご容赦ください。
 まぁ、ココにこうやって公開するってことは、自分はこういうやり方を、もうしない、ってことなんだけどね。笑

 安住の地はありません。
 でも、「安住の地を創ること」はできます。それはすぐにPIにならずとも、自分が主体的に動けば、今の研究室の中で、最大限のよりよい環境を創ることは可能だと思うのです。求められていればね。

 じゃ、メリークリスマス!笑

研究室の選び方 -『このラボだっ!』と決めるその前に- 解説動画 part1


研究室の選び方 -『このラボだっ!』と決めるその前に- 解説動画 part2


研究室の選び方 -『このラボだっ!』と決めるその前に- 解説動画 part3