桜井昌司『獄外記』

布川事件というえん罪を背負って44年。その異常な体験をしたからこそ、感じられるもの、判るものがあるようです。

ここも始まった

2013-03-10 | Weblog
昨年だったか、和歌山県警の科学研究所の鑑定技士が鑑定結果を捏造したことが発覚した。
あのとき和歌山県警は、「捏造は、公表されたモノだけ」と言い、捏造した人物を辞めさせて一件落着としたが、俺は、必ず他の事件でも鑑定結果を偽装したり、捏造したりしていると思っていた。
科学鑑定結果を捏造するということは、違う人を犯人にでっち上げることだ。ある意味、物を盗むとかの犯罪行為よりも根深い倫理観の喪失による犯罪行為だろう。そうした倫理観の喪失による犯罪行為が、単に出来心で行うはずはないし、公表された僅かのはずもないのだ。
今日の新聞に、あの有名な「和歌山カレー事件でヒ素の成分が違うと判った、と弁護団から証拠開示請求がなされた」とあった。始まったね。
俺は、和歌山カレー事件の林さんを犯人だと信じていた。塀の上からマスコミに水を撒く、あの表情を記憶している人も多いだろうが、毒殺犯に相応しい冷酷を、あの平然さに感じた国民が多数だと思う。俺も、そうだった。でも、今は、林真須美さんは、俺たちと同じ冤罪だと確信している。あのカレー事件のとき、林さんの無実を、林さんの行動を知る娘さんが語る上、事実関係を見れば、林さんにはカレー鍋にヒ素を入れる機会はないのだ。そして、俺の確信を支えるのは、その娘さんが「母はお金にならないようなことはしない」と語る、凄い言葉だ。林さんが犯人との決め手にされたヒ素鑑定は、もちろん和歌山県警の科学研究所が行っている。どうやら、もう1つの無実の確信が重なるときが来たようだ。
検察は、当然のようにヒ素の再鑑定を拒否しているし、今度の証拠開示請求も拒否するのだろうが、再鑑定をすれば和歌山県警科学捜査刑務所の行った捏造が判ってしまい、証拠開示すれば林さんが無実と判ってしまう!苦しいねぇ、和歌山県警と検察は。