(前回からの続き)
本稿一回目で書いたGDPの3位から4位への転落が象徴する、日本経済に文字どおり21世紀の世界で最悪のマイナス成長をもたらす元凶は円安であり、その円安を2013年以来誘導し続けてきたのが、日銀「異次元緩和」でした。今般、これの修正等が決定され、長期金利の誘導目標が撤廃されたことは、前述のことからポジティブにとらえたいところです、が・・・
上記決定後、本邦金利の上昇が予想されることをふまえた「デフレ脱却正念場」「(日銀の財政ファイナンスが弱まることで?)財政再建待ったなし」「金利の上昇が住宅ローン世帯に重荷に」「史上最高値付近にある株価のアタマが抑えられかねない」・・・みたいな報道が相次いでいます(って、GDPがドイツに抜かれて4位墜ち、の皆が知るべき危機的状況を伝える報道はほとんどなかったのに?)。これらから受ける素直な印象は、上記修正はネガティブなのだな、といったところでしょう・・・
もっとも、上記報道には、次のように簡単に反論等ができますよ。デフレ脱却?いまの円安インフレが収まって原材料デフレ(価格低下)が起こることのどこがネガティブというのか。なぜなら、わが国はエネルギーを筆頭に原材料の大半を外国から輸入しているところ、それらに払うべき(外国に漏出していく)円貨は少なければ少ないほどよいからです。であれば、その結果としての上記デフレ、すなわち電気代やガソリン代や小麦粉価格等の値下がりは大歓迎こそすれ、逆にこれを真っ向否定して円安インフレを巻き起こしたからこその現在のトホホ(経常収支の悪化・実質所得のマイナス・GDPの巨大マイナス等)なわけですよ・・・
財政再建?大丈夫、政府は税収で足りないおカネは国債を発行して市中調達すればよいだけ。そのあたり以前から何度も指摘のように、金利が上がれば、日銀当座預金口座に「ブタ積み」されている(何ら運用先が見当たらずに虚しく預けられている)数百兆円ものマネーが、待ってました!とばかりに日本国債を買い支える(から政府の金利支払い額も多くはならない)ためです。そもそも、市場原理にしたがって日本国債ばかりが購入される(金利が下がる)から、日銀が「異次元緩和」で、買っちゃダメ!とばかりに国債を異様な高値で買い占めたわけです。財政ファイナンスというのは、これと真逆で、国債を買ってくれるマネーが足りない(政府の調達金利が上昇しすぎてしまう)から中銀が「最後の貸し手」として国債を買う(財政をファイナンスするためのおカネをあらたに刷る=インフレを甘受する)ことをいうのであって、上記から日本はこれには該当しませんよ。その点、アメリカ(FRBのQE等)とミソ〇ソいっしょにしてもらっては困りますよねホ~ント・・・
このあたりは住宅を含む各種ローンでも同じことがいえます。もし超低金利のもとで日本人の多くがローンを組んでいるのなら、金融機関の預貯金はハイリターンを得るべくそちらの貸し出しに回っているはずです・・・が、実際には上記「ブタ積み」、ということ。つまり、マクロ的な観点からすれば、せっかくの低金利環境なのに日本ではローン需要はまったく高まっていない、という次第です。であれば、上記による金利上昇が景気に与えるマイナスは、それがもたらすプラス(円安インフレ緩和→同消滅→円高デフレで経常黒字拡大・GDP大幅プラス成長等)にはるかに及ばない、というもの。
目下絶好調?な株価ですが・・・いまの過去最高額が実体経済の反映なら、先述の本邦GDP激減、なんてことになるわけがありません。すべてはこちらの記事等に書いたとおり。端的にいえば、外国人投資家による金利差をテコにしたマネーゲームが過熱しているだけ、です。これのせいで上記「元凶」の円安がいっそう進行し、肝心かなめの実体経済がさらにマイナスへ、となってきているから、実感なき株高、などとなるのは当然でしょうに・・・
以上からすれば、上記ネガティブな印象は、実際にはほとんど杞憂に過ぎない―――多くとも、金利上昇がもたらす本邦経済にとってのプラスの恩恵を損なうものにはなり得ない―――ことが明らかです。にもかかわらず「マイナス探し」みたいな報道となるのは・・・新聞読者やニュース視聴者にそう感じさせることで、日銀の低金利(円安)誘導は引き続き必要だ―――副作用?としての円安インフレは受け入れざるを得ないのだ―――と思わせたいわけですよ、マスコミ各社・・・と本邦政府&日銀は。それは前述のとおり、それで円安に導いてドルの価値を支えてあげないと「終わりの始まり」が加速してしまう、ためですよ・・・