(前回からの続き)
これまで綴ってきたように、アメリカにはもはやドルを刷りまくってインフレを起こす以外の選択肢はありません・・・ってもそれは、本当は遅くとも(?)1971年のニクソン・ショックから始まっているわけですが、今世紀に入って以降、さらに顕著になっています。現在の「双子のバブル」(私的造語;株&債券のバブル)や不動産価額の高止まり等がその象徴といえるでしょう。そして今後のアメリカは、これまで以上にインフレに頼るしかない・・・はずです・・・
そんな中で、大半のアメリカ国民は捨て置かれる、つまり物価上昇や住宅・学費等の高騰に収入がまったく追い付かないという、生活水準の悪化に苦しめられる一方でしょう。これは彼ら彼女らが辿っていく必然のコースであり、連邦政府や中銀による小手先の財政&金融政策くらいで良化が期待できるようなものではありません。やがて多くの人々がそんな苦境に我慢がならなくなり、団結して、何らかのアクションを起こすようになって・・・
歴史を振り返れば分かるように、動乱や戦争の根本的なきっかけは多くの場合、インフレです。代表例が第一次世界大戦後のドイツ。過酷な経済環境のもとでハイパーインフレが発生、その混乱の中でナチスが台頭し・・・となったわけです。だからこそ戦後、西ドイツの中銀ブンデスバンクは「インフレファイター」として引き締め気味の政策スタンスを保ち続けました。インフレこそが全体主義や戦争に至る第一歩であることを身をもって知っていたからだと考えています。
アメリカで起きていることも、程度の差こそあっても基本的には同じ。ただ上記ドイツのインフレが外国つまり戦勝国が同国に課した苛烈な戦後賠償のせいで起こったのに対して、アメリカのそれは自国・・・の一握りの富裕層すなわちインフレ(株、債券、不動産、石油、穀物等のバブルなど)で大儲けができる人たちが結果として起こしたもの。したがって、両者ともに対立の構図が「インフレに苦しめられるもの vs. インフレをもたらしたもの」であることに違いはないものの、ナチスドイツの場合はそれが「自国 vs. 外国」だったのに対して、アメリカの場合は国民同士の「一般ピープル vs. スーパーリッチ」という図式になるところが異なる・・・というよりこれ、中国歴代の王朝崩壊前夜の構図と似ているような気が・・・
インフレが最終的には戦争等をもたらす―――アメリカの銃保有数が100人中88丁と、2位のイエメン(!?)の同54丁(CNN;2012年)を圧倒的に上回る多さであることを考えると、上記対立の構図の下でやがて起こることに、世界もわたしたちも、備えなければならないと思います・・・
(「アメリカ、巨額貿易赤字は大混沌への前兆か」おわり)
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