(前回からの続き)
先述した理由などから、中国の経済戦略の方向性は、諸外国、中でも世界最大の消費大国アメリカへのメイド・イン・チャイナの輸出販売で成長を図るというものだと考えられます。(対米)輸出振興―――中国の場合、これこそが経済発展の原動力と言っても言い過ぎではないでしょう。こちらの記事等でも書いた国内外の巨額インフラ投資や日本にやってくる中国人観光客の「爆買い」などの源泉は、この輸出での稼ぎだということです。したがって今般、その最大の得意先アメリカに輸出障壁を設けられてしまったのは、同国の上記戦略を根底から否定されるほどのマイナスのインパクトがあることでしょう。
このあたり、あらためて中国が「ドル」という名のアメリカの通貨にいかに依存しているかが分かるというものです。上記の稼ぎとか富とかは、具体的にはドルの姿をしているわけですからね。
じつは中国の強みとか弱みの本質は、相当程度、この点―――ドル―――に集約されていると考えています。強みはいうまでもないかと思います。同国は現在、世界一の外貨準備、要するにドル(≒米国債)を持っているわけです。これほど持っていれば、ドルの支払いに窮するような緊急事態は、そうは想定されないでしょう(?)。他方、弱みとして指摘できるのは・・・国家の根幹ともいえる金融・通貨政策がアメリカという他国のそれに左右されてしまうこと。
この表れの象徴が人民元になります。人民元と聞くと・・・世界第2位のGDP大国となった国の通貨であり、円、ドル、ユーロ、英ポンドと並ぶIMFのSDR採用通貨でもあって、それにふさわしい高い価値と信頼がある通貨に思えます(?)。ですがこのおカネ、他のSDR等通貨と決定的に違う点が指摘できるわけです。つまりこれ、その信認の裏付けを外貨、要するにドルと米国債に依存しているということ。円が日本国債、ユーロがEU加盟国の国債・・・といったように、現在の主要通貨はその価値を当該通貨発行国の国債に裏打ちさせていますが、人民元はこれが米国債で、自国の国債ではありません。この点においてドルと同じなので人民元は「疑似ドル」―――とこちらの記事で述べたものです。なので、人民元はSDR通貨に入れる必要なんてなかったですね。だってこれ実質的に従前からのSDR通貨ドルだから・・・
このあたりは、こちらの記事に書いた中国の中央銀行である中国人民銀行のバランスシートの資産勘定からも分かります。たとえば日銀のそれは大半が日本国債(って、いまは異様に膨張しているが)となっているのに対し、人民元は・・・上記のとおりです・・・