世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
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【格差拡大で日本弱体化】貧富の差を広げるという意味で「リフレは正しい」③

2013-04-29 00:00:36 | 日本

(前回からの続き)

 以上のようなことから、バブルをあおって資産効果を高めることで景気の浮揚を図るという「リフレ政策」には、資産を持つ者と持たざる者との格差、つまり貧富の差を拡大する作用があるといえるでしょう。そんな点を含めてきっと「リフレは正しいのでしょう、岩田日銀副総裁によれば・・・。

 でも本当にそうでしょうか。インフレがもたらす貧富の差の大きな社会が真に「正しい」といえるのでしょうか。

 以前「世界長者番付であまり目立たない日本の幸せ 」に書いたとおり、個人的には、アメリカ、イギリスや中国などと違って、国民のあいだの資産や所得の格差が小さいことが日本経済やわたしたちの市民社会の強みであると確信しています。リフレはこれに真っ向から挑みかかり、わが国のそんな社会構造を解体しようというもの。まさにこれこそが安倍首相が好んで言うところの「レジーム・チェンジ」(日本的社会からアメリカ的な社会へ;格差の小さな社会から大きな社会への転換!?)を目指すための人為的な経済状態なのでしょうが、その結果、長い歴史の中で培われてきたわが国の良き社会風土があっという間に破壊されてしまうのではないかと大いに危惧しているところです。

 そもそも「リフレ政策」は中銀の目的である「物価の安定」と「金融システムの安定」の双方を脅かすもの。インフレは「物価の安定」の対極にある、本来の中銀ならばもっとも忌み嫌うべき状態だし、中銀の国債市場への過剰な介入は金利の乱高下を招くなど「金融システムの安定」を揺るがします。挙げ句の果てはハイパー・インフレと金利暴騰で日本経済は破滅か・・・(先日も書いたように、ドルやユーロの「弱さ」が円のセイフティーネットとなるから、これはちょっと極端かも?)。

 このあたり、本稿のタイトルからはやや離れますが、貧富の差の拡大に加え、わが国の破綻をもたらしかねない「中銀目的の自己否定」こそ、黒田・岩田日銀の恐るべき本質だと考えています。それにしても、総裁が資産効果を肯定的に評価したり、副総裁が「意図的にインフレを起こすことは正しいことだ」という中銀に通貨の番人としての資格があるのか、疑問に感じられるのですが・・・。

 「いや、金融緩和は日銀だけではなくFRBやBOEもやっていることだ」って?それはそうです。慢性的な経常赤字国であり、資産バブルの最終清算が済んでいないなかで、絶対に金利を上げられないアメリカやイギリスは、中銀による金融緩和「財政ファイナンス」に依存せざるを得ないわけですから・・・。そんな欧米諸国とはまったく逆で、わが国は恒常的な経常黒字国アーンド世界一の純資産国。だから経済政策が経常赤字国のそれとは違ってくるのが自然だと思うのですが・・・。

 そんなことをあれこれ考えてみると、日本経済やわたしたちの市民生活にとって、「リフレは正しい」と素直に信じる気持ちにはなれないというのが本心なのですが、いかがでしょう。株価が上がるからいい?たしかに株を売買できるだけの資産や資金がある人はいいかもしれません。でもこれまで書いてきたように、それはお金持ちだけの話です。

 さらに、株で儲かった!といっても・・・。

(続く)

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【持たざる者の悲哀】貧富の差を広げるという意味で「リフレは正しい」②

2013-04-27 00:02:36 | 日本

(前回からの続き)

 さてこの資産効果ですが、当然ながら今回の「金融緩和バブル」の波に乗れる人、つまり株や不動産などの資産をたくさん持っている人には多大な恩恵をもたらします

 先日開催されたG20財務省・中銀総裁会議で日本の「リフレ政策」(マネタリーベース拡大による金融緩和策)に大きな批判が出なかったことなどを受け、これからさらに円安が進めば、外国人による日本株買いが一層活発となり、それに引き寄せられた個人投資家等のマネーも株式市場に流れ込み、株価が押し上げられる期待が高まります。株式のほか、日銀によるREIT等の買い入れなどもあって、今後は都心部における不動産投資なども盛んになる可能性があります。これらはいずれも資産効果をさらに高めることでしょう。

 一方、株や不動産などの資産を持たないか、わずかしかもっていない層(一般の庶民)には、このリフレ政策がもたらす資産効果の恩恵は少ないでしょう。

 恩恵があるとすれば、これらのごく限られた人々が、資産効果で潤ったお金持ちの「ぜいたく品」買いの(表現が悪くて申し訳ありませんが、)「おこぼれ」にあずかれるといったようなこと。いわゆるトリクルダウン効果です。たとえば百貨店業界では富裕層向けのブランド品や宝飾品などの売り上げが増えているそうです(百貨店社員のボーナスも増えるかも)。もっともこの種の消費は、資産バブルと同じく一過性のもの。長続きするかどうかはこれからの「バブル」次第ですが・・・。

 むしろ資産効果の及ばない人たちにとってリフレは以下の2つの点で悪影響が大きい状態です。

 1点目は実質金利の低下(実質的なマイナス金利)がもたらす預貯金価値の毀損です。黒田日銀は「インフレ率」を目標の2%に引き上げるべく、国債をどんどん買い入れて大量のマネーを市場に供給するとともに金利をさらに低くしようとしています。かりにインフレ率が本当に2%となって金利が現在の水準(長期金利で0.6%/年 前後)のままであれば、実質ベースで差し引き1%以上ものマイナス金利となってしまいます。これは時間の経過とともに、インフレによって虎の子の預貯金が目減りしていくことを意味します。十分な資産を持たない大多数の国民や年金生活者にとってはたいへんつらい環境となりそうです。

 2点目は、インフレで生活水準が悪化してしまうこと。これはいうまでもないでしょう。インフレはほんの一握りの人々、つまりリフレ政策がもたらすインフレを差し引いても資産効果のほうがずっと大きな富裕層を除けば、これまた大半の国民の生活を苦しませる経済状態です。とくに厳しい状況に追い込まれそうなのが「資産ゼロ」に属する人々です。以前こちらに書いたように、(戦慄すべきことですが、)わが国ではすでにこれほど多くの、まったく資産を持たない人々がいます。いくら黒田氏や岩田氏が「リフレで資産効果を高めた!」と胸を張っても、これらの人たちは物価高で苦しめられるだけ・・・。

 かくして、「リフレ政策」の行き着く先は、一部の資産家がますます豊かになる一方、大多数の市民がむしろ貧しくなるという、資産格差の大きな、つまり貧富の格差の大きな社会ということになるのではないでしょうか。これこそまさに「レジーム・チェンジ」(日本社会の体制転換)といえそうです。

 だから「リフレは正しい」と訴える岩田日銀副総裁の真の狙いは日本社会の格差を広げることにあるのではないだろうか、と推測しています。

(続く)

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【資産効果発現?】貧富の差を広げるという意味で「リフレは正しい」①

2013-04-25 00:01:21 | 日本

 黒田東彦総裁とともに日銀の「量的・質的金融緩和」を推進中の岩田規久男・日銀副総裁の著書「リフレは正しい」が書店ビジネスコーナーに並んでいます。私は同書を読んではいないので、感想などを述べることはできませんが、この本の書名は印象的だと感じました。たしかに「そのとおり!」といえるからです。

 岩田副総裁が表現するように、想像すればするほど、リフレにはさまざまな観点から「正しい」面があると思っています。すべてを上げていくときりがなさそうなので、本稿ではそのうちの一点にスポットを当ててみたいと思います。それは本稿のタイトルのとおりです。貧富の差を広げるという意味で「リフレは正しい

 リフレ(リフレーション)とは、意識的にインフレを起こすこと。別な言い方をすれば、人為的に通貨「円」の価値を毀損させること、といった感じになります。そして黒田・岩田日銀はまさにこの「リフレ政策」ともいえるべき金融緩和策を実行して「2年でインフレ2%」の達成をめざすとしています

 中身の詳細はここでは省きますが、「アベノミクス」と連動した同政策が大きな影響を与えている分野があります。ご存知のとおり、それは金融マーケット、具体的には為替(急速な円安ドル高の進行)や株式(これまた急上昇)です。ここでは後述する内容と関連させる意味で最近の株式市場の動きを確認しておきたいと思います。

 昨年11月中旬、当時の安倍自民党総裁が「アベノミクス」の目標としてインフレターゲット(当時は2~3%)を掲げて以降、これまでの半年近くのあいだで、わが国の株価は急上昇してきました。日経平均でみると、11月中旬の8千円台後半から現時点(4月下旬)の1万3千円台半ばへと、じつに50%以上もの値上がりです。

 先日も書いたとおり、この株価の上昇は、日銀を含む主要中銀が量的緩和をさらに進めるなか、世界市場の「リスクオン」モードで株などのリスク資産が買われていることを反映したものと考えられます。

 とりわけわが国の株式市場には、リフレを意図する金融緩和にともなう円安のおかげで、「日本株は割安」と判断した外国マネーが大量に流れ込んでいる最中です。実際、先日のニュースによれば、4月第2週の外国人による日本株の買い越し額は約1.6兆円近くと過去最高を記録しています(一方、わが国の個人投資家のほうは9千億円近くとこれまた過去最高。ただしこっちは「売り越し額」・・・さすがミセス・ワタナベ」は現在の株高の背後にある本質を見抜いている!?)。

 もっともこうした高い株価は「バブル」つまり上記の世界的なカネ余りが演出したものであって、この間の企業の売り上げや利益率が伸びた、などといった実体経済面を反映したものではありません。したがって、この先ちょっとしたこと(米欧中にあふれるリスクのどれかが意識されること)をきっかけにマーケットが「リスクオフ」に転じて為替が円高に振れれば、それまでの株の値上がり益に加えて為替差益も得られる外国人が日本株を一気に売り逃げする可能性も十分に想定されるでしょう。

 とはいうものの、現在までの株価の上昇は、それはそれで景気に好影響をもたらすことでしょう。それが「資産効果」。株式などの資産価格の上昇で得られた利益が消費や投資を活性化させる効果のことです。

 今月10日、日銀の黒田総裁は報道各社との会見で、「資産効果が出てきているなかで、実体経済が徐々に回復し、物価上昇率も徐々に上がっていくと思う」と述べました。まずは自ら(のリフレ政策)が生み出したバブルがもたらす資産効果に期待を寄せている様子が窺われます。

(続く)

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アメリカ財務省「円安誘導けん制」にどう応えるか③

2013-04-23 00:03:19 | 日本

(前回からの続き)

 通常の場合、わが国において為替介入といえば「円売りドル買い」で決まり!ですが、ここでは「逆張り」、つまり日銀「異次元緩和」の円安ドル高の潮流のなかで、政府・日銀は為替市場でドルを売って円を買い戻します

 この「逆張り為替介入」には2つのメリットがあります。1つ目は同緩和策にともなう円安方向への過度の流れを抑制できること。そして2つ目は、現時点でのレート(1ドル100円前後)でドルを売って円を買い戻せば、日本政府(外国為替資金特別会計:外為特会)は為替差益を手にすることができるということです。

 この2点目について補足すれば、安倍自公連立政権は、黒田日銀の「量的・質的金融緩和」が続いているうちに、2010年9月から2011年11月までのあいだに民主党政権によって行われた総額16兆円あまりの為替介入(ほとんどがドル買い)で積み上がったドルを売っていくとよろしいのでは、と思っています。

 「そんなことをしたらたちまち円高ドル安になってしまう!」との声が飛んできそうですが、(たぶん・・・)大丈夫でしょう。繰り返しになりますが、黒田日銀は円のマネタリーベースをどんどん拡大中(円安の流れを拡大中)です。そしてアメリカ経済の回復傾向を受けて世界経済は「リスクオン」モード(金や円が売られ、ドルやユーロが買われるモード)となっています。そして何よりも米FRBのQE(量的緩和)が米国債価格とドルを下支えします。だから16兆円程度の少額(?)であれば、ドル/円は急落することなく、金利も急騰することなく、つまりアメリカに迷惑をかけることなく、政府・日銀は十分にドル売り円買いが可能とみています。

 かりに上記期間の為替介入で買ったドルを全額売却できたとします。介入当時の為替レートは1ドル70円台後半~80円台前半、そして現在は1ドル100円弱だから、政府は単純計算で4兆円程度の巨額の為替差益が得られることになります。以前も記したように、外為特会は数十兆円規模の為替差損を抱えているといわれているので、この程度の差益では「焼け石に水」かもしれません。それでも自公連立政権としては、民主党時代の為替介入に要した円資産を4兆円もの為替差益とともに回収することになるわけで、それはそれで国家への立派な貢献であり、堂々と胸を張れる政策実績となるはずです。

 ということで、日銀「ベースマネー拡大策」のもとで実行されるこの「逆張り為替介入」は、同拡大策のデメリット(行き過ぎた円安がもたらす輸入インフレなど)の発現を抑え、わが国の金融政策が通貨安政策であるとの諸外国からの批判を和らげるとともに、外為特会の収支改善にもつながるなどの数々のプラス面があって、なかなかの妙案だと自画自賛しているのですが、いかがでしょう・・・。

 と、あえて極論を綴ってみました。まあ実現は難しいでしょう。この逆張り策は、政府・日銀が円のベースマネーを拡大しながら、その一方でそれを回収することになるわけですから。実際にこれをやったら、日本の金融・為替政策には節操がない、といった批判を各方面から浴びてしまいそう。それから、いくら市場が「リスクオン」でも、日本が大量にドル(米国債)を売ることにアメリカは賛意を示さないでしょう。

 でもこのまま政府・日銀が「異次元緩和」を続けて円安を放置すれば、諸外国から一層はっきりと「日本は通貨安政策をとっている」と非難されるおそれが高まります。さりとて、いったん「2年間でベースマネーを2倍に拡大する」と約束した以上、同緩和を縮小するわけにもいかない・・・さて、どうしたものか?やはり個人的にはこの「リスクオン」の期間に、過度の円安進行を止めるため、そして何よりも国富のこれ以上の喪失を防ぐため、政府・日銀には少しずつでもよいからドルを売って円を買い戻してほしいと思っているのですが・・・。

 アメリカ財務省の「円安誘導けん制」コメントを受けた政府・日銀の次なる手に注目したいと思います(本音を言えば、「リスクオン」は長くは続かず、為替は自ずと「円高ドル安」に戻っていく?)。

(「アメリカ財務省『円安誘導けん制』どう応えるか」おわり)

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アメリカ財務省「円安誘導けん制」にどう応えるか②

2013-04-21 00:01:26 | 日本

(前回からの続き)

 というわけで、同盟国アメリカから、安倍政権・日銀の実質的な「円安誘導による外需狙い」政策が批判されてしまった以上、わが国としては対応策を真剣に考えなくてはならなくなりました。

 以前から書いているとおり、わが国には兆円単位の大きな需要不足が存在していて、これが低成長や景気低迷の原因とひとつとなっています。これをおもに外需で埋めようというのが「アベノミクス」金融政策の当初の目論見だったのでしょうが、今回のアメリカ財務省の「けん制」でこの狙いは方向転換を余儀なくされそう。つまり、内需拡大にも本気で力を入れざるを得なくなったということです。

 このあたりは、わが国では財政出動が効果的であることを本ブログで何度か述べているので詳細は省きますが、内需振興にあたっての為替レートは円安よりも円高のほうが断然有利なはずです。円高であれば、石油・ガスといったエネルギー資源や鉄鉱石などの輸入原材料の円建て価格が安くなるし、電気代やガス代などの公共料金価格も低く抑えられるからです。

 したがって政府・日銀は、「インフレ率2%」の目標達成に向けて「ベースマネー拡大」を進めつつ、一方で、アメリカなどの諸外国から「円安誘導であることは明白だ!」と言われないレベルに、そして輸入インフレを最小限に止めて国内景気を活性化させられるレベルに為替レートが均衡するよう、意識しなければなりません。たいへん微妙な舵取りが求められることになります(金融政策は本来、特定の為替レートを意識して行うべきものではないとは思いますが・・・)。

 では、現時点での妥当なドル/円レートはどのくらいなのか。ここは人によって見解が分かれるところですが、以前ご紹介した日銀発表の「実質実効為替レート」や「ビッグマック指数」などからみて、個人的には1ドル80円~80円台半ばくらいかな、と思っています。このくらいの水準ならば、わが国のおもな輸出企業は利益を十分に上げることができるし、他方で円安インフレの弊害が目立つこともないだろうと考えるからです。実際、昨年1月の日経新聞報道によれば、その時点でのわが国輸出企業の採算レートは1ドル82円だったとのことです。

 この判断に照らすと、足元の1ドル90円台後半~100円前後というレートは明らかに円安方向に行き過ぎであり、輸出企業が得られるメリットを差し引いても国民経済へのマイナスの影響が大きいうえ、国際社会から通貨安政策と批判されても仕方のないレベルではないでしょうか。

 で、為替の舵取りの話に戻ります。

 日本政府・黒田日銀は「異次元緩和」を進めたい、でもそうすると円安がさらに進んでアメリカに叱られてしまう・・・さて、どうするかですが、ここで大胆な提案をひとつ。それは円買いドル売りの「為替介入です。

(続く)

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アメリカ財務省「円安誘導けん制」にどう応えるか①

2013-04-19 00:04:16 | 日本

 思わぬところから(?)「けん制球」が飛んできた、といった感じではないでしょうか。

 12日、アメリカ財務省は、半期に一度公表される為替報告書で、日本の経済政策が競争上有利になるように円の引き下げを目的にしたものかどうか、そしてそれが外需ではなく内需振興を意図したものであるかどうか注視するという見方を示しました。「通貨安誘導をするんじゃないぞ!」と、アメリカが日本にクギを刺してきたかたちです。これは、ここ数ヶ月で急速に進んだ円安のサポートを得た日本企業の輸出攻勢を警戒するアメリカ産業界の懸念等を代弁したものといわれます。

 「アベノミクス」の金融政策は円安誘導ではないのか、といった疑念の声はこれまで韓国やEUなどからも上がっていました。そして先の2月、G7・G20も、名指しこそしなかったものの、明らかに日本の円安を念頭に置いた「為替レートは目標にしないこと!」という緊急声明を出しています。

 これらの批判的な見方に対して、日本政府や黒田日銀は、同政策は「為替を目標にしたものではない」と強気に反論しつつ、今月上旬には「量的・質的金融緩和」を打ち出し、結果として一層の円安を促してきました。ところが今回声を上げたのは、「尖閣カード」を持つわれらが大将・アメリカです。相手が違います。わが国は、韓国やEU諸国などの批判は受け流せても、今回のアメリカの懸念表明だけは無視できないでしょう。政府・日銀、そして円安歓迎論を展開してきたメディアなどは難しい対応を迫られそうです。

 本ブログでたびたび指摘している円安誘導による外需狙い」―――これこそ「アベノミクス」の金融政策の真の目標といえるでしょう。安倍政権関係者やそのブレーンの人々(浜田宏一イェール大学名誉教授など)は、日本の大手電機メーカーの経営不振を代表例に挙げながら、これまでさんざん円高のマイナス面(輸出競争力低下)と円安のメリット(輸出競争力向上)を強調してきました。だからいまになって「円安誘導が目的ではない」と政府・日銀がいくら(表向き)否定してみたところで、それを真に受ける人なんて(日本人にも外国人にも)誰もいないというもの。

 そんなことをふまえ、あらためてアメリカの今回の指摘に正直に回答してみましょう―――「(アメリカ)日銀の『量的・質的金融緩和』は円の引き下げを目的としたものか?」「(日本)はい、そうです。円安誘導で貴国への輸出を伸ばすことが大きな目的です。」

 当たり前の話です。

(続く)

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日銀の「異次元緩和」で注目の日銀当座預金残高⑦

2013-04-17 00:00:18 | 日本

(前回からの続き)

 で、「財政出動で公共事業を!」の話です。

 以前こちらに書いたことですが、このために適切なお金の量は10兆円あまりと見積もっています。この金額は現状のわが国の需要不足(デフレギャップ)をちょうど埋め合わせる程度の規模だからです。そしてこれくらいであれば、政府は無理なく、(つまり日銀の国債買い入れに頼ることなく)金融市場から(わが国の潤沢な貯蓄から)低い金利で資金を調達することができるだろうと予想するからでもあります。

 こうして財政資金を得た政府は、老朽化が進んだ社会資本の整備・改修を進めるとともに、実体経済にマネーを還流させて内需拡大を図ることができる。一方で日銀は「銀行券ルール」で国債購入の上限を設定するなどの政策規律を保つから、金利動向に留意せざるを得ない政府は、「バラマキ」と批判されるほどの財政大盤振る舞いをすることはないだろう―――このように考えていました。あくまで白川方明・前日銀総裁の金融政策であった「実質ゼロ金利政策」が続くとの前提で・・・。

 ところが黒田日銀のこれからの「異次元緩和」においては、上記の白川日銀ルールを排除したうえで、日銀は毎月7兆円、年間で90兆円近くの国債を買い入れることになります。これは新発国債の約70%を日銀が買うというもので、中銀による国債の直接引き受け「財政ファイナンス」に限りなく近いもの。こうなると政府の国債発行のハードルはずっと低くなります。いくら国債を振り出しても日銀が買い取ってくれるおかげで金利上昇という「アラーム」が鳴らないからです。

 そうなると国土強靭化計画」は当初の目的である既存の主要インフラの改修や耐震補強といったレベルを超えて膨張するおそれが出てきます。つまり、政官財のトライアングル(族議員・官僚[技官]組織・建設土木業界)関係者の結託のもと(?)、必要性に乏しく採算の合わないダムや道路などの新規設備が大量に作られるという懸念です。これらは結局、財政赤字を拡大して無駄な社会資本を乱立させることにつながりかねません。

 そんなことにならないように、そして本当に必要な公共事業がちゃんと実施されるように、わたしたち市民・納税者はこれから本格化する「国土強靭化計画」をこれまで以上にしっかり監視する必要がありそうです。何せ黒田日銀が国債をじゃんじゃん引き受けてしまいますから・・・。

 それにしても、わが国には経常黒字国だからこそのアドバンテージ、つまり一定規模の財政政策が効果を発揮する環境があるのに、黒田日銀の「異次元緩和」が恣意的に生み出す大量過ぎる緩和マネーが、そんな環境の良さと、「これ以上やったら危ないよ」という自動警報装置の双方を打ち消してしまいそうに思えてなりません。たとえるなら、健康な免疫機能を持った人に免疫抑制剤を投与するような感じ―――そんな違和感を覚えます。

 こうした財政政策との兼ね合いや、上述の金融システム不安定化リスクおよび輸入インフレなどの悪影響を考えると、円安誘導を目指した「マネタリーベース拡大!」のかけ声のもと、100兆円に向けて(?)日銀当座預金残高を積み上げることにどれほどの意義があるのか?―――実体経済に流れるお金が増える気配が現れないなか、先日日銀から発表された「量的・質的金融緩和」の衝撃が落ち着いてくる今後は、そんな疑問の声が多くなるのではないでしょうか。

(「日銀の『異次元緩和』で注目の日銀当座預金残高」おわり)

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日銀の「異次元緩和」で注目の日銀当座預金残高⑥

2013-04-15 00:03:31 | 日本

(前回からの続き)

 もっとも、過度のベースマネー拡大策が持つ上記のリスクは、これからの黒田日銀の金融政策ばかりではなく、世界の主要中銀の同政策にも等しく潜んでいること。とりわけアメリカのFRBの量的緩和(Quantitative Easing:QE)の今後の行方には十分な注意が必要でしょう。

 FRBは、不動産バブルの崩壊後、バランスシートの規模を3倍以上に膨張させています。つまり日銀(B/Sを今後2年で2倍に拡大する予定!)よりもそれだけ出口戦略」と呼ばれる政策転換(QEの停止、購入した米国債や住宅ローン債券の売却など)が難しいといえます。しかも日本と違ってアメリカは慢性的な経常赤字国。国内の資金不足を外国(メインは日中両国)からの巨額の借金で賄っています。そのため、FRBが現在のQE路線を少しでも変更しようとしたときに想定されるリスク(外国勢を含む投資家の投げ売りがもたらす米国債・ドルの急落および金利急騰)の発生確率の高さとその悪影響の大きさは上記のわが国・日銀の比ではないでしょう。

 だから、最近のアメリカ経済の好調ぶり(?)を受けて一部に出ているFRBの「出口戦略」が近いといった見方については個人的には懐疑的です。それどころか、QEという「麻薬依存症」に陥ったアメリカはもはや「出口」を見つけられないのではないか(FRBは多少のインフレに目をつぶってでもQEを続けざるを得ないのではないか)―――そんな気さえしています・・・。

 こうしたアメリカのQE依存は必然的に為替のドル安円高の潮流を生み出します。そのため、逆の流れ、つまり円急落ドル急騰という極端な事態にはそう簡単にはならないでしょう。黒田日銀の金融政策が大胆なのは、そのような見方に立ち、たとえ円の価値を希釈化させても、円以上に価値低下が予想されるドルにジャパンマネーが大量に逃げ出すことはない、という強い確信があるからだろうと思っています。別な言い方をしてみると「ドルの弱さが日銀の『異次元緩和』のセイフティーネットとなっている」といった感じでしょうか。

 まあ確かにそうなのかもしれません。それでも繰り返しになりますが、やはりリスクはリスクです。つまり、黒田日銀の「量的・質的金融緩和」は、資産バブルや国債バブルと引き替えに、円安にともなう輸入インフレなどの悪しき作用を国民生活にもたらすとともに、(白川前総裁の「安全運転」ぶりと比べると)日本経済の生命線である金融システムを危険にさらすおそれが大きいということ。このあたりをわたしたちはしっかり認識しておいたほうがよさそうだと感じています。

(続く)

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日銀の「異次元緩和」で注目の日銀当座預金残高⑤

2013-04-13 00:02:34 | 日本

(前回からの続き)

 ということで、昨年7月に書いたように、わが国のさらなる景気浮揚のためには、この日銀当座預金口座に滞留する巨額の緩和マネーを(マネーゲームにではなく)実体経済に流していくことが肝要で、そのためには政府が国債を発行してこれらの資金を借り受け、それで公共事業を推進するという需要創出策が有効だと考えていたのですが・・・それも何だか心配になってきました。「いくらなんでも、黒田日銀は国債を買い過ぎではないのか」と感じてしまうからです。

 以前こちらで述べたとおり、日本政府は日銀に頼ることなく、公共事業の原資となる資金を低い金利で調達することができると思っています。政府が新規の国債を発行したら、適当な運用先が見当たらずにやむなく(?)日銀当座預金に積み上がっていた数十兆円ものマネーが喜んでそれを買うだろうと考えられるからです。一方で、すでにそうした良好な環境にあるわけだから、後述する「弊害」を避ける意味でも、政府の財政負担をさらに軽減すること(さらなる金利引き下げ)を目的に日銀がこれ以上国債を買い入れる必要はないはずだ、と思っています。

 そもそもわが国の長期金利は、日銀の現体制が始まる前から、0.7%前後という歴史的な低水準で安定していました。そのため黒田日銀が今後いくら国債を買い入れて、先日記録したような史上最低値付近に金利を引き下げたところで、もはやその効果は限定的といえるでしょう(繰り返しになりますが、今回の日銀による大量の国債購入には、金利引き下げが目的というよりは、円のマネタリーベースを拡大することで円安を促そうという狙いがあるのでしょうが・・・)。

 むしろ過剰な国債購入は、これからの日銀の金融政策に大きな制約を与えかねないという意味で、弊害が大きいと思います。今後、「アベノミクス」の目論見どおり景気が回復してインフレ率が目標の2%を超えてきたら、日銀は金融引き締めに動き、それまでに買い入れた国債などの資産を売却しようとするでしょう。それは当然、金利の上昇と国債価格の低下を招きます。

 一方、黒田日銀による国債買い支え(国債価格の高値維持)でわが国の投資家が抱える国債保有量はきっと膨らんでいるはず(俗に言う「国債バブル」ですね)。そんなときに日銀がちょっとでも「心変わり」のそぶりを見せたら・・・損失回避のために大手金融機関がいっせいに国債売りに走って短期間のうちに国債価格と円は暴落、さらに金利は急騰して日本経済は破綻へ・・・といった最悪の展開すら想定されます。

 だからこそ、日銀の目的「金融システムの安定」を実直に守り通した白川前総裁は、「銀行券ルール」で日銀が買い入れる国債量の上限を設定するとともに、それらの国債は償還までの年数が短いものに限定していたのでしょう。近いうちに金融緩和の停止等が必要となっても日銀として対応が可能にしておくためです(国債を抱えすぎてしまったために売れなくなるリスクを回避する)。

 こうした歯止めを自ら撤廃して「異次元緩和」に乗り出した黒田日銀は、その代償として、将来の金融政策の変更をいっそう難しいものにしてしまった---そんな気がします。

(続く)

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日銀の「異次元緩和」で注目の日銀当座預金残高④

2013-04-11 00:02:16 | 日本

(前回からの続き)

 おそらく日本の投資家、とくに大手金融機関は、今回の黒田日銀の大胆な金融緩和策発表を受け、いかにわが国の株式市場や債券市場が沸き立ったとしても、そして為替市場で(短期的に?)円安外貨高が進んでも、外貨建ての資産の大幅な買い増しには動かないでしょう。上記のような欧米経済のリスクを十分に警戒していると思われるからです(それはとても賢明な判断だと思います)。

 一方で、安倍政権や黒田日銀が目論むように、銀行は日本国債を日銀に買い取ってもらって手にした潤沢なマネーを実体経済、つまり企業への貸し出しに回すのでしょうか。これも期待薄と思います。内外の経済の先行きが不透明なため、どれほど金利が低くても、借り手側の企業には新規投資に向けた資金需要がないからです。やはり景気が本格的に回復し、企業が本気で設備投資をしたいという環境にならなければ金融機関による企業融資は増えていかないでしょう。

 4月1日付の日経新聞に「大手銀、貸し出し増加基調」といった景気のいい見出しの記事が出ました。「それは良い傾向・・・」と思いながらよく読んでみると、その背景にあるのは外国企業のM&A(合併・買収)などであり、肝心の企業融資については「景気回復にともなう設備投資に銀行の貸し出しが回るには至っていない」(全国銀行協会)とのこと(何とも見出しと中身が食い違った記事ですが、「アベノミクスが景気浮揚の力になってほしい」という日経の思いが感じられます)。ということは、最近の円安外貨高で日本企業による外国企業の買収意欲が衰えれば、またもや企業への貸し出しは停滞してしまいそうです。

 こうしたことのトータルの結果、わが国の金融機関による外貨建て資産の購入や企業融資はいっこうに増えず、一方で日銀が国債を買い続けて大量の資金を供給するため、結局はあり余るマネーが日銀当座預金口座にどんどん積み上がっていく・・・そんな予想ができそうですが・・・。

(本稿の冒頭に記したように、今回の日銀の「量的・質的金融緩和」は、金融緩和の指標を「マネタリーベース」に変更しています。だから日銀は、たとえ日銀当座預金残高が増え続けても、それはマネタリーベースの拡大を意味するわけだから当初の狙い通り、という見方をしているのかもしれません。実体経済にお金が回ろうが同預金口座に滞留しようが、とにかくドル等のマネタリーベースに対して円のそれを増やすことで円安を促す、つまり円安誘導による外需狙い」を何よりも優先させよう、ということなのでしょう。)

(続く)

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