(前回からの続き)
これまで綴ってきたことから、アメリカにはもはやインフレ高進以外の逝く先はなさそうです。つまり、米FRBが金融引き締めにどれほどトライしても、それに伴う株・債券・不動産等価格の暴落・金利急騰に経済が耐え切れないために物価上昇率よりもずっと低い政策金利レベルでこれを断念せざるを得ず、結果として実質金利マイナス(≒名目金利-インフレ率)の状態が永続する、ということ。
そうした状況下で最大の脅威は原油等のエネルギー価格の上昇でしょう。上記の金融環境であれば借金をしてでもモノを買っておいた方がいいわけです。となると当該マネーがモノ投資・・・の代表である原油や天然ガスのマーケットに大量かつ永遠に(実質マイナス金利が解消されない限り)?流入し続けるでしょう(?)。したがって、ただでさえ1バレル90ドル弱という約7年ぶりの高値圏にある原油等の価格は今後、いっそう上がっていくものと予想されます・・・
で、それがアメリカにどんな影響を与えるか、については、たとえば同国の貿易収支からも推測ができます(以下数値出典:U.S. Census Bureau HP)。同国の2021年11月(直近)のモノの貿易収支は989.9億ドルの赤字と、単月の赤字額としては過去最悪となりました。同赤字の1月からの11か月分の累計額も9961.8億ドルと、最大の赤字を記録した2020年(9220.2億ドル)をすでに上回っており、年額の貿易赤字としても2021年は過去最悪となるのは確実です。
で、そこで注目されるのはアメリカの原油貿易の収支です。それ、昨年11月は10.7億ドルの赤字でした・・・って、赤字総額に比べると大した額ではない?たしかにそうですね。ですが、この赤字が意味するところは以下のことから重大です。じつはアメリカは2020年に原油貿易収支で黒字を達成しています。これ、シェールオイルの増産やコロナ禍による国内需要の減退等が寄与したものと考えられますが、ともかく画期的なことでした。世界一の石油消費国が差し引きでその自給を達成したことになるわけですからね(って、にもかかわらず同年にそれまでの最大の年間貿易赤字を記録するあたりもスゴいですが)。しかし・・・残念なことに昨年は一転、11月までの総額で81.3億ドルの赤字と、2019年以前の赤字モードに戻ってしまいました。これコロナ禍対策で需要が喚起されたのに加え、やはり上記インフレで原油価格が高騰してしまったことが効いているわけです。そしてこれ、今後はさらに値上がりしていく、となれば、同国の貿易収支は、原油貿易収支の赤字幅拡大に引っ張られてますます悪化していく可能性が高いでしょう。当然これまたインフレを煽る方向に作用して・・・
こうしてアメリカは、せっかくの「シェール革命」の恩恵を食いつぶすことに。でもそれは、上記のとおり、自分たちで(っても、一握りの富裕層の利益増大を図るために?)インフレを放任&拡大し続けたことの当然の結末でもあるわけですが・・・