(前回からの続き)
以前こちらの記事等に書いたように、同じ通貨「ユーロ」圏のなかでも、各国の国債価格(利回り)はかなり違っています。これを高い順に(利回りの小さい順に)並べるとおおむね以下のようになります。
独(0.40%)>蘭(0.52%)>仏(0.70%)>西(1.61%)>伊(2.10%)>・・・>ギリシャ(5.45%)
カッコ内は26日時点の各国の長期金利(新規発行10年物国債金利)
同じユーロ建ての国債だから、これだけを見れば誰だって安くてリターンの大きなギリシャ国債を買いたくなるところです・・・が、実際にはそうはならない。その理由は、ギリシャをワーストに、価格の低い(利回りが大きい)国債発行国にはデフォルト(債務不履行)のリスクがあるから。したがって、こうした国々は、財政資金を集めたくても投資家がデフォルトを懸念しておカネをなかなか貸してくれないため、どうしても金利が上がり、それだけ返済負担が重くなってさらに財政収支が悪化して・・・となってしまう。
・・・これを解消してくれる手が欧州中央銀行(ECB)の量的緩和策(QE)になります。これ、各国の国債等をECBが買い支えることで、その金利を引き下げようというもの。よってこのQE、同じEU圏内でも国債利回りの大きな国ほどありがたい、ということになります・・・が他方で、国によっては金利が不自然に下がり過ぎてしまい、バブルなどの弊害が大きくなるので、いいかげんやめてほしい、と思っている。で、その境目あたりに位置する国が・・・先の記事でフランスだと論じました。だからこそ今春の大統領選で国民戦線のルペン党首らが現行のユーロ解体と「新フランス・フラン」の導入を訴えることができた―――この手の発想もあり得た―――と考える次第です。
・・・ですが、もはやフランスはそのボーダーライン上から、ギリシャやイタリアといった重債務国の側にすっかり寄ってしまったみたいです。その一端を感じさせるのが7月初旬のブルームバーグの報道。これによるとECBがQEプログラムに基づいて購入する独国債が6月、3か月連続で目標額に達しなかったいっぽう、伊国債そして仏国債の購入額は同月、それぞれ9.8億ユーロ、11.9億ユーロ、目標を上回る水準に達したとのこと(目標超過額は仏1位、伊2位)。ということは、イタリアはまあ当然として(?)、フランスもまたQEへの依存を強めているように思えます(?)。こうなってしまった以上フランスはユーロとQEにしがみつくしかなくなる。新通貨に切り替えたりしたら同通貨は対ユーロで暴落、金利急騰は必至ですからね・・・?
・・・と考えてみると、イタリアはもちろん、フランスもまた、QEにネガティブなドイツ・・・に金融政策の主導権を渡したくはないでしょう。