世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
ご訪問ありがとうございます。

【いまこそ肌身感覚で常識を疑うとき】二大常識「消費増税」「円安追求」のトレード・オフ⑤

2014-11-29 00:03:34 | 日本

(前回からの続き)

 前回、実質的な中銀マネタイゼーションを意味する日銀の「異次元緩和」が政治を麻痺させ、歳出側の放漫化を促し、その結果、財政赤字がますます拡大するので歳入側をいっそう強化(つまりは増税)しなければならなくなりそうだ、という個人的な見通しを記しました。

 そしてこの危険な流れは巨大なツケとなって国民に・・・つまり通貨安インフレ消費増税の果てしない(?)連鎖を生み出し、わが国の多くの企業や家計をどんどん消耗させるでしょう。本稿冒頭で本来はトレード・オフの関係にある日本経済の二大常識「円安は良いこと」と「消費増税が必要」の両方を無理に追い求めるとオカシイことになる、なんて書いたのは、こうしたことが理由となっています。

 食料品や電気代など、身の回りのモノやサービスの価格がいまも次々に値上げされています。その主たる原因は前稿で書いたとおり。このタイミングですから消費税率の引き上げにともなうものではないことは明らかです。

 はたしてどれだけの人々がこの円安物価上昇分を上回る利益を得ているというのか・・・。大半の給与所得者そして年金受給者の実質所得は減り続けているのではないのか・・・。「何かオカシイ・・・」―――そろそろ気づかないと、つまり「円安は良いことだ」という常識の呪縛から解き放されないと、わたしたちの将来は開けない―――そう感じています。

 さらにもう一方の「消費増税が必要だ」も、本当に常識といえるのか、よーく考えてみる必要がありそう

 本格的な少子高齢化社会を迎え、社会保障関連の支出が増え続けるなか、「税収を増やさなければならない」というところまでは「常識」に近いといえるでしょう。だからといってそれは「消費税を増税しなければならない」とはけっしてイコールではありません。必要なのは財源の確保だからです。消費税はそのための手段のひとつにすぎません。

 ならば・・・消費者にこれ以上の負担をかけることのないよう、消費税率を上げないで税収を増やす方法(インボイス方式導入等)を検討するとか、消費税以外の税金―――所得税や相続税などの増税や脱税防止策を講ずる、といった歳入強化の手もあるはず。厳しい財政事情のもと、(一部の人々にとってはこれまた常識の?)法人税減税を取りやめる選択肢もあるでしょう。

 いまや誰もが痛感しているように、消費税には個人消費を冷却させるとともに、逆進性―――貧富差を拡大するという大きなデメリットがあります。上述のとおり「円安は良いことだ」という常識を追い求めた当然の結果として巻き起こった円安インフレで、すでに景気も国民生活(とくに中間層以下の生活)も大きなダメージを被っています。だからこれに輪をかけるような消費増税の断行は、まあ安倍政権や黒田日銀的には「常識」でも、一般国民にとってはあまりに「非常識」に感じられるのではないでしょうか・・・。

 世の中には「???」な常識がけっこうあるけれど、本稿で綴ってきた「円安は良いことだ」「消費増税が必要だ」の二大常識にはじまって、「インフレは正しいことだ」「原油安はリスクだ」「アベノミクスで景気は回復している」・・・などなど、最近の経済分野にはとりわけこの手の常識が多いように感じます。日々の暮らしのなかで、たとえば買い物の折に、政府・日銀・メディアが伝えるこれらの常識を疑ってみる。それってホントなの?―――いまこそそんな自分の肌身感覚を信じるときだ―――そんな気がしています。

(「二大常識『消費増税』『円安追求』のトレード・オフ」おわり)

金融・投資(全般) ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【日銀が悪性インフレと大増税への道を開く!?】二大常識「消費増税」「円安追求」のトレード・オフ④

2014-11-27 00:01:39 | 日本

(前回からの続き)

 本稿では日本経済の二大常識消費増税が必要」「円安は良いこと」について思うことを綴っています。

 来月14日の衆院選に向け、各政党が次々に主要政策を発表しているところです。で、アベノミクス円安誘導を推進する与党・自民党の政策で本稿のテーマと関連する部分をチェックしてみると(まあ連立を組む公明党との政策のすり合わせの結果によっては変更される箇所も多そうだけれど)・・・「消費税率再引き上げの2017年春までの延期」にはじまって、同10%時点からの軽減税率の導入、法人税の減税、地方創生、そして極めつけは燃料費補助などの「円安」対策(!!)・・・などなど、それぞれの是非はともかく、何だか歳入減・歳出増につながりそうな政策がズラリ・・・。あくまでも個人的な印象ですが、前回書いたような放漫財政の気配を感じさせられます。

 この背景には、有権者受けしそうな公約を並べて票を集めようという思惑はもちろん、いくら財政赤字を増やしても(歳入を減らしても、歳出を増やしても)長期金利は上がるまい、という計算が働いているはずです。まあそれは当然ですね、日銀が「異次元緩和」で「麻薬」の投与=実質的な国債の直接引き受けをやっているわけだから。実際、黒田日銀総裁は、不測の事態には追加緩和で対応する(→いくらでも国債を買いまっせ!?)なんて発言をされていますし・・・。これでは、与党に限らず、政治の側のリスク感覚が麻痺してしまうのは無理もないわけで・・・。

 このように「円安は良いこと」の「常識」を追い求めた結果、わが国はいま、(多くの新興国が金融マーケットが「リスク・オフ」モードの際に苦しんでいるような)真の意味での通貨安環境、つまり財政赤字が野放図に膨らみ、市場原理にゆだねるだけでは長期金利が不都合なくらいに上がってしまうというデンジャラス・ゾーンに踏み入る瀬戸際に立っている―――そんな危機感を覚えるのですが・・・

 ・・・って、あれ? スタート「円安は良いことだ」→日銀が異次元緩和で円安・低金利を無理矢理誘導→政府が金利上昇の痛みを感じなくなって財政放漫化→財政赤字が拡大→ゴール「消費増税が必要だ」になりました・・・。本稿前段で、この二大常識はトレード・オフ(あちらを立てればこちらが立たず)だ、なんて記しましたが、矛盾なく、ちゃんとつながりましたね! これはこのとおり、日銀があまりに「不自然」な金融政策を進めた結果だと考えています。わが国のファンダメンタルズに照らして「自然」な(マーケットメカニズムに基づく)財政・金融政策が実施されていたら、この二大常識がともに成立することはありえないのに・・・。

 こうしてわたしたちにとっては恐怖の(?)無限ループが生まれつつある―――それは、円安誘導(円安インフレ)→消費増税(増税インフレ)→円安誘導(同)→消費増税(同)→・・・。つまり、日銀は異次元緩和を通じて悪性インフレと消費税大増税への道を開きつつあるのではないか・・・そう危惧しています。

(続く)

金融・投資(全般) ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【「どえらいリスク」財政放漫化に手を貸す黒田日銀】二大常識「消費増税」「円安追求」のトレード・オフ③

2014-11-25 00:02:15 | 日本

(前回からの続き)

 前回、もともとトレード・オフ(あちらを立てればこちらが立たず)の関係にある日本経済の二大常識「消費増税が必要」「円安は良いこと」の双方を実現しようと、「財政」サイドが消費増税を進めるなかで「金融」サイド、つまり日銀が無茶な円安誘導=国債等の過剰買い入れを強行しているため、市場では混乱が広がっている―――本来あるべき国債価格や金利水準等が分からなくなっている、といった見方を綴りました。

 日銀「異次元緩和」開始前は、金利の上昇を恐れる国は国債を過度に振り出すことがないように歳入歳出のバランスを維持しようと意識しました。しかし、いまの金融政策のもとでは警告音が鳴らない(日銀が国債を大量に買うので長期金利が低いレベルにとどまる)ので、財政サイドも安全な範囲の発行額が分からず、為政者の都合で、ついつい国債を多めに振り出して、そのあげく歳出の大盤振る舞いに陥りかねない・・・。これは米英等の経常赤字国がやっている「中銀による国債の直接引き受け」=「放漫財政」の構図そのものです。別な言い方をすれば、円安環境を欲するあまり日銀は財政の放漫化に手を貸している、といったところでしょうか。

 このように、わが国は「円安は良いこと」という常識を「金融」側から追求するあまり、もう一方の常識「消費増税は必要」が象徴する財政規律を実質的に失い、結果として国家経済の基盤である財政構造と金融システムを危険にさらしている・・・。「財政」「金融」共倒れのリスク―――このあたりがいま、「アベノミクス」のもとで起こっている危機的事態の本質であり、それを引き起こしている張本人が、何と驚くべきことに通貨の番人たる日銀―――そう考えています。

 「どえらいリスク」―――この4月の消費税率引き上げの可否をめぐる議論が起こっていた昨年、引き上げ見送りをどう思うか、と問われたときの黒田日銀総裁のコメントです。そして先日、同総裁は、来年10月の同再引き上げが後送りされる可能性が高まっていることに関連し、財政規律が失われて対応不能となっても、それは政府・国会のせいであり、日銀の責任ではない、といった主旨の発言をされています・・・。

 ・・・そうでしょうか。本当に日銀に責任はないと言い切れるのでしょうか。上記のように、健全に機能していた国債マーケットを麻痺させ、何らの「出口戦略」(異次元緩和終了後の日銀のバランスシート縮小策)のイメージすら持たないまま、実質的な国債の直接引き受けに乗り出して政府に放漫財政を促すようなことをしているのは、ほかならぬご自身が率いる日銀なのでは・・・。

 これって、まるで「麻薬」の売人。さんざん麻薬(QEマネー)を売りつけておいて、顧客が麻薬中毒(長期金利が制御不能となってQEをやめられなくなる状態)に陥ったら、「それは麻薬を乱用した側の責任であって、麻薬を売った私の責任ではない」と言うようなもの・・・。

 どう考えてみても同罪でしょう―――麻薬を買う側(財政)も、売る側(金融=黒田日銀)も・・・。

(続く)

金融・投資(全般) ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【日銀のQEに合理性はない?】二大常識「消費増税」「円安追求」のトレード・オフ②

2014-11-23 00:03:29 | 日本

(前回からの続き)

 前回、日本経済の二大常識「消費増税が必要だ」と「円安は良いことだ」を実現させようとして前者、つまり歳入強化を通じた「財政」のいっそうの健全化を推進すると、わが国のファンダメンタルズのもとではどうしても円高となり、後者の常識に反してしまう。したがって、前者を実行しつつ円安環境を醸成するためには、「金融」面からの働きかけが必要となる―――これこそが日銀の「異次元緩和、といったようなことを書きました。

 でも・・・この円安誘導ですが、以下に述べるように、今度はこれが前者に反することになる―――健全財政の基盤を脅かす重大リスクとなってしまいます

 本ブログで何度も綴っているとおり、日銀のこの金融政策はベースマネーの拡大、つまり、国債買い入れ量の上限を規定した「銀行券ルール」を撤廃し、国債等の資産をじゃんじゃん買い入れてマネーを市中に供給するというもの。昨年4月の開始から1年半あまり経過した現在、先月末の追加緩和分と合わせ、すでに新規発行の国債の大半は日銀が購入するという異常な事態になっています。

 本来、この手の中銀のオペレーションは、アメリカやイギリスのような経常赤字国が行うべきもの。外国等からの借金だけでは財政資金が賄いきれないことで起こる長期金利の上昇を食い止めるために、中銀が国債を買い支える、といった感じです。もちろんこれにともなう副作用―――マネー過剰供給がもたらす資産バブルや通貨価値の希薄化(通貨安)、つまりインフレが発生することは覚悟のうえで・・・。そのため米FRBや英BOEの量的緩和(QE)にはそれなりの合理性(?)があるわけです。

 一方、わが国は米英両国とは真逆の金融環境にあります。海外マネーに頼らなくても、経常黒字=超過貯蓄分の自国マネーが自然と日本国債に流入するから、国債は高値で、長期金利は低い水準で維持されているということ。だから日本政府は、この枠組みが揺らぐことのないかぎりにおいて、淡々と国債を発行して資金調達をすることが可能です。もちろん日銀はQEなんてする必要はありません。なぜならこのとおり、政府は市場からおカネを低金利で借りることができているし、本邦投資家(おもに本邦金融機関)も政府におカネを貸したくて(国債を買いたくて)ウズウズしているから・・・。

 それなのに―――財政にそのニーズが特段あるわけでもないのに―――いまの日銀は、上述のとおり新発国債のほとんどを買い占めることで、このフレームを意識的に壊しています。市場原理が正常に機能していた国債マーケットに中銀がこんなかたちで過剰介入するなんて、まるで社会主義金融のようですね・・・。

 で、本稿の文脈から見てその何が問題なのかといえば、これによって政府はもちろん市場にとっても適切な国債の流通量、価格や金利水準が分からなくなってしまうこと。

(続く)

金融・投資(全般) ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【財政健全化→円高追求のはずが・・・】二大常識「消費増税」「円安追求」のトレード・オフ①

2014-11-21 00:02:36 | 日本

 消費増税は必要だ」と「円安は良いことだ」―――これらは、わたしたちにとってすっかり耳タコの日本経済「二大常識」といっても言い過ぎではないでしょう。なぜって、わが国では長年、政府、経済学者、そしてメディアがこぞってこう唱え続けていますからね・・・。でもちょっと考えると、ホントに常識なの?―――これらはトレード・オフ(あちらを立てればこちらが立たず)の関係にあることに誰でも気がつきます。だから両者を同時に成し遂げようとするとオカシイことに・・・

 わが国は、言わずと知れた世界一の純債権国であり経常黒字国。超過貯蓄分に相当するマネーは、世界的な運用難のなか、自然と日本国債買いに向かいます。一方、世界一の純債務国であるアメリカをはじめ、イギリス、(ドイツなどを除く)EU諸国、カナダ、オーストラリアといった主要通貨国の経常収支はおおむね赤字傾向。したがってこれら諸国の通貨に対し、円はおのずと高くなる(実質の利回りが高くなる・長期金利が低くなる)ことになります。

 そうしたなかで「財政」再建を進めようとすることは・・・円や国債の価値をいっそう高めて(長期金利を引き下げて)さらに円高(外貨安)にすることを意味します。もちろんそれを「良いこと」「必要なこと」と判断するのならば、その手段として消費増税を行ってもよいと思います。前稿で書いたとおり円高局面は消費増税がしやすい環境だと考えています。円高で輸入原材料(つまり、生活必需品・サービス)の円建て価格が下がるため、それだけ国民の増税にともなう負担感が軽減されるからです。

 ところが・・・ここでオカシイこと―――矛盾が生じてしまいます。上記「二大常識」のうちの「消費増税が必要だ」をそのとおり実施した結果として生じる「円高(外貨安)」は、もうひとつの常識「円安は良いことだ」の真逆になってしまうということです。うーん、そうか・・・では「円安」を追求することにしよう!となると、その方向性は2つ―――「財政」面か、「金融」面かのいずれかから円安を促す政策を実施するということになりますが・・・。

 で、前者の場合、早い話、国債を大量に振り出して放漫財政を組めばいいわけです。でもこれは「消費増税が必要だ」に完全に反するから、ありえない(はず・・・)。まあ為替政策で、つまり円売り外貨買い介入で円安にする、という手もありますが、諸外国から為替操作国と批判されたり、為替差損をさらに抱え込むなどの懸念があるので、これまたやりづらい。というわけで選択肢は後者のみ―――「金融」面での円安誘導・・・。

 これこそ、現在、日銀が推進中の「異次元緩和」ということになります。

(続く)

金融・投資(全般) ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【異次元緩和の是非こそ真の争点】消費税率引き上げに有効な通貨「高」政策⑤

2014-11-19 00:01:36 | 日本

前回からの続き)

 これまで綴ってきたように、アベノミクス」(≒円安誘導)のこの2年間で進んだ輸入原材料円建て価格の上昇を通じた政策的な通貨安インフレは、あらゆるモノやサービス、とりわけわたしたちにとっていちばん上がっては困る生活必需品・サービスの価格を顕著に引き上げ、景気を冷え込ませる元凶になっています。そのうえで安倍政権は今年の4月、さらに物価高をあおるかのように消費税率の引き上げを行ったのだから、企業活動や市民生活が強烈なダメージ―――円安インフレ増税インフレWパンチ―――を被り、結果としてわが国がマイナス成長に沈むのは当然です。

 以上を言い換えると、先の消費増税が苛烈なものになったのも、そして来年予定の税率再引き上げに関する強い懸念と先送り議論が巻き起こっているのも、すべては足元の円安インフレが厳しすぎるから。そんな意味で、円安を推進する政策=アベノミクスこそが消費増税を難しくしているといえるのではないでしょうか。このことを安倍首相・黒田日銀総裁にはもっと自覚いただきたいし、再増税が悲願の財務省も指摘しないといけないのでは・・・?

 消費税率の引き上げ時期後送り判断についての信を問う衆議院議員選挙が行われることになりました。で、安倍政権や与党は再増税の時期を2017年4月と現行よりも1年半ほど遅らせるとのこと。それはある意味、選挙戦術であり、時間稼ぎでもあるわけですが・・・しかし、これまでに綴ってきたことから、もしこのまま日銀の異次元緩和が継続され、上述の輸入原材料価格の円安インフレが引き起こされていけば、そんな「執行猶予」もあまり意味がない。その間に日本経済に増税に耐えられる体力が付きそうにもないからです。それどころか今後も続く円安パンチでいま以上に国民は疲弊するおそれすらあるでしょう・・・。

 したがって、真に意味のある選挙の争点は、次回の「消費増税」のタイミングなどではなく、再増税を実質的に不可能にさせた「円安誘導」の是非であるべきだと考えています。つまりそれはアベノミクスの是非、いや、もっと正確には円安インフレを煽り続ける日銀異次元緩和」に対してYes/Noを問うこと・・・。

 とはいっても日銀は政治等からの「独立性」が保証された中央銀行。国民が直接日銀の金融政策に介入することはできません。しかし同政策の決定権を持つ9名の政策審議委員に誰を選ぶか、については一定程度、わたしたちの思いを反映させることができます。同委員は国会同意を経て任命されるからです。

 よって今回の選挙における各候補者には、日銀の異次元緩和に関するご自身の考えを有権者に語ってほしい・・・。どんな方が金融政策のかじ取りを担うべきと思っているのか、つまりいまの経済および財政・金融情勢のもとでの意図的な円安誘導がわたしたちにとって良いことと感じているのか、それともその逆か、ということをぜひ明らかにしてもらいたいと願っています。それを聞いたうえで投票所に足を運びたい・・・。

 もはや党派の違いに関係はない。ここでしっかりとした人々、少なくとも「マトモ」な(食費や光熱費が上がってつらい、下がってうれしい)人々を選ばないと、「異次元感覚」な(食費や光熱費が上がってうれしい、下がってつらい)人々によって、この国の金融も、財政も、そして国民生活も、本当にブラックホールに突き落とされてしまう―――アベノミクス開始から2年。日本はいま、大きな岐路に立っていると感じます。

(「消費税率引き上げに有効な通貨『高』政策」おわり)

金融・投資(全般) ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【アベノミクスのねらい:生活必需品価格を引き上げよ!?】消費税率引き上げに有効な通貨「高」政策④

2014-11-17 00:02:21 | 日本

前回からの続き)

 前回、通貨安円安ドル高)の進行局面における消費税率の引き上げは、円安インフレおよび増税インフレの双方の痛撃をわが国の経済社会に与える、といったようなことを書きました。そしてこの強烈なインフレWパンチを国民に対して繰り出しているのが「アベノミクス」―――「円安誘導」(≒日銀異次元緩和」)をテコとした「リフレーション政策」(意図的にインフレを起こそうという政策)ということになります。

 そのあたりが読み取れるデータが以下のグラフ。いまからちょうど2年前の201211月時点を「100」としたときの今年9月までの「消費者物価指数」(CPI)の月別の推移をみたものです(出典:総務省統計)。同年月を基準としたのは、実質的なアベノミクスがこのときにスタートしたからです(同月中旬、当時の安倍自民党総裁[現首相]がインフレ目標2~3%/年を発表)。

 で、これによると、CPIの総合値は現時点(2014/9)で104.7となっています。2012/11から約2年で4.7%もの値上がりです。その内訳ですが、今年4月の消費税率引き上げ(5→8%)にともなう上昇分:約2.9%(=108/105)が入っているので、これ以外の約1.8%の物価上昇はおもに上記の通貨安(円安ドル高)誘導政策によって引き起こされたものと推測されます。何せこの間、1ドル80.7円(2012/11)から同107.2円(2014/9)と、約3割近くも円安ドル高になったわけですからね・・・。こうして、アベノミクス開始以降、税率アップと円安物価高の双方が確実に国民生活に影を落とし始めているようすが窺えるわけです。

 ここでとくに指摘しておかなくてはならない重大な問題は、よりによって庶民にとっていちばん上がってほしくない食料品価格や光熱費のインフレ率が上記総合値4.7%を大きく上回っていることです。

 まず「食料」は107.0と7%もの値上がりです(なお、上記のグラフには出てきませんが、そのうち生鮮食料品は122.8と23%もの上昇となっています)。そしてもっと大きく上がっているのはエネルギー関係の費用。ガス代9%(109.1)、エネルギー(ガソリン・灯油等)14%(114.1)、最高が電気代の15%(115.1)! 以前から記しているように、やっぱりアベノミクスの優等生でしたね、電気料金が・・・。

 上記のように消費増税の影響はプラス2.9%だから、それを除いた食費・光熱費の上昇要因は、安倍政権・黒田日銀が意図的に引き起こした輸入原材料(小麦、大豆、原油・ガス等)円建て価格のインフレであるとともに、これらがCPI総合値を税率上昇分以上に引き上げる原動力となったのは間違いのないところ。つまり、アベノミクスのめざすインフレとは、輸入原材料の円安インフレでCPIを押し上げるという、コストプッシュ型の「悪いインフレ」に過ぎないことが、あらためて確認できたわけで・・・。

 そんななかでの今年4月の消費増税がどれほど日本の実体経済と国民の暮らしにネガティブな打撃を与えたか、誰にでも容易に想像がつくというものです。上のグラフですが、前回ご紹介した下記のイメージに似ていると思いませんか・・・?

続く

金融・投資(全般) ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【円安&増税のインフレWパンチ!】消費税率引き上げに有効な通貨「高」政策③

2014-11-15 00:04:36 | 日本

前回からの続き)

 本稿ではこれまで、たとえ消費税率が引き上げられても、原油・ガスをはじめとする輸入原材料の円建て価格が下がっているのなら、そのぶん増税にともなう物価上昇幅が減殺され、国民の負担感を減らすことができる、といったようなことを書いてきました。要するに、これらの円建て価格の低下をもたらす通貨高円高ドル安)が消費増税には有利な条件だということです。

 これに対し・・・通貨安円安ドル高)の進行局面における消費税率の引き上げは一転、わが国の経済・社会両面にとって非常に厳しいものになります。考えてみれば当たり前の話です。それによってわたしたちは物価高のWパンチ―――円安インフレ消費増税インフレ―――を食らうわけですから・・・。

 これを先述と同じく、1ドル100円のときの一単位当たりの円建て価格が100円の輸入原材料を例にとって表現すると・・・いまの消費税率8%のもとでの税込販売価格は当然108円です。来年10月、予定どおり税率が10%に引き上げられれば110円(2%弱の値上がり)・・・になりそうですが、何やら今後は円安がかなり進みそうな気配。で、とりあえず現在(11月中旬)の為替レートに近い同115円(!)で計算してみると、100×115/100×1.10126円と、何と!いまの108円から17%もの値上がりということに・・・。

 この悲惨なありさまを前回と同じパターンでイメージ化したものが下図になります。円安が進むにつれ、そして消費税率が上がるにつれ、わたしたちが支払う税込み価格はどんどん上昇していきます。ひえーっ!

 そのうえ前回のケースでは、たとえ増税されてもそれまでの円高デフレ幅が大きければ差し引きの円建て価格が以前の価格と比べて安くなり、国民の実質的な費用負担が減るという可能性があったわけですが、今回―――円安インフレ&増税インフレのコンビネーションのもとではその可能性は非常に小さくなります。つまり「輸入原材料にかかる将来のコスト」マイナス「同・現在のコスト」がほとんどの場合プラス=コスト増加になるということ。そのぶん、企業にとっては製造等原価が上がって利益が減るし、家計にとっても生活必需品等にかかる出費が増えてレジャーや預貯金に回すおカネが減るわけで・・・。

 この国民に過酷な経済・生活環境はけっして不可抗力によって生じたわけではありません。すべては政策によって演出されたものです。で、その政策とは・・・いうまでもなく「アベノミクス」です。

続く

金融・投資(全般) ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【円高デフレが増税インフレの悪影響を緩和】消費税率引き上げに有効な通貨「高」政策②

2014-11-13 00:01:08 | 日本

前回からの続き)

 前回、円高ドル安で輸入原材料の円建て価格が緩やかに下がるなかで、消費税率を少しずつ上げていけば、企業や消費者の増税にともなうコスト負担増を一定程度、和らげることができるし、財務当局も消費増税による歳入の強化や財政健全化を進めることができる、といったようなことを記しました。

 これをイメージで表現すると下図のようになります。円高デフレで輸入原材料の円建て税抜き価格が下がっていけば、どこかのタイミングで消費税率を引き上げても、その税込み価格は以前の増税前の金額と比べて大きく変わらないし、値下がりしている可能性すらある。したがってその間、わたしたちの収入がたとえ増えていなくても、コストを差し引いた実質所得は増える=それだけ「豊か」になる、ということです。

 

 もちろん消費の現場はこんなに単純ではありません。「円高になったからといって、すべてのモノやサービスの価格が下がるわけではないから、やはり消費税率が上がればそれだけ国民の税負担は高まるはずだ」―――たしかにそのとおりだと思います。

 でも、円高のメリット(=円建て価格の低下)がダイレクトに現れる輸入食糧や原材料―――小麦、大豆、飼料、鉱石類、とくに原油・天然ガスといった輸入燃料―――の購入費用は、すべてといってよいくらいのモノやサービスの原価で大きなウェートを占めているものばかり。そのため円高になれば、程度の差こそあれ、これらの円建て価格の下落を通じて大半の物品の販売価格は下がり、それだけ経済・社会に消費税率の引き上げに耐えるだけの「ゆとり」をもたらしてくれるだろう―――このように予想しています。そもそも円高デフレ、つまりこれら輸入原材料(これが転じて、小麦粉、豆腐、トイレットペーパー、ガソリン、灯油、電気代、ガス料金、などなど)の値段が下がって悲しむ人なんているでしょうか? 99%いないですよね、この国には(一部のエライ人のなかにはいるみたいですが)・・・。

 以上をふまえ、日本政府・日銀に対して個人的に求めたいことは次のとおり:

  ・通貨高(円高ドル安)を受容する―――だからといって特別なことをする必要はなく、たんに現行の日銀の金融政策「異次元緩和」を白川前総裁のころの「ゼロ金利ベース」程度に戻し、為替レートは市場にゆだねるというスタンスを取ればよい(そうすれば為替はいまの「不自然」な状態から「自然」な状態へ、つまり円高に振れるでしょう)

  ・円高の進行にともなう輸入原材料の円建て価格の低下がもたらすモノやサービスの価格下落分を埋め合わせる程度の消費税率の引き上げを段階的に行っていく―――円高「物価下落」と消費税率アップに起因する「物価上昇」の差し引きのバランスを意識し、企業活動や国民生活に増税にともなう過度の負担が及ぶことがないよう、注意する

これらに十分配慮した金融・為替・財政政策を(短期的な急変動が経済社会にダメージを与えることがないよう)長いスパンをかけて総合的に実行すれば、わが国は消費増税の悪影響(個人消費の減退等)を極力回避しながら、経済成長路線と財政再建路線を同時に歩むことができる―――そう信じています。これと平行し、食料品などの生活必需品・サービスに対して消費税軽減税率を導入するとともに、相続税に代表される資産課税をいっそう強化すれば、逆進性のある消費税のさらなる税率引き上げて懸念される貧富差拡大を緩和することができるでしょう。

 ということで、消費税率を引き上げるうえで「通貨高」はとても大切な要素だ、と思うわけです。

(続く)

金融・投資(全般) ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【2015/10税率引き上げ、見送りか?】消費税率引き上げに有効な通貨「高」政策①

2014-11-11 00:01:01 | 日本

 来年10月からの消費税率を現行の8%から10%に引き上げるかどうかを政府が決定するタイミング(来月の予定?)が近づいてきました

 どうやら安倍首相周辺や与党内部では、現状の経済情勢をふまえ、引き上げの時期を後送りにしたそうな空気が流れている感じがします(?)。でも・・・今回、財務省の猛反対を押し切って延期しても、またすぐに次の判断のときがやってくるわけで、その際、どんな理由で増税に踏み切る気だろう、などと思ってしまいます。

 本来ならば、今回の消費税増税法の「激変緩和措置」(消費税率引き上げの前に、経済状況等を総合的に勘案したうえで、消費税率の引き上げの停止を含め所要の措置を講ずること)の趣旨に照らして引き上げ可否を判断するのが筋というもの。ですが・・・首相も財務省もメディアもこれをあえて無視しているみたい・・・。

 その気持ちは痛いほどよくわかります。なぜなら、同措置が規定する増税Go!の目安ラインはGDP年成長率:名目3%、実質2%程度と、政策的なスタグフレーションに沈むいまのわが国にとっては高すぎるから。これを厳格に適用したらいつまでたっても増税などできない。こんな高成長、アベノミクスのもとではまずムリ、ということをみんな(誰よりも当の安倍首相自身がいちばん?)よくわかっているからね・・・。

 では、どんなときに消費税率を上げたらよいのか、ですが・・・個人的には物価が下がってきているとき、つまり穏やかなデフレ状態のときが適当だと考えています。そしてそのデフレをもたらすものは、何といっても「通貨高」(円高ドル安・・・。

 このあたりを、以下のような例で考えてみましょう。

 為替レートが1ドル100円で、一単位当たりの円建て価格が100円の輸入原材料があったとします。現在の税込販売価格は当然、108円です。ここで消費税率が8%から10%に引き上げられればその価格は110円と、いまより2%弱の値上がりで、企業や消費者の負担はその分、増えることになります。とほほ・・・。

 でも、もしここで為替が2%程度円高になって、この原材料の円建て価格が98円に下がったら・・・税率10%の場合でも、98×1.10108円と、同8%のときと同じ販価となります。ということは、わたしたちの支払いも増税前と同じ額で済むということに・・・。

 円高がもう少し進んで1ドル90円になると・・・たとえ消費税率がグーッと引き上げられて20%(!!)になっても、この原材料の価格は90×1.20108円と、税率8%のときと同額にとどまることになります。さらに為替レートがアベノミクス前の同80円になれば、この価格は80×1.2096円と、8%時の108円よりも11%以上も安く手に入ります。税率が8%→20%へ2.5倍も上がるのに・・・。

 このように、円高(ドル安)デフレと消費税率の引き上げは、けっこう相性が良さそう―――そう考えています。つまり、円高になって輸入原材料の円建て価格が下がった分だけ消費増税を少しずつ行っていけば、企業や家計の増税にともなうコスト負担増を一定程度、抑えることができるうえ、政府も消費税収を増やすことができ、財政再建にも効果的―――といったようなこと。これって、日本経済にとっても財務当局にとってもおトクと、まさに一石二鳥!に思えるのですが、いかがでしょうか・・・。

続く

金融・投資(全般) ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする