世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
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【EU車も通貨ユーロもテスラ車&ドルと同じく本来はトホホ、だが…】早くも凋落のテスラが象徴する米産業と…のトホホぶり⑤

2024-07-09 20:02:49 | ヨーロッパ
前回からの続き)

 前述のように、本当は「弱い」(魅力も価値も低い)のに、「保護」してやるから「強い」(魅力や価値がある)ようにみえる・・・けれど、そのせいで(魅力や価値を高める努力を怠るから)ますます「弱い」ことになっていく―――というのは、テスラ・モーターズ(をはじめとするアメ車全般)ばかりか米ドルも同じことです。もはや、その保護なしでは・・・、だからといって保護をなくしたら・・・

 そのあたりは、以下から、EUそしてEU車も似たようなものでしょう。EU圏(ドイツ、フランス、イタリアなど)でも自動車が主要な産業ではありますが、他国車とりわけ日本車に対する競争力が脆弱なため、EUはこれに関税を課して上記の自国産業を「保護」してやりつつ、この間にEV(電気自動車)シフトを進めて(ハイブリッド車含む)エンジン車に圧倒的な強みを持つ日本車に対抗していこう、と目論んでいたはず。ところが想定外なことに・・・そのEVで中国勢のEU内でのシェア拡大を許してしまったため、EUは今度はこれを新たな関税のターゲットにせざるを得なくなった・・・って(アメリカと同様)自分らの競争力の無さを棚に上げて中国の不公正な補助金が悪い等として・・・

 そこは、EV車の交換券としての通貨ユーロも同じでしょう。ユーロが本質的に「弱い」通貨であることは、こちらの記事を含めていろいろ書いていますが、本稿の文脈に基づくところでは、その価値は本来、中国EVにすら負けそうなレベルのEV(に代表される「メイド・イン・EU」)を買うためのおカネと考えると、ユーロを(準備通貨等として)持つことの意味っていったい?となるでしょう、とくに「日本車」(≒メイド・イン・ジャパン)とその交換券としての「」を有するわたしたちにとっては・・・

 まあそんな感じで、EUのEVと通貨ユーロも、「保護」しなければ、それらの価値が保てないという点で、上記のアメリカのテスラ&ドルと同じですね。そんな米欧マーケットで存在感を高めている中国・・・のBYD社などのEV等は(米欧車が相対的に魅力が乏しいせいとはいえ)それなりに健闘しているよな~とは感じます。そこは、たとえば6月に中国で開催された自動車業界の会合におけるBYD会長の上記米欧諸国の関税に関する「わたしたちが『強い』からこそ、彼らはわたしたちを恐れるのだ」との強気な発言からも窺えます。けれど・・・(自国通貨ではなく)ドルやユーロを稼いで喜ぶあたりに、やはり、かの国の構造的に「弱い」面―――その経済力の裏付けを中国にとっての外貨であるドルとユーロ(およびこれら通貨建ての国債)に依存するしかないところ―――を垣間見てしまうわけです・・・

 以上、先般のG7(先進7か国首脳会合)における中国製EVに関する米欧諸国の「保護」主義的なスタンスから感じたことを綴ってきましたが、このとおり、かの国々のどれもが正直・・・トホホな印象しかありません・・・

・・・が、何よりトホホなのは、自分の方から政策的に沈んでいくことで、そんな米欧中のトホホに自分以上の高い価値があるかのように思わせる・・・って、それでGDPやら国民所得やらを今世紀の世界でいちばん減らして「物価と賃金の好循環」などと得意になっている?どこかの国の政府と中銀(と名門大学?)ですよね・・・

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【米実業家イーロン・マスク氏、和平案提案も…】ウクライナ「開戦」もうすぐ1周年:急がれる現実的な和平案①

2023-01-23 20:04:56 | ヨーロッパ
 ホントみなさん、どのような着地点をイメージしているのでしょうかね。このままだと共倒れになっちゃいますけれど、いいのでしょうか・・・?

 来月で開戦1周年を迎えるウクライナ戦争の情勢ですが、客観的な現状は・・・何だかんだ言ったところで、ロシアの優位は隠せない、といったあたりでしょう(?)。実際、同国軍は、ウクライナ東部のルハンスク州をほぼ支配下に置いたほか、ドネツク州などでも戦闘を優位に進め、2014年以来実効支配を続けるクリミアとの陸の回廊を形成しつつあります。

 これに対し、ウクライナそしてこれを支援する欧米各国はドイツ製のパワフルな戦車レオパルト2の供与で反撃・・・等を検討しているようですが、たとえこれらが戦場に投入されたところで(こちらの記事等に書いた事情から)中途半端なスケールに留まらざるを得ないため、まあ戦いを多少は長引かせる効果?はあるでしょうが、形勢逆転はまず期待できないでしょう。となれば、ウクライナに残された道は・・・少しでも早く―――人的・物的ダメージがこれ以上大きくなる前に、ロシアと停戦して和平の取り決めを結ぶこと以外になさそうです・・・(?)

 そのあたりの具体的なイメージとしては、少し前になりますが、昨年10月、アメリカの電気自動車大手テスラモーターズ社の最高経営責任者などを務める実業家のイーロン・マスク氏がツイッターに投稿した和平案が参考になるかと思います。その内容は(ロシアが多くを支配下に置いたとする)「ウクライナの東南部において国連の監視下で再選挙を行い、その結果で示される住民の意思によってはロシアは撤収する」「クリミアへの水供給を保証したうえでこれをロシアの一部として正式に承認する」「ウクライナは中立を維持する」というもの(詳細は同氏の投稿をご覧ください)。氏はこれに賛否の投票を呼びかけました。

 わたしは、この投票に参加していませんが、個人的にはこれに「賛成」です。というのも上記提案は、こちらの記事等に書いた自身の和平案とほぼ同じであるうえ、ロシアあるいはウクライナのいずれに帰属等するかの意思決定を住民に委ねる、というところに筋が通っている面があると感じるためです。ちなみに自身案では、パイプラインで欧州各国に供給されるロシア産天然ガスのウクライナ領内通過分を上積みする・・・ことで同国が得る同通過料収入を増加させ、実質的な敗者のウクライナ(ゼレンスキー現政権)がメンツを保つことができるようにする、という内容を加えていますが。

 なお、マスク氏の案についての賛否は同月4日に締め切られており、同時点で「賛成」が40.9%、「反対」が59.1%という結果になりました・・・

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【独仏戦争!?はさすがにないだろうが、欧州の混迷は深まるばかり…】じつにリアルなロシア前大統領の2023年予想②

2023-01-11 00:02:10 | ヨーロッパ
前回からの続き)

 本稿では、ロシアメドベージェフ前大統領が昨年末にツイートした「2023年の10大予想」について思うところを綴っています。

 で、同予想では今年、ユーロドルが準備通貨としての流通を終えることになる、としています。これについては、わたしも(年内かどうかはともかく、近い将来)そうなるだろう・・・というより、そうならざるを得まい、と考えています。前述、そして本ブログで何度も論じたように、両通貨そして欧州&アメリカともに「真性インフレ」(実質マイナス金利状態の永続[を甘受する以外にない状況])が現出している以上、ユーロもドルも通貨としての信認を失うのは時間の問題ですからね・・・

 となると、では欧州やアメリカはどうなる?ですが、まず前者について同氏は・・・EUが分裂して大混乱に・・・って具体的には、共通通貨ユーロが利用されなくなり、やがてドイツが周辺諸国(ポーランド、チェコ、バルト三国等)とともに創設した「第四帝国」(The Fourth Reich)とフランスとの間で戦争が勃発する、等と予想しています・・・

 う~ん・・・これ微妙(?)だな~。まずユーロが使用停止・・・に近いほどの危機に陥るのは上述のとおりなので同意。ですが、第四帝国~独仏戦争のところは、99%ない、と断言できますね。そこは、そのユーロの危機の本質が上記の(真性)インフレにあることから次のように考察できるところと思いますよ・・・

 で、そのインフレですが・・・(こちらの記事等で書いた高~いハードルを超えなければならないが)ユーロ圏にあってドイツ(と一部の国々)だけは鎮圧できる可能性があります(?)。というのも、本ブログでは以前から書いているように、ユーロ圏では長期国債の価格が高い順(長期金利の低い順)に「独>蘭>仏>西>伊>・・・>ギリシャ」が成り立つ中、この不等式で最上位のドイツは、ユーロよりも強い、すなわち実質金利の高い独自通貨(新マルクとか)への切り替えができる・・・かもしれないためです。であれば近い将来ドイツでは、インフレ解消を公約に掲げて支持を得て政権に就いた政治勢力が・・・マルク&「ブンデスバンク」(ドイツ連銀による独自の金融政策)を復活させて「Gexit」―――ユーロ圏からの離脱―――を果たすかも・・・(?)

 ・・・って、そこで最大の政治外交的な問題が、メドべージェフ氏も言及した「フランス」の扱いになるでしょう。こちらの記事でも述べたように、ドイツとフランスの枢軸こそ戦後欧州の平和と安定の絶対的な条件ですが、「Gexit」でドイツとフランス等諸国とが「袂を分かつ」ことになると、両国は再び対立関係に陥って・・・みたいな過去の暗い歴史の繰り返しに・・・

 ・・・とならないように、という決意が共通通貨ユーロの設立につながった、という面があるから、(希望的観測含みですが)ドイツはおそらくフランスを見捨てず、逆に抱き込んで現行のユーロ圏を脱しようとするのではないか、と考えるものです。そのあたりフランスは上記不等式でユーロ圏の真ん中あたりにあるから、ドイツにすれば、フランスと行動を共にすることで、単独の場合よりも(仏支援等の財政負担が増す、等により)インフレ率が上がるおそれはあるが、フランスとの友好関係が失われるよりはマシ、ということで・・・

 このように、何だかんだで独仏両国は協調していく(べき)・・・だろう(?)から、両者の戦争はまずない、と予想します。もっとも、この(比較的・楽観的な)シナリオにおいても、ユーロ圏では独仏等とそれ以外の(イタリアなどの、もっと弱い)国々との分裂は避けがたい(?)など、欧州の混迷の度合いは深まるいっぽうですが・・・

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【ユーロ圏がインフレを緩和したいのなら、できる策はたった一つ…?】イタリアに見る対インフレ無策ぶり⑥

2022-08-03 22:22:11 | ヨーロッパ
前回からの続き)

 ということで、イタリア・・・をはじめとするユーロ圏各国の(長期)金利は上がることはない・・・って、正しくは(その上昇に耐えられないために)上げることが欧州中央銀行ECB)にはできないわけです。それはすなわち、かの国々らはインフレ(≒実質マイナス金利の深み)からけっして逃れることはできない、ということと同義。まあ仕方ないですね、そうなるしかないスキームに乗っかっているのだから。言い方を変えると、そこから降りれば-――ユーロ圏から脱退すれば―――インフレを回避できるかもしれませんよ(?)。とはいえ、理論上(?)それができるのはドイツ(とせいぜいオランダ)くらいでしょうし、現実的には、もはやドイツですら、そんな無茶、できっこないでしょう・・・

 ということで、この瞬間のイタリア・・・の(長期)金利から見えることをつらつらと綴ってきましたが、何度眺めてみても、いつものように同国、そしてユーロ圏、さらに欧州全体には経済的に明るいものを少しも見出すことができません。それどころか、ここへきてのウクライナ危機もあって、欧州の混迷度(≒インフレ率)は高まるばかりに思えますし、実際にそのとおりなのでしょう・・・

 もっとも欧州には、他力本願ながらも、たった一つだけ(?)インフレを緩和させる策がありますよ。ロシアとウクライナの停戦?いえいえそうではなく、こちらの記事に書いた手です。どうです?これ、欧州各国への副作用(≒金利上昇)は、どこかの国(って、中国?)ほどは大きくはならないでしょうから(?)お勧めしますよ・・・(?)

(「イタリアに見る対インフレ無策ぶり」おわり)

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【ユーロ圏のスタグフレーション入りをリードするのはイタリア?】イタリアに見る対インフレ無策ぶり⑤

2022-08-01 22:30:18 | ヨーロッパ
前回からの続き)

 本稿で述べているイタリア・・・の金利を眺めていると、以下の2つの点で異様だな~と感じます。1つめは、前述のとおり現在、同国の長期金利ギリシャのそれを上回っている(イタリアの長期国債がギリシャのそれよりも価格が低くなっている)こと。これ、さすがに一時的な現象でしょう(?)・・・が、この「逆転」が起こってから1か月ほど(も)経っているうえ、先日は欧州中央銀行ECB)の利上げ決定があったわけですが、それでも元に戻らないというのは・・・やはり投機筋がECBにプレッシャーをかけている(?)ってことなのだろうな、と思えてなりません。ちなみに先週末時点のイタリアの長期金利は3.1%前後、そしてギリシャは3%を微妙に下回るくらいの水準と、依然として(長期国債の価格で)「ギリシャ>イタリア」のままです。なお、ユーロ圏で最も低いドイツの長期金利は0.8%前後です。

 で、2つめの異様さは・・・上記のとおりです。つまり・・・イタリアの長期金利(はもちろんギリシャやドイツなどのすべてのユーロ圏国の長期金利)がこれほどまでに低い・・・って、あまりに低すぎる、ということ。で、何に対して低いのか?といえば、当然、インフレ率に対して、です。本稿1回目でご紹介のとおり、6月のイタリアの消費者物価指数(CPI)は前年同月比で8.5%もの上昇、そして・・・29日の最新情報(EU統計局発表)によると、ユーロ圏の7月のCPIは同8.9%上昇と6月の8.6%上昇からさらに高まり、エリア全体でインフレが加速していることが確認されました。なお、その主因がエネルギー価格の高騰にあることは、最近ではこちらの記事に書いた通りです。

 まあ・・・だからこそ欧州中央銀行(ECB)は金融引き締めに転じたのでしょうが、これまた前述のとおり、各国の長期金利は同利上げ前よりむしろ下がって(国債価格は上がって)きています。ということは、現局面で市場は長期国債を買っている・・・って、同引き締めでユーロ圏がリセッションに向かうと読んで(?)・・・いるのでしょう(?)。が、実際には真逆・・・って、まるで景気が超過熱しているかのような物価高が起こっていて、しかもいっそう高進している―――インフレ率が高まり、いっぽうの長期金利がこうして下がって、その差し引きの実質金利のマイナス幅が拡大の一途をたどっている―――有様です。こうしたことから、ユーロ圏は・・・スタグフレーション―――景気後退とインフレが同時発生しているという悲惨な事態―――に入りつつある、といえるのでしょう・・・

 ・・・って、そのとおりでしょうが、もっと正確には、ユーロ圏では金利の上昇に耐えられない国に合わせる必要があるためにインフレ下にあってもECBが十分な金融引き締めをすることができず(って、それどころか一部の国に対しては掟破りの?国債購入[金融緩和]をするしかなく)、その結果、インフレがいっそう高進して、それで人々の生活水準がますます悪化して・・・といったコースに向かわざるを得ない、といった具合。そんなふうに中銀としてのECBの足を引っ張っている国の筆頭が・・・きっとイタリアなのでしょうね・・・

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【イタリア、ユーロ圏の足並みを乱してでも安いロシア産ガスを買いたいところ…】イタリアに見る対インフレ無策ぶり④

2022-07-29 00:02:30 | ヨーロッパ
前回からの続き)

 EUは26日のエネルギー相会合で、ロシアからの天然ガス供給が途絶する事態に備えて8月から来年3月までガス使用量を自主的に15%削減する案を承認しました。これ当然、ウクライナに軍事侵攻したロシアへの対抗措置になるわけです。報道によるとドイツの閣僚はこの合意について、欧州の結束をロシアに示すものだとし「われわれを分裂させることはできない」と語ったとの由です。

 しかし・・・結論からいえばこの削減策、実際には上記とは逆に、対ロ姿勢について欧州各国を分裂させる方向に作用しそうに見えます・・・って、みんなこれを順守できるほどの余裕なんてないだろうから、です。現に、そのあたりが容易に想定できるために?削減目標の免除とか緩和の条項が盛り込まれているし、ガスを大量に使う産業の同使用量は計算上除外が可能、などなどとなっています。となると、マジメに節約に取り組んだ国や企業等のほうがかえってソンをしかねません。であれば・・・欧州において目下(ロシア以上の?)最大の脅威であるインフレを少しでも緩和するため、そして同じ域内のライバル国に対して優位に立つためにも、このへんのグレーゾーンで引き続き低価格のエネルギーを買うほうがトク・・・ってロシアから、などと考えて動くほうが理にかなっている、というものです(?)。

 そこは、ユーロ圏では、やはりイタリアにそのインセンティブが強いといえるでしょう。同国のロシア産エネルギーに対する依存度は相対的に高い(たとえば輸入天然ガスの約4割がロシア産となっている)ため、そんな急にこれを削減しましょう、ロシア以外からの輸入品に切り替えましょう、などと言われても・・・(必要量を輸入できる保証はないし十分なガス貯蔵施設等もないし作る資金もないし)ってことです。

 そのあたりIMFの検証によると、万一ロシア産ガスの供給が遮断された場合、EU全体のGDPは2%あまりの減少が予想されるのに対し、イタリアのそれは3~6%近くも減少してしまうそうな。となるとイタリアとしては正直、ロシアにガスを止められるとオシマイ(他の選択肢なし)になりかねないので、(ロシアを過剰に刺激しかねない)上記削減策はほどほどにして?かの国とは引き続きエネルギーの取引をしたいところでしょう。

 先日のこちらの記事で、対ロシア経済制裁に関するEUの取り組みにイタリアのマリオ・ドラギ首相(退陣表明済み)がリラクタントな態度をとったことを紹介しましたが、それについて、対ロシアでのユーロ圏の結束を乱すもの・・・と批判するのは簡単ではあるものの、他方でイタリア国民の苦しみ―――インフレ―――がちょっとでも和らぐのなら、という切なる思いから、と推測すれば・・・まあ分かる、といったところです。前述のように、もはやイタリア&欧州中央銀行には(通貨金融政策で)インフレを鎮静化することができない以上、せめて輸入エネルギーくらい安いものを買わせてほしい、ということで・・・

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【ECBはインフレ抑止ではなく伊金利上昇抑止に走るだろう】イタリアに見る対インフレ無策ぶり③

2022-07-27 21:51:29 | ヨーロッパ
前回からの続き)

 前述のように、EU圏ではインフレが高進するなかで欧州中央銀行ECB)は先般、利上げを決定したわけですが、それとほぼ同時に、EU加盟国債のうち、イタリアを筆頭とする重債務国の国債のほうをより多く購入することも決めました。これ、ECBがそれなりに?守ってきた「キャピタル・キー」のルールから逸脱する、相当にリスキーな決定とみるべきでしょう。つまり・・・上記諸国の国債を市場価格よりも高く買い支えてしまうことで、各国の財政放漫化を助長してしまう、ということ。これで金利が下がった彼ら彼女らは、財政再建なんてそっちのけ、安心して国債を振り出してはECBに売りつけ、それで得たユーロで公務員給与を引き上げたりする、みたいなことやりまくる・・・?

 で、そのあたりイタリアですが、前述のように、その長期金利は現在(日本時間27日21:00頃)も3.4%前後と、引き続き(本来はユーロ圏最弱のはずの)ギリシャ(同3.0%前後)よりも高い水準にある・・・どころか、25日よりも両者間の金利差は(少しではあるものの)拡大しているような有様です。これ、ECBに対して市場がイタリア国債をもっと買え!とせかしていることの表れでしょう。こうしてプレッシャーをかければ(イタリアがこんな高金利で保つわけがないことを知っている)ECBは容易に屈してイタリア国債をもっと買う・・・って、ギリシャの利回りよりも低い利回りになるくらいの高値になるまで買う・・・に違いない、ということで。となれば現在の低価格でイタリア国債をしこたま買った投資家は大儲けができそうですね・・・???

 とまあ、イタリアをネタに、マーケットでは様々な思惑がうごめいている様子が窺えるのですが・・・何の話をしていたか、といえばインフレです・・・が、このあたりからもEU圏でインフレを抑え込むことが至難の業であることが分かりますね。つまり、インフレに対抗するには利上げを進めていかないといけないのに、ECBも市場参加者も、みんなこうしてインフレ・・・じゃなくて金利の上昇のほうを抑えよう抑えようとしている・・・というより、イタリア等の債務を持続可能にする(イタリア等の債権者が借金を返してもらえるようにする)には、そうするしかないわけですから。かくしてユーロ圏もまた(アメリカと同じく)、実質金利(=名目金利-インフレ率)がマイナス圏に深く沈んだ状態から浮上することができなくなる―――インフレ高進が止まらなくなる(って、せいぜい物価高止まりが継続)―――という次第でしょう・・・

 となれば、このほど辞任を表明したマリオ・ドラギ首相も含め、リーダーが誰になっても、どの政党が第一党になっても、イタリアがインフレの脅威から逃れることはほぼ不可能でしょう。せいぜい同国にできることは・・・こちらの記事に書いたように、経済制裁やぶりの疑い濃厚を承知で相対的に安価なエネルギーを調達する・・・ってロシアから、ってことくらいしかないような気が・・・

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【イタリアの長期金利、ギリシャを上回る異常な局面に…】イタリアに見る対インフレ無策ぶり②

2022-07-25 22:34:15 | ヨーロッパ
前回からの続き)

 6月のインフレ率が前年同月比で8.5%もの高水準となったイタリア。であれば、この鎮静化に向けて同国の中央銀行が金融引き締め(利上げ等)を、となるのが普通の国の方向性ですが、そう簡単にはいかないのがイタリアを含むEU加盟国のやっかいなところです。なぜならEUは「通貨金融統合(中銀が欧州中央銀行[ECB]で一本化)・財政不統合(財政は各国任せ)」だから、ECBが動くと、金融緩和/同引き締めの違いに関わらず、それが行き過ぎになる国と足りなさ過ぎになる国がどうしても出てきてしまうため、結果として多くの国にとっては自分にとって適当な金利水準を得られない―――一方では金利が低すぎ(インフレ傾向)で他方にとっては金利が高すぎ(デフレ傾向)となる―――ためです。

 そこは、こちらの記事等でご紹介の、EU各国の国債価格を高い順に(金利の低い順に)並べた不等式「独>蘭>仏>西>伊>・・・>ギリシャ」が示すとおりです。常識的に見て、こんな(財政状態、すなわち経済力が)バラバラなところで一つの中央銀行が物価や金利を上手にコントロールできるワケがないし、やはりできていないわけです・・・

 ご存じのように、ECBは先日、約11年ぶり(!)に0.5%の利上げを決定しました(具体的には預金ファシリティ金利をマイナス0.5%からゼロ%にして、2014年から続けてきたマイナス金利を終了させる、といったもの)。そのあたり、イタリアを含めたEU全体の高インフレに対処するには当然の動きに思えます・・・が、そうなると今度は、利上げにともなう金利の上昇(国債価格の下落)の負の影響が、上記不等式で下位にある国々に、同上位の国よりも大きく及んでしまうことになります。つまり、財政資金調達コストが、自分の経済力では賄いきれないくらいに高くなり過ぎてしまうということ・・・って、ここでいちばん注意するべきは、やはりイタリアでしょう。同国の経済規模はEUで3番目と大きいうえ、財政赤字水準もデカいですからね・・・

 そのあたりは金融市場でも強く意識されているようで、イタリアの(長期)金利は直近で乱高下しています。6月(つまりECBの利上げ前)には一時4%を超え、何と(!?)あの?ギリシャの長期金利をも上回る(国債価格で、ギリシャ>イタリア)という、上記不等式の序列が逆転するという異常な局面が出現しました。ここはマーケットがイタリアをターゲットにECBを試す動きだったといえるでしょう・・・って、イタリアを支える気があるのかどうか、ということで。結局ECBはこれに負け(?)、その直後の理事会で、満期となった「パンデミック緊急購入プログラム」の再投資時に南欧諸国の国債を重点的に買い入れること等を決めました・・・って、ぶっちゃけイタリア救済にもっともフォーカスしているのでしょうECBは。

 といった経緯もあって(?)、イタリアの長期金利は、ECB利上げ発表後はむしろ下がって、現時点(日本時間25日22:00)で3.4%前後です・・・って、あれ?ギリシャ(同3.1%前後)よりも依然として高い?ということは市場は、ECBの購入策は生ぬるい、もっとイタリア国債を買え!とせかしている?まあそうでしょうね、こんな高金利でイタリアが耐えていけるはずはないのですから・・・

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【ドラギ首相辞任で伊政局は混迷へ…】イタリアに見る対インフレ無策ぶり①

2022-07-23 22:06:51 | ヨーロッパ
 はあ~・・・日本はもちろんですがホント、いまはどこもショ~モナイことになっていますね・・・

 で、その元凶は万国共通、インフレなんですよ。そしてそれは需要の増加・・・でもコロナ禍・・・でもウクライナ危機・・・でもなく、ず~っと前から予告のうえ繰り返し指摘してきたように、おカネの刷り過ぎ・・・と、これに頼る以外にないほど債務を膨張させたために起こっているんですよ。じゃあそのインフレを抑えましょう・・・って?とうの昔に不可能になっているんですよ。そんなことしたら今度は「デフレ・スパイラル」が発生して経済・金融恐慌は免れないのだから。かくして世界はインフレを制御できず、そしてこれが人々の経済生活を蝕んでいき、やがて政情不安さらに・・・となっていくしかなく・・・

 そんなあたりがはっきり感じられるのが、直近では欧州はEU・・・のなかでもイタリアでしょう。これまた何度も論じてきたとおり、EUもインフレに苦しみ・・・というか、通貨金融統合・財政不統合というゆがんだ構造のもとではどうしてもインフレにならざるを得ないために、相対的に経済力の弱い(公的債務等の多い)国々から危機に陥りがち・・・で、その代表がイタリア、というわけです・・・

 で、ご存じのように21日、かの国ではマリオ・ドラギ首相が辞任に追い込まれました。もっともイタリアでは9月25日に総選挙が行われるので、それまでドラギ氏は暫定首相に留まることになっていますが、実質的にはレームダックでしょう。

 ここで個人的に注目したのが、ドラギ氏が前ECB欧州中央銀行)総裁を務めた方であるという点です。中銀トップのキャリア・・・ということは同氏は、イタリアの他の政治家とは比較にならないくらいにインフレの害悪を強く意識するはずで、よって財政健全化や行政改革を進めることでインフレを制御しようという思いが強かった・・・のだろうと(勝手に)想像します。が、報道によれば、以前からEUに懐疑的な姿勢を示す政党「五つ星運動」がドラギ政権のインフレ対策に反対したせいで、政権を支える与党の連携が崩れたとのこと。であれば、氏が辞めたくなるのはもっともでしょう、自身のセントラルバンカーの経験も活かして最大の脅威であるインフレに対処すべき策を進めようとしたところで足元をすくわれたのだから・・・

 実際、イタリアのインフレは(も)ヒドいことになっています。6月のインフレ率は前年同月比で8.5%と、もはや看過は許されないほどのレベルです。とはいっても、これを鎮める手は・・・たとえドラギ氏が退陣せずに頑張っていたとしても、ほとんどない、といえるでしょう・・・

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【欧州のロシアガス輸入者、ルーブル口座を続々開設!】ロシアの要求受諾:ウクライナ危機長期化回避へ②

2022-05-25 00:02:42 | ヨーロッパ
前回からの続き)

 ウクライナ危機においてロシアは、経済面では、欧米諸国の経済制裁を何とかしのぎ切りつつある・・・ばかりか、以下により、むしろ危機前より強固になりそうです、エネルギーの供給国として(?)。その根拠としてまず指摘できるのが、当然ながら前述した原油天然ガス価格の高騰。これでロシアは危機前の倍近いエネルギー収益を得ることとなりました。そして・・・ある意味でさらに重大なのが、ロシア産エネルギーの欧州の買い手が、ロシアの要求につぎつぎに応じて(というか屈して?)いる、という現実・・・って、その代金を同国通貨ルーブルで支払う動きが進んでいるということです・・・

 ご存じのようにロシアはこの3月、上記制裁の一環である金融制裁に対抗する手段としてこれを一方的に通告しました。これに対し、当初、欧州各国等は、これは契約違反だ・応じられない、などとロシアを非難等していました。しかし・・・やはりこちらの記事で予想したとおりになっています。ようするに欧州の大半の国々は、何だかんだ文句を言ったところで実際にはロシアのエネルギーに引き続き頼らざるを得ない、それをルーブルで買うという条件を受け入れてでも、ということのようです・・・

 そのあたりの代表例としては、自国消費のガスの約4割(2020年)をロシアからの輸入に依存しているイタリアの動きがあげられるでしょう。たとえば、同国のエネルギー公社ENIはガス購入元であるロシアのガスプロム傘下の銀行ガスプロムバンクにユーロとルーブルの2つの口座を開設したとのことです。これロシア側が考案・提示したスキームに従ったもので、見た目の上ではENIはガスプロムバンク経由でユーロの支払いを継続・・・しつつも、当該代金は上記のもう一方の口座に移されてルーブルに転換されるとの由・・・

 これに関連し、イタリアのマリオ・ドラギ首相は、EUの対ロ制裁に公式に違反しているとされていないものは受け入れられる、などと述べたうえで、このへんは「グレーゾーンだ」(It’s a grey zone here.)などと語ってこの対応を正当化?しています。これウルスラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長の、ルーブル支払いに応じるのはそれが契約で定められていないのなら上記制裁に違反する、との見解に、やっぱり背いているよな~みたいな内心の後ろ暗さを感じながらの発言でしょう。にもかかわらず?同首相は、(ロシア産ガスの)ほとんどの輸入者(most of the gas importers)はすでにガスプロムバンクにルーブル口座を開設しているよ、などと暴露して開き直る?始末。言い方を変えると、制裁やぶり(breach)かもしれないビミョ~なところだけれど(ドイツのエネルギー大手ユニパ―やRWEも含めて)みんなやっているからいいだろ!と言いたげです・・・(?)

 上記から簡単に推察できるのは・・・それほどイタリア、そしてドイツなどは、脱ロシア・・・なんて不可能なくらいに同国のエネルギーへの依存度が大きい・・・ために、これを途絶えさせるわけにはいかないからロシアの要求にこうして従う以外にない、ということです。であれば上記制裁は名ばかりとなるから、ロシアを干上がらせることはまずできないでしょう。こうしてロシアは・・・

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