世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
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【来年度防衛予算、過去最高だが・・・】円安「軍」縮推進!意外にハト派?安倍政権①

2015-01-29 00:04:15 | 日本

 今月中旬、政府は平成27年度(2015年度)の防衛予算案を閣議決定しました。その総額は4.98兆円と過去最高。今年度より2%アップ、安倍政権発足以降は3年連続の増加となります。

 で、その予算案に基づく防衛力整備の内容ですが、防衛省資料等によれば、まずは周辺海空域における安全確保、つぎに島嶼部に対する攻撃への対応、などとなっており、名指しこそないものの、これが軍事力の強化にいそしむ中国を意識したものであることは明らかです。したがって、財政をめぐる厳しい状況のなかでも防衛予算が増額されることについては、やむを得ない、とか、当然だ(さらには、もっと増やせ!)といったお考えの方が多いものと推察します。

 しかし、個人的には、これが本当に防衛力の向上に資する「増額」になっているのかどうかについては微妙なところだと思っています。その大きな理由は、毎度毎度で恐縮ですが、安倍政権・黒田日銀が進める「アベノミクス円安誘導」により、この防衛予算のドル換算額が大幅に減っているため。

 このあたりを2012年度の防衛予算との比較で確認してみましょう。民主党政権時の同年度の予算額は約4.71兆円。これに対して2015年度は上記のとおりこれよりも2600億円あまり多い額です(予算案ベース)。さすが自民党政権に替わっただけある!?

 ところがこれをドル建て―――前者はアベノミクス実質開始直前(2012/11)のレート1ドル約80円、後者は直近のレート115円―――で計算すると、それぞれ589億ドル、433億ドルになります。何と!来年度「過去最高額」のはずが3年前よりも約155億ドル、率にして26%あまりもの激減!ということに・・・。

 ・・・これでは強化どころかその逆の軍縮ですね(まあ自衛隊だから「軍」は当てはまりませんが、便宜上、使わせていただきます)。おそらく「ミリタリー・バランス」(英国の国際戦略研究所が発行する世界の軍備状況報告書)の国別防衛費ランキング(ドル表示)などでは日本の順位および金額は下がっていることでしょう。このように安倍政権は、円安を利用して世界にはっきり見えるくらいに防衛予算を削減することで、中国に対して(?)日本が軍事的な脅威にならない姿勢をアピールしている・・・? ということは、表向きはタカ派のイメージが強い(?)安倍首相はじつは超ハト派の平和主義者だったりして!?

 もちろん単純にこの数字がわが国の防衛力の低下を意味するものではありません。上記防衛費を各国間で厳密に比較する場合は購買力平価等を勘案する必要があるし、たとえば自衛隊員の人件費などは円建てだから円安の影響はそれほどないでしょう。

 それでも防衛コストのうち外国から「輸入」されるもの―――燃料、資機材、そして防衛装備品はそうはいきません。円安になれば当然、円高時よりも円建て調達コストが膨らんで、同じもの、同じ数量を買う場合でもそれだけ余計な出費がかさむということになります。

(続く)

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「東京ブラックアウト」を読んで~私的な請願書~

2015-01-27 00:00:30 | 原発

 現役のキャリア官僚・若杉冽氏の話題作「東京ブラックアウト」を読みました。原発再稼働に向けてわが国の権力中枢で進行する陰謀をテーマにした、まるでノン・フィクション(!?)のような小説です。もちろん本書の登場人物とか団体等は多くの場合、架空のものですが、その表現ぶりのリアルさから、読者に実在の人物や団体名を微妙に連想させるものになっています。

 なかでも衝撃的だったのが、天皇陛下が原発再稼働に強いご懸念をお持ちでいらっしゃる様子が克明に描かれていることです。そのシーンが、その場のコオロギの鳴き声など、同席者でないと分からないような繊細な情報と一緒に語られていること、そしていくらフィクションとはいえ、畏れ多くも今上陛下のご本心とは真逆のことは誰にも書けないだろうと想像されることから、どうやらそれは真実―――こう解釈せざるを得ません。これは・・・とても重いと思います。

 さらに本書の末尾にそんな陛下への請願の送付先まで掲載されている・・・。本書を通じた著者の願いが一番、凝縮された箇所・・・。で、Wikipedia等によれば、何人も、請願をしたためにいかなる差別待遇を受けず、天皇陛下への請願は内閣にこれを提出する、等とあります・・・。

 ということで、陛下への請願は別にして、ここでは本ブログ向けの私的な請願書を以下に綴ってみたいと思います。請願先は、この国の空気。コオロギの歌を添えて。

---------------

請 願 書

 

 敷島の大和の国の弥栄はかくも貴き縁の賜

 

 「脱原発」=「脱円安と考えます。

 わが国の電力供給が原発依存から脱するためには、中長期的にはこれに替わる新エネルギーの開発・導入・普及が不可欠ですが、それらが実現するまでの当面の間はどうしても火力発電に頼らざるを得ません。したがって火力燃料―――石油・天然ガス等―――の海外からの安定的な、そして低価格での調達を図ることが脱原発に向けた第一歩として極めて重要となってきます。

 通常、エネルギー資源の取引はドル建てで行われることから、これらを安価で確保するには為替レートは円高ドル安のほうが有利です。これに対し、いまの日本政府(および日本銀行)は事実上の円安誘導政策を採っているため、輸入燃料インフレが起こって電気料金が高騰するいっぽう、同インフレの発電コストへの影響が軽微な原発の優位性が高まっています。したがって、このままでは光熱費の負担増に耐えかねた国民の多くがその再稼働を容認するでしょう。誰にとっても原発事故は恐ろしいものの、「背に腹は代えられない」からです。

 この流れを食い止め、あらためて脱原発を現実的な目標とするために、わが国は電力の大半を火力で賄っている現状の最適化に努める必要があります。それこそ輸入燃料の円建て費用の圧倒的な引き下げであり、これを妨げている上記の政策(たとえば日銀の超緩和的な金融政策)の転換を通じた円高環境への回帰であると信じます。これにより、原発を使わなくても電気料金を低い水準に保てることがかなりの程度、証明され、国民は脱原発の方向性―――コストパフォーマンスの高い火力発電で時間を稼ぎつつ、その間にこの国の叡智を結集して新エネルギーに基づく経済・社会の構築をめざすこと―――がけっして夢物語ではないと認識するようになるでしょう。

 以上、原発なき日本国の建設を真に希望する立場から「脱円安政策」を提言するものです。よろしくお願い申し上げます。

平成二十七年一月  一国民より

---------------

 上記、今上陛下への請願書の送付先は、〒100-8968 東京都千代田区永田町1-6-1 内閣官房内閣総務官室 となっています。また請願法によれば「請願は、請願者の氏名及び住所を記載し、文書でこれをしなければならない」等と定められています。ご参考まで。

(「『東京ブラックアウト』を読んで~私的な請願書~」おわり)

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【ECB、QE発動でドイツが懸念する債務共通化へ】QEをめぐって対立深まる欧州④

2015-01-25 00:02:41 | ヨーロッパ

(前回からの続き)

 といったように、アメリカ、おっと違った南欧諸国は不動産バブルを永遠に続けるしかなく、そのためには投機マネーが常にマーケットに供給されている状態がありがたい―――つまりECBQEは大歓迎!となります。ということは、本稿前段で記したドイツが望む金融環境とはまったく逆だから、これでQEが始まったら両者間の溝はどんどん大きくなることに・・・。

 なんてことをツラツラと綴っているうちに22日のECBの理事会が終わり、とうとうQEがスタートすることになりました。やはりドイツは猛反対したものの、ドラギ総裁を含む他のメンバーで押し切ったようです。

 で、その概要は報道のとおり、この3月から2016年9月までの19か月間、毎月600億ユーロ、総額1.1兆ユーロあまりの資産を買い取るというもの。ここでいちばん注目された国債の購入量は上記月間額の3/4にあたる450億ユーロにのぼるそうです。いっぽうでこれらの買い入れはECBではなくユーロ圏各国の中銀が行うとのこと。このあたりは、それらに損失が出たときの処理はその国債発行国と中銀でやってね、ということなのでしょう。「PIIGS等の借金の肩代わりなんてできるか!」というドイツ等の意向を汲んだ扱いと思われます。これで彼らの野放図な国債振り出しに一定の歯止めがかかる・・・

 ・・・ことはなく、ドイツには気の毒ですが、遅かれ早かれこの枠組みは崩壊し、各国の債務は個々に背負うのではなく、みんなで共有しよう、という流れにつながる、つまり、ギリシャ等の国民の作った借金をドイツ国民が税金等で埋め合わせるしかなくなるだろう、と予想しています。各国の中銀はECBの支店みたいなもの(ECBと各中銀はTARGET2と呼ばれる資金決済システムで結ばれている)。だから支店の資金が足りなくなったら本部(ECB)はそれを補給しなければならないし、支店がデフォルトしたら本部そのものも傷つき、出資国に対して出資比率に応じて損失をかぶってくれ!みたいなことになる、ということです。そうなると、いちばんソンをするのは当然、ドイツ・・・。

 ということで、今回のECBのQE発動は、ドイツがもっとも恐れ、イヤがる、「ユーロ諸国の債務共通化に向けた第一歩」になったと思っています。もはやこれは避けがたいでしょう。賽は投げられた―――さあどこまでドイツは辛抱できるのか。そしてドイツの堪忍袋の緒が切れるとき、通貨ユーロと欧州諸国の連帯はどうなるのか・・・。いまからいろいろシミュレートしておいたほうがよさそうです。

 で、そんな欧州混沌の事態発生を先延ばしする唯一の手が資産バブルの拡大です。「デフレの脅威への対処」とやらを口実に開始されたQEがアメリカ、また間違えた南欧諸国のバブル、とくに不動産バブルをどこまで膨らませるのか?もちろんバブルだからやがては再破裂する定めにあるわけですが、それはいつか? 本日のギリシャの総選挙の結果とその後の債務交渉の行方と合わせ、このあたりも要注目ですね。

(「QEをめぐって対立深まる欧州」おわり)

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【不動産の切り売りしかない?トホホなPIIGS】QEをめぐって対立深まる欧州③

2015-01-23 00:02:41 | ヨーロッパ

(前回からの続き)

 ところで・・・近ごろ金融市場でさかんに取り沙汰される「デフレリスク」というワードですが、使われ方にある種の意図があるように感じられます。

 いま世界経済でもっともデフレ効果を発揮しているのが原油安といえるでしょう。では、これって本当にリスクなのか?いうまでもなく産油国にとってはリスクだけれど、こちらの記事に綴った日本を例にとっても分かるように、石油消費国にとってはリスク面よりも「恩恵」のほうがはるかに大きいはず。

 これは域内に大きな産油国のないユーロ圏にとっても同じこと。つまり原油安は、輸入額の減少を促して各国の経常収支の改善に寄与するとともに、エネルギーコストの低減をもたらして企業の利益や家計の実質所得を増やします。ということは経済や景気に大いにプラス―――素直にこう捉えるべきでしょう。日本と同様に、欧州は原油安デフレのマイナス面にヘンに神経質になる必要なんてないと思います。

 にもかかわらず原油安を引き合いに欧州でデフレリスクがしきりに強調されるのは、マーケットが本心でデフレを恐れているから。で、ここでいうデフレとは、原油安デフレではなく「資産デフレ」のほうだということ。つまりデフレリスクとは・・・資産効果が弱まってバブルがはじけそうになっている!→このままだといろいろヤバいから早くヤク(QEマネー)をチョーダイ!というECBへの悲痛な催促だということです。かといって露骨にバブルを起こせ!とはいえないので、原油安でも何でもいいから物価下落は「悪いこと」で、これを食い止めてインフレ(=資産バブル)を起こすことが「良いこと」と人々のマインドに刷り込もう!・・・それが上記「デフレリスク」を唱える側の意図であり、その対応手段としてのQEを正当化する論法だと考えています(安倍政権・黒田日銀がガソリン代が上がると喜び、下がると悲しむのと同じですね!?)。

 で、このあたりについては先日、FRBによるQE終了後のアメリカのアセる気持ち(?)を勝手に推測してこちらの記事に書きましたが、欧州においてこのアメリカと同じくらいの「禁断症状」に陥りつつあるのが、こうした資産バブルに依存したギリシャ、スペイン、イタリアなどの南欧諸国ということになります。もちろん彼らの望みは派手なQE・・・で、自国の資産―――不動産価格が高騰すること

 これまた本ブログのこちらの記事等で綴りましたが、PIIGSとかキプロスといった国々は、現金収入をもたらす天然資源に恵まれているわけではありません。高い付加価値を生む製造業の基盤はないし、その育成もしていません。まあ農業や観光業は見るべきものがあるけれど、彼らのいまの生活水準を維持するためにはそれらだけでは不十分。したがってこれら諸国が何で稼ぐのかとなれば、自ずと「国土」、つまり不動産の切り売りしかない、ということになります。

 たしかにこれら諸国の不動産は魅力がありそうです。何といってもその多くが「世界遺産付きの物件」ですからね・・・。パルテノン神殿が臨めるコテージとか、コロセウムまで歩いて5分のマンション、なんて銘打ったら、アラブの石油王とか成金の中国人とかにいい値段で売れるでしょう・・・(ギリシャなんて、しまいには世界遺産の「本体」まで売りに出すんじゃないかなー。ということはパルテノン神殿に五星紅旗が翻る日も近い!?)

 しかし、いくらこれら物件が高く売れても、「売ったきり」ではその後の収入が望めません。で、不動産で稼ぎ続けるには、やはりその価格がつねに上がる環境が必要になります。これによって不動産の売買が活性化し、それにつられて国外からの投機マネーが流入して価格がさらに上昇して・・・というサイクルです。こうしておカネが回れば歳入が増えて資金調達もしやすくなるから国の運営がスムーズにできるようになる―――そんなバブルを起こしてくれるQEを早く!・・・PIIGS諸国の目論見はむかしもいまもそんなところではないでしょうか。

(続く)

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【ギリシャを放逐できないEUのなさけなさ・・・】QEをめぐって対立深まる欧州②

2015-01-21 00:03:39 | ヨーロッパ

(前回からの続き)

 前回書いたような理由から、欧州の盟主ドイツにとっては欧州中央銀行(ECB)による量的緩和策(QE)は不要です。QEなんてメリットはないし、各国の財政再建の取り組みを邪魔立てするだけだから・・・。

 しかし・・・ここがユーロ圏のヤヤコシイところですが、そんなドイツと同じ屋根の下に、QE=国債買い入れ=財政ファイナンスをやってほしくてたまらない、大量の低金利マネーが欲しくてたまらないキリギリスな仲間たち―――PIIGS諸国がいるため、ドイツ一国の都合だけでQEはやらない!とは言い切れません。それにECBのドラギ総裁はイタリア人。当然、ドイツよりも彼らのほうに心情的に近い(?)からなおさらやっかい・・・。

 で、そんな中から毎度おなじみのギリシャが火を噴きそうになっています。すでにあちこちで報道されているので詳細は省きますが、まもなく行われる総選挙(25日)で、左翼野党SYRIZA(国際的な金融支援と引き換えに同国が約束させられた緊縮財政の放棄等を主張!)が勝利して政権を取ったりしたら、たいへんなことに・・・。

 本ブログで何度も綴っているとおり、そもそもギリシャに巨額の支援をすること自体、無謀だったわけです。2010年にEU等がギリシャに対して供与を決めた融資金は2400億ユーロ。これに対して同国のGDPは約2220億ユーロ(2010年)。ということはギリシャは何と!自国のGDPを上回るほどの借金を「外国」からすることになります。わが国に当てはめてみれば約500兆円! そんな大金、あのギリシャ国民に返せるわけがない・・・。

 しかも大甘なことに、ギリシャは上記の約束さえ守れば、この返済を2023年まで始めなくてよいことになっています(こんな先なら、いまの各国首脳、ECBやIMFの幹部は任期を終えているだろうから?)。だからギリシャには「かたじけない・・・」と思って死ぬ気で改革に取り組んでもらわないとならないのに、かの国はこんなにユルユルな条件すら我慢できず、しまいには債権者側に借金棒引きを要求しそうな気配・・・。

 ところが・・・そんな居直りまくりのギリシャに対し、何ともナサケナイことにユーロ諸国は「出ていけ!」と言えませんこちらの記事などに書いたように、すでに欧州の公的組織や金融機関はギリシャの国債とかデリバティブなどを保有し過ぎており、同国がデフォルトでもしようものなら彼らも一緒に吹っ飛んでしまうためです。だから「ドイツがギリシャのユーロ離脱を容認した」なんてハッタリもいいところ(?)。そのへんが見え見え―――各国が自分たちを追い出すことができないことが見え透いているから、ギリシャはますます増長することに・・・。

 で、明日(22日)、こんなトホホなギリシャの総選挙直前に理事会を開き、QEをどうするか議論をしなければならないECB、とりわけドラギ総裁にはたいへんだな~と同情するわけです。まあ先日、欧州司法裁判所がECBの国債購入を合法と認めたこともあるので、おそらくECBはドイツの猛反対を押し切って「QEをやります!」と宣言するのでしょう。ここまではマーケットの想定内ですが、問題はその中身です・・・。

 注目はまずQEの規模―――当初予定のとおり1兆ユーロか、それともその半分の5千億ユーロ(あるいはそれ以下)に止まるのか。次にその内容―――国債を買うのか、それとも(「それは財政ファイナンスにつながって南欧諸国をサボらせるだけだ!」と反対するドイツに配慮して)国債はやめてかわりに社債等を購入するのか。そして国債を買うことにした場合―――どこの国の国債をいくら買うのか、さらに・・・その際のPIIGS国債、とりわけギリシャ国債の扱い(投資不適格級だがECBは特例的に担保として受け入れている経緯あり)はどうなるのか・・・(場合によってはQE期待で値上がりしているスペイン債とかイタリア債などが暴落[利回り急上昇]の恐れも!)

 さらにさらに・・・ここでECBがもっとも意識するのが、今回の決定を、上記ギリシャの総選挙で緊縮財政路線を守るとしている現与党・新民主主義党を勝たせるものにしなければならない、ということ。もしここでヘタなメッセージを発して、同放棄を主張するSYRIZAに政権を取らせたりしたら、ギリシャ支援は頓挫し、欧州市場は大混乱に陥りかねませんから・・・。

 というわけで、間もなく始まるECBの鳩首会議・・・アメリカならずとも目が離せません!

(続く)

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【ドイツ「QE不要」至極当然だけれど・・・】QEをめぐって対立深まる欧州①

2015-01-19 00:00:59 | ヨーロッパ

 今月下旬以降の欧州の金融情勢から目が離せなくなってきました。どうやら欧州中央銀行(ECB)が欧州版QE(Quantitative Easing:量的緩和策)を発動しそうだからです。

 欧州では長引く景気低迷に加え、直近ではデフレ懸念が強まったとして、おカネをマーケットにばらまいてインフレ率を高めようというECBの金融政策=QEへの期待感が市場関係者らのあいだで高まっています(で、その期待を一番強く抱いているのが、大西洋の向こう側のアメリカだったりします。部外者なのにどうしてなんだろう???)。その期待に応えるべく(?)、ECBは昨年12月の定例理事会で、現在は約2.2兆ユーロのECBのバランスシートを1兆ユーロほど拡大することを検討したそうです。その際に買い入れる資産は各国の国債なのだとか・・・。ということは財政ファイナンス解禁?

 で、ECBは今度(22日)の理事会でこのQE開始を決議するらしい(?)のですが・・・どう予想しても、これがスムーズにいくとは思えません。その具体的な規模や内容などのどれをとっても各国の意見が対立しそうなものばかり。そのせいか、ECBとしてはとりあえずQEを近々やります!と宣言しておいて、その間に詳細を詰め、実質的な国債購入スタートは早くても3月以降にする気だろう、みたいな観測もあるようです。

 ・・・とはいうものの、このあたりの決定には欧州一の経済大国でありECB最大のスポンサー(第一位の出資国)であるドイツの意向が大きく影響するでしょう。で、そのドイツですが、QEは必要ない、という以前からのスタンスをいまも崩していないもようです・・・。

 まあドイツの現況をみればそれは当然でしょう。べつにQE=財政ファイナンスなどをやらなくてもドイツ政府は超低金利で資金調達ができているし、QEによってユーロ安にしたところで、ドイツの貿易相手の多くは同じ欧州諸国(2012年:輸出69%、輸入70%)だから通貨安を利した輸出振興効果はほとんど期待できない。足元の原油安はリスクではなく企業や家計に大いにプラス。逆にユーロ安は原油等の輸入インフレ=悪いインフレを招くからむしろ実体経済にはマイナス―――などなどが考えられるわけで・・・(どこかの国と同じ・・・でもそこは派手にQEやっているけれど・・・)。したがってQEは不要―――ドイツのこの判断は至極真っ当です。オランダとかオーストリアなどの他のEU諸国もドイツに同じでしょう。

 しかし、だからといってドイツ等のそんな事情だけでECBが金融政策を決められないところがユーロ圏のフクザツなところ。同じ仲間のなかにはアメリカ並みに麻薬、もといQEを渇望している国々がいるということです。

(続く)

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【円安誘導は日本の強みに貢献しない】円安輸出攻勢はアメリカ様が許さない⑤

2015-01-17 00:01:10 | 日本

前回からの続き)

 「アベノミクス」の3本目の矢とやらは「成長戦略」なのだそうですね。で、以前からシツコク書いているように、円安誘導はたいていの場合、原材料や食糧等の輸入必需品の円建て価格の上昇を通じて内需にはマイナスに働きます。したがって必然的に成長の頼みは外需、つまり輸出にならざるを得ません。まあこの際、わが国のGDPに対する輸出の割合が15%程度と世界最低クラス(つまり輸出の日本経済全体へのプラス効果は限定的)であることには目をつぶりましょう。何であれ、輸出が増えること自体は喜ばしいことだから・・・。

 ところが・・・円安にしたところで、これまで長々と綴ってきたような事情のもとでは輸出(とくに完成品の輸出)はそうは増えないし増やせない。逆にエネルギー等の円建て輸入価格が膨らんで貿易赤字は以前よりもむしろ拡大するというていたらく・・・(政府・日銀の計算どおり?)。貿易収支の赤字はGDP計算ではマイナス扱いとなることはアベノミクス推進者の皆さんはもちろんご存知ですよね、念のため・・・。

 そこで本ブログで何度目かの皮肉の繰り返しになるわけです。アベノミクスは、ドル建て換算での超マイナス成長、昨年はとうとう円建てでもマイナス成長の見込み(円安インフレ消費増税のおかげ)、そして上記の貿易赤字の膨張というトリプル・マイナスを達成! さすが「成長」が売りというだけあるわ~。で、こんな有様をなかには「好循環」とかって逝っているメディアもありますね(変換ミス)。ということは、きっとその新聞の発行部数も「成長」しているのでしょう、アベノミクス的に・・・。

 ・・・なんてツッコミを入れている場合ではありませんね。米欧中と違って、日本は主要国で唯一、中銀のQE(つまりは資産バブル)に頼ることなく実質的な経済成長を達成することができる国。そして、モノ作りの国際的なサプライチェーンのなかで最上位に君臨する国―――他国の追随を許さない、もっとも高度かつ高性能な基幹部品の研究開発・生産・供給を一手に担う国(もちろん完成品も一級品)―――。人為的な円安誘導は、こうした国家としての強みにプラスの貢献をしない・・・。

 安倍政権・黒田日銀には、この当たり前の事実にそろそろ気づき、日本経済にネガティブな影響を与えるばかりの通貨安政策を早く止めてもらいたい―――そう願っています。

(ところで・・・中国、日本をはじめ、世界中から完成品を買って消費し続ける国・アメリカが、その見返りに「輸出」するのが紙、じゃなかったドル・・・。これがQE等によってじゃんじゃん刷られているさまをみるにつけ、いまのうちに真に価値のあるものに換えておいたほうがよさそうだ・・・なんてふうに感じています。かといって「オ〇〇〇イ」じゃあね・・・)

(「円安輸出攻勢はアメリカ様が許さない」おわり)

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【現地生産止めて輸出に切り替えるなんて無理】円安輸出攻勢はアメリカ様が許さない④

2015-01-15 00:01:35 | 日本

前回からの続き)

 

 上のグラフは2000年から2013年までのアメリカの対日貿易赤字額およびその貿易赤字総額に占める割合の推移をみたものです(データ:国際貿易投資研究所資料等)。

 これによれば同赤字額は2000年の700億ドルあまりから2013年の626億ドルへと10%程度減っています。そしてアメリカの貿易赤字総額に占める対日分の比率のほうも2000年の16.1%から2013年には9.1%にまで下がっています。ちなみにこの割合、ピーク時(1991年頃)は6割を軽く超えていました(目立ち過ぎ!)。当時から比べれば大幅な減といえるでしょう。このあたりは前回書いたとおり、この間に進んだ日本企業の対米直接投資にともなう自動車等の現地生産の増加等により、わが国からの完成品輸出がそれだけ減ったためと推察されます。実際、アメリカにおける日本車販売台数のうちの現地生産台数の割合は年々上昇し、2012年には7割にまで達しています。

 一方、かつての日本にかわって現在、対米貿易黒字額で一番目立っているのは、もちろん中国です。アメリカの貿易赤字総額における対中赤字の割合は2000年の6.8%から2013年には32.3%にまで高まっています。で、こうなると「一方的過ぎる!」となって中国はしばしば為替操作国、つまり対米輸出に都合が良いようにドル/人民元レートを誘導している国だ!などと非難されることに・・・。それだけアメリカは自国相手の貿易で黒字を稼ぎまくる国にイラつくわけです。コレ重要、そして要注意・・・。

 その点、先述のように日本は上手でした・・・。それにいまは(日本よりずっと対米黒字額が大きくなった)中国の影に隠れていられるし・・・。もっともスマホなどの中国の対米輸出品には多数のメイド・イン・ジャパンが(良い意味で)「ちゃっかり」入り込んでいるので、これらはわが国の間接的なアメリカ向けの輸出ということもできますね・・・。

 上記の現況、そして前回綴ったことなどからすれば、やはり「アベノミクス」の「円安誘導による外需狙い」はうまくいかない・・・。つまり、いくら為替レートを輸出に有利な円安にもっていったとしても、(ちょっぴり、ならともかく)GDPのプラスにはっきり現れるくらいに対米貿易黒字を増やすことなんてまず無理、ということ。それは多くの場合、時計の針を逆に回すようなこと―――完成品の現地生産を縮小・終了して日本からの輸出に切り替えること―――をやれ!というのと同じだからです。コストパフォーマンスとか日米貿易摩擦の再燃懸念などのさまざまな観点からみて、それってあまりにアナクロ過ぎ・・・。このリニア実用化の時代に、SLけん引の定期列車を東京・大阪間に走らせよう!と本気でいうようなものです・・・。

続く

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【日米貿易摩擦の再燃は必至】円安輸出攻勢はアメリカ様が許さない③

2015-01-13 00:03:53 | 日本

前回からの続き)

 前回、アベノミクス」のねらいは、円安誘導によって、自動車やテレビなど、かつての輸出の花形であった「消費財」(完成品)の輸出を盛り立てることにある、なんて見方を記しました。まあ安倍首相や黒田日銀総裁を含む、アベノミクス推進の中心世代である60~70歳代以上の方々には、いまから50年ほども昔、まだSLが現役で走っていた頃の高度成長期の成功体験を再現させたい!という思いが強いのかもしれません・・・。

 しかし、ときすでに21世紀、平成の御世・・・。リニア着工間近のこの国の輸出構造はすっかり様変わりし、先述のとおり、いまや消費財の輸出額は全輸出額の2割にも届きません。たったそれっぽっちでは、たとえそれらの輸出面に円安のプラス効果(ドル建て輸出額の円換算額が大きくなる、など)が現れたとしても、それが日本経済全体に及ぼす恩恵は微々たるものに過ぎないでしょう。

 それに・・・円安をテコに自動車などの完成品を大量に海外に売り込む、という「1ドル360円」時代の輸出モデル=集中豪雨的輸出はもはやご法度のはず。なぜなら、これって要するに「通貨安戦争」―――近隣窮乏化政策として貿易相手国から忌み嫌われることだからです。さらにマズいことに・・・これをとりわけイヤがりそうだと予想される国が、世界最大の最終消費国、つまり日本が一番、円安輸出攻勢のターゲットにしたい国である、われらが大将・アメリカ・・・。

 ここで、この30年あまりの日米通商の歴史を駆け足で振り返っておきたいと思います。

 1980年代、日本企業は次々と海外に生産拠点を移していきました。その理由として挙げられるのが、1985年の「プラザ合意」以降、急速に進んだ円高ドル安。これを受け、主要メーカーの多くが、通貨高にともなう価格競争力の低下を回避するため、円建てで換算した各種コストが割安になった諸外国へ工場を移転させました。いわゆる対外「直接投資」の開始です。

 で、これらの投資活動のうち、アメリカに行うものについては、上の円高対応に加えて、もっと外交政策的な意味合いがあったと考えています。それは・・・この対米直接投資の推進が、当時(1980年前後)日米間の最大懸案事項だった貿易摩擦の解決策だったということです。つまり、日本のメーカーに対米輸出を増やせないようにアメリカ本土に工場を作らせる―――こうすることでアメリカの対日貿易赤字の削減とアメリカにおける雇用創出を図る・・・。これこそアメリカが編み出した日本封印の策でした。逆にいえば、それだけアメリカは日本の輸出攻勢を悩ましく感じていたということでしょう。まあともかく、わが国の新たな挑戦がこのとき始まりました。慣れない異国での工場建設、産業空洞化への対処、などなど・・・。

 ・・・その後の艱難辛苦の末、日本はこれまでに綴ったような貿易スタイルを築き上げました。そしてあのとき、本邦企業がアメリカなどに播いた種はいま、多くの実り(多額の所得収支の黒字)をわが国にもたらしてくれています。もちろん現地にも恵み―――多数の労働者雇用や技術移転など―――を与えながら・・・。厳しい試練を乗り越え、けっして搾取することなく、相手とWin-Winの関係を構築する・・・つくづくスゴイ!って思うよ、日本人って・・・。

 ―――というわけで、もう分かっていただけたかと思います。わたしがアベノミクス的な完成品の円安輸出振興策が成功しそうにないと考える理由が・・・。それはアメリカ様の逆鱗に触れること―――日米貿易摩擦の再燃は必至です。

続く

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【消費財の輸出割合は2割に満たないけれど・・・】円安輸出攻勢はアメリカ様が許さない②

2015-01-11 00:01:53 | 日本

前回からの続き)

 前述の「成田空港」が象徴的に示すとおり、いまやわが国の輸出品の主力はスマホ素材に代表される「中間財資本財」(企業が使う財)となっています。で、日本から購入したこれらを組み合わせて完成品に仕立て上げるのが中国などの加工貿易国であり、最後にこれらを輸入して使用するのが最終消費国である欧州でありアメリカ―――いまの世界の主要な国際分業体制はこんな感じで成り立っているといえるでしょう。

 実際、日本の貿易構造をみると、素材・加工品・部品・資本財の合計額の全輸出額に占める割合がすでに8割を超えています(2009年:82.7%)。一方、最終消費財(自動車や電気製品等の家計が使う財)の同割合は年々下がり、現時点では2割を切っています(同17.3%)。以上のデータは経産省のもの。若干古くて申し訳ありませんが、この実態に大きな変化はないでしょう。

 そしてこれまた前回書いたような理由から、これら部品等の輸出動向は多くの場合、為替レートの変動に大きく左右されることはないと考えるべきでしょう。つまり円高だと輸出が落ち込むわけではなく、かといって円安になったら急に売り上げが伸びるというタイプのものではいということです。

 さて、長々と日本の現在の輸出貿易のスタイルを眺めてきましたが、これと安倍政権・黒田日銀が進める「アベノミクス円安誘導」はどのように関連するのでしょうか。このあたりについて以下、思うところを記してみたいと思います。

 「円安誘導による外需狙い」―――以前から述べているように、アベノミクスの実体経済面における目的はコレだと考えています(もちろん真の目的は、こちらの記事等に書いたことでしょうが・・・)。つまり通貨安をテコにした輸出振興を通じて日本経済を浮揚させようということ。まあお気持ちは分かる気がします。現在アベノミクスを推進する60~70歳台以上の方々には、自動車とかテレビなどを外国に売りまくっていた高度成長期時代へのノスタルジーがあるでしょうから(?)・・・

 ところが・・・上記のとおり、わが国の主要輸出品はすでに円安の恩恵があまり及ばない中間財・資本財等になっています。したがって円安戦法の手札は1枚限り・・・(?)。で、それこそ、1ドル=360円時代の成功物語(!?)―――日本企業ブランドのついた消費財の輸出です。具体的には、日本で完成品を作って、これを(中国等の加工貿易国を経由せず、)直接、最終消費国である欧州そしてアメリカへ売り込む―――つまり、円安を利して完成品市場・欧米へ集中豪雨的な輸出攻勢をかける!・・・これです。

続く

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コメント (3)
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