世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
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【「もう限界!」の声にアベノミクスはどう答える?】高騰石油代が揺るがす円安誘導の妥当性④

2014-06-29 00:01:42 | 日本

(前回からの続き)

 といった具合で、アベノミクスが積極的に推進する輸入インフレによって、家計(実質所得低下)や企業(個人消費減退による収益減懸念)の多くは経済的にはむしろ厳しい状況に追い込まれつつあるように感じています。そして円建て輸入燃料代の急騰は貿易赤字のさらなる拡大をもたらし、経常収支のいっそうの悪化、ひいては貯蓄減少や長期金利上昇という、日本経済の根幹を揺るがす事態を引き起こしかねない、と心配しているところです。

 直近のニュースによると、総務省が発表した5月の全国消費者物価指数は前年同月比3.4%増と、32年ぶりの高い上昇率となったとのこと。これはガソリン等のエネルギー価格の上昇と電気代等に消費増税分が転嫁されたことなどによるものです。この物価上昇にほとんどの勤労者の給料の伸びが追い付いていないのは明らかです。4月のわたしたちの実質賃金は所定内給与が予想どおり(?)前年比で0.3%のマイナスとなった一方、実質賃金は同3.4%もの大幅な低下となったわけですから・・・。こんなことでどうして「アベノミクスは100%正しい」といえるのか、本当に不思議です・・・。

 で、安倍政権・黒田日銀ですが、現時点で表向きはデフレ解消の立場から輸入インフレ促進の姿勢を崩してはいないように見えるものの、内心では「ガソリン1リッター170円」に象徴されるエネルギー価格の高騰に警戒感を持っているものと推察されます。わが国の実体経済が上記のような有様のなか、原油価格が1バーレル110ドル程度まで上がってくると、さすがのインフレ信奉者である安倍総理・黒田日銀総裁でも「ちょっと輸入インフレが行き過ぎているかなー。これが日本経済に少しは悪影響を及ぼすかもしれないなー」とうすうす感じ始めていることでしょう。

 イラク情勢の悪化などを受けて今後、さらに石油の値段が上昇すると、もはや政府・日銀はノンビリしていられなくなりそう。あまりの円建て燃料代の急騰ぶりに、輸入インフレ万歳にもホドがある!といった不満や怒りの思いを抱く人々が一気に増えるだろうと予想するからです。アベノミクス―――円安誘導で意図的に輸入インフレを起こすリフレ政策の「正しさ」を「健気(けなげ)に」信じ(?)、激化する一方の輸入インフレに歯を食いしばって耐えてきた国民各層が「このガソリン代、電気・ガス代、灯油代の高さはもう限界だ!!」と悲痛な叫び声を次々に上げるということです。そのタイミングが刻々と近づきつつある・・・(というか、すでにそのタイミングを迎えている!?)。

 「高すぎるエネルギー価格を何とかしろ!」―――この国民の切なる声にアベノミクスはどう答えようというのか・・・。円安誘導を通じたエネルギー価格の意図的なつり上げこそリフレ政策の推進力―――それに「No!」と突きつけるかのようなこの訴えに安倍総理・黒田日銀総裁はどのように回答するのか・・・? 個人的には非常に関心のあるところです。

(続く)


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【インフレ礼賛下で疲弊する実体経済】高騰石油代が揺るがす円安誘導の妥当性③

2014-06-27 01:00:00 | 日本

(前回からの続き)

 前回、インフレ礼賛のアベノミクス推進者と支持者の皆さん―――安倍政権・黒田日銀、経済学会、そして主要メディアにとって、足元の原油価格の高騰は歓迎すべき状況といえる、と書きました。これがガソリン代をはじめ、電気・ガス料金、その他原材料価格のいっそうの値上がりを通じてあらゆるモノやサービスのコストアップを促し、さらにインフレを煽るからです。

 しかし・・・これが国民の生活にマイナスの打撃を与えることは必至です。わたしたちの実質所得がますます低下する可能性が高いからです。

 こちらの記事等でいろいろ記したとおり、2012年11月のアベノミクスの実質的なスタートから現在までの勤労者や年金受給者の経済環境はむしろ厳しさを増しているところです。昨年はアベノミクス効果(?)で株価が上昇し、政府・日銀・マスコミがこぞって「アベノミクスで景気が良くなった!」と大合唱したにもかかわらず・・・。その大きな理由は日銀の異次元緩和に起因する輸入インフレによる生活費の上昇に収入(給与とか年金)が追い付いていないため

 そんななかで4月からは当初の予定のとおり消費税率が8%に引き上げられました。そして上述の「ガソリン1リッター170円」に象徴される石油の値段が急騰中・・・。であれば当然、生活コストはさらに上がり、わたしたちの日々のやり繰りは今年、厳しかった昨年よりももっと悪化しそうな気配が漂っています。そして来年、消費税率は10%へ・・・って、こんな状態で本当にそうするの?

 産業界にとっても痛いところでしょう。当たり前ですが、石油を含めたエネルギー価格の上昇は製造コストや流通コストを押し上げて企業の利益を目減りさせます。コスト増分を商品・製品価格に転嫁したところで、上記のインフレや消費増税によって頼みの個人消費が政策的に抑圧されているため、売上額が伸び悩むどころか落ち込むところも少なくないのではないでしょうか。

 となると、じゃあ輸出だ!ということになるのでしょうが、こちらに綴ったように、その目論見はすでに崩れています。輸出振興を図るために円安にしたら逆に意図せざる(?)輸入振興となってしまったのでした・・・。

 2011年の東日本大震災にともなう原発の停止以降、とりわけアベノミクス開始後のわが国の貿易収支は赤字傾向がすっかり定着しています。その最大の原因は円安誘導がもたらしたエネルギーの円建て輸入額の増加です。そこへこのたびのドル建て原油価格の上昇分が加われば同輸入額はいっそう膨らみ、貿易赤字を拡大させるでしょう。それはやがて所得収支の黒字でも埋め切れない規模になり、わが国を経常赤字国へと転落させることに・・・。

(続く)


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【原油価格高騰に歓喜のリフレ派】高騰石油代が揺るがす円安誘導の妥当性②

2014-06-25 00:01:28 | 日本

(前回からの続き)

 ご存知のとおり安倍政権・黒田日銀の両者は、意図的にインフレを起こして日本経済を活性化させようというリフレ政策を推進しています。具体的な手段として異次元緩和と呼ばれる金融政策(国債の大量買入れ等)で為替レートの円安を誘導し、輸入原材料の円建て価格の上昇を促すことでインフレを引き起こしてきました輸入インフレ:「悪いインフレ」ともいうが・・・)。

 以前こちらの記事に書いた企業物価の上昇等に現れているとおり、それがここまで奏功したうえ、前述の地政学的要因でドルベースでの原油価格まで上がってくれば、わが国の輸入インフレはますます激しくなり、消費税率アップにともなう物価上昇分と合わせると、両者の目標である年率2%をかなり上回るインフレ率すら達成できそうです。「ガソリン価格1リットル170円!? やったー! インフレ激化は間違いなし! ということでアベノミクスはますます順調。これで腰を据えて集団的自衛権容認をめぐる議論ができる!」といったあたりが安倍首相周辺の本音なのではないでしょうか。

 このように、アベノミクスの支持者の皆さん―――「インフレは良いことだ!」と訴える人々にとって、足元の原油価格の高騰はまことに好都合。それは黒田日銀にとっても歓迎すべき状況といえるでしょう。消費税率の引き上げにともなうデフレを回避したい日銀は目下、輸入インフレをさらに煽る策(さらなる円安誘導策)として「追加緩和」の実施を検討しているはず。そんななか、ここのところのエネルギー価格の上昇が日本経済に追加緩和と同じような物価引き上げ効果をもたらしてくれています。これで当面、日銀には追加緩和を発動する必要がなくなりそう。つまり日銀は「追加緩和」カードを温存できるということになります・・・。

 こうしてみると、ガソリン:リッター170円に象徴される原油価格の高騰は国民にとって喜ばしいことといえそうです。なぜなら著名経済学者が「100%正しい」と評価し、安倍総理自らが「これしかない!」と断じた「アベノミクス」のねらいどおりの展開になってきたから。これでインフレがもっと激しくなれば、多くの人々が、それこそ「100%=全国民」が幸せになれる・・・。

 ・・・って、本当にそうでしょうか。ガソリン代、電気代、ガス代といったエネルギー価格がどんどん上がって喜んでいる人って、安倍政権、黒田日銀、経済学会や主要メディア(そして産油国)以外にどこにいるというのでしょうか。「リフレは正しい」って、いったいどのような意味で「正しい」のでしょうか・・・。

(続く)


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【ガソリン代リッター170円!】高騰石油代が揺るがす円安誘導の妥当性①

2014-06-23 00:04:55 | 日本

 原油価格が高騰しています。6月20日時点で1バーレル約107ドル(WTI)と、昨年9月に記録したこの2年間の最高値である同約110ドルに迫ってきました。北海ブレントに至っては先物価格が同114ドル台と、9か月ぶりに高値を更新しています。

 以前から書いているように、原油価格の上昇が続いている背景には、2008年秋に起きたリーマン・ショック後のデフレ深化をくい止めるため、アメリカの中銀FRBが同年11月に開始し、いまも継続している量的緩和策(QE)があると考えています。これによってドル、つまり「石油引換券」がマーケットに大量散布され、石油の値段が上がった(というよりは、ドルの価値がそのぶん、減価した)ということです。

 実際、QEスタート直後の2009年初は1バーレル約40ドル台前半だった原油価格が現在は上記のとおりです。この5年あまりの間でなんと2.4倍以上になったことになります。これに対し、世界の石油消費量は2008年の約39.9億トンから2012年は41.3億トンと4年間で3.4%ほどの伸びにとどまります。下記グラフのとおり、石油はいかに実需とは無関係に価格だけが上がっているか(つまりそれだけドルの価値が下がった)ということがよくわかります。結局、欧米諸国の不動産価格や株価などと同じく、石油価格もまたバブルなのでしょうね・・・(だから、産油国にデカい顔をさせるようなこと[≒QE]をしてはいけないよ、ホント・・・)。

 もっとも今年に入ってからの原油価格の上昇には地政学的な要因、つまり2月以降のウクライナの混乱とか直近のイラク情勢の悪化にともなう供給懸念があるものとみられます。その懸念が世界実体経済の現実なのか、そして現実になるのかどうかはわかりませんが、少なくとも商品市場ではそのように解釈され、QEマネーの多くが石油に向かった結果、上記の高騰がもたらされた、ということなのでしょう。

 わが国においてもこの石油価格の上昇の影響がはっきり感じられるようになっています(まあこちらの記事等に書いたように、基本的にはアベノミクス開始以降はずっとそんな状態ですが・・・)。たびたび取り上げている電気料金は高止まり状態が続くほか、足元ではガソリン代の値上がりぶりが際立ってきました。つい先日「1リットル160円」に驚いたばかりなのに、あっという間に同170円台に乗ってきました。イラク情勢が混迷の度を深めるなか、いったいこの先、ガソリン価格はどこまで上がるのか、と戦々恐々としている国民も多いはず・・・。

 これに対し、安倍政権・黒田日銀はガソリン代に象徴されるこの原油価格の高騰を大いに歓迎しているものと推察されます。なぜならそれは、エネルギーコストの上昇を促してわが国の物価上昇幅をいっそう拡大する効果を発揮してくれるからです。

(続く)


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【バブル崩壊でブラック取引ストップ】要注目!米当局による仏銀制裁問題④

2014-06-21 00:08:13 | アメリカ

(前回からの続き)

 こちらの記事などに書いたように、アメリカのFRBが量的緩和策を止めることは極めて困難であり、PIIGS諸国のソブリン危機再燃(国債価格低下・利回り上昇で、PIIGS諸国が債務不履行の危機に陥ること)を恐れる欧州中央銀行も緩和的な金融政策を続ける以外に手がないだろう、と予想しています。つまり、資産バブル処理の先送りということですね・・・。

 もしこの見方が正しければ、低金利とマネーじゃぶじゃぶ状態はこれからもしばらくは続くため、「大きすぎてつぶせない(Too Big to Fail:TBTF)」欧米金融機関のなかには、武器とか麻薬の売買などが絡むほどのブラックな取引に手を出すところが現れるだろうと考えています。なぜならそれはノーリスク・ハイリターン―――たっぷり利ザヤが稼げるうえ、万が一貸し倒れとなっても、TBTFということで免罪・救済されてしまうという、リスクフリーに近い商売だから・・・。

 そんなわけで、紛争とかドラッグなどと深い関係のあるアブナイ国々と一部の金融機関との癒着は今後も減りそうにないな、と嘆息しつつ、一方で今回の米司法当局の仏銀BNPパリバに対する罰則適用がこれらの増加に歯止めをかけることになるかもしれない、とちょっぴりだけ期待を抱いています。こうした取引に関与すると厳しい制裁が科せられるぞ!ということが警告となって、緩和マネーがこれらから遠ざかろうとするから・・・って甘いかな?

 まあ当局のペナルティーも必要ですが、本当に求められているのは国際金融業界のモラルだと感じています。でもTBTFを錦の御旗に掲げる彼らに自浄作用なんて望めるのか・・・。

 近い将来、高い確率で欧米諸国は資産バブルの最終清算ステージを迎えるでしょう。そのとき緩和マネーは欧米内外のリスク資産から一斉に逃げ出すことになります。おそらくは本稿で綴ってきたようなところからも・・・ということで、武器売買だとかマネーロンダリングなどといったアングラな分野への資金供給が真に断たれるきっかけとなるのは、当局の取り締まり強化とか(望み薄の?)金融界の自発的なモラル向上などではなく、このバブル崩壊なのではないだろうか、などと思っています。

(「要注目!米当局による仏銀制裁問題」おわり)


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【アブナイ取引の背景はQE?】要注目!米当局による仏銀制裁問題③

2014-06-19 00:01:29 | アメリカ

(前回からの続き)

 前回書いたとおり、イランとかスーダンといった国では、カネと武器とが密接に関連しているものと推察されます。したがって米司法当局には、そんな国々を相手に仏銀最大手のBNPパリバがいったい何をやっていたのか、詳しい内容をぜひ明らかにしてほしいし、これを契機に世界の武器市場に流れる資金が減ることになればいいのに、などと思っています。

 それにしても、両国のようなキナ臭い面を持つ国と付き合おうという銀行がどうして出てくるのか・・・やはり、現在の世界金融情勢の影響が大きいのでしょう。具体的には次のような感じでしょうか―――。

 不動産バブル崩壊にともなう資産デフレを食い止めるために、欧米各国中銀がきわめて緩和的な金融政策を継続(日銀も追従)
→欧米金融機関は、金利が大きく下がるなか借金をして少しでも利回りの高いリスク資産に投資して利ザヤを稼ごうとする
→各行は、株式投資のほか、ハイリスク・ハイリターンなアジア・アフリカ等の国々の債券等への投資を増やす
→なかには危険度は高いが利ザヤのずっと大きな資産等への投資に乗り出すところが出てくる
→で、それらの金融機関は結果として紛争やテロなどに深く関与している国々との取引に手を染める・・・

 顧客の大切な資産を預かる銀行は、本来であれば、ハイリスク、つまり貸し倒れの危険が大きな投資には手を出さないはず。にもかかわらず、上記のような非常にアブナイ取引に関わっている銀行が少なくないのは―――たとえそれが失敗して経営危機に陥っても、「金融システムの機能不全を防ぐ」という名目で最後は国家なり国際金融機関なりが自分たちを助けてくれることを知っているためだと考えています。なぜなら彼らは「大きすぎてつぶせない(Too Big to Fail:TBTF)」銀行ということになっているから・・・。

 本ブログでは、資産バブルの維持・拡大を最大の目的とする各国中銀の金融緩和策(QE)、そしてTBTF銀行を含む金融業界のルールや振る舞いに関し、個人的にネガティブに感じる面をいろいろ綴っています。で、極端な場合、それらは密接に絡み合いながら、上記のような経過をたどって武器売買(とか麻薬売買!?)やマネーロンダリングなどといったダーティーな取引につながっていくと思っています。こうなってくると、やはり犯罪ですね・・・。

 そんな意味で、米司法当局の表題調査に加え、アメリカが進めているテーパリング(QE縮小)がひとつのきっかけとなって、こうした取引からマネーが遠のくことを期待しているわけですが・・・。

(続く)


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【イランやスーダンと取引、って・・・】要注目!米当局による仏銀制裁問題②

2014-06-17 00:03:52 | アメリカ

(前回からの続き)

 前回書いたとおり、アメリカの司法省が問題視している仏銀最大手BNPパリバの金融取引の相手国にはイランスーダンが入っているようです。イランにスーダンですか・・・。いずれもカネと兵器・武器とが密接に絡んでいそうな国です。

 イランには以前から核兵器開発疑惑がつきまとっています。アメリカと親密なイスラエルとも敵対関係にあります。そんなことからアメリカは同国に対して経済制裁を継続し、自国で事業を行う企業による同国への武器輸出や同国金融機関との取引を禁じています。今回、これにBNPパリバがひっかかったわけですが、いったい同行は何をしたのか・・・。

 もし、イランへの不正送金にかかるマネーが巡り巡って核開発とか武器取引に流れていたとすれば、それは地域の安定を脅かす要因となるわけで、これはアメリカならずとも看過できない行為といえそう。したがって米当局には、そんな危険な取引に関与した企業にはそれ相応の制裁を科してもらいたいとは思います。しかし一方で、わが国にとってイランはエネルギー資源の調達先として大切な国のひとつ。当然、日本・イラン両国のあいだには核開発等とは無縁の金融取引が発生するわけですが・・・。今回のアメリカのPNBパリバに対する措置の「とばっちり」が両国関係に及ばないことを願いたいところです(邦銀は兵器・武器等が絡む取引にはけっして手を出さないでしょうから、他国の銀行と一緒にしないでほしい・・・)。

 次にスーダンですが、金融取引と武器取引との関連がイランよりもはるかに強そうな感じです。以下に記すように現在、スーダンは国内のあちこちで紛争を抱えているからです。

 Wikipediaなどによると、80年代以降イスラム色を強めたスーダンは、湾岸戦争でイラクを支持したために西側諸国との関係が悪化し、1993年にはアメリカにテロ支援国家の指定を受け、それ以降経済制裁を受けています。これに対して同国は立場の似たイランや中国などとの関係を強化しつつ、同国西部のダルフール地方でアラブ系民兵と共同して非アラブ系住民への攻撃・弾圧(ダルフール紛争)を進めたほか、南部の国境地帯にある油田をめぐって隣国の南スーダンと鋭く対立しています。

 そんな状態の国が第一に必要とするものは兵器・武器! しかもそのほとんどが中国製! ということで、スーダンとの金融取引には何ともキナ臭いものを感じます。同国が現在も軍事力を維持・強化している様子から、ひょっとしたらどこかの国の銀行がマネーロンダリングや脱税ほう助などに加えて武器取引にかかる融資等にも関与している可能性がありそうです・・・。

 ・・・といった具合なので、まっとうなバンカーなら、戦争とか武器商人の影がチラつくイランとかスーダンのような国との金融取引には近づかないだろうな、と思うわけですが・・・。

(続く)


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【罰金100億ドル!?】要注目!米当局による仏銀制裁問題①

2014-06-15 00:02:44 | アメリカ

 国境を越えた巨額賠償、金融業界のモラル、そして紛争地域とマネーとの関わり、などなど・・・本ブログで最近綴ってきたことが集約されたようなケースだな、と思っています。

 アメリカの司法省は、フランス最大の銀行BNPパリバが、アメリカの経済制裁対象国であるスーダンやイランなどと不正な金融取引をしていた、として、同行に罰金の支払いを求めています。その金額は最終的に100億ドル(約1兆200億円)あまりに達する可能性があるとのこと。

 さまざまな意味でこの司法判断は注目を集めそうですが、まずはその罰金額の大きさにビックリです。100億ドル超!―――まあ本当にこんな額となるのかどうか現時点では分かりませんが、少なく見積もっても数十億ドル以上になることは間違いないでしょう。日本円で数千億円~1兆円を超える額です。同行は本ケースに備えて2013年11-12月期に11億ドルの引当金を積んでいますが、これだけではとても足りない感じです。

 で、同行の拠点国・フランスでは「アメリカのこの措置は理不尽だ!」といった声が高まっているようです。オランド大統領は「厳しすぎる額だ」と不満を表明しているほか、同国のメディアも「『金融危機の原因を作ったアメリカの銀行に手ぬるい』との批判を米当局がかわそうとしてBNPパリバを見せしめにしている(ル・モンド紙)」などと、アメリカに対して批判的な反応を示しています。

 たしかに同行の金融取引をアメリカが問題視し、それ相応の制裁金を同行に科そうというのは個人的にはもっともなことだと思います。これがアメリカのルールに違反しているばかりではなく、マネーロンダリング(資金洗浄)などに関連のあるダーティーな側面を含んでいる可能性があるからです。 

 いっぽうでフランスの見方―――米当局は自国の企業に甘く他国の企業に厳しいのではないか―――については、わたしたち日本人にとっても微妙に感じられるところです。こちらの記事に書いたように、日本の企業もまたアメリカの訴訟沙汰に巻き込まれて多額の賠償等を請求されるケースが増える気配があるからです。

 本件に関連付けて今後、わが国が注視すべき事例は、ゼネラルモーターズ(GM:自動車メーカー)の欠陥放置問題でしょう。報道によれば、GMは自車に欠陥があるのを知りながら10年あまりにわたって放置し、その間、それが原因とみられる事故で少なくとも13人が死亡した、とのこと。これはトヨタ自動車のケース(フロアマットに不具合があるとされて2010年前後に大規模なリコールを実施:同社が12億ドルもの制裁金を米司法省に支払うことで合意)よりも米市民の被害規模がずっと大きく、かつ悪質とみられることから、米司法省は当然、GMに対し、トヨタを(はるかに!?)上回る制裁金を科すだろう、と予想されるわけですが・・・。

 まあこのGMの欠陥隠し問題の今後はともかく、近いうちに決定される予定の上記PNBパリバに対する処分に関しては、アメリカが法律や国際ルールに公平な国であることを国内外に示す意味でも、米当局には同行が犯した不正の詳細とか罰金額が100億ドル(?)になる根拠などをしっかり示してもらいたいと思っています。

(続く)


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【自衛隊員の無事を祈る・・・】集団的自衛権行使:対日テロ誘発の懸念⑧

2014-06-13 00:02:50 | 日本

(前回からの続き)

 というわけで、表題について思うことをあれこれ記してきましたが、そのほとんどは、日本が集団的自衛権の行使を容認した場合に予想される事態に関すること。

 ですが・・・本稿冒頭に書いたように、そもそも集団的自衛権の行使って、どう読んでも違憲でしょ!と思っているので、これらの想定が憲法改正を経ずして現実となることはないはずだ、と予想しています。

 あらためて「集団的自衛権」と「日本国憲法第九条」を以下に併記しておきます。

○集団的自衛権
他の国家が武力攻撃を受けた場合に直接に攻撃を受けていない第三国が協力して共同で防衛を行う国際法上の権利。その本質は、直接に攻撃を受けている他国を援助し、これと共同で武力攻撃に対処するというところにある。なお、第三国が集団的自衛権を行使するには、宣戦布告を行い中立国の地位を捨てる必要があり、宣戦布告を行わないまま集団的自衛権を行使することは、戦時国際法上の中立義務違反となる。(Wikipediaより)

○日本国憲法第九条
日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。2.前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

 それでも安倍政権によって集団的自衛権の行使が容認されてしまったら・・・せめてこう祈ることにしましょう。

 ・・・どうか遠い異国に派遣される自衛隊の皆さんが一人も戦争の犠牲となることがありませんように、そして彼の地の人々を一人も傷つけることがありませんように・・・。

(「集団的自衛権行使:対日テロ誘発の懸念」おわり)


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【武器取引規制作りをリードせよ】集団的自衛権行使:対日テロ誘発の懸念⑦

2014-06-11 00:03:29 | 日本

(前回からの続き)

 先日の米大統領の「尖閣諸島日米安保の適用範囲」との発言により、わが国は対中安保の観点から集団的自衛権の行使を宣言する必要はなくなった、との個人的見解を前回綴りました。

 とはいうものの、「日本の集団的自衛権の行使には『国際貢献』の意味合いがある」という意見もあります。「アメリカなどの国々が世界各地の紛争エリアに軍隊を送り、治安維持活動等に従事しているのに、日本だけ何もしないわけにはいかない。こうした地域に自衛隊を派遣できるようにするべきだ」―――だから、対中安保は別にしても、集団的自衛権の行使は容認するべきだ、といった感じでしょうか。

 では、これは「国際貢献」と本当にいえるのか・・・。

 世界中の戦争や紛争の解決に向けて平和国家・日本が果たすべき国際貢献とは―――以下のような理由から「武器取引の世界共通ルールや規制作りをリードすること」だと考えています。

 これまでも書いたように、戦乱が起こっているか、近い将来に発生しそうなのはアジアやアフリカなどにある小国・地域です。で、ここで重要なのは、現地で使われている兵器や武器は、政府軍、反政府勢力などの違いに関係なく、ほとんどが「米欧中」の軍事企業が作ったものであること。だから、これらの兵器・武器が彼らの手に安易に渡らないような国際的な取り決めを定めれば、おのずと戦いは止むはず。なぜなら、彼らは武器を取り上げられたら何もできない―――戦争の道具を自分たちで作ることなんてできないからです(せいぜい、石ころを投げることくらいしかできない!?)。

 主要国でほとんど唯一、国家間のアブない武器取引に手を染めていないわが国は、こうしたフレームづくりの先頭に立つべきではないでしょうか。紛争地域の人々にとっても、そしてそこに派兵している各国にとってもこのほうがずっと平和で安上がりな方法だと思うのですが・・・。

 ・・・もちろん、これが困難な道であることは分かっています。他の主要国―――「米欧中」諸国の賛同を得られそうもないからです。米欧中にとっては、あれこれ規制を設けられて自国の軍事企業が兵器・武器を世界各地に売却しづらくなったら、自国の経済にダメージが及ぶおそれがあるから・・・。

 つくづく、小国で繰り広げられる戦争って「マッチポンプ」だな~と感じます。自分で火をおこし、自分で火消しをしてみせる―――上記の軍事企業は、まずはどこかの国に兵器・武器を売って儲けるとともに、そこを舞台に戦いが起こったら、今度は「国際貢献」で出兵する各国政府に同じように売って儲ける、ということ・・・。このように、軍事産業にとって戦争は2度おいしい、といったあたりでしょうが、これに巻き込まれる各国兵士や一般市民はたまったものではない、なんて思います。でも、こんなマッチポンプはそろそろ終わりにしなければならない・・・!

 だからこそ日本は集団的自衛権行使の宣言ではなく、武器取引規制の面で国際社会に積極的に発言するべき―――そうすることでわが国は無用な戦争への関与を回避しつつ、一方で「日本は何もしないじゃないか!」といった的外れの批判に堂々と立ち向かい、真の意味での「国際貢献」とは何かを世界に知らしめるべき―――そう考えています。

 もっとも現在の安倍政権は、武器輸出三原則の規制緩和に乗り出すなど、この方向にも逆行している感じですが・・・。

(続く)


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