世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
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中央銀行に頼る世界経済の行く末④

2012-06-29 00:01:23 | 世界共通

(前回からの続き)

 ここでは、日米欧の各中銀の金融政策の真の目的と効果の有無について、①わが国(日銀)、②アメリカ(FRB)、③欧州(ECB)として、個人的な解釈を含めてまとめてみたいと思います。そしてECB。

③欧州(ECB)

 日銀、FRB、ECBの3つの中央銀行のうち、現在、一番難しい局面にあるのはこのECBでしょう。

 ECB(欧州中央銀行)の金融緩和の目的は「資金繰り支援で時間稼ぎ!だと思います。

 つまり、「PIIGS諸国国債買い入れ(金利上昇の抑制)やLTRO等を通じた低利資金供給(欧州金融機関に価格が下がったPIIGS諸国債などをこの資金で買ってもらおうと意図?)で時間稼ぎをするから(問題先送りをするから?)、その間に各国は行財政改革を急いで推進せよ!」ということ。

 しかし、ときすでに遅し。ギリシャやスペインなどの有様を見れば明らかなように、この目論見はもはや崩壊寸前。それどころかこれまでに買い入れたPIIGS諸国債などの資産の目減りなどから、ECBの資産そのものが大きく毀損される危機に陥っています。

 ECBも本音では承知しているように、そもそもPIIGS諸国を中心としたソブリン危機に資金繰り支援だけで対応することには無理があります同危機の本質はこれら諸国の支払い能力の欠如にあるからです。

 PIIGS諸国は、いずれも共通通貨ユーロの導入後に発生した不動産バブルの崩壊などで経済が低迷しているほか、国内に競争力の強い産業基盤をほとんど持っていないこと、経常収支の赤字が継続していること、脱税などの不正が横行していること、などから十分な歳入が得られません。

 一方で、民営化などの市場原理の導入に消極的で、非効率な政府部門を温存したまま、年金などを大盤振る舞いするなど、歳出の削減もなかなかできませんでした。

 通常であれば、このような歳入・歳出の状態にある国家は、為替市場を通じて自国通貨が他国通貨に対して下落し、激しい輸入インフレなどで痛い目に遭うため、財政収支の改善や輸入抑制・輸出振興などにもっと早い段階で真剣に取り組もうとするものです。

 ところがPIIGS諸国は、ユーロという信用の高い(調達金利の低い)通貨を手にしたことをいいことに大量の借金をし、上記のような規律を欠いた国家運営を行って、最終的には自らの返済能力をはるかに超えるほどの国家債務を抱えてしまった、ということでしょう。下のグラフでも分かるように、2002年のユーロ導入以降、PIIGS諸国の経常収支・財政収支の赤字幅は急激に拡大しています(そして厄介なことにそれらの多くが対外債務となっています・・・)。

 こうした重大な事態に、もはやECBは、LTRO(長期資金供給オペ)などのような小手先だけの流動性供給策程度では対処できないことは明らかです。ECBは6月6日に政策委員会を開いて政策金利を1%に据え置きましたが、たとえ0.25%程度利下げしていたからといって、これら諸国の支払い能力は全くと言って良いほど高まらないでしょう。

 いったいECBはどうする気なのか。今後もPIIGS諸国の国債買い入れ等を続けるのか。でもこのままでは引き受けたこれら国債の資産価値がデフォルト等で大きく失われる事態は避け難いでしょう。結局、その穴埋めは、ユーロ圏市民の血税で賄われることになるのでしょうか・・・。




(続く)

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中央銀行に頼る世界経済の行く末③

2012-06-27 00:00:57 | 世界共通

(前回からの続き)

 ここでは、日米欧の各中銀の金融政策の真の目的と効果の有無について、①わが国(日銀)、②アメリカ(FRB)、③欧州(ECB)として、個人的な解釈を含めてまとめてみたいと思います。次にFRB。

②アメリカ(FRB)

 FRB(連邦準備制度理事会)の金融緩和の真のねらいはズバリ「資産バブルよ、もう一度!だと思っています。

 つまり、金融緩和で低利資金を大量に市場に供給して株式市場や不動産市場を刺激し、これらの資産価値を高めることで、2007年の住宅バブル破裂から始まった逆資産効果に歯止めをかけるとともに、あわよくばこれらの資産の含み益の再拡大を図って新たな個人消費や投資を促そうというものです(逆資産効果とは、住宅などの資産の含み益が減るどころか、多くの場合、それらの時価が購入時の価格よりも下がって含み損が発生しているような状態のために消費や投資が抑えられることをいいます)。

 しかし、これも思惑通りにはいかないのではないかとみています。不動産や株式などの資産価値の大幅な上昇が期待できそうもないからです。

 まず不動産ですが、代表的な不動産関連指数であるケース・シラー住宅指数を見ると、2007年第1Qのピークの約190(2000年第1Qを100)から2011年第4Qは約130となっており、30%を超える大幅な低下。最近は下げ幅こそ小さくなってはきているものの、住宅価格は引き続き下降傾向を示しています。まだまだバブルの残滓があって適正な価格にまで下がりきっていないということでしょう。

 したがって、多くの不動産所有者にとっては、住宅価格の再上昇で含み益発生!どころか、いつになったら本当に下げ止まってくれるのか(含み損の拡大が止んでくれるのか)、と固唾を呑んで見守っている状況、といったあたりが正直なところなのではないでしょうか。

 そして株式市場のほうも何とも不透明な展開が続いています。今年に入ってからのダウ平均株価を見ると、12,000~13,000ドルのレンジを上下しています。一見すると住宅バブル時の高値約14,100ドル(2007年10月)に迫っているようにも感じられますが、現在の株価水準は、企業の本業の儲けなどを反映したものというよりは、アメリカ市場で盛んな自社株買いなどの操作によってかさ上げされているといったほうが実態に近い、といった指摘があります。

 今後、市場が待ち望む?FRBの量的緩和第3弾(QE3)などをきっかけに株価が上昇する可能性はありますが、これも市場にマネーが流れ込むだけで、企業のモノやサービスの売り上げ拡大や雇用増を直接的にサポートするものではないことなどから、この効力も一時的なものにとどまるだろうとみています。

 ほどなく、巨額に及ぶ未処理の不良債権や超危険なデリバティブなどをめぐって、大銀行や住宅公社などのアメリカ金融機関の財務に対する懸念がマーケットに広がり、欧州のソブリン危機拡大などをきっかけに、これらの金融株が主導するかたちで株価が下落していくものと予想しています。バンクオブアメリカやシティグループといった主要金融機関の株価が1年ほど前と比べて20~30%程度も下がっているのも不気味な感じです。

 ここでとくに注意しておきたいのは、長期間にわたってゼロインフレ(緩やかなデフレ)が続くわが国と違って、アメリカはインフレ率が高いこと。住宅バブル末期の2007年から2012年までの各年間の平均インフレ率は約2%(5年間の通算インフレ率は約10%)です。不動産価格も株価もこのインフレ率と同率で上昇していかなければ実質価値は目減りすることになってしまいます。

 だから5年も前(!)の価格と比べて「住宅価格が下げ止まった」とか「株価は史上最高値まであと1,000ドル」といったくらいではとても喜んでいられない、というのが実情でしょう(一部には、実際のアメリカのインフレ率はもっと高いのではないか、という説も根強いので、不動産価格や株価の本当の到達目標ラインははるかに高いでしょう・・・)。

 FRBは、資産価格の上昇をサポートしつつもインフレは抑えなければならない、という、きわめて難しい舵取りを迫られているといえそうです。

(続く)

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中央銀行に頼る世界経済の行く末②

2012-06-25 00:01:57 | 世界共通

(前回からの続き)

 ここでは、日米欧の各中銀の金融政策の真の目的と効果の有無について、①わが国(日銀)、②アメリカ(FRB)、③欧州(ECB)として、個人的な解釈を含めてまとめてみたいと思います。はじめに日銀から。

①わが国(日銀)

 日銀の金融緩和の本当の目的は「円安誘導による外需狙いと考えています。

 つまり、国債の買い入れ等で円のマネタリーベースを拡大して円安を促し、輸出企業の業績や株価上昇を支援しようというものです。要するに自国通貨安を追い風にして外需振興を図ろうという、実態としては円売り外貨買い為替介入に近い政策ということもできるでしょう。

 昨年、政府・日銀は数回にわたる巨額の円売りドル買い介入を行いましたが、アメリカなどからの支持を得られなかったため、やむをえず?為替介入は断念し、その代わりに介入と似た効果をもたらす円のマネタリーベース拡大策に出たのだろうと個人的には推測しています。

 もっとも、この日銀の金融緩和策、つまり実質的な円安誘導策はうまくいかないだろうとみています。以前「日銀の金融緩和は万能策にあらず」などでも書いたように、欧米の金融危機やリセッションが深刻化するなかで今後も外貨のマネタリーベースが増えて、つまりドルやユーロがどんどん増刷されて円高/外貨安が進むと予想されるためです。

 まあこの日銀の政策は、減価必至の外貨を買う為替介入で為替差損(=国家損失)を膨らませるよりはマシ、といったところかな、とは思いますが・・・。

(続く)

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中央銀行に頼る世界経済の行く末①

2012-06-23 00:04:57 | 世界共通

 それにしても中央銀行の存在感がいまほど高まった時代はかつてないのではないのでしょうか。

 ここのところ世界の経済ニュースはまさに中央銀行の金融政策一色といった感じ。アメリカ関連だけでも、いちばん目立っているのはバーナンキ連邦準備制度理事会(FRB)議長。その次にガイトナー財務長官あたり。これに対して、「財政の崖」(財政引き締め)の制約のせいなのか?オバマ大統領の影が何だか薄いなーと感じるのは私だけでしょうか。
 
 6月に入り、欧州ソブリン危機の深刻化などに起因したリスクオフモードのなかで、世界の金融市場は主要中央銀行の次の一手を待ち望んでいるように思えます。

 6日には欧州中央銀行(ECB)の政策委員会が開かれましたが、市場の一部の期待を裏切って(?)政策金利が1%に据え置かれたため、欧州の各株式市場では株価が下落するなど、残念モードが広がったように感じられました。

 アメリカでは今週、連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されました。雇用数の伸び悩みなど、アメリカ景気の先行きに不透明感が漂うなか、FRBが新たな金融政策に関してどのような決定を下すのか注目が集まっていましたが、結局、ツイストオペの2012年末までの延長が決まったくらいで、それほどの新味無し。肝心の量的緩和第3弾(QE3)は打ち出されず、これまた株式市場等の反応は期待はずれといったところだと思います。

 ところで、これだけ各方面が関心を寄せる中央銀行の金融政策ですが、各国の景気浮揚や経済成長にどの程度のインパクトがあるのでしょうか。結論から先に言えば、私は金融政策の効果は現状では薄いと思っています。

 このあたりについて、わが国(日本銀行:日銀)、アメリカ(FRB)、欧州(ECB)の金融緩和策を取り上げて検証してみたいと思います。

 はじめに、昨年から今年にかけてこれまで実施されてきた日米欧の金融緩和策の概要を整理しておきましょう。

 まずはわが国。2月に開始された日銀の金融緩和は、物価上昇率1%を目指して長期国債の買い入れ等で市場に資金を供給するというもの(実質的なゼロ金利政策を行うもの)。

 次にアメリカ(FRB)の金融政策は俗にQE(Quantitative Easing:量的緩和)と呼ばれる国債や住宅ローン債券などの購入等による資金供給、およびツイストオペ(長期国債を買い入れる一方で短期国債を売却することでFRBの資産規模を拡大させずに長期金利の低下を促そうとするオペレーション)など

 そして欧州(ECB)の金融緩和は、証券市場プログラムを使ったPIIGS諸国等の国債購入や3年物長期資金供給オペレーション(LTRO)など

 つぎに、上記の各中銀の金融政策の真の目的と効果の有無について、①わが国(日銀)、②アメリカ(FRB)、③欧州(ECB)として、次回以降、個人的な解釈を含めてまとめてみたいと思います。

(続く)

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消費税増税!その前に・・・もっと注目されるべき相続税②

2012-06-21 00:00:20 | 日本

(前回からの続き)

 わが国では毎年80兆円をゆうに超えるほどの相続資産が発生しているそうです。これに対して相続税として国に給付される税額は、ここ10年間でみると各年度平均で1.5兆円前後と、相続資産の合計額の2%にも満たない水準にとどまっています。

 さらにバブル崩壊後、地価がかなり下がったにもかかわらず、相続税の基礎控除の引き下げ等は行われなかったため、現在でも相続資産を得た層の4~5%しか相続税を負担しない構造となっています。

 このような数値をみると、まだまだ相続税には増税の余地があるように思えます。たとえば相続税収額を全相続資産額の1/8程度まで高めれば合計で10兆円あまり。この額は現状の消費税収額とほぼ同じレベルになります(平成22年度ベース)。

 そして個人的に相続税のいちばん大きなメリットと考えているポイントは、相続税には富の再分配を通じた資産格差是正の効果があること。つまり、相続税が、親が裕福だったといったような本人の努力とは無関係の理由で大きな格差が生じないような(資産階級が固定化したりしないような)社会を作る機能を持っているということです。

 消費税がどんなに所得が低い層にも情け容赦なく負担を強いるのに対し、相続税は一定レベル以上の資産を持つ層に課税されるので、消費税増税に比べれば納税者の日常の生活困窮度を高める度合いが小さいという点も相続税増税の利点と考えています。

 以前、「世界長者番付であまり目立たない日本の幸せ」でも書いたとおり、欧米諸国や中国などと違って特権階級が存在せず、大きな資産・所得格差のないことがわが国の経済・社会の大きな強み。

 そんなわが国でも近頃は資産や給与の格差が拡大する傾向にあるといわれます。そうした流れを緩和し、これまでとおりの格差の少ない市民社会と適切な社会保障制度を維持・形成するために、相続税(および贈与税)はいま以上に大きな役割を果たすべき、と思っています。

 それにしてもわたしたちはマスコミ等を通じて「財政再建には消費税増税しかない!」と思い込まされてはいないでしょうか。たとえば、上記のような相続税増税や、これまで私がここに書いているような内需振興策で景気を上向かせた後で消費税増税を図る、といった考え方も含め、もっと多様な発想を活かす余地が、この「社会保障と税の一体改革」にはまだまだ残っているような気がしています。

(「もっと注目されるべき相続税の意義や効果」おわり)

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消費税増税!その前に・・・もっと注目されるべき相続税①

2012-06-19 00:04:14 | 日本

 「社会保障と税の一体改革関連法案」をめぐる与野党の修正協議が15日に終了しました。大きな論点となっていた消費税の税率および税率引き上げの時期に関しては結局、2014年4月からの税率8%、2015年10月からの税率10%でそれぞれ合意されました。

 以前ここ(「執行猶予2年」税率引き上げの時期が重要な消費税増税)でも書いたとおり、まもなくわが国を含む世界経済が金融恐慌とリセッションに巻き込まれていくと予想されるなか、いまから1年9か月の「執行猶予」の期間を経た後、2014年度初頭から消費税を増税するのはタイミング的には非常に厳しいと思っています。

 おそらくその時点ではこの世界的な経済危機はまだ収束していないでしょう。そして、わが国としても輸出が停滞している可能性があり、代わりに個人消費や公共事業などの国内需要を喚起する必要に迫られているものと推測しています。

 そんなときに景気や消費を抑制する作用を持つ消費税増税を強行してしまったら、外需の低迷に加えて肝心の内需にも冷や水が浴びせられてしまい、わが国経済までもが深刻なリセッションやデフレに陥ってしまう危険性が高まります。実際、内閣府のデータでも、消費税率が1%上がると実質個人消費は0.21%、実質GDPは0.15%程度下がるものと予測されています。

 そうなってしまったら、法人税や所得税などの他の税収が落ちて財政状況が一層悪化し、もっと消費税を増税しなくては!などとなって、わが国経済と市民生活は不況と増税のダブルパンチでさらなる深みに沈み込んでしまうでしょう。

 その意味では、消費税増税の際に「名目3%、実質2%」の経済成長率を目標にする景気条項が法案の付則として残ったことはせめてもの救いと思っています。

 一方、これからは少子高齢化が一層進み、医療や年金などの社会保障関連の財源が逼迫してくるのもまた事実。でも消費税増税は上記のような世界経済見通しからみて必ずしも適切ではなさそうです。

 それでは、景気や国民生活に与えるマイナスの影響を極力小さくしたうえで税収の拡大を図るにはどうしたらよいか、で個人的に推奨したいのが相続税(および贈与税)増税です。

(続く)

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ギリシャの破綻が火をつける?金融デリバティブリスク③

2012-06-17 00:01:30 | ヨーロッパ

(前回からの続き)

 2008年のリーマンショックが結局は破綻したリーマンブラザーズ関連のCDSを大量に販売していたAIG(American International Group;米保険会社)に波及したのと同じ構図が、今回のギリシャ危機で再現される可能性が高まっています。つまり、CDS売買に関与した金融機関の連鎖的な経営危機です。

 ギリシャだけにとどまらず、PIIGS諸国債や多くの銀行などに破綻の連鎖が起これば、それらに関連するCDSがもたらす負のインパクトはリーマンショック以上という予測もあるほどです。どうやらこのCDSショックは、単純な国債だけのデフォルトよりも、はるかに大きな打撃を欧米の金融システムに与えそうです。当然ながら、このリスク発生を最も恐れているのがCDS販売者である欧米金融機関でしょう。

 ギリシャの急進左派連合党首は、さらなる損失発生を恐れてギリシャ追加支援をためらうEUサイドのこうした弱みを十分に認識しているはず。だからこそ、緊縮策の放棄(=財政拡大に必要な資金供与の要請)を強気のスタンスで訴えることができるのでしょう。つまり、「ギリシャのデフォルトで本当に奈落のふちに立つのは、ギリシャをデリバティブ(CDS)で弄んだ欧州(の金融機関と、おそらく一部は米国の金融機関)のほうだ。だからわれわれがデフォルト宣言しなくてすむように支援しろ」と。

 本日17日はギリシャ国会議員の再選挙日。はたしてこの再選挙はどんな結末となるのか。かりに緊縮財政派が破れ、脱・緊縮財政派が政権を取ったら、ギリシャ新政権とEUとのデフォルトをめぐる「チキンレース」が始まるでしょう。ギリシャ「緊縮策は放棄だ!」、EU「緊縮策を放棄したら追加支援はしない!」で、妥協したほうが負け・・・。このあたりはおそらくギリシャが追加の緊縮策(約115億ユーロ)をまとめる期限となっている6月末までには結論が出ているでしょう。

 まあどちらが政権を握ろうが(多少の早い遅いの違いはあるでしょうが、)ギリシャが最終的に行き着くところは債務不履行以外にないとみています。いまのギリシャに数十兆円もの巨額債務を返済する能力も意志もないことは誰が見ても明白だからです。むしろ、そうなった場合にCDSをどう扱うのか。いま水面下では各国政府・金融関係者による激しい議論バトルが繰り広げられていることでしょう。

 CDSを含む世界のデリバティブの想定元本合計額は何と約600兆ドル(1ドル80円として約4.8京円)(2010年)だそうです。同年のアメリカのGDP(約13.1兆ドル)の約45倍もの規模に膨れ上がっています。これらのほんの一部がはじけただけで(決済事由が生じただけで)世界の金融市場は大パニックに見舞われるでしょう。有名な投資家バフェット氏はCDSのことを「金融大量破壊兵器」と呼んだそうですが、もしかしたらギリシャの破綻がこの物騒な兵器の起動につながるかもしれません。

(「ギリシャの破綻が火をつける?金融デリバティブリスク」おわり)

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ギリシャの破綻が火をつける?金融デリバティブリスク②

2012-06-15 00:00:25 | ヨーロッパ

(前回からの続き)

 じつは個人的に国債デフォルト以上に懸念しているのがこのCDSの取り扱い。CDS(Credit Default Swap)とはデリバティブ(金融派生商品)のひとつで一種の保険商品。債券所有者が、CDS販売会社に一定の保証料を支払っておけば、その債券発行国がデフォルトした場合に、同販売会社が当該国に替わって当該債券の元本に相当する金額を支払うというものです。

 CDSは市場外で取引されることが多く、どの金融機関がどの程度の量のCDSを販売しているのか、とか、どれくらいのCDSを保有しているのか、といった取引実態が財務諸表などからよく見えないところがまた不気味・・・。

 このギリシャ国債に関するCDSの詳細については、いろいろ調べてみたものの、正確なところはよく分かりませんでした。ただ一部の情報によれば、ギリシャがデフォルトした場合の欧米金融機関のCDSの支払い総額は約100兆円にのぼるとのことなので、かりにそのとおりとすると、ギリシャの公的債務残高約35兆円をゆうに上回ることとなります。

 これから推測するに、同CDSには、ギリシャ国債保有者のCDSだけでなく、ネーキッド(naked;裸)CDSと呼ばれる、ギリシャ国債を持ってもいないのに少額の保証料だけを支払っておいて、ギリシャがデフォルトした場合に国債元本相当額を受け取れるような契約となっているものなどが相当量含まれているのでしょう。

 このネーキッドCDSの保有者は、債務不履行が起これば国債元本と同額の保証金をCDS販売者から受け取るので、同保有者は、いわばギリシャのデフォルトに「賭け」をして「ギリシャよ、破綻しろ!」と歪んだ期待をすることになります。これこそ、ギリシャ国民の苦しみをネタにする、まさに保険金殺人のような商品ですね。

 それにしても、かりにギリシャがユーロから離脱して無秩序なデフォルトに追い込まれてこうしたCDSの大々的な決済が発生した場合、はたしてこれらを売りさばいた側の金融機関は大丈夫なのか? 元本相当額の支払いにマトモに応じられるのか・・・?

 このCDS問題こそ、ギリシャ危機、ひいてはこの後に続くであろうPIIGS諸国のソブリンリスク、さらには世界的な金融システミックリスクの本質だと思っています。

(続く)

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ギリシャの破綻が火をつける?金融デリバティブリスク①

2012-06-13 00:02:46 | ヨーロッパ

 世界中が注目するギリシャの国会議員再選挙が目前に迫ってきました。現地の最新の世論調査によれば、緊縮財政を堅持するとしている旧連立与党・新民主主義党と、脱・緊縮財政を主張する急進左派連合の支持率が拮抗しており、実際に開票してみるまではどちらが多数となるかは予断を許さない状況のようです。

 ところで、以前も書いたように、かりに急進左派連合が政権をとり、国際社会との約束を反故にして緊縮財政を放棄したら、普通に考えれば、ギリシャは金融市場からの資金調達が不可能となるばかりか、欧州中央銀行(ECB)などからの資金供給も断たれて、たちまち債務不履行(デフォルト)に追い込まれるでしょう。お金の貸し手である欧州連合(EU)諸国などからみれば、借りたお金をまともに返そうともしないギリシャに対し、「もう金は貸せるか!」と突っぱねるという、至極当然の行動をとるということです。

 ところが、この当たり前の対応がなかなかできないところがEU諸国の何ともなさけないところ。それどころか、本音では「ギリシャなんか仲間に入れなければよかった」と内心で後悔しつつ、ギリシャ同様の苦境にあるスペインなどはともかく、EUの大国フランスや、はてはEUの盟主ドイツにいたるまで、「ギリシャのEU残留を望む」などと言い出す始末・・・。

 その理由を急進左派連合のツィプラス党首のコメントに見て取れます。彼は「EUはギリシャを見捨てない。ギリシャがEUを離脱してデフォルトを宣言したらEU圏そのものが崩壊するからだ」といった趣旨の発言を繰り返しています。これはつまり「もっとわれわれに金を貸せ(限りなく「よこせ」に近い?)。さもないと『デフォルト』して欧州金融システムを破壊するぞ!」ということ。ほとんど脅迫に近いですね。

 まさにそのとおり。ギリシャがデフォルトしたら多くの欧州金融機関が経営危機に瀕し、欧州金融システムが瓦解してしまうおそれが一気に高まるでしょう。だからこそEU諸国はギリシャに対して「EUから出て行け!」といった毅然とした態度を示せないものと思われます。まるでPIIGS諸国債という名の火薬庫の前でデフォルトという名のダイナマイトを振り回すギリシャに対して何の手出しもできなくなっているかのようです。

 ギリシャの公的債務残高は約3500億ユーロ(約35兆円)(2011年)。ギリシャがデフォルトすればこれらの多くは返済されないこととなり、ギリシャ国債を持つ欧州金融機関の経営に大きな悪影響を与えるでしょう。これにより現時点(6月上旬)で欧州金融機関が被る損失は500億ユーロ近いと見積もられています。そしてすでに多くの同国債を引き受けているECBの資産は大きく毀損されるでしょう(ECBが保有するギリシャ国債は約4~500億ユーロと推定されています)。

 もっともEUのセイフティーネット(欧州安定メカニズム[ESM;7/1発足予定]の5000億ユーロ等)を活用すれば、この程度の金額(巨額には違いないが、スペイン・イタリア国債などと比べれば、という意味)であれば、一部の例外的なケースを除けば、破綻や過小資本に陥った銀行等にESMの資金を投入することなどで何とかしのげるかもしれません。

 しかし、国債の債務不履行だけにとどまりそうもないのがギリシャ危機の怖いところ。その最たる理由は、ギリシャが無秩序に(何らの[談合めいた?]事前調整等をすることなく)デフォルトしたらCDSの決済が発生するおそれがあるためです。

(続く)

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「円高」を考える:円高は「悪」なのか?④

2012-06-11 00:00:43 | 日本

(前回からの続き)

 ということで、本稿の冒頭に示した「円高は悪か」についての私的な見解;

①現状、円高(ドル安)・円安(ドル高)それぞれにメリット・デメリットがある
②一般論としては自国通貨が他国通貨よりも高いほうが有利かつ安全


に関連していろいろ書いてみましたが、これだけは間違いなくいえるでしょう。

 「円高は決して悪ではない

 むしろ、円高(=強い円)は、石油などの輸入必需品の価格の世界的な高騰から国民生活を守るファイアウォールとなってくれるうえ、金融危機で減価する一方の外貨と違ってしっかりと価値を保全してくれる、なんともありがたい状態ということができると思っています。

 世界的な金融危機とリセッションが深刻になるにつれ円←ドル←ユーロ←新興国通貨」というマネーの「リスクオフ・フロー」が顕著になって円が独歩高となっていくと見込まれるなか、今後はマスコミなどで「円高悪者論」がますます唱えられるようになるでしょう。

 各種の政策や投資などに関して重要な判断を下す際には、こうした「円高は悪だ!」とか「超円高だ!」といった声は適当に受け流しながら、物価上昇率の違いなどを勘案した実質的な為替レートを冷静に見極めたり、ギリシャなどの悲惨な有様を目の当たりにしつつ、あえて通貨高のアドバンテージや通貨安の怖さをしっかりイメージすることが、これからはとりわけ大事になってくると思っています。

(「『円高』を考える:円高は『悪』なのか?」おわり)

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