(前回からの続き)
シェール革命の浸透でアメリカでは数多くの新興原油・ガス開発会社が誕生しました。これら企業の大半は低格付け・高利回りの債券、ようするに「ジャンク債」を発行して資金を調達しています。で、ついこの間まではそれでよかったわけです。なぜなら、こちらの記事等にも書いたように、市中にあふれるQEマネーがこれらの債券を競うように買ったから。そのおかげで各社は信用度こそ高くないのに比較的低い利払い負担で借金をすることができました。
これを裏付けるように、今年の7月前後の時期に、これらジャンク債と米国債との利回りのスプレッドは過去最低レベルに縮まっていました。しかも当時、原油価格は1バーレル100ドル超の高値と、彼らシェール企業にとっては理想的な経営環境だったといえます。何せおカネは楽に借りられるし、石油も高く売れたのだから・・・。
といったわけで、いま思えばその頃(半年前)が「双子のバブル」(株&債券)のうちの、少なくとも「債券バブル」のほうのピークだったのかもしれません。実際、その後は先述のとおり石油価格の下落が始まり、これとフェーズを合わせるかのように上記のスプレッドは拡大の一途をたどっています。そしてその最大の要因は、繰り返しになりますが、原油価格とジャンク債価格の双方を押し上げてきた資金供給源が閉じられたこと―――米FRBの量的緩和策(QE)の終了(10月末)と推測するのが自然でしょう。
上記シェール開発会社の社債残高は現時点で約2千億ドルに上ると見積もられています。このまま原油価格が低迷を続け、一方で資金調達金利が上がっていけば、彼らのうちの相当数は破綻に追い込まれてしまうのではないでしょうか。当然これは関連の株価の急落とかデリバティブ決済の発生をともなうから、世界各地の金融市場は一気に深刻なリスク・オフ・モードに落ち込む可能性があります。
ということで「逆オイルショック」は、ロシアをはじめとする多人口・モノカルチャー経済構造の新興国のみならず、シェール革命の恩恵を享受してきた米エネルギー企業の共倒れをもたらすとともに、これらが新興国債・ジャンク債・株式等のリスク資産の投げ売りを招いて肝心の欧米マーケットにネガティブな波乱を巻き起こしそう―――そんな気がしてなりません。
・・・ここでちょっと脇道に逸れますが、先日こちらの記事に綴ったとおり、わが国にとってこの「逆オイルショック」はメリットのほうがずっと大きいと思っています(内外のエネルギー資源関連投資を進めている商社などにとっては逆風となるが・・・)。このメリットを目一杯受けるようにすればGDPのプラス成長確保等も視野に入るかも・・・。もっともこのとき「アベノミクス効果がようやく実を結んで成長率がプラスに転じた!」なんて早合点をしないよう、気を付けないといけませんね・・・。なぜならそれは政策的成果ではなく、アベノミクス開始以来、日本経済を苦しめてきたエネルギーコストのドル建て価格の低下のおかげ、となるのかもしれないのだから・・・。