世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
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【原油安で米シェール企業が苦境に?】米QE終了が演出した逆オイルショック③

2014-12-29 00:01:37 | 世界共通

(前回からの続き)

 シェール革命の浸透でアメリカでは数多くの新興原油・ガス開発会社が誕生しました。これら企業の大半は低格付け・高利回りの債券、ようするに「ジャンク債」を発行して資金を調達しています。で、ついこの間まではそれでよかったわけです。なぜなら、こちらの記事等にも書いたように、市中にあふれるQEマネーがこれらの債券を競うように買ったから。そのおかげで各社は信用度こそ高くないのに比較的低い利払い負担で借金をすることができました。

 これを裏付けるように、今年の7月前後の時期に、これらジャンク債と米国債との利回りのスプレッドは過去最低レベルに縮まっていました。しかも当時、原油価格は1バーレル100ドル超の高値と、彼らシェール企業にとっては理想的な経営環境だったといえます。何せおカネは楽に借りられるし、石油も高く売れたのだから・・・。

 といったわけで、いま思えばその頃(半年前)が「双子のバブル」(株&債券)のうちの、少なくとも「債券バブル」のほうのピークだったのかもしれません。実際、その後は先述のとおり石油価格の下落が始まり、これとフェーズを合わせるかのように上記のスプレッドは拡大の一途をたどっています。そしてその最大の要因は、繰り返しになりますが、原油価格とジャンク債価格の双方を押し上げてきた資金供給源が閉じられたこと―――米FRBの量的緩和策(QE)の終了(10月末)と推測するのが自然でしょう。

 上記シェール開発会社の社債残高は現時点で約2千億ドルに上ると見積もられています。このまま原油価格が低迷を続け、一方で資金調達金利が上がっていけば、彼らのうちの相当数は破綻に追い込まれてしまうのではないでしょうか。当然これは関連の株価の急落とかデリバティブ決済の発生をともなうから、世界各地の金融市場は一気に深刻なリスク・オフ・モードに落ち込む可能性があります。

 ということで逆オイルショック」は、ロシアをはじめとする多人口・モノカルチャー経済構造の新興国のみならず、シェール革命の恩恵を享受してきた米エネルギー企業の共倒れをもたらすとともに、これらが新興国債・ジャンク債・株式等のリスク資産の投げ売りを招いて肝心の欧米マーケットにネガティブな波乱を巻き起こしそう―――そんな気がしてなりません。

 ・・・ここでちょっと脇道に逸れますが、先日こちらの記事に綴ったとおり、わが国にとってこの「逆オイルショック」はメリットのほうがずっと大きいと思っています(内外のエネルギー資源関連投資を進めている商社などにとっては逆風となるが・・・)。このメリットを目一杯受けるようにすればGDPのプラス成長確保等も視野に入るかも・・・。もっともこのとき「アベノミクス効果がようやく実を結んで成長率がプラスに転じた!」なんて早合点をしないよう、気を付けないといけませんね・・・。なぜならそれは政策的成果ではなく、アベノミクス開始以来、日本経済を苦しめてきたエネルギーコストのドル建て価格の低下のおかげ、となるのかもしれないのだから・・・。

(続く)

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【人口多き資源国の悲哀・・・】米QE終了が演出した逆オイルショック②

2014-12-27 00:01:54 | 世界共通

(前回からの続き)

 前回ご紹介した今年の夏以降の原油価格の動き(6~7月あたりからじりじりと下がり、秋以降は急落!)は、米FRBの量的緩和策(QE)の縮小、そして終了(今年10月末)のプロセスとシンクロしています。このあたりは、鉄鉱石とか大豆などの原油以外の商品の市場価格がここのところ、原油と同じようなタイミングで似たような下落傾向を示していることなどからも推察されます。

 つまり・・・QEの終了は、それによってアメリカ金利が上がるとの憶測を呼ぶことから、金利を生まない商品市場からのQEマネーの巻き戻しを引き起こし、これが実需面以上に原油をはじめとする商品価格の急落を招く要因となったと考えています。以前から述べているQE由来の債券や株式の「双子のバブル」収縮に向かって、まずは規模の小さな商品市場からマネーの流出が始まった、といったあたりも指摘できるかと思います。

 このとばっちりを食らったのが本稿冒頭で綴ったロシアであり、インドネシア、ナイジェリア、メキシコ、さらにはブラジルなどの新興国。こうした国々は原油等をはじめとする「天然資源だけ」の国―――これらの輸出に極端に依存したモノカルチャー経済構造の国といえます。だからこそ、この5年来の資源価格の上昇で大いに潤ったわけだし、これが下落すれば一転、「逆オイルショック」で厳しい状況に陥るわけで・・・。

 しかもここに上げた諸国は、インドネシアの約2.5億人(2013年)を筆頭に、いずれも人口が1億人を軽く超える国ばかり。このあたり、同じ資源国(産油国)のノルウェーとかクウェートなどと違って、資源がもたらす恵みを国民すべてに行き渡らせるには人口が多すぎ・・・つまり本来なら、国や民を富ますために、資源輸出以外に稼ぐ力のある産業を興しておかなければならなかったわけですが、結局できずじまい・・・。かくして資源安になれば当然こうなる、といったところでしょう(ということは人口約3千万のサウジも油断できないかも?)。

 で、このまま原油等の価格が下落、あるいは低迷を続けたら、これら諸国からのQEマネーの流出が止まらず、その結果、一部に資金繰りに窮してIMFに救済を求めたり、場合によってはデフォルトに追い込まれるところも出てくるかもしれません(ここでもしロシア[プーチン大統領]がIMF[つまりはアメリカ]の軍門に降ったらスゴイことですが・・・)。それらは新興国のトリプル安(通貨・債券・株式)を引き起こし、世界中の金融市場に「リスク・オフ」の大きな波動をもたらすことになります。

 そして忘れてはならないのは、この原油安が一方でQEの「本家」アメリカのエネルギー業界にも打撃を与えかねないこと。

(続く)

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【「原油」だけの国・ロシアを追い詰めるもの】米QE終了が演出した逆オイルショック①

2014-12-25 00:02:47 | 世界共通

 まさに「逆オイルショック」―――エネルギー資源「だけ」の国・ロシアが追い詰められています

 18日、通貨安と原油安の双方に苦しめられているロシアのプーチン大統領は会見で、原油価格が1バーレル40ドルになった場合の備えをしなければならない、と述べています。現時点の原油価格は60バーレル前後だから、それよりさらに30%程度も下がることになります。

 先日も書きましたが、いまのロシアにとって財政が成り立つラインとなる原油価格は100ドルを軽く上回るレベル。ここ5年くらいの原油価格の上昇ですっかり「ぜいたく」感覚が身についてしまったのでしょう。だから、いまの原油価格の水準でも相当厳しいはず。なのに、40ドルでも耐えられる国にするなんて強がりとしか思えない。少なくとも今後数年間のうちはどう考えても無理でしょう。それまでのどこかでロシア国民の緊縮財政とかインフレに対する我慢の限界が来てしまうような気が・・・。親日家・プーチン氏の権力基盤のこの先が心配になります(同氏にかわってヘンな人[対日強硬派]が台頭しませんように・・・)。

 もっともこのあたり、あまり大きな声では言えないけれど、対ロ関係の進展に向けた交渉上、日本にとっては有利な状況といえそうですね。つまり、わが国としてはロシアを手助けする用意がある―――かの国のほとんど唯一の外貨獲得源であるエネルギー資源の開発協力とか購入量を拡大する用意がある、でもその前に・・・肝心の「こちら」を解決しないとね!といった具合です。なので、来年の春(?)に予定されているプーチン大統領の訪日までいまの原油安がぜひ続いてほしいものだ、と願っています。もっともこのへんはロシアに「人の弱みにつけ込みやがって!」と逆ギレされないよう、慎重にコトを進める必要がありますが・・・。

 ところで目下の原油安ですが、このわずか2~3か月程度の短い間に急激に進みました。WTI原油価格で見ると、半年前の6月中旬時点では1バーレル100ドル台後半、そして10月初旬でも90ドル台前半をキープしていましたが、その後急落し、直近(12/19)では約55ドル(先物価格)と、2か月あまりで4割近くも下がっています。

 で、この背景にあるのは・・・中国をはじめとする世界経済の減速にともなう原油需要の減退見通しとか、米シェール革命の広がりなどを受けた世界的な原油の過剰感の高まり・・・などなど、もっともらしい理由はいろいろ考えられるし、どれもそのとおりだとは思います。しかし・・・これらは中長期的な原油の実需面に立った見方であり、目の前の激しい価格下落を十分に説明する理屈にはなっていない感じです。

 したがってこれはやはり・・・金融要因と考えるのが自然なのではないでしょうか。つまり、これまでの原油高を演出した金融面での支援材料が失われつつあるということ。それこそ―――米FRBの量的緩和策(QE)の縮小・停止だと思っています。

(続く)

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【日銀幹部には数字に基づく発言を期待】じつは超円安:日銀データが伝える為替の実態③

2014-12-23 00:01:31 | 日本

(前回からの続き)

 以上、本稿冒頭でご紹介の「過度な年高が修正されて2年ほど経って・・・」という日銀・黒田総裁のお言葉とは裏腹に、すでに過度な円安状態となって2年近く経っている実態を、その日銀の統計データに基づいて見てきました。

 で、この先ですが・・・じつに読みづらいところです。たしかに足元では、日米中銀の金融政策のスタンスの違いを筆頭に円安ドル高の支援材料のほうが多いように感じられます。しかし一方で、急速に進んでいる「逆オイルショック」等の影響で、新興国や社債市場の信用不安が高まってリスク回避の円高が進む可能性もあります。

 こうしたさまざまな要因がせめぎあう中で為替は・・・うーん、しばらくは円安に向かうも、やはりやがては(おそらく来年中のどこかで?)前回書いたようなモード・チェンジが起こり、円高局面にシフトしていくだろうと読んでいます。どう考えても、FRBの量的緩和策(QE)終了後のハイリスク市場の動揺が伝播するドルに勝てるような気がしないから(このとき政府・日銀がもうこれ以上過激なこと[?]をしないよう、祈るばかりです・・・)。

 そして上述、日銀の実効為替レートのほうも変わってくるでしょう。今回ご紹介した最新値は今年10月と2か月「も」前のものですが、ご存知のようにその後、わが国の貿易額に最大のインパクトを与える原油価格が急落しているため、それだけ直近の実効レートも変動していると考えられます。どのような値になっているのか、そして今後、どんな動きをしていくのか・・・。名目ドル円レートと比較しながら注視していきたいと思っています。

 それにしても・・・お膝元にこんなに有意義な指標があるのに・・・。為替レートに言及されるのなら、日銀の幹部には、感覚的にならず、セントラルバンカーらしく計量的に、せめてこの数字くらいはチェックしたうえでそうしていただきたい!?

(「じつは超円安:日銀データが伝える為替の実態」おわり)

天皇陛下、お誕生日おめでとうございます。陛下のますますのご健勝をお祈り申し上げます。

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【円安・円高局面が交互に出現】じつは超円安:日銀データが伝える為替の実態②

2014-12-21 00:01:38 | 日本

(前回からの続き)

 ところで、これまでの実質実効為替レートはどのように変動してきたのでしょうか。これについて、この10年間(2004/10~2014/10)の推移をみたものが下記のグラフです。青い線が名目上のドル円の為替レート、オレンジの線が実質実効為替レートになります(出典:日銀統計)。

 これをみてまず気がつくのは、両者が一致する期間はじつは短く、むしろ両者が乖離する期間―――名目レートと実効レートが互いに離れる期間のほうがトータルでみて長いこと。つまり、(交易面からみて)「まあこんなものかな」と感じられるレートが続くよりも円安とか円高に行き過ぎることのほうが多い、ということです。そしてその過度な円安と円高の時期が交互に現れる傾向も指摘できそうです。もっともこのあたりは、実効レートがおもに貿易額に基づいて算定されるものなので、わたしたちの肌感覚とは少し違った面もあるかもしれませんが・・・。

 つぎにこれを時系列で追ってみると・・・なかなか興味深いことが読み取れます。10年近く前の2005年初旬からの約3年半は実効レートに対して名目レートが大きく上方へ乖離、つまり「行き過ぎた」円安となっていることが分かります。このとき何が起こっていたのかといえば、アメリカの「サブプライム・ローン・バブル」。そしてこれが2008年秋に急転換し、今度は実効レートが名目レートを上回る円高の期間が2012年いっぱいまで続きます。そのターニングポイントで何があったのか?・・・ご存知「リーマン・ショック」。で、それから4年あまり経った2013年初頭、三度目のモード・チェンジがあり、それ以降いままでの約2年間、かなりの円安状態が継続しています。そのきっかけとなったのは・・・いわずもがなの「アベノミクス」の実質スタート(2012/11)・・・。

 ―――といった具合で、明らかな円安局面と円高局面が、大きな内外の経済事象とフェーズを合わせて繰り返されていることが分かります。そして前者のときは世界金融マーケットが「リスク・オン」モード、後者のときは「リスク・オフ」モードであることも。このあたりに「円>ドル」、つまり円がドルに対して基本的には強い(安全な・インフレ率控除後の実質の利回りが高い)通貨である様子が反映されていると思っています。

 で、この過去10年間の推移に照らして、あらためて現時点(2014/10)のレート「名目:1ドル108.03円、実効:同75.03円:実効レートに対して30%あまり円安」がどんなものかをチェックしてみると・・・これほどの円安(実効レートに対して名目レートが円安方向に大きく振れた状態)になっていたのは、2007年10月以来、じつに7年ぶりということになります。その前後の時期は米不動産バブル末期であり、同年6月にはこの乖離値がこの10年間で最大となっています(その翌月、「パリバ・ショック」が起こって同バブルは崩壊に向かった)。

 こんなところをみると―――ドル円の名目レートと実効レートの円安方向の乖離率が前回のバブル最盛期とほぼ同じとなっている現状をみると、やはりいまのレートは「バブル・レート」なのだろうな、と感じてしまうわけです。もちろんそのバブルとは、先日こちらの記事に綴った、株式債券の「双子のバブル」のこと。それと同時に、だからこそこのレートが長続きすることもないのだろうな、とも・・・。

(続く)

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【実効レートでは・・・】じつは超円安:日銀データが伝える為替の実態①

2014-12-19 00:01:07 | 日本

 しばらくぶりにチェックしましたが、やはりいまの為替レートは、わが国にとって「超」円安といえそうです。

 先月下旬、日銀黒田総裁が講演後の質疑応答の際、現行のドル円レートに関連して「過度な円高が修正されて2年ほど経って・・・」と語られたとのことです。このお言葉から推測すれば、2年前、つまりアベノミクスの実質的なスタート時点(2012/11)のレートである1ドル約80円が「過度」なレベルで、その後のレート、つまりご自身が率いる日銀の「異次元緩和」開始以降のレートが妥当な範囲、と思っていらっしゃるのでしょう。

 そもそも、いまの日本にとって、ほどよい為替レートがどのくらいなのか、を確認するのは、なかなか難しいことだとは思います。個人や企業や用途等によって良し悪しとなるレートは異なるし、そのときどきの国際情勢や経済事情などによって、同じ1ドル100円でも円高に感じられたり円安に思えたりするからです。まあ間違いなくいえるのは、見た目のレートだけで円高とか円安と判断することはできないし、するべきではない、ということだと思います。

 で、名目値とは異なる、このあたり(購買力平価説とか)の要素を勘案した為替レートについては本ブログで何度か書いていますが、ここではあらためてこの日銀が発表している「実質実効為替レート」を確認しておきたいと思います。

 ちなみに「実効為替レートは、特定の2通貨間の為替レートをみているだけでは捉えられない、相対的な通貨の実力を測るための総合的な指標です。具体的には、対象となる全ての通貨と日本円との間の2通貨間為替レートを、貿易額等で計った相対的な重要度でウエイト付けして集計・算出します」(以上「 」内は日銀のHPから抜粋)。なお、実質実効為替レートはこれに物価調整を行ったもの。

 ―――ということなので、このレートを見れば、名目値よりはもう少しわたしたちの実感に近いレートが確認できそうです。まあ上にご紹介のとおり、日銀のトップがいまのレートは過度の円高が修正されたものと評しているわけだから、きっと実効値と名目値はかなり接近したものになっているのだろうな・・・。

 ・・・と予想していたのですが、直近の値はまったく違っていました。今年10月(現時点の月別最新値)の数字は、ドル円の名目レート(東京市場・月中平均)は1ドル108.03円。これに対して実効レート(実質実効為替レート指数)は同75.03円と、何と名目レートに対して約30%もの円安ドル高! つまり過度の「円安」とでもいうべき水準です。

 ・・・少なくともこのデータを公表している日銀の総裁が、行き過ぎた円高が是正、なんてことをいうレベルではないような気が・・・。

 (続く)

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【「金(ゴールド)で自衛」という考え方】わたしたちの年金は大丈夫か~GPIF新運用目安への心配⑤

2014-12-17 00:01:24 | 金(ゴールド)

(前回からの続き)

 以上、わたしたちの年金(国民年金および厚生年金)の積立金を管理・運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の新・資産運用方針(ポートフォリオにおける国内債配分の縮小や外国資産配分の大幅拡大等)に対する個人的な憂慮の気持ちを綴ってきました。

 まあこの先、わたしの予想が当たってGPIFの外国資産の円建て評価額が大きく毀損するかもしれないし、逆にハズれて同評価額が大きく膨らむかもしれません。もちろん、これまで書いてきた諸状況から判断して、個人的には前者だと予測・心配しているわけですが・・・。

 で、どちらにしてもわたしたちは今後、GPIF等が運用する公的年金に頼るばかりでは危険で、自分たちの年金なり金融資産のかなりの部分は自分たちで作り、守らなければならない、と思うわけです。そこでお勧めしたいのが、やはり「金(ゴールド)」(投資等のご判断は自己責任でお願いいたします)。なぜなら、こちらの記事を含めて本ブログでしばしば述べていることですが、ドル、ユーロ、ポンド、そして円といった世界の主要通貨が爆発的に発行されていくなか、いつかはその反動でリスクフリー・希少性・流動性などの要素を合わせ持った通貨代替資産である金に大量のマネーが流れ込むしかないだろうと推測しているからです。

 さらに日本人にとっての金は、金>円>ドル>ユーロ>新興国通貨(実質金利の高い順)、つまりよりも強い唯一の「外貨」として、円の崩壊リスクに対する備えになり得る資産だと考えています。いまの日銀の「異次元緩和」(円<ドル等をねらうもの!)が続けば、その可能性は以前より高まっていきますからね・・・!?

 ところでいまの金の価格ですが、ドル建てでは1トロイオンス当たり約1200ドルと4年ぶりくらいの安値です。いまの市場モードは「リスク・オン」でドルその他の通貨建ての資産にマネーが向かっているぶん、金利を生まない金や超低金利の円が捨て置かれているといった感じでしょうか。しかし一方で、円建ての価格は現時点で1グラム当たり約4600円(東京商品取引所価格)とおよそ1年半ぶりの高値になっています。

 このあたりにも日本人が長い目で見て金を所有する意義があるといえそうです。つまり上記のように、マーケットがリスク・オンでもリスク・オフでも、金の円建て価格は一定の水準を保つということ。ここに、金の年金資産的な特性(安全確実な価値保存資産であること)を感じるわけです(もっとも金の売買のタイミングを見極めるのは難しいですが・・・)。

 ということで、「アベノミクス」の官製相場演出にGPIFマネーが使われる事態にハラハラしつつ、そのせいもあって、あらためて金の価値を再評価している今日この頃です―――。「でも、近いうちにアメリカの利上げが始まって、金価格はもっと下がる、との予測があるよね」―――たしかに・・・。それでもわたしは中長期的には金に「強気」です。だって、(事実上、アメリカの利上げは困難であることはべつにしても、)そのアメリカがいまだに8千トン以上もの金準備を保有し続けているのだから・・・。

(「わたしたちの年金は大丈夫か~GPIF新運用目安への心配」おわり)

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【公務員の年金原資は安全運用なのに・・・】わたしたちの年金は大丈夫か~GPIF新運用目安への心配④

2014-12-15 00:01:04 | 日本

(前回からの続き)

 本稿では、わたしたちの年金(国民年金・厚生年金)の原資を管理・運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の新しい資産運用の目安(10/31発表)におけるリスク資産偏重路線に関する個人的な懸念を綴っています。なかでも外国資産がGPIFの新ポートフォリオにおいて4割にまで高められたことについて、これからの金融市場が「リスク・オフ」に転換すると予想する立場から、株価・債券価格双方の下落および為替差損の発生という二重の意味での損失を被る危険性があり、これがGPIFの積立金を大きく毀損しかねない・・・と憂慮しています。

 ここでさらに気になるのは、GPIFが外貨建て資産を買い増すとそれだけ円安(外貨高)環境を求めたくなる、ということ。まあ当然の話、外国資産の割合を高めておいて円高外貨安になったらそのぶん、リスク・オフ時の資産の目減り額が大きくなるわけです(その逆に円安外貨高・リスク・オンになれば評価額は大きく膨らむ)。そこで、年金基金の評価額の下落を回避するためにもいっそうの円安誘導が必要だ―――日銀の再追加緩和(!?)が必要だ、ということになって、その結果、わが国はスパイラル的な通貨安スタグフレーションに落ち込んでいく、といったおそれも・・・。

 ところで、年金制度については、本稿で書いている積立金の運用を含め、来年10月に一元化が図られることになっています。具体的には、現在は共済年金に加入している公務員等が厚生年金に加わるとともに、運用主体(GPIFと3共済組織)は共同でポートフォリオを作成・公表することになっていますが、それまではこの共済組織とGPIFは別々の目安に基づいて積立金の運用を行います。

 で、その共済年金の現時点の運用方針ですが・・・これがまたどうしたわけかGPIFとは真逆の「リスク・オフ型」なのです。たとえば、国家公務員共済組合連合会の現時点(2013/12発表)の目安資産構成をみると、その主体は安全資産の代名詞・国内債で、配分割合は何と74%にもなっています。他方、リスク資産、とくに上述のとおり個人的に敬遠すべきと考えている外国資産が債券・株式の合計でわずか10%と(わたしが適当と感じる配分割合!)、GPIF配分比の1/4にとどまっています・・・。

 こんなところから察するに、いまGPIFのマネーでリスク資産への投資を拡大しようとしている政府の職員、つまり公務員のみなさんは、本音ではこれが危険なことと知っているのではないでしょうか。要するに「バクチ(=リスク資産投資)の元手にはGPIFのカネを回せ!でもわれわれ(公務員)の年金積立金は(少なくともあと1年は?)けっして使うな!」ということ・・・。だって、この1年以内に世界ではいろいろなことが起こるからね・・・!?

 ホント、「火遊び」をしたいのなら、自分たちのおカネでやっていただきたい!?

(続く)

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【二重の高値掴みの懸念】わたしたちの年金は大丈夫か~GPIF新運用目安への心配③

2014-12-13 00:02:43 | 日本

(前回からの続き)

 すでに本家・アメリカはもちろん、世界中の株価を引き上げてきた米FRBの量的緩和策(QE)は10月で(とりあえず?)終了しています。それと同時に開始された日銀追加緩和などを受けて米株価はその後も上昇していますが、日米以外のマーケットは微妙な感じです。とくに警戒が必要なのはQEマネーの流出が懸念される新興国やジャンク債等のハイリスク市場。これらのどこかで―――どこかの国とか企業がデフォルトやリスケに追い込まれるリスクが高まっています

 で、ひとたびそんなことが起こったら、マーケットはたちまちネガティブに反応し、当該リスク発生市場はおろか、欧州やアメリカの株価も大きく下がるでしょう。なぜなら、繰り返しですが、これらもまた、ちょっとしたことで弾けそうなバブル(各種株価指標等からみて大きく上方に乖離した価格)だからです。

 そしてこの場合、もちろん年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の外国資産の評価額も下がります。全資産に占めるこの割合が高まっていれば、それだけダメージが大きくなります。さらにマズイのが、当然ながらこのとき、円高外貨安が進んで多額の為替差損まで生じることです。

 実際、今週(12/8~12)はギリシャの債務不安再燃が嫌気され、9日、同国の株価指数は前回の危機時にも見られなかった13%もの下げ幅を記録しました。これに反応した市場は一気に「リスク・オフ」モードとなり、「」は全面高―――主要16通貨のすべてに対して上昇しました(ということは、ソブリン格付けが日本よりも上位の米・英・その他諸国のどの通貨よりも市場では円が「安全」とみなされているわけで、このあたりに、わが国の格付けとか先日のムーディーズの同格下げがいかに無意味かが表れていると思います)。

 このようなとき、この16通貨建ての資産価値はすべて下落・・・。株は、その国の通貨建てでも下がるし、円建てでの価格はもっと大きく落ち込むことになります。そして債券(おもに米国債やドイツ国債など)の価格は、その国の通貨建てでは少しは上がるかもしれませんが、円建ての価格はこれまた下がるでしょう。

 以上のようなことをあれこれ考えると、リスク・オン」のピーク付近で外国資産投資の拡大に乗り出したGPIFは、二重の意味で「高値掴み」をしつつあるように思えてならないわけです。二重とは・・・ひとつは外国株を最高値近辺で買ってしまうこと、そしてもうひとつは、円からみて外貨が最高値あたりで外国資産を買ってしまうこと・・・。

 株などのリスク資産投資の成功の秘訣は「逆張り」のはず(?)。これに対してGPIFはこんな具合の超「順張り」で勝負!・・・って、そんなことでこの先の激動の(?)リスク・オフ局面で勝ち続けることなんてできるのでしょうか・・・。GPIFの元手はわたしたちの貴重な年金原資だけに、何とも不安でなりません。

(続く)

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【何でもありの官製相場】わたしたちの年金は大丈夫か~GPIF新運用目安への心配②

2014-12-11 00:04:04 | 日本

(前回からの続き)

 前回、わたしたちの年金(国民年金・厚生年金)の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の資産運用の新方針(10/31発表)が、はたしてこれからの目安として適当といえるのか・・・と記しました。というのも、これがあまりに突然、リスク資産への配分を増やしたものに変わったからです。

 その背景には、資産効果の極大化を図りたい!という安倍政権・黒田日銀の強い願いがあるのでしょう。政策的な円安誘導と消費増税で日本経済がスタグフレーションに沈むなか、せめてGPIFマネーをつぎ込んで株価だけは引き上げたい、とか、国内債→株式へ資金をシフトしやすいように日銀の異次元緩和で金利を下げよう(国債価格を上げよう)、などなど・・・といったところです。まあ「アベノミクス」は実質的に「株しかない!」の「カブノミクス」ですからね・・・

 そのほか、今後、年金受給者の数が増えることが想定され、利回りの低い国内債だけでは積立金の目減りは避けがたい―――したがって、少々リスクを冒してでも高収益を確保し、年金原資を厚くしよう、といった思惑もあることでしょう。このへんはまあ無理もない面がありますが・・・。

 たしかにこの変更は、これまた前回ご紹介したように、直近(第2四半期)のGPIFの好パフォーマンスにつながりました。そしてGPIFの上記の新方式の発表の同日(10/31)、まるで事前に示し合せでもしたかのように日銀が追加緩和を決定! これらが株式市場に一気に火をつけ、日経平均は3千円前後も上がりました。もっともこの株価の上昇は、マイナス成長などの実体経済面の悲惨さを反映したものではなく、完全に政策要因(GPIF配分の株シフト+金融政策:つまりはバブル・・・)であり、このあたりが一部で「官製相場」などと揶揄されるゆえんだとは思いますが、とにかくこの調子でいくと第3四半期の決算も期待できるかも。まあ日本株をみんなで買い支えようという気持ちは分かるし、結果が良ければ・・・。

 しかし、やはり気になってしまうのは・・・リスク資産への投資拡大という方針転換のもと、外債および外国株の合計の運用比率が以前の25%から1.6倍増の40%にまで高められていること。こればかりは・・・どうしても危なっかしさを感じてしまいます。なぜなら、これから金融マーケットは世界的に「リスク・オン」から「リスク・オフ」に移行せざるを得ず、これらの価格はこの先、むしろ下落する可能性が高いとみているから。つまり、外国資産の円建て価格の評価額はいまがピークに近いのではないかと・・・。

 そんなときにこれらを買い増す・・・って、GPIFは何だか「高値掴み」をしているような気がしてならないわけです。

(続く)

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