世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
ご訪問ありがとうございます。

「東京ブラックアウト」を読んで~私的な請願書~

2015-01-27 00:00:30 | 原発

 現役のキャリア官僚・若杉冽氏の話題作「東京ブラックアウト」を読みました。原発再稼働に向けてわが国の権力中枢で進行する陰謀をテーマにした、まるでノン・フィクション(!?)のような小説です。もちろん本書の登場人物とか団体等は多くの場合、架空のものですが、その表現ぶりのリアルさから、読者に実在の人物や団体名を微妙に連想させるものになっています。

 なかでも衝撃的だったのが、天皇陛下が原発再稼働に強いご懸念をお持ちでいらっしゃる様子が克明に描かれていることです。そのシーンが、その場のコオロギの鳴き声など、同席者でないと分からないような繊細な情報と一緒に語られていること、そしていくらフィクションとはいえ、畏れ多くも今上陛下のご本心とは真逆のことは誰にも書けないだろうと想像されることから、どうやらそれは真実―――こう解釈せざるを得ません。これは・・・とても重いと思います。

 さらに本書の末尾にそんな陛下への請願の送付先まで掲載されている・・・。本書を通じた著者の願いが一番、凝縮された箇所・・・。で、Wikipedia等によれば、何人も、請願をしたためにいかなる差別待遇を受けず、天皇陛下への請願は内閣にこれを提出する、等とあります・・・。

 ということで、陛下への請願は別にして、ここでは本ブログ向けの私的な請願書を以下に綴ってみたいと思います。請願先は、この国の空気。コオロギの歌を添えて。

---------------

請 願 書

 

 敷島の大和の国の弥栄はかくも貴き縁の賜

 

 「脱原発」=「脱円安と考えます。

 わが国の電力供給が原発依存から脱するためには、中長期的にはこれに替わる新エネルギーの開発・導入・普及が不可欠ですが、それらが実現するまでの当面の間はどうしても火力発電に頼らざるを得ません。したがって火力燃料―――石油・天然ガス等―――の海外からの安定的な、そして低価格での調達を図ることが脱原発に向けた第一歩として極めて重要となってきます。

 通常、エネルギー資源の取引はドル建てで行われることから、これらを安価で確保するには為替レートは円高ドル安のほうが有利です。これに対し、いまの日本政府(および日本銀行)は事実上の円安誘導政策を採っているため、輸入燃料インフレが起こって電気料金が高騰するいっぽう、同インフレの発電コストへの影響が軽微な原発の優位性が高まっています。したがって、このままでは光熱費の負担増に耐えかねた国民の多くがその再稼働を容認するでしょう。誰にとっても原発事故は恐ろしいものの、「背に腹は代えられない」からです。

 この流れを食い止め、あらためて脱原発を現実的な目標とするために、わが国は電力の大半を火力で賄っている現状の最適化に努める必要があります。それこそ輸入燃料の円建て費用の圧倒的な引き下げであり、これを妨げている上記の政策(たとえば日銀の超緩和的な金融政策)の転換を通じた円高環境への回帰であると信じます。これにより、原発を使わなくても電気料金を低い水準に保てることがかなりの程度、証明され、国民は脱原発の方向性―――コストパフォーマンスの高い火力発電で時間を稼ぎつつ、その間にこの国の叡智を結集して新エネルギーに基づく経済・社会の構築をめざすこと―――がけっして夢物語ではないと認識するようになるでしょう。

 以上、原発なき日本国の建設を真に希望する立場から「脱円安政策」を提言するものです。よろしくお願い申し上げます。

平成二十七年一月  一国民より

---------------

 上記、今上陛下への請願書の送付先は、〒100-8968 東京都千代田区永田町1-6-1 内閣官房内閣総務官室 となっています。また請願法によれば「請願は、請願者の氏名及び住所を記載し、文書でこれをしなければならない」等と定められています。ご参考まで。

(「『東京ブラックアウト』を読んで~私的な請願書~」おわり)

金融・投資(全般) ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【拝啓、脱原発派の皆さま】高騰石油代が揺るがす円安誘導の妥当性⑦

2014-07-05 00:01:42 | 原発

(前回からの続き)

 本稿の最後に、「脱原発派」の方々へ個人的なメッセージを・・・。

 「何が何でも原発反対!」だけで原油価格高騰に無策のままでは皆さんは多くの人々の支持をけっして得られないでしょう。その理由は上述のとおりです。このままでは原発再稼働で電気料金を安くしますよ」と甘くささやくアベノミクスに脱原発派は負けてしまいますよ!

 真に原発無き社会づくりを目指すというのであれば、脱原発派はその第一歩である現状、つまり電力の大半を火力発電に依存しているいまの状態の改善にベストを尽くさなければならない―――LNGや原油などの輸入火力燃料の円建て価格の引き下げに最大限努めなければならないはずです。

 そのためには・・・ドル建ての輸入エネルギーを安価で調達できる強い通貨が欠かせません。言い換えると、当面は火力発電に多くを依存せざるを得ない脱原発派には「円高」が必須の条件になるということになります。そんななか、いまの為替レートは皆さんにとっては耐えがたいほどの円安ドル高―――つまり強い危機感と覚悟を持って「脱円安」政策を推進しなければならない状態といえます。人為的な「円安誘導」によって作り出されたこの経済環境から脱しようということは・・・そう、「脱原発」ムーブメントとは「反アベノミクス」ムーブメントでもあるわけです。

 はたしていまの脱原発派の方々に脱円安=脱アベノミクスを打ち出すだけの十分なロジックと実行力、そして何よりも円高こそ国益だ!と言える「勇気」を期待できるのか・・・!?

(「高騰石油代が揺るがす円安誘導の妥当性」おわり)


金融・投資(全般) ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【脱原発派も再稼動を待望!?】都知事選:脱原発派が後押しする?原発再稼動⑤

2014-02-01 00:02:26 | 原発

(前回からの続き)

 貿易赤字はこれで3年連続、しかも2013年は過去最悪の約11.5兆円を記録、そして足元では電気代をはじめとするエネルギー価格は高騰したまま・・・まるでリスクオフ下の新興国のような日本の現状は、原発停止という想定外の要因を除けば、意図的な通貨安政策=アベノミクスによってもたらされたもの。先日、原発再稼動の遅れと過度の政策的円安に懸念を表明した財界リーダーのコメントをこちらの記事に引用しましたが、同じような見地から、この状態に国益が損なわれつつあるとの危機感を抱く国民は日に日に増えているのではないでしょうか・・・。

 そしてそれは都知事候補や都民にとっても同じこと。そのなかでもとりわけ、火力発電依存をこの先何年も(おそらく何十年も・・・)続けざるを得ない(都内の)「脱原発派」は、もっと真剣にこの惨状(?)の改善に取り組もうとしなければならない、つまり「円安修正」による電気料金の引き下げを志向しなければならない、と思うわけです。繰り返しになりますが、原発再稼動を選択しない脱原発派にとって、いま電気料金を迅速かつ大幅に下げる手はそれしかないのだから・・・。

 でも実際は・・・前回書いたとおりの無策ぶりです。それどころか、「当面、電気代は高くても我慢」「貿易赤字って悪いことか?」―――脱原発派の人々やメディアの一部からはこんな開き直り!?のような声すら聞こえてくるありさま・・・。

 「やれやれ、原発ゼロというけれど、いったいどこまで本気なのだろう?」で、こう推測したりしています―――「結局、彼ら彼女らは胸のうちで原発再稼動を待っているのではないだろうか。そうなれば電気料金が下がってハッピーだし、再稼動を決めた政府や電力会社を『敵役』にすることができて、自分たちの存在感を誇示できる(反原発番組の視聴率が上がり、新聞や本が売れる)から・・・」―――脱原発派のなかには、じつはこういう人たちが少なくないのではないでしょうか、たいへん失礼ながら・・・。

 と、あえて煽るような書きぶりにしてみました。「そんなことはない! 原発ゼロでも電気代を安くしてみせる!」という気概を持った脱原発派の方々が少しでも増えることを望んでいるから。そして電気料金引き下げへの覚悟を決めた彼ら彼女らは、必然的に円安修正に向けたアクションを取るしかなくなるからです。

 円安修正から「通貨高メリット追求」へ―――やがてそれは、原発をどうするかの違いにかかわらず、火力燃料を含む輸入原材料の円建て価格を作為的につり上げるというアベノミクス「円安誘導」の「おかしさ」を衝く、真に経済合理性をともなった政策の方向性としてクローズアップされることになるだろう―――期待を込めてそう予想しつつ、今回の都知事選における「原発」をめぐる議論がそこへ向かうひとつのきっかけになることを願っています。

(「都知事選:脱原発派が後押しする?原発再稼動」おわり)


政治 ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【原発再稼動容認派が優勢!?】都知事選:脱原発派が後押しする?原発再稼動④

2014-01-29 00:01:32 | 原発

(前回からの続き)

 原発ゼロ」つまり原発の再稼動をするべきでない、と訴える都知事選の立候補者の具体的な対策をみてみると・・・はっきりいって、本稿で問題視している「高い電気料金」の引き下げ策が無いに等しい状況です。電気代高騰に無為無策―――これではいくら「原発の替わりに自然エネルギーの導入を進めます!」といったところで、高い光熱費にあえぐ大半の都民の支持を得るのは難しいでしょう。

 逆に「将来的には原発は廃止するけれど、エネルギー安保や電気料金の上昇抑制のため、当面は原発を活用すべきだ」と主張する候補者の声のほうに多くの有権者が耳を傾けそう。なぜならこれは本稿前段で掲げた「原発事故と同停止にともなう値上がり」へ対応しようという姿勢だからです。「たしかに原発の事業リスクは大きいが、いまの高すぎる電気代が少しでも下がるのなら、原発再稼動もやむなし・・・」といった具合です。いまの都民にとって、原発ゼロよりこちらのほうがずっとありがたい、と思いますが・・・。

 ということで、以前もこちらの記事に書いたとおり、中央政界と同様、この都知事選においても「原発再稼動容認派(≒円安誘導派)」が優勢―――「脱原発派」が原発再稼動以外の有力な電気料金低減策である「円安修正」を唱えなければ―――と予想しています。脱原発派が「(円安修正なき)原発ゼロ!」を叫べば叫ぶほど、電気代高騰への懸念が都民のあいだに広まり、結局は「原発再稼動容認派」への支持を高めることになってしまう、ということです・・・。
 
 ・・・てなことを綴っていたら、これに関連する気になるニュースが入ってきました―――財務省が27日発表した貿易統計によると、わが国の2013年の貿易赤字額は過去最大の約11.5兆円を記録したとのことです。

 で、その主因はいうまでもなく「輸入」―――原油やLNGなどの円建て輸入価格が大きく膨らんだことに求められます。一部に貿易赤字の原因を「輸出」に見出そうという動きがありますが、これはその真因である「輸入」にスポットが当たることを避けたいため。なぜなら、「輸入」に目を向けられると、その激増の原動力がアベノミクスの意図的な「円安誘導」であることが国民に分かってしまうから・・・って、もうバレバレですが・・・。

 この円安がいかに円建ての輸入燃料価格の上昇に影響を与えているか、ということは実際の統計値にも表れています。たとえば、原粗油の2013年の輸入数量は2012年比で0.6%ほど減っているにもかかわらず、輸入額は同16%も増えています。そして原油の輸入単価は1キロリットル67264円と、これまた前年比で17%と大幅増! ちなみに2012年のドル円の年間平均レートは79.8円で、2013年は97.6円。つまり1年間で20%以上も進んだ円安の分だけ原油高が進んだ、といえそうです・・・。

 それにしても、原発が停止して火力発電への依存度が高まっているなか、その燃料を少しでも安く調達しなければならないはずのこの時期に、それらを「わざと」高く買おう!という「アベノミクス」のセンスって、まさに「異次元(緩和)」としかいいようがないですね!?

 まあともかく、2013年の巨額の貿易赤字計上には、上記のように「原発停止」と「為替」が大きく関与したことが分かるわけです。

(続く)


政治 ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【原発・為替議論の活性化を期待】都知事選:脱原発派が後押しする?原発再稼動③

2014-01-27 00:01:32 | 原発

(前回からの続き)

 前回、東京都民が支払う東京電力の電気料金は、2011年の東日本大震災を境に、この3年間で「原発事故と同停止にともなう値上がり」と「為替の円安にともなう値上がり」の「二段ロケット」で上昇してきた、と書きました。その値上がり率はじつに26%以上にも達します(2011年から2014年の各年の2月の料金比較)。これだけ急速かつ急激に電気料金が上がっていれば、ほとんどの都内の個人や法人の、総収入から電気代を差し引いたあとの所得は目減りしているのではないでしょうか・・・。

 そのため、都知事選の争点として「原発」がクローズアップされればされるほど、都民の現状の電気料金の「高さ」に関心と不満感が高まるとともに、各知事候補者は、「原発再稼動容認」「脱原発」それぞれの立場から、この電気代の「高さ」に対する自身の認識とか、電気料金を引き下げるための取り組みや政策を語らざるを得なくなる―――そう予想しています。

 本稿前段で書いた理由から、そもそも「原発」は都知事選の論点にはなり難いと考えています。それでも、「原発」に関する論戦が熱を帯びるなか、こうした流れで都知事候補者が電気料金の「高さ」に関してさまざまな発言をすることで、電気代高騰の原因である「原発停止」および「円安誘導」に都民、そして国民の多くが着目するようになることを個人的には期待しています。なぜなら、それらはいずれも国の現行の政策、具体的には「アベノミクス」の是非論に直結することだからです。

 先日こちらの記事に綴ったとおり、行き着くところ「原発」の扱いは、為替レートをどう解釈するか、の違いによって次のように色分けされると思っています―――「原発再稼動容認≒円安誘導」か、それとも「脱原発≒脱円安」か、ということです。

 ここで前者は「アベノミクス」推進派とほぼイコールといえる勢力。つまり、円安誘導をやめることはできないが、その副作用(円建て火力燃料価格の上昇)で上がってしまった電気料金を少しでも引き下げるため、上述の電気料金上昇「二段ロケット」の一段目「原発事故と同停止にともなう値上がり」に対処するべく、原発の再稼動を進めようとするグループです。

 一方後者は、この「二段ロケット」一段目には対応できない代わりに(「原発再稼動」をしない代わりに)、最終ゴールである再生可能エネルギーまでの「つなぎ」としての火力発電のコストを可能な限り引き下げようとするグループです。彼ら彼女らの多くは結局、同「二段ロケット」の二段目「為替の円安にともなう値上がり」への対策として円高メリットの追求に向かうだろうとみています。

 以上の両者が、都知事選を機に、「原発」や「為替」をめぐる政策議論を戦わせることは、「アベノミクス」のほかにも政策の選択肢が生まれるという意味で、日本国民にとって有意義なことだと思っています。

 さて、都知事選に出馬表明した各候補者の「原発」に関する主張をみると、「脱原発」を掲げる方が複数いらっしゃるようですが・・・。

(続く)


政治 ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【「原発停止」「円安誘導」が主因】都知事選:脱原発派が後押しする?原発再稼動②

2014-01-25 00:03:29 | 原発

(前回からの続き)

 前回、東京都民が支払う電気料金がこの3年間で大きく上がった、と書きました。以下でその詳細を確認したいと思います。

 このグラフは、東京電力の2010年から2014年までの2月の一般家庭の電気料金(平均モデル:30A契約、使用量290kWh、口座振替払い)と、その料金の計算にあたって加減算された燃料費調整額の算定のベースとなった為替レート(前年9~11月の平均為替レート)の推移をみたものです。ご覧のとおり、2011年から現在までの3年間で26.3%もの値上がりとなっています(6234円→7873円)。

 少し細かくみると、この電気料金の上昇が「二段ロケット」となっていることが分かります。

 まず「一段目」は2011年から2013年までの値上がりとなります(上昇率16.7%)。ご存知のように、2011年3月に起こった東日本大震災、そして福島第一原発の事故および全原発の停止等による発電コスト上昇等をふまえ、東電は2012年に電気料金を引き上げました。それを反映した金額が2013年2月の7273円となります。つまりこの「一段目」はおもに「原発事故と同停止にともなう値上がり」とみることができると思います。

 そして「二段目」。これは2013年から今年(2月)までの8.2%の上昇分です。これは何かといえば「為替の円安にともなう値上がり」です。そのあたりは上記グラフの折れ線で表示した燃料費調整額の計算で適用されたドル円レートで推測されます。

 2011年から2013年までの上記レートはおおむね1ドル80円前後で推移していました。ところが直近の2014年2月の値は99円(2013年9~11月の平均為替レート)と、2013年よりも25%以上も円安ドル高になりました。これが燃料費調整額を大きく引き上げ、わずか1年で8%以上もの電気料金の「インフレ」をもたらした、ということになります。なおこの「二段目」のメインエンジンは、こちらの記事を含めて本ブログで何度か指摘しているとおり、アベノミクスの「円安誘導です・・・。

 以上が東電の電気料金「二段ロケット」上昇の概要です。ちなみにこのロケット、まもなく「三段目」にも点火します。4月、消費税率の5→8%への引き上げ分が料金に上乗せされるということです。東電によると、上記の一般家庭平均モデルで月209円ほどの値上がりになるそうですが、電気料金にオンされている自然エネルギー普及促進賦課金などの費用も変わるため、実際はもっと上がりそう・・・。

 というわけで、かりに東京都知事選挙で「原発」が論点になるとしたら、都民の関心は「原発」ではなく、上記「電気料金」の「高さ」のほうに集まるだろう、と思う次第です。

(続く)


政治 ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【都民の関心は「料金」のほう】都知事選:脱原発派が後押しする?原発再稼動①

2014-01-23 00:02:05 | 原発

 本日23日告示、来月2月9日に投開票が行われる東京都知事選挙の立候補者が出そろいつつあります。都知事は日本の首都の顔、ということで、いつものように候補者には個性的な方々が並んだことから、各氏がどのような政策を掲げるのか、都民のみならず国民の多くも関心を寄せそうです。

 なかでも選挙戦の重要なテーマとなりそうなのが「原発」の扱い。すでに細川元首相をはじめとする複数の候補者が「脱原発」の姿勢を明確にしています。さらに昨年、突然の脱原発宣言をした小泉元首相は、今回の都知事選を「原発ゼロでも日本が発展できるというグループと原発なくしては発展できないというグループの争い」と位置付けたうえで細川氏を支援する意向を示していたりします。そんなこともあり、何やら「原発」が今回の選挙の最大の争点になりそうな気配すら漂ってきていますが・・・。

 個人的には、「原発」は都知事選の争点にはなり難い、と考えています。すでに多方面から指摘されているとおり、原発をどうするか、については国家のエネルギー安保にかかわる課題であり、原発立地自治体の意見は尊重しつつも、本来は国会や中央政府で議論して意思決定すべきことだと思うからです。ましてや原発がエリア内にない東京都が「原発ゼロ」「原発維持」のいずれを決議等したところで、政府や原発立地県の意向に反することはできないわけで・・・。

 とはいってみたものの、わが国の首都であり、47都道府県中、人口も電気のユーザー数も最多の東京都の有権者が、今回の都知事選を通じて「原発」についてどのような判断を下すのか、とても興味深いところではあります。そしてその結果が、今後の国のエネルギー政策に少なからぬ影響を及ぼすことも予想されます。

 ですが・・・たしかに東京都には「脱原発」「原発再稼働」それぞれの立場から熱心に持論を展開される方も多いでしょう。しかし、大多数の都民にとって「電気」についての最大の関心事は「原発」ではなく「電気料金」のほうではないでしょうか。というのも、都民が支払う電気料金はこの3年間で急激に上がっているからです。

 都民に電気を供給しているのは東京電力。で、その東電のデータによれば、いまから3年前の2011年2月(つまり東日本大震災の前月)の一般家庭の電気料金(平均モデル:30A契約、使用量290kWh、口座振替払い)は6234円でした。それが来月(2014年2月)には7873円となります。何と!わずか3年で26.3%もの値上がりです。

 では、そんな短期間でどうしてこれほど電気代が上がったのか、ですが、いうまでもなく「東日本大震災にともなう原発の停止」と「2012年11月以降に進んだ為替の円安」がその「2大理由」です。

(続く)


政治 ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【原発推進派「勝ち」、脱原発派「負け」】脱原発の条件:燃料代引き下げ④

2013-11-25 00:03:01 | 原発

(前回からの続き)

 というわけで、

 「原発推進派≒円安誘導」vs.「脱原発派≒脱円安」

 という構図を描いてみました。前者はアベノミクス支持派と言い換えられると考えています。かなり大雑把な区分ですが、それほどハズレてはいないのではないかと・・・。

 アベノミクスの支持者のなかには原発ゼロを主張する人もいるでしょう。しかしその場合は円安誘導がもたらす高い電気料金と輸入燃料価格の高騰という現状を肯定することになります。「それでもかまわない。とにかく脱原発だ!」で、どこまで頑張れるのか、そして支持を広げられるのか・・・。かなりツライのではないでしょうか。

 一方、円安修正は必要でもエネルギー安保などの観点から原発運転は継続すべきと考える方もいるでしょう。こちらは「アベノミクスは支持するけれど反原発!」という人たちよりは多いかも、と推察します。ですが、円安・円高の違いにかかわらず、原発推進には原発が持つ巨大な事業リスクが引き続きつきまとうことになる。たしかに原発は燃料コストに限定すれば火力発電より安いかもしれませんが・・・。

 まあ上記のような考え方も含め、「原発をどうするか」の今後ですが、個人的には、「アベノミクス」継続のもと、原発は次々と再稼動されていくことになるだろう、つまり「原発推進派≒円安誘導」の「勝ち」、そして「脱原発派≒脱円安」の「負け」となるだろう、と予想しています。その理由は、安倍政権の原発再稼動で火力発電依存度を下げて電気料金を引き下げようという方針に多くの国民が賛同すると思うから。

 「原発推進だ!」「いや、脱原発だ!」―――そんな一部の熱心な人々を除けば、輸入インフレが起こっているなかで、国民の大多数は(どっちでもいいから!?)とにかく電気代が下がってほしい、と切に願っているはず。これに応えているのは原発推進派、つまりアベノミクスを推進する現政権のほうです。一方、脱原発派は円安修正を含めた輸入燃料価格引き下げ策を国民に提示できていません。つまり「原発反対! だけどエネルギー価格高騰には無為無策!」―――ということで、勝負あった! 「負け」ですね、脱原発派の・・・

 このあたりは本稿冒頭でご紹介した小泉純一郎元首相の記者会見における「原発ゼロの方針を示せば、必ずある人が良い案を作ってくれる」との発言に表れています。つまり「原発の代替案は無し」と言っているわけです。脱原発派は上述した通貨高のメリットを全面的にアピールすればいいのに・・・なんてことを思います。

 こうして日本の電力は、原発再稼動と原発比率の再拡大によって、円安インフレがもたらす電気料金の上昇を抑えようという方向に進むことでしょう(!?)。これによっていまよりも少しだけ、たとえば1~2%でも電気代が下がれば、多くの国民はホッとするのではないでしょうか。1年前の為替レートに戻ればいまより数%以上も料金が値下がりになることは忘れて・・・。

 東日本大震災、そして東京電力の福島第一原発の事故により、わが国ではいま、かつてないほど「脱原発」の気運は高まっています。しかし、相変わらずの(?)ロジック不足と「ドン引き」パフォーマンス(山本参院議員、天皇陛下に直訴状を手渡す!)により、脱原発派は一般国民の支持を得る好機を逃しつつある、とみているのですが、どうでしょうか。

(「脱原発の条件:燃料代引き下げ」おわり)


金融・投資(全般) ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【脱原発≒脱円安】脱原発の条件:燃料代引き下げ③

2013-11-23 00:00:08 | 原発

(前回からの続き)

 結論からいうと、脱原発派はLNG、石油、石炭といった輸入燃料価格をいかに低く抑えるか、について、明確なポリシーを打ち出さなくてはならない、と考えています。なぜなら脱原発派は、原発を選択しない以上、今後(代替エネルギーが開発されるまでの)少なくとも十数年間ほどは、火力発電に大きく依存せざるを得ないからです。したがって真に原発ゼロを目指す立場から「こうした方策によって火力燃料価格を引き下げてみせます!」といったアピールが不可欠となってきます。

 ではどうやって燃料価格を低いレベルに抑えるか、ですが、一番即効性があって効果的なのは、為替レートを輸入に有利な方向、つまりいまよりも円高ドル安に持っていくというもの。だからといって大げさなことをする必要はなく、いまの日銀の金融政策「異次元緩和」を微調整するだけで円安修正は進むとみています。たとえば目標インフレ率を現行の2%から以前の実質0%に戻す、あるいは1%に下げる、くらいでもよいかも・・・。

 ここで、もし日銀が金融政策の修正に難色を示す場合は、円安是正のために政府は円買いドル売りの為替介入を行うことになるかもしれません。しかしこれだとアメリカの金利上昇をもたらしてアメリカ様にご迷惑をおかけすることになりかねないため、政府が介入をほのめかせば日銀は折れる(異次元緩和を縮小する)と見ています。

 まあ金融政策「異次元緩和縮小」それとも為替政策「円買いドル売り為替介入」のどちらをとるにせよ、これによって円高になれば輸入燃料の円建て価格が下がり、燃料費調整額がマイナスとなって電気料金は下がるでしょう。先の例でいうと、為替レートが1ドル100円から昨年並みの同80円に戻れば電気代が6%ほども安くなる計算になります(東京電力:一般家庭平均モデル)。

 為替レートがいまより円高方向に進めば、アベノミクス開始以降、対前年同月で増え続けている貿易赤字の縮小も期待できます。先日こちらの記事に書いたとおり、政府・日銀の誘導で円安状態となっているのに日本の貿易収支は黒字どころか赤字が拡大する傾向にありますその最大の理由は輸入燃料の円建て価格の値上がりです

 一方、輸出額は輸入額の伸びに見合うほど増えてきません。自動車メーカーの多くがそうであるように、すでにわが国のおもな輸出企業は「完成品」の生産拠点をとっくの昔に海外に移転していること、そしていま日本の主要輸出品となっている資本財(企業が使う機械等)とか中間財(完成品のコアパーツ等)は円安になったからといって急に大量に売れたりする性質のものではないこと、などから、今後円安が続いても輸出は数量も売り上げも伸ばすことは難しいでしょう。

 かくしてJカーブ効果は期待薄、貿易赤字は拡大し、わが国の国富はジワジワと減少していく―――。そんな事態はぜひ回避したいでしょ!? で、脱原発派は貿易収支の改善を図るという国益の観点からも「強い円」の利点を説くわけです。

 火力発電への依存度が高い脱原発派としては、上記のように、輸入燃料の調達コスト低減と貿易赤字の縮小をもたらす円安修正のメリットをアピールしつつ、これに逆行する「アベノミクス=円安誘導」の政策的な「愚かさ」を突けば、原発推進派に十分に対抗できるだけの支持を得ることができるだろうと思っています。なぜって、足元ではアベノミクスの円安インフレが国民生活を脅かしつつあるわけですから・・・。

 ということで、今回の表題のとおり、「脱原発」の必要条件は「脱円安」である―――このように考える次第です。

(続く)


金融・投資(全般) ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【アベノミクス≒原発推進】脱原発の条件:燃料代引き下げ②

2013-11-21 00:04:45 | 原発

(前回からの続き)

 前回、原発が止まって火力発電への依存度が高まっているわが国では、エネルギー資源をいかに安定的に、そして安い価格で調達するか、が重大な国家的課題であると記しました。

 さて、安倍政権と日銀が推進する「アベノミクス」ですが、はたしてこの課題に真摯に向き合っているか、といえば「?」なのではないでしょうか。それどころかむしろ逆行しているような気が・・・。

 こちらの記事を含めて本ブログでいろいろ書いてきたように、アベノミクスは日銀の「異次元緩和」による通貨安誘導で輸入品、とりわけ輸入燃料の円建て価格を意図的に引き上げることでデフレを解消しようという荒業に出ています。これが奏功し、この1年間(アベノミクス開始時点:昨年11月)で円はドルに対して20%も下落する一方、これに反比例するかたちで電気代、ガス代、ガソリン代や灯油代が大きく値上がりしているところです。東京電力を例にとると、燃料価格の変動を電気料金に織り込むという燃料費調整制度により、今年11月の電気代(一般家庭平均モデル)は7946円と、昨年11月(7464円)から6.5%も上がりました・・・。

 ある意味、これはアベノミクスの狙いどおりの成果といえるもの。なぜって、円安誘導で電気代などを引き上げたら・・・家計等のエネルギー支出の増→個人消費の増→GDPの増→消費税率引き上げOK!となったわけですから。高いGDP成長率達成と財政健全化へ一歩前進!で安倍首相や黒田日銀総裁のいまのお気持ちは「燃料代 上がってうれしい アベノミクス」といったところかな・・・?(ヘタな川柳ですみません)

 「いや、円安はうれしいのかもしれないが、いくら安倍さん黒田さんでも、電気代が上がってうれしいはずはないだろう」―――(おそらく・・・)そうでしょう。この日本で電気を使わない人なんていないはず。だから誰にとっても電気料金は安ければありがたいし高ければつらいわけです。これはアベノミクス支持者にとっても同じこと(だと思うけど、違うかも?)。

 かといって、いまの政府・日銀には電気代高騰の最大の要因である円安モードを解除することはできません。これまで書いてきたとおり、円安誘導こそアベノミクスの生命線だからです。

 それでもそろそろエネルギーコストを下げないと国民の不安が高まってアベノミクスの支持率が下がってしまう懸念が出てきます。「円安」はやめられない、けれど電気料金は安くしないとマズイ・・・で、安倍政権はどうするかというと、「原発再稼動」に乗り出すわけです。なぜなら原発は、発電コストに限れば火力発電よりも安い―――発電コストに占める燃料費の割合が火力発電よりも小さいうえ、その燃料代(ウランの円建て輸入額)はLNG、石油、石炭の円建て輸入総額よりもずっと安いというアドバンテージを持つからです。

 かくして、円安誘導にこだわるアベノミクスは必然的に原発推進路線を選択せざるを得なくなる、というのが私の読みです。円安状態を維持しつつ、原発再稼動によって火力発電への依存度を下げ、火力燃料の輸入量を減らしてエネルギーコストの上昇を抑えようという戦略です。うーん、それなりに筋が通っているように感じられますが・・・。

 さあ、そこでどうする? 脱原発派・・・。

(続く)


金融・投資(全般) ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする