世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
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【金欠でじつはEU離脱できないEU離脱派】「金融」が阻む欧州統合の夢③

2016-06-29 00:02:36 | ヨーロッパ

前回からの続き)

 前回書いたことを繰り返しますが、ユーロ圏の事実上の盟主であり、欧州安定メカニズムESM)への最大出資者(出資比率27.1%)のドイツにすれば、「Brexit」(英国のEU離脱)に刺激されて域内諸国とりわけギリシャに代表される重債務国がEUを離脱することに関しては以下の2点からむしろ望ましいとの考えが成り立つと思われます。

 一点目は、ESMの資産健全性の維持。先述のようにESMはすでにスペインやギリシャなどに対して合計数千億ユーロもの融資をしているわけですが、彼らの経済状態からみてこれらの大半は貸し倒れ・・・どころか追い貸しはもはや不可避です(?)。そんななか、彼らの一部でも自分の方からEUを去ってくれたら、ESM債権のこれ以上の不良化を回避できるから、ドイツやフランスなどの主要出資国・・・の国民負担は増えずにすみそう。他方、彼らの脱退によって彼らのESM資本拠出負担分も引き上げられることになりますが、たとえばスペインの場合、同国の負担額が約830億ユーロに対して1000億ユーロを借り受けしており、差し引きでは借入超過・・・ということで、ESMにとって同国には出て行ってもらった方がありがたいわけで・・・

 二点目は通貨「ユーロ」の信認強化です。上記2か国やイタリアといった国々は本質的に経常赤字国。ということは彼らがEUに留まる限りユーロはインフレ通貨であり続けてしまうというリスクがあります。ここで彼らがEUから離れて独自通貨(伊:リラ、西:ペセタ、ギリシャ:ドラクマ、など)に戻れば、ユーロのインフレ体質は大きく改善され、その信認が高まることに。まあこの場合、ユーロ高になって輸出産業にはマイナスな面もありますが、いっぽうでインフレのおそれを遠ざけることができるという点からドイツはこれをポジティブに捉えるでしょう・・・(?)

 ・・・冷静にみて上記はドイツの国益にプラス・・・ということで同国にはひょっとして、このたびのBrexitでナショナリズムを刺激された彼ら(PIIGS諸国)が勢いあまって「アディオスEU」してくれたらな~、なんて期待があるのではないか・・・。この場合、ドイツにとっては、彼らが追い出される前に自分たちのほうから出ていくわけだから、ヘンにドイツが恨まれずにすむので、なおけっこう・・・かもしれません。なのでドイツのEU離脱運動に対する公的スタンスはこんな感じになるのではないか―――「欧州の一体化を損なう意味で好ましいとは思わないが、どうしても離れたいというのなら、どうぞ」

 いっぽう、他のEU圏諸国、なかでもPIIGS・・・のEU離脱派はそんなドイツとはまったく逆の立場でしょう。つまり感情的には「EUみんなのおカネ(ESMの資金)を借りるのにあれこれ厳しい条件を押し付けやがって!ならばEUを離脱してやる~!」みたいな具合ですが、実際にはトホホなことにESMすなわちEUのルールに従わざるを得ない・・・

 こうして両者―――ドイツ(と一部の債権国)と重債務国―――のEU離脱を巡る本音(独:出て行ってほしい、後者:出ていけない)と建前(独:残ってほしい、後者:出て行ってやる!)はまったくかみ合わないことになる、つまり欧州の統合はおカネの問題が本質的な原因となって進まないことになる、と考えるわけです。

続く

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【独、重債務国のEU離脱は内心歓迎か?】「金融」が阻む欧州統合の夢②

2016-06-27 00:04:32 | ヨーロッパ

前回からの続き)

 このたびの、まさか!の「Brexit」(英国のEU離脱)決定で、欧州各地では英国に続け!とばかりにEU(欧州連合28か国[英国含む])からの離脱を訴える政治勢力が支持を集めそうです。通貨「ユーロ」採用の19か国だけを見渡してもフランス、イタリア、オランダ、スペインなどで多くのナショナリスト的な政治集団が勢いを増している感じです。ということで近いうち、これらが政権を取った国のなかから英国みたいにEUを離れようとするところが出てくるかもしれません・・・

 ・・・が、実際にはその可能性は小さいでしょう。もっと実態に即して正確に述べると、彼らの多く、つまり「PIIGS」と称される重債務国(ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペイン)はEUから出ていきたくでも出ていけないはずです。その大きな理由は表記「金融」つまりこれら諸国は自国の金融システムがますます必要とするおカネをEU・・・の金融セイフティーネットである欧州安定メカニズムESM)に貸してもらわないとならないため。

 ・・・たとえばスペインは先述のとおり、すでにここから1000億ユーロもの融資を受けているわけですが、EUを去る気ならば同国はこれをESMに返済しなければならないし、今後、不可避となる(?)銀行への資本再投入資金を自分で調達しなければなりません・・・って、そんなこと、できっこないわけです、スペインには・・・。このあたりの事情はEUに対する反感が高いとされるギリシャやイタリアなどもみな同じ。したがって「ブリュッセル政府の言いなりにはなりたくないからからEUから独立だ!」みたいな感情論は、上記の金融事情から結局は消えざるを得ない・・・。自分からEU離脱すなわちESMへのアクセスを断とうなんて自殺行為以外の何ものでもないですからね、・・・。

 ・・・いっぽうのドイツ・・・に代表される、ESMへの出資率が高く、依存度が相対的に低い国にとって、Brexitで刺激された各国の脱EU運動の高まりは腹立たしくもあり、じつはありがたいこと(?)に思えるかもしれません。というのはこれら諸国にとって、経済力が相対的に弱く、ESMのおカネを無心するばかりの国が自分の方からEUを去ってくれた方が、EUの一体感維持やESMの運営がうまくできる(?)であろうから。

 さらにいうと、英国以外のEU加盟国の同離脱は通貨ユーロを捨てて自国通貨に戻ることを意味するのでしょうが、いまEUにあれこれ不平不満の思いを募らせている国(ギリシャやスペインみたいな国)がユーロから出ていったら、ユーロの信認はむしろ強化されるでしょう。他方、EU脱退国の独自通貨はユーロよりもずっと弱くなるはず。なのでドイツ等は表向きBrexitに渋い顔をして見せつつ、これを機にESMや自身に依存するだけの国や地域がユーロ圏から自ら出て行ってくれれば、なんて期待をしているかもしれない・・・(!?)

続く

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【「アナタのおカネでワタシの銀行を助けて」は通じない?】「金融」が阻む欧州統合の夢①

2016-06-25 00:02:25 | ヨーロッパ

 欧州統合の難しさ―――今回の「Brexit」をめぐる英国の国民投票であらためて多くの人々に意識されたのは、このことだったと考えています。で、これを困難にしている最大要因は・・・民族や言語や文化の違いでも、ましてや難民問題などでもなく、ズバリ「おカネ(金融)」・・・。以下ではこのあたりについて感じるところを綴ってみたいと思います。

 こちらの記事を含めて何度か書いているとおり、(まあアメリカ中国も、だけど)いまの欧州はバブル崩壊後の資産デフレすなわち不動産をはじめとする資産の価値が低下している局面にあります。そんななか、各種バブルを当てにした危険な融資等で資産勘定を目一杯膨らませた欧州の各銀行には不良債権が増加してきており、このままでは過小資本から最悪、債務超過に陥ってしまうところが出てきそう。これが連鎖的に起こったら金融恐慌は不可避で欧州経済は壊滅・・・とならないよう、昨年3月より欧州中央銀行量的緩和策QE:国債買い入れ)を実施して流動性を市場に供給することで資産価格の急落を防いでいるところ(QEは一応、今年9月までの予定だが、延長は必至か?)。だがQEも問題先送りの策に過ぎず、どのみち欧州各国はバブル最終清算=抜本的な不良債権処理から逃れることはできない・・・

 ・・・といったあたりが現時点の大まかな欧州金融事情でしょう。で、これがどうして欧州の一体化を阻むことになるのか、といえば、上記最終処理に絶対に欠かせない銀行救済のための公的資金を(おそらく)自力で賄えそうな国と賄えない国が出てきて、双方が激しく対立するから。つまり前者に対して後者が、ワタシのところの銀行を助けるためにアナタもおカネを出してちょうだいな、と虫のいいことを言い、これに対して前者が後者に、自分の銀行の手助けは自分のおカネでやりなさい、と杓子定規(?)に突っぱねる、みたいな感じ。この両者が全面的に和解し、一緒になるなんて、常識的にまずあり得ないでしょう・・・

 ・・・欧州には欧州安定メカニズムESM)という、ユーロ圏加盟各国が資金を拠出し合って作った、上記のような金融危機に対処するための共同の枠組み(融資総額5000億ユーロ)があることにはあります。でもESMにだって、すでにそんな兆候が表れている。つまりESMのおカネにすがるのは上記後者に該当する国ばかりになっているということです。たとえば、スペインがすでに自国銀行の資本強化に充てる財政資金として1000億ユーロもの融資をしてもらっているほか、今月21日には、改革が進んでいる(マジで!?)と評価されたギリシャに対して75億ユーロの貸し付けが実行された、などといった具合・・・(これら以外にESMには、同設立前の暫定組織EFSFがアイルランドポルトガル、ギリシャに融資した合計約2000億ユーロの債権が引き継がれている)

 ・・・こんな様子を見ていると、上記前者に該当する国・・・のなかでもESM最大の出資者(同割合27.1%)のドイツのイライラぶりが容易に想像できるというものです。ドイツ人にとっては、自分たちのおカネが他国の尻拭いに使われるうえ、返済されそうもないわけですからね・・・(!?)

続く

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【アベノミクスの最終型は国家統制経済】民間銀の合理的判断が問うマイナス金利の不合理性⑥

2016-06-23 00:00:24 | 日本

前回からの続き)

 共産主義(あるいは極左社会主義)の世界では必然的に政府(や中銀)の規模や権限が肥大化し、市場メカニズムが排除され、結果として非効率や不合理が社会に蔓延します。さらにいうと、共産主義国の指導者は言論や政治活動等に関する厳しい統制を敷き、自身の主義主張以外の考え方や発想を許さないようになります。なぜなら、そうでもして国民(の非効率に対する不平不満の感情や政権批判等)を抑えつけないと、理屈に合わないことを続けられないからです。

 ・・・不幸なことに、わが国もそんな不条理が支配する共産主義への道を突き進んでいるのではないか・・・。それを感じさせるフレーズが「景気回復、この道しかない。」(2014年衆院選の自民党キャッチフレーズ)です。これはつまり「主体思想」ならぬ「アベノミクスしかない」という意味でしょう。つまりつまり、アベノミクス異次元緩和→追加緩和、と来て、とうとう「マイナス金利政策しかない」みたいな・・・

 「明らかにネガティブ」―――先述のごとく不合理の極みたるマイナス金利に対する三菱東京UFJ銀行(MUFG)の平野社長のこのご発言の真意は、だからこそ(前述のように)憂国の思いと解釈されるべきでしょう。このままではこの国は実質的な共産国になってしまう、それは何としても阻止しなければ・・・で、PD(国債市場特別参加者)資格返上という体を張ったアクションで安倍政権・黒田日銀に対してこれ以上の左旋回に待った!をかけようとした(?)―――じつに勇気ある愛国的言動だと感じます。これはどこぞの国では偉大なる大将様に反旗を翻すのと同じですからね・・・(なので、平野社長の身の上がマジで心配。どうかご無事でありますように・・・)。

 日本の共産化―――これはけっして「そんなバカな!?」ではないと思っています。アベノミクスの前後で国債所有者の主役は「民」(民間金融機関)から「官」(日銀)に代わりました。そして日銀と公的年金基金の株式の爆買いにともなう主要企業の国家支配もじりじりと進んでいます。本邦メディアも専制国家メディアよろしくすっかり御用機関化し(?)、かように市場管理を強める姿勢のアベノミクスを礼賛しまくりです・・・。なので、アベノミクスが目論むのは・・・やっぱり赤い共産日本に違いない!?

 ・・・そんな妄想をするにつけ、どうかマトモなマーケット原理がまかり通る国に戻ってほしい―――MUFG社長ならずとも、そう祈らずにはいられない一市場信奉者の今日この頃です・・・。

(「民間銀の合理的判断が問うマイナス金利の不合理性」おわり)

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【反市場性こそアベノミクスの左翼的本質?】民間銀の合理的判断が問うマイナス金利の不合理性⑤

2016-06-21 00:04:46 | 日本

前回からの続き)

 前回までに書いたとおり、このほど国債市場特別参加者(プライマリー・ディーラー:PD)の資格を返上する予定の三菱東京UFJ銀行(MUFG)の平野社長が黒田日銀の「マイナス金利政策」を「明らかにネガティブ」と否定的に評したのは両者―――つまりまずは自らを含む金融業界とそのステークホルダー、そして次に日銀ひいては国家国民―――にとってネガティブだ、という意味だと解釈されます。「・・・だから、これを止めよ」―――「お上」(安倍政権・黒田日銀)の政策に盾突くような言動は憚られる雰囲気がこの国に広がる中、憂国のお気持ち(?)から、あえて筋の通った発言と決断をされた同社長の勇気を称えたいと思います。

 MUFGのPD返上の市場に与えるインパクトは小さくないはずです。いうまでもなく同行は邦銀中、時価総額第1位のトップバンク。そんな大銀行の経営者が真っ当な論理に基づいてマイナス金利政策はネガティブ、つまり同政策は止めるべき、と黒田日銀に詰め寄っているわけですからね。上述の混迷きわまる状況は日の丸金融機関にとってはみな同じ。よってこの先、MUFGに続けとばかりに同政策に弓を引く(?)ような姿勢を見せるところが出てこないとも限らない。16日に開かれた金融政策決定会合で日銀は追加緩和の見送りを決めましたが、その背景には金融業界内で強まる一方の(?)反マイナス金利感情を日銀として意識しないわけにはいかなかったという面もあることでしょう・・・(?)

 で、繰り返しになりますが、マイナス金利政策とは国債の価格を満期まで保有した場合のリターン額以上につり上げること。これに本邦機関投資家が反対するということは、国債をマトモな価格で買わせてほしい、国債マーケットをかつてのような市場メカニズムが普通に働く環境に戻してほしい、という切なる訴えにほかなりません。こうした願いとは真逆な取り組みこそがマイナス金利政策・・・にまで至った黒田日銀の超緩和的な金融政策。ということは、わが国の金融界は「異次元緩和」つまり「アベノミクス」そのものにネガティブになりつつある・・・(というより、もとからネガティブだったと思うけれどね!?)

 ・・・これは政治的イデオロギーなどではけっしてなく、単純にこういうこと―――合理的に考えればアベノミクスって不合理だろ?―――です。健全に機能していたマーケットに「お上」(中銀)が無意味にも(?)超過剰に介入してこれを混乱させ、投資家に国債を購入できないようにしてしまう―――この「アンチ市場性」こそ異次元緩和すなわちアベノミクスの本質といえるでしょう(?)。

 このあたり、こちらの記事でアベノミクスを左翼的と表現した所以でもあります。こんなことばかりやっている中国共産党当局といい勝負だ、みたいな意味です。

続く

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【日銀役員は日銀純損失分を私財で補填すべき?】民間銀の合理的判断が問うマイナス金利の不合理性④

2016-06-19 00:02:56 | 日本

前回からの続き)

 「明らかにネガティブ」―――黒田日銀の「マイナス金利政策」について三菱東京UFJ銀行(MUFG)の平野社長はこう語っていますが、コレ、前述のように、第一に銀行(のステークホルダー:銀行経営者、行員、株主そして預貯金者等)にとってネガティブだという意味でしょう。そして第二には日銀ひいては日本国にとってもネガティブという思いもあるはず・・・

 日銀本体にとってもマイナス金利は不適切、もっとはっきり書くときわめて危険度の高い政策だといえます。このあたりは本稿2回目に書いたとおりで、これが日銀に自己資本を食いつぶさせ、最後には債務超過に至らしめるおそれがあるためです。そうなったら誰かが日銀に資本注入をしなければなりません・・・って、それができるのは日本政府、ようするにわたしたち日本人以外になく、つまりはそのためのおカネを増税(!?)で賄おう、てなことになりかねない・・・

 ・・・このあたりがMUFG社長のマイナス金利が日銀そして国民にとってもネガティブと考える根拠となっているところと思います。日銀救済のための増税決定(?)―――そのときになって国民はようやく「アベノミクス」のツケ、すなわち黒田日銀の超緩和的な金融政策のツケが自分たちに回ってくることを知るのでしょうか・・・(?)

 2013年春の「異次元緩和」の開始以来、日銀は大量の流動性を市場に供給するべく、国債に加えて株やREITなどのリスク資産を次々に買ってきました。これらにはすべて価格変動リスクがあるため、日銀には評価損を被る危険がつきまといます。それでも買値より評価額が高くなる可能性が万に一つ(?)ある以上、日銀としてはこれらの購入を断固として続ける!と言い張る(?)ことができないとはいえません・・・(?)

 でも、マイナス金利の国債は違います。これらは日銀にとって買った時点から損することが確定しているもの。日銀以外の投資家には、最後は日銀が買い取ってくれるから、という目論見でマイナス金利国債を購入する理屈が成り立つが、日銀の後にはもう誰もこれらを高値で買えない―――つまり日銀は最後の買い手として自らが損をかぶることを百も承知で国債の超高値掴みをしていることになるわけです。したがってマイナス金利の導入に賛成した日銀の幹部役員はほかならぬ自組織・・・の出資者に対して意図的に損失を与えている。ゆえに日銀の出資者、とりわけ出資比率55%の日本政府(≒国民)は、株主代表訴訟と同様の考え方に立ち、これら日銀役員に対して、マイナス金利政策によって日銀が被る損害総額(国債の日銀買値とそのリターン額とのマイナス差額総額)の私財による穴埋めを要求するべきだ・・・

 ・・・いささか過激ですが、個人的にはそこまで考えています。自分(日本国民)が上記日銀役員の「尻拭い」(日銀救済のための多額の税金の支払い!?)をさせられるのはイヤですからね・・・

続く

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【日銀、市場原理が機能中の国債市場に過介入!】民間銀の合理的判断が問うマイナス金利の不合理性③

2016-06-17 00:01:47 | 日本

前回からの続き)

 三菱東京UFJ銀行(MUFG)が国債市場特別参加者(プライマリー・ディーラー:PD)の資格を返上しようというのは、これによって黒田日銀の「マイナス金利政策」下で明らかに高値になり過ぎている国債を買わされて自分が多額の評価損を食らうリスクを回避したいから。そしてじつは・・・MUFGには日本のリーディングバンクである自らがPDを返上することで、日銀に対して同政策の見直しそして断念を迫ろうという意図があるのではないか・・・

 「明らかにネガティブ」―――日銀のマイナス金利政策についてMUFGの平野社長はこう断じています。これ、2つの意味で、つまり第一にMUFGを含む金融業界、そして第二に日銀ひいては国家にとってネガティブ・・・という含意だと解釈すべき。というわけで、本稿1回目と多分にダブりますが、まずは銀行にとって同政策がいかにネガティブか、についてあらためて綴ってみましょう・・・

 ・・・こちらを含めて以前から書いているとおり、ポスト資産バブル期の世界市場のどこを探しても、本邦金融機関にとって適切な資金の運用先は日本国債くらいしか見当たりません。だから日銀が「異次元緩和」なんぞ発動する前から自然とジャパンマネーは国債買いに回り、長期金利は主要国中、世界一の低位を保ってきたわけです。これはわが国の債券マーケットにおいて市場メカニズムが健全に働いていたことを意味します

 そんななか、2013年春から始まった異次元緩和。これが平穏に運営されていた同市場にいらぬ混乱をもたらしました(?)。日銀が突如ここに介入して国債を爆買いするものだからその価格は上記メカニズムでは説明が付かないレベルに上がってしまった(長期金利は下がり過ぎてしまった)ということです。それでも本邦機関投資家は日本国債を買い続けるしかなかった(あるいは国債を日銀に買い取ってもらって得たキャッシュを年0.1%の付利を得るために日銀当座預金口座に預けるしかなかった)。なぜなら、繰り返しになりますが彼らには、どんなに価格がつり上げられても(利回りが下げられても)国債を買う以外の選択肢がなかったため。

 ・・・そんな日本国債買いも当座預金も、リターンがどれほど雀の涙でもプラスであれば理屈に合うものでした。ところがこれがマイナスになってしまうと、上述のようにこれらの購入等には合理的な説明がつけられなくなる・・・。だからといってドル米国債なんぞ、買えるわけがない―――なぜ?って、アメリカの次期大統領の座にもっとも近いとされる(?)ドナルド・トランプ氏がその理由を先般、はっきりと口にしています―――アメリカはデフォルトしない、ドルを刷ればいいだけの話だろ?と・・・。

 かくしてわが国の金融機関は利益を得る術―――顧客から預かったおカネを運用する術を失ってしまいました。「それでもマネーのプロか!」って、そんな無茶なこと言わないであげて! 上記のようにドルや外債はインフレで目減り必至だから×、株や不動産もバブル価格だから×、企業等融資はこれまでの長年にわたる超低金利下でニーズがなかったものをいまさら増やせるわけがない・・・。こんな環境では、本邦金融業界はお手上げ―――お客さまからこれ以上おカネを預かってもマトモに利息を付けてお返しできないので新規預金や保険の受け付けは中止!みたいなことをせざるを得ない(?)。しかたがないので人々はタンス預金用の金庫を買う破目に・・・(!?)。当然、金融各社の利益は激減するから株主配当も減らすしかない・・・。てな具合で銀行もその株主も、そして預貯金者も、みんな大迷惑そして大困惑・・・

 ・・・これらはすべて、本邦金融機関にとって唯一の安全確実な投資である日本国債買いを事実上封殺した日銀の「異次元緩和」・・・そのなかでも不合理きわまるマイナス金利政策のせいだ・・・(?)。「明らかにネガティブ」―――上記MUFG社長発言の裏には、銀行界のこうした苦い思いがあるに違いありません・・・(?)

続く

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【マイナス金利の行く末は日銀の債務超過!?】民間銀の合理的判断が問うマイナス金利の不合理性②

2016-06-15 00:03:47 | 日本

前回からの続き)

 足元の債券市場では長期金利(新規発行10年物国債利回り)がマイナス0.18%台(14日20:00)と過去最低付近にあります。つまりそれだけ日本国債が高値で取引されていることになります。ということで国債の利回りも価格も、日銀が「異次元緩和」の追加措置として今年1月に導入した「マイナス金利政策」を見事に(?)反映したかたちになってはいるわけですが・・・

 マイナス金利下の国債とは、単純にいうと将来100円で償還される国債をいま、101円で買うようなもの。なので一見、国債の投資家は損をしているように思えます。それでも国債が買われ続けている理由はこちらの記事に書いたとおり。つまり投資家に「最後は日銀が買値を上回る価格で引き取ってくれるんじゃね?」という目論見があるため。だからこそ、日銀の金融政策決定会合(本日~16日)直前のいま、国債価格は上記異様な(?)高値を付けている。市場参加者の多くは同会合で日銀が追加緩和を発動して国債価格をさらにつり上げるだろうと読んでいるのです・・・(?)

 では日銀はこの期待(?)に応えられるのか―――もう一段、高い価格で国債の買い入れを続けられるのか―――ですが・・・将来の100円を得るために101円の支払いを延々と続けたら最終的に破産するのと同じで、そんな無茶なスキーム、早晩行き詰まるに決まっています(?)。マイナス利回りの国債を購入すればするほど日銀の総資産は目減りしていくということです。まあ日銀にはコスト削減(日銀当座預金口座付利引き下げとか撤廃等)の余地が多少はあるとはいえ、これだって当然、限度があるわけです。そんななかでマイナス金利幅を拡大したりしたら自己資本減少ペースはさらに加速して日銀は過小資本、下手をすれば債務超過に陥ってしまう・・・

 ・・・そうなったら日銀は、いやでもマイナス金利政策を止めざるを得なくなるでしょう。となれば、それまでの間に国債の高値掴みをした投資家は我先にこれを投げ売りするだろうから、国債価格は暴落し、長期金利は一転して急騰へ! でも債務超過の日銀にはもはや国債買い支えの余力無し。このため長期金利上昇に歯止めがかからずの信認は急落し、超円安で日本経済は崩壊へ・・・!?

 ・・・とまあ、勢い余って超ネガティブに綴ってしまいました。大丈夫です。実際には日銀に代わって潤沢な円のキャッシュドル・・・なんぞではなく価格の下がった日本国債に買い向かうため、ここまでヒドイことにはならない(長期金利の急騰は免れる)でしょうからね(?)。それでもマイナス金利政策の行く末として上記悪夢は当然、想定しておくべきでしょう。「通貨の番人」中銀が自身の金融政策がもとでこんな破局を招くことは絶対に許されない―――なので日銀は遅かれ早かれ、火遊びまがいの同政策の継続を断念せざるを得まい・・・

 ・・・こう見通せば、前回ご紹介した三菱東京UFJ銀行(MUFG)の国債市場特別参加者(プライマリー・ディーラー:PD)の資格返上の意図が窺えるというものです。MUFGはPDを返上することで、まずはマイナス金利のもとで超高値となっている国債を買わされる立場から解放されたいのでしょう。上述のとおりこの政策は無理筋。よって日銀がいまの価格以上の高値で国債購入を続けられる可能性は低い―――つまり、現在の価格で国債を買わされたら自分たちが評価損を被るリスクが高いと見越しての合理的な経営判断と思います。

 そして・・・じつはMUFGの真意はべつのところにあって・・・それは、PD返上で日銀にマイナス金利政策の見直しを迫ろうというのではないか・・・

続く

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【MUFG、PD返上へ!?】民間銀の合理的判断が問うマイナス金利の不合理性①

2016-06-13 00:00:40 | 日本

 「巣ごもり」に続いて、またも合理的な判断が邦銀から示されたな、と感じます。さあどうする黒田日銀、そして「アベノミクス」・・・

 このほど、三菱東京UFJ銀行(MUFG)が国債市場特別参加者(プライマリー・ディーラー:PD)の資格を返上する方針であることが明らかになりました。PD(制度)とは、200410月に財務省によって創設された制度のことで、「国債入札への積極的な参加など、国債管理政策上重要な責任を果たす一定の入札参加者に対し、国債発行当局が『国債市場特別参加者』として特別な資格を図ることを目的としています」(財務省HP)。PDは応札責任(すべての国債入札で、相応な価格で、発行予定額の4%以上の応札をすること)および落札責任(短期~超長期の各ゾーンについて一定割合以上の額を落札すること)などの責任が負わされるいっぽう、買い入れ消却入札、流動性供給入札などのほか、財務省開催のPD会合に参加することができます。

 さてこのPD資格、どうしてMUFGはこのタイミングで返上しようとしているのでしょうか。いろいろな憶測が流れているようですが、個人的には、同行はPDとしてもうこれ以上、価格が高過ぎる国債を大量に買わされるのは道理に合わないと判断したからだと考えています。まあ常識的な感覚でしょう。そのとおり、現在の国債価格は誰がどう見ても高過ぎ、つまりはこの先、下がるおそれがあるため、PDのままでいてこれを高値で掴まされ続けたら同行は多額の評価損を被るリスクが高いということです。

 で、国債価格が異様なレベルにまで上がってしまった原因は・・・いうまでもなく日銀の「異次元緩和」(量的質的金融緩和)となります。日銀は同緩和開始の2013年春から3年以上にわたって大規模な国債購入を継続してきました。それ以前も長期金利が主要国中、最低水準だったことからも分かるように、ただでさえ高値で取引されていた日本国債の価格はこれによっていっそう上昇し、いっぽうで(長期)金利は低下を続けたわけです。

 値段は高いうえに利回りは極小―――普通に考えればそんな金融商品は買われることはないはず。よってマネーは日本国債からリスク資産、つまり内外の株や外貨外債等の投資に回り、株高外貨高の資産効果がもたらされて経済繁栄!―――超ざっくりいうと、これがアベノミクスの目論見・・・でした(?)。

 しかし、実際にはそうならなかった―――それでも国債は買われ続けた(利回りは下がり続けた)わけです。その理由はこちらの記事など、あちこちで綴っているとおり―――資産バブル崩壊局面を迎えた世界市場のどこを探しても、マネーのまともな運用先が日本国債以外に見当たらないからに尽きます。これでは当初の狙い通りにならない、何とかジャパンマネーをリスク投資に追いやらないと・・・。そのためには、本邦投資家が手を出せないくらいに国債価格を高値に持っていくしかない・・・

 ・・・かくして日銀によって導入されたのが「マイナス金利政策」ということになります・・・

続く

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【「時すでに遅し」だが行動で損失抑制は可能】「リーマン級」真っ当な危機認識を示した日本政府⑥

2016-06-11 00:01:15 | 世界共通

前回からの続き)

 「リーマン級」の金融危機迫る!という真っ当な見通しを示したというのに安倍政権(ついでに黒田日銀)周辺は、その予想に従ったアクションを取っていない感じです。つまりアベノミクス」以降、政府傘下の(日銀を含む)金融機関や年金基金に派手にやらせたリスク資産投資の手仕舞いに向かう気配がない(?)ということ。であれば、今後の世界的な資産バブル崩壊局面でこれらは多額の評価損&為替差損を食らいそう・・・。

 そしてそれらの大打撃はやがて、政府系銀行への公的資金注入とか年金支給額の大幅カットなどのかたちで国民の重い負担となっていく―――そんなイヤな予感がしてなりません。まあ前述のとおり、本邦民間金融機関の大半は「巣ごもり」(≒のキャッシュか日本国債の保有)でこのリスキーな局面をやり過ごすことができそうなので、日本に限っては金融システミックリスクに陥ることはないでしょうが・・・

 本ブログでは何度も指摘していることですが、いまの株価や為替レートを見れば推測がつくように、すでにわたしたちの年金原資(年金積立金管理運用独立行政法人[GPIF]が運用する金融資産)は相当程度、毀損していると思われます。過去の公開日程のとおりだとすれば、GPIFの平成27年度運用実績は来月の10日頃、ちょうど参院選前後という微妙なタイミングで発表されそうです(これに関し、こちらの記事に、同年度実績は今月初旬に発表と、誤った時期を記していました。お詫びして訂正します)。これ、おそらくは芳しくない結果(もしかしたら「元本割れ」?)となるでしょう、大きなリスクオフ・イベントなんてなかったにもかかわらず・・・。ということは、「リーマン級」が起こったりしたら・・・

 ・・・「時すでに遅し」で、いまから動いても損失発生は不可避、でも巨大危機が勃発してからようやく重い腰を上げるよりはダメージはずっと小さくて済むはず。なので政府・日銀には、その正しい危機認識に基づくアクションを早く!と願わずにはいられません・・・

(「『リーマン級』真っ当な危機認識を示した日本政府」おわり)

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